パンドラ【禁后】
私の故郷に伝わっていた「禁后」というものにまつわる話です。
どう読むのかは最後までわかりませんでしたが、私たちの間では「パンドラ」と呼ばれていました。私が生まれ育った町は静かでのどかな田舎町でした。
目立った遊び場などもない寂れた町だったのですが、一つだけとても目を引くものがありました。
町の外れ、たんぼが延々と続く道にぽつんと建っている一軒の空き家です。
長らく誰も住んでいなかったようでかなりボロく、古くさい田舎町の中でも一際古さを感じさせるような家でした。
それだけなら単なる古い空き家…で終わりなのですが、目を引く理由がありました。
一つは両親など町の大人達の過剰な反応。
その空き家の話をしようとするだけで厳しく叱られ、時にはひっぱたかれてまで怒られることもあったぐらいです。
どの家の子供も同じで、私もそうでした。
もう一つは、その空き家にはなぜか玄関が無かったということ。
窓やガラス戸はあったのですが、出入口となる玄関が無かったのです。
以前に誰かが住んでいたとしたら、どうやって出入りしていたのか?
わざわざ窓やガラス戸から出入りしてたのか?
そういった謎めいた要素が興味をそそり、いつからか勝手に付けられた「パンドラ」という呼び名も相まって、当時の子供達の一番の話題になっていました。
(この時点では「禁后」というものについてまだ何も知りません。)
私を含め大半の子は何があるのか調べてやる!と探索を試みようとしていましたが、
普段その話をしただけでも親達があんなに怒るというのが身に染みていたため、なかなか実践できずにいました。
場所自体は子供だけでも難なく行けるし、人目もありません。
たぶん、みんな一度は空き家の目の前まで来てみたことがあったと思います。
しばらくはそれで雰囲気を楽しみ、何事もなく過ごしていました。
私が中学にあがってから何ヵ月か経った頃、ある男子がパンドラの話に興味を持ち、ぜひ見てみたいと言いだしました。
名前はAとします。
A君の家はお母さんがもともとこの町の出身で他県に嫁いでいったそうですが、離婚を機に実家であるお祖母ちゃんの家に戻ってきたとのこと。
A君自身はこの町は初めてなので、パンドラの話も全く知らなかったようです。
その当時私と仲の良かったB君・C君・D子の内、B君とC君が彼と親しかったので自然と私達の仲間内に加わっていました。
五人で集まってたわいのない会話をしている時、私達が当たり前のようにパンドラという言葉を口にするので、気になったA君がそれに食い付いたのでした。
「うちの母ちゃんとばあちゃんもここの生まれだけど、その話聞いたらオレも怒られんのかな?」
「怒られるなんてもんじゃねえぜ~うちの父ちゃん母ちゃんなんか本気で殴ってくるんだぞ!」
「うちも。意味わかんないよね」
A君にパンドラの説明をしながら、みんな親への文句を言い始めます。
ひととおり説明し終えると、一番の疑問である「空き家に何があるのか」という話題になりました。
「そこに何があるかってのは誰も知らないの?」
「知らない。入ったことないし聞いたら怒られるし。知ってんのは親達だけなんじゃないか?」
「だったらさ、何を隠してるのかオレたちで突き止めてやろうぜ!」
Aは意気揚揚と言いました。
親に怒られるのが嫌だった私と他の三人は最初こそ渋っていましたが、Aのノリにつられたのと、
今までそうしたくともできなかったうっぷんを晴らせるということで、結局みんな同意します。
その後の話し合いで、いつも遊ぶ時によくついてくるDの妹も行きたいという事になり、六人で日曜の昼間に作戦決行となりました。当日、わくわくした面持ちで空き家の前に集合、なぜか各自リュックサックを背負ってスナック菓子などを持ち寄り、みんな浮かれまくっていたのを覚えています。
前述のとおり、問題の空き家はたんぼに囲まれた場所にぽつんと建っていて、玄関がありません。
二階建の家ですが窓まで昇れそうになかったので、中に入るには一階のガラス戸を割って入るしかありませんでした。
「ガラスの弁償ぐらいなら大した事ないって」
そう言ってA君は思いっきりガラスを割ってしまい、中に入っていきました。
何もなかったとしてもこれで確実に怒られるな…と思いながら、みんなも後に続きます。
そこは居間でした。
左側に台所、正面の廊下に出て左には浴室と突き当たりにトイレ、右には二階への階段と、本来玄関であろうスペース。
昼間ということもあり明るかったですが、玄関が無いせいか廊下のあたりは薄暗く見えました。
古ぼけた外観に反して中は予想より綺麗…というより何もありません。
家具など物は一切なく、人が住んでいたような跡は何もない。
居間も台所もかなり広めではあったもののごく普通。
「何もないじゃん」
「普通だな~何かしら物が残ってるんだと思ってたのに。」
何もない居間と台所をあれこれ見ながら、男三人はつまらなそうに持ってきたお菓子をボリボリ食べ始めました。
「てことは、秘密は二階かな」
私とD子はD妹の手を取りながら二階に向かおうと廊下に出ます。
しかし、階段は…と廊下に出た瞬間、私とD子は心臓が止まりそうになりました。
左にのびた廊下には途中で浴室があり突き当たりがトイレなのですが、その間くらいの位置に鏡台が置かれ、真前につっぱり棒のようなものが立てられていました。
そして、その棒に髪がかけられていたのです。
どう表現していいかわからないのですが、カツラのように髪型として形を成したものというか、ロングヘアの女性の後ろ髪がそのままそこにあるという感じです。(伝わりにくかったらごめんなさい)
位置的にも、平均的な身長なら大体その辺に頭がくるだろうというような位置で棒の高さが調節してあり、まるで「女が鏡台の前で座ってる」のを再現したみたいな光景。
一気に鳥肌が立ち、「何何!?何なのこれ!?」と軽くパニックの私とD子。
何だ何だ?と廊下に出てきた男三人も意味不明な光景に唖然。
D妹だけが、あれなぁに?ときょとんとしていました。
「なんだよあれ?本物の髪の毛か?」
「わかんない。触ってみるか?」
A君とB君はそんな事を言いましたが、C君と私達は必死で止めました。
「やばいからやめろって!気持ち悪いし絶対何かあるだろ!」
「そうだよ、やめなよ!」
どう考えても異様としか思えないその光景に恐怖を感じ、ひとまずみんな居間に引っ込みます。
居間からは見えませんが、廊下の方に視線をやるだけでも嫌でした。
「どうする…?廊下通んないと二階行けないぞ」
「あたしやだ。あんなの気持ち悪い」
「オレもなんかやばい気がする」
C君と私とD子の三人はあまりに予想外のものを見てしまい、完全に探索意欲を失っていました。
「あれ見ないように行けばだいじょぶだって。二階で何か出てきたって階段降りてすぐそこが出口だぜ?しかもまだ昼間だぞ?」
AB両人はどうしても二階を見たいらしく、引け腰の私達三人を急かします。
「そんな事言ったって…」
私達が顔を見合わせどうしようかと思った時、はっと気付きました。
「あれ?D子、〇〇ちゃんは?」
「えっ?」
全員気が付きました。
D妹がいないのです。
私達は唯一の出入口であるガラス戸の前にいたので、外に出たという事はありえません。
広めといえど居間と台所は一目で見渡せます。
その場にいるはずのD妹がいないのです。
「〇〇!?どこ!?返事しなさい!!」
D子が必死に声を出しますが返事はありません。
「おい、もしかして上に行ったんじゃ…」
その一言に全員が廊下を見据えました。
「やだ!なんで!?何やってんのあの子!?」
D子が涙目になりながら叫びます。
「落ち着けよ!とにかく二階に行くぞ!」
さすがに怖いなどと言ってる場合でもなく、すぐに廊下に出て階段を駆け上がっていきました。
「おーい、〇〇ちゃん?」
「〇〇!いい加減にしてよ!出てきなさい!」
みなD妹へ呼び掛けながら階段を進みますが、返事はありません。
階段を上り終えると、部屋が二つありました。
どちらもドアは閉まっています。
まずすぐ正面のドアを開けました。
その部屋は外から見たときに窓があった部屋です。
中にはやはり何もなく、D妹の姿もありません。
「あっちだな」
私達はもう一方のドアに近付き、ゆっくりとドアを開けました。
D妹はいました。
ただ、私達は言葉も出せずその場で固まりました。
その部屋の中央には、下にあるのと全く同じものがあったのです。
鏡台とその真前に立てられた棒、そしてそれにかかった長い後ろ髪。
異様な恐怖に包まれ、全員茫然と立ち尽くしたまま動けませんでした。
「ねえちゃん、これなぁに?」不意にD妹が言い、次の瞬間とんでもない行動をとりました。
彼女は鏡台に近付き、三つある引き出しの内、一番上の引き出しを開けたのです。
「これなぁに?」
D妹がその引き出しから取り出して私達に見せたもの…
それは筆のようなもので「禁后」と書かれた半紙でした。
意味がわからずD妹を見つめるしかない私達。
この時、どうしてすぐに動けなかったのか、今でもわかりません。
D妹は構わずその半紙をしまって引き出しを閉め、今度は二段目の引き出しから中のものを取り出しました。
全く同じもの、「禁后」と書かれた半紙です。
もう何が何だかわからず、私はがたがたと震えるしか出来ませんでしたが、D子が我に返りすぐさま妹に駆け寄りました。
D子ももう半泣きになっています。
「何やってんのあんたは!」
妹を厳しく怒鳴りつけ、半紙を取り上げると引き出しを開け、しまおうとしました。
この時、D妹が半紙を出した後すぐに二段目の引き出しを閉めてしまっていたのが問題でした。
慌てていたのかD子は二段目ではなく三段目、一番下の引き出しを開けたのです。
ガラッと引き出しを開けたとたん、D子は中を見つめたまま動かなくなりました。
黙ってじっと中を見つめたまま、微動だにしません。
「ど、どうした!?何だよ!?」
ここでようやく私達は動けるようになり、二人に駆け寄ろうとした瞬間、ガンッ!!と大きな音をたてD子が引き出しを閉めました。
そして肩より長いくらいの自分の髪を口元に運び、むしゃむしゃとしゃぶりだしたのです。
「お、おい?どうしたんだよ!?」
「D子?しっかりして!」
みんなが声をかけても反応が無い。
ただひたすら、自分の髪をしゃぶり続けている。
その行動に恐怖を感じたのかD妹も泣きだし、ほんとうに緊迫した状況でした。
「おい!どうなってんだよ!?」
「知らねえよ!何なんだよこれ!?」
「とにかく外に出てうちに帰るぞ!ここにいたくねえ!」
D子を三人が抱え、私はD妹の手を握り急いでその家から出ました。
その間もD子はずっと髪をびちゃびちゃとしゃぶっていましたが、どうしていいかわからず、とにかく大人のところへ行かなきゃ!という気持ちでした。
その空き家から一番近かった私の家に駆け込み、大声で母を呼びました。泣きじゃくる私とD妹、汗びっしょりで茫然とする男三人、そして奇行を続けるD子。
どう説明したらいいのかと頭がぐるぐるしていたところで、声を聞いた母が何事かと現われました。
「お母さぁん!」
泣きながらなんとか事情を説明しようとしたところで母は私と男三人を突然ビンタで殴り、怒鳴りつけました。
「あんた達、あそこへ行ったね!?あの空き家へ行ったんだね!?」
普段見たこともない形相に私達は必死に首を縦に振るしかなく、うまく言葉を発せませんでした。
「あんた達は奥で待ってなさい。すぐみんなのご両親達に連絡するから。」
そう言うと母はD子を抱き抱え、二階へ連れていきました。
私達は言われた通り、私の家の居間でただぼーっと座り込み、何も考えられませんでした。
それから一時間ほどはそのままだっと思います。
みんなの親たちが集まってくるまで、母もD子も二階から降りてきませんでした。
親達が集まった頃にようやく母だけが居間に来て、ただ一言、「この子達があの家に行ってしまった」と言いました。
親達がざわざわとしだし、みんなが動揺したり取り乱したりしていました。
「お前ら!何を見た!?あそこで何を見たんだ!?」
それぞれの親達が一斉に我が子に向かって放つ言葉に、私達は頭が真っ白で応えられませんでしたが、何とかA君とB君が懸命に事情を説明しました。
「見たのは鏡台と変な髪の毛みたいな…あとガラス割っちゃって…」
「他には!?見たのはそれだけか!?」
「あとは…何かよくわかんない言葉が書いてある紙…」
その一言で急に場が静まり返りました。
と同時に二階からものすごい悲鳴。
私の母が慌てて二階に上がり数分後、母に抱えられて降りてきたのはD子のお母さんでした。
まともに見れなかったぐらい涙でくしゃくしゃでした。
「見たの…?D子は引き出しの中を見たの!?」
D子のお母さんが私達に詰め寄りそう問い掛けます。
「あんた達、鏡台の引き出しを開けて中にあるものを見たか?」
「二階の鏡台の三段目の引き出しだ。どうなんだ?」
他の親達も問い詰めてきました。
「一段目と二段目は僕らも見ました…三段目は…D子だけです…」
言い終わった途端、D子のお母さんがものすごい力で私達の体を掴み、
「何で止めなかったの!?あんた達友達なんでしょう!?何で止めなかったのよ!?」と叫びだしたのです。
D子のお父さんや他の親達が必死で押さえ「落ち着け!」「奥さんしっかりして!」となだめようとし、
しばらくしてやっと落ち着いたのか、D妹を連れてまた二階へ上がっていってしまいました。
そこでいったん場を引き上げ、私達四人はB君の家に移りB君の両親から話を聞かされました。
「お前達が行った家な、最初から誰も住んじゃいない。あそこはあの鏡台と髪の為だけに建てられた家なんだ。オレや他の親御さん達が子供の頃からあった。」
「あの鏡台は実際に使われていたもの、髪の毛も本物だ。それから、お前達が見たっていう言葉。この言葉だな?」
そういってB君のお父さんは紙とペンを取り、「禁后」と書いて私達に見せました。
「うん…その言葉だよ」
私達が応えると、B君のお父さんはくしゃっと丸めたその紙をごみ箱に投げ捨て、そのまま話を続けました。
「これはな、あの髪の持ち主の名前だ。読み方は知らないかぎりまず出てこないような読み方だ」
「お前達が知っていいのはこれだけだ。金輪際あの家の話はするな。近づくのもダメだ。わかったな?とりあえず今日はみんなうちに泊まってゆっくり休め。」
そう言って席を立とうとしたB君のお父さんにB君は意を決したようにこう聞きました。
「D子はどうなったんだよ!?あいつは何であんな…」と言い終わらない内にB君のお父さんが口を開きました。
「あの子の事は忘れろ。もう二度と元には戻れないし、お前達とも二度と会えない。それに…」
B君のお父さんは少し悲しげな表情で続けました。
「お前達はあの子のお母さんからこの先一生恨まれ続ける。今回の件で誰かの責任を問う気はない。だが、さっきのお母さんの様子でわかるだろ?お前達はもうあの子に関わっちゃいけないんだ」
そう言って、B君のお父さんは部屋を出ていってしまった。
私達は何も考えられなかった。
その後どうやって過ごしたかもよくわからない。
本当に長い1日でした。
それからしばらくは普通に生活していました。
翌日から私の親もA達の親も一切この件に関する話はせず、D子がどうなったかもわかりません。
学校には一身上の都合となっていたようですが、一ヵ月程してどこかへ引っ越してしまったそうです。
また、あの日私達以外の家にも連絡が行ったらしく、あの空き家に関する話は自然と減っていきました。
ガラス戸などにも厳重な対策が施され中に入れなくなったとも聞いています。
私やA達はあれ以来一度もあの空き家に近づいておらず、D子の事もあってか疎遠になっていきました。
高校も別々でしたし、私も三人も町を出ていき、それからもう十年以上になります。
ここまで下手な長文に付き合ってくださったのに申し訳ないのですが、結局何もわからずじまいです。
ただ、最後に…
私が大学を卒業した頃ですが、D子のお母さんから私の母宛てに手紙がありました。
内容はどうしても教えてもらえなかったのですが、その時の母の言葉が意味深だったのが今でも引っ掛かっています。「母親ってのは最後まで子供の為に隠し持ってる選択があるのよ。もし、ああなってしまったのがあんただったとしたら、
私もそれを選んでたと思うわ。それが間違った答えだとしてもね」
パンドラ【禁后】後日談
複雑で難しい話なので文章にするのがとても大変でした。
理解できた部分を中心に私なりにまとめたつもりですが、それゆえ説明不足になってしまっている部分なども多いと思います。
また、私がパンドラについての詳細を知ったのはつい最近ですが、全容を聞けたわけではありません。
ここに書かれていない部分などは私も知らない事だと思ってください。
代々、母から娘へと三つの儀式が受け継がれていたある家系にまつわる話。
まずはその家系について説明します。
その家系では娘は母の「所有物」とされ、娘を「材料」として扱うある儀式が行われていました。
母親は二人または三人の女子を産み、その内の一人を「材料」に選びます。
(男子が生まれる可能性もあるはずですが、その場合どうしていたのかはわかりません)
選んだ娘には二つの名前を付け、一方は母親だけが知る本当の名として生涯隠し通されます。
万が一知られた時の事も考え、本来その字が持つものとは全く違う読み方が当てられるため、字が分かったとしても読み方は絶対に母親しか知り得ません。
母親と娘の二人きりだったとしても、決して隠し名で呼ぶ事はありませんでした。
忌み名に似たものかも知れませんが、「母の所有物」であることを強調・証明するためにしていたそうです。
また、隠し名を付けた日に必ず鏡台を用意し、娘の10、13、16歳の誕生日以外には絶対にその鏡台を娘に見せないという決まりもありました。
これも、来たるべき日のための下準備でした。本当の名を誰にも呼ばれることのないまま、「材料」としての価値を上げるため、幼少時から母親の「教育」が始まります。
(選ばれなかった方の娘はごく普通に育てられていきます)
例えば…
・猫、もしくは犬の顔をバラバラに切り分けさせる
・しっぽだけ残した胴体を飼う
(娘の周囲の者が全員、これを生きているものとして扱い、娘にそれが真実であると刷り込ませていったそうです)
・猫の耳と髭を使った呪術を教え、その呪術で鼠を殺す
・蜘蛛を細かく解体させ、元の形に組み直させる
・糞尿を食事に(自分や他人のもの)など。
全容はとても書けないのでほんの一部ですが、どれもこれも聞いただけで吐き気をもよおしてしまうようなものばかりでした。
中でも動物や虫、特に猫に関するものが全体の3分の1ぐらいだったのですが、これは理由があります。
この家系では男と関わりを持つのは子を産むためだけであり、目的数の女子を産んだ時点で関係が断たれるのですが、条件として事前に提示したにも関わらず、家系や呪術の秘密を探ろうとする男も中にはいました。
その対応として、ある代からは男と交わった際に呪術を使って憑きものを移すようになったのです。
それによって自分達が殺した猫などの怨念は全て男の元へ行き、関わった男達の家で憑きもの筋のように災いが起こるようになっていたそうです。
そうする事で、家系の内情には立ち入らないという条件を守らせていました。
こうした事情もあって、猫などの動物を「教育」によく使用していたのです。
「材料」として適した歪んだ常識、歪んだ価値観、歪んだ嗜好などを形成させるための異常な「教育」は代々の母娘間で13年間も続けられます。その間で三つの儀式の内の二つが行われます。
一つは10歳の時、母親に鏡台の前に連れていかれ、爪を提供するように指示されます。
ここで初めて、娘は鏡台の存在を知ります。
両手両足からどの爪を何枚提供するかはそれぞれの代の母親によって違ったそうです。
提供するとはもちろん剥がすという意味です。
自分で自分の爪を剥がし母親に渡すと、鏡台の三つある引き出しの内、一番上の引き出しに爪と娘の隠し名を書いた紙を一緒に入れます。
そしてその日は一日中、母親は鏡台の前に座って過ごすのです。
これが一つ目の儀式。
もう一つは13歳の時、同様に鏡台の前で歯を提供するように指示されます。
これも代によって数が違います。
自分で自分の歯を抜き、母親はそれを鏡台の二段目、やはり隠し名を書いた紙と一緒にしまいます。
そしてまた一日中、母親は鏡台の前で座って過ごします。
これが二つ目の儀式です
この二つの儀式を終えると、その翌日~16歳までの三年間は「教育」が全く行われません。
突然、何の説明もなく自由が与えられるのです。
これは13歳までに全ての準備が整ったことを意味していました。
この頃には、すでに母親が望んだとおりの生き人形のようになってしまっているのがほとんどですが、わずかに残されていた自分本来の感情からか、ごく普通の女の子として過ごそうとする娘が多かったそうです。
そして三年後、娘が16歳になる日に最後の儀式が行われます。
最後の儀式、それは鏡台の前で母親が娘の髪を食べるというものでした。
食べるというよりも、体内に取り込むという事が重要だったそうです。
丸坊主になってしまうぐらいのほぼ全ての髪を切り、鏡台を見つめながら無我夢中で口に入れ飲み込んでいきます。
娘はただ茫然と眺めるだけ。
やがて娘の髪を食べ終えると、母親は娘の本当の名を口にします。
娘が自分の本当の名を耳にするのはこの時が最初で最後でした。
これでこの儀式は完成され、目的が達成されます。
この翌日から母親は四六時中自分の髪をしゃぶり続ける廃人のようになり、亡くなるまで隔離され続けるのです。
廃人となったのは文字通り母親の脱け殻で、母親とは全く別のものです。
そこにいる母親はただの人型の風船のようなものであり、母親の存在は誰も見たことも聞いたこともない誰も知り得ない場所に到達していました。
これまでの事は全て、その場所へ行く資格(神格?)を得るためのものであり、最後の儀式によってそれが得られるというものでした。
その未知なる場所ではそれまで同様にして資格を得た母親たちが暮らしており、決して汚れることのない楽園として存在しているそうです。
最後の儀式で資格を得た母親はその楽園へ運ばれ、後には髪をしゃぶり続けるだけの脱け殻が残る…そうして新たな命を手にするのが目的だったのです。
残された娘は母親の姉妹によって育てられていきます。
一人でなく二~三人産むのはこのためでした。
母親がいなくなってしまった後、普通に育てられてきた母親の姉妹が娘の面倒を見るようにするためです。
母親から解放された娘は髪の長さが元に戻る頃に男と交わり、子を産みます。
そして、今度は自分が母親として全く同じ事を繰り返し、母親が待つ場所へと向かうわけです。
ここまでがこの家系の説明です。
もっと細かい内容もあったのですが、二度三度の投稿でも収まる量と内容じゃありませんでした。
なるべく分かりやすいように書いたのですが、今回は本当に分かりづらい読みづらい文章だと思います。
申し訳ありません。
本題はここからですので、ひとまず先へ進みます。実は、この悪習はそれほど長く続きませんでした。
徐々にこの悪習に疑問を抱くようになっていったのです。
それがだんだんと大きくなり、次第に母娘として本来あるべき姿を模索するようになっていきます。
家系としてその姿勢が定着していくに伴い、悪習はだんだん廃れていき、やがては禁じられるようになりました。
ただし、忘れてはならない事であるとして、隠し名と鏡台の習慣は残す事になりました。
隠し名は母親の証として、鏡台は祝いの贈り物として受け継いでいくようにしたのです。
少しずつ周囲の住民達とも触れ合うようになり、夫婦となって家庭を築く者も増えていきました。
そうしてしばらく月日が経ったある年、一人の女性が結婚し妻となりました。
八千代という女性です。
悪習が廃れた後の生まれである母の元で、ごく普通に育ってきた女性でした。
周囲の人達からも可愛がられ平凡な人生を歩んできていましたが、良き相手を見つけ、長年の交際の末の結婚となったのです。
彼女は自分の家系については母から多少聞かされていたので知っていましたが、特に関心を持った事はありませんでした。
妻となって数年後には娘を出産、貴子と名付けます。
母から教わった通り隠し名も付け、鏡台も自分と同じものを揃えました。
そうして幸せな日々が続くと思われていましたが、娘の貴子が10歳を迎える日に異変が起こりました。
その日、八千代は両親の元へ出かけており、家には貴子と夫だけでした。
用事を済ませ、夜になる頃に八千代が家に戻ると、信じられない光景が広がっていました。
何枚かの爪が剥がされ、歯も何本か抜かれた状態で貴子が死んでいたのです。
家の中を見渡すと、しまっておいたはずの貴子の隠し名を書いた紙が床に落ちており、剥がされた爪と抜かれた歯は貴子の鏡台に散らばっていました。
夫の姿はありません。
何が起こったのかまったく分からず、娘の体に泣き縋るしか出来ませんでした。
異変に気付いた近所の人達がすぐに駆け付けるも、八千代はただずっと貴子に泣き縋っていたそうです。
状況が飲み込めなかった住民達はひとまず八千代の両親に知らせる事にし、何人かは八千代の夫を探しに出ていきました。
この時、八千代を一人にしてしまったのです。
その晩のうちに、八千代は貴子の傍で自害しました。
住民達が八千代の両親に知らせたところ、現場の状況を聞いた両親は落ち着いた様子でした。
「想像はつく。八千代から聞いていた儀式を試そうとしたんだろ。八千代には詳しく話したことはないから、断片的な情報しか分からんかったはずだが、貴子が10歳になるまで待っていやがったな。」と言って、八千代の家へ向かいました。
八千代の家に着くと、さっきまで泣き縋っていた八千代も死んでいる…住民達はただ愕然とするしかありませんでした。
八千代の両親は終始落ち着いたまま、「わしらが出てくるまで誰も入ってくるな」と言い、しばらく出てこなかったそうです。
数時間ほどして、やっと両親が出てくると「二人はわしらで供養する。夫は探さなくていい。理由は今に分かる。」と住民達に告げ、その日は強引に解散させました。
それから数日間、夫の行方はつかめないままだったのですが、程なくして八千代の家の前で亡くなっているのが見つかりました。
口に大量の長い髪の毛を含んで死んでいたそうです。
どういう事かと住民達が八千代の両親に尋ねると、「今後八千代の家に入ったものはああなる。そういう呪いをかけたからな。あの子らは悪習からやっと解き放たれた新しい時代の子達なんだ。こうなってしまったのは残念だが、せめて静かに眠らせてやってくれ。」と説明し、八千代の家をこのまま残していくように指示しました。
これ以来、二人への供養も兼ねて、八千代の家はそのまま残される事となったそうです。
家のなかに何があるのかは誰も知りませんでしたが、八千代の両親の言葉を守り、誰も中を見ようとはしませんでした。
そうして、二人への供養の場所として長らく残されていたのです。その後、老朽化などの理由でどうしても取り壊すことになった際、初めて中に何があるかを住民達は知りました。
そこにあったのは私達が見たもの、あの鏡台と髪でした。
八千代の家は二階がなかったので、玄関を開けた目の前に並んで置かれていたそうです。
八千代の両親がどうやったのかはわかりませんが、やはり形を成したままの髪でした。
これが呪いであると悟った住民達は出来るかぎり慎重に運び出し、新しく建てた空き家の中へと移しました。
この時、誤って引き出しの中身を見てしまったそうですが、何も起こらなかったそうです。
これに関しては、供養をしていた人達だったからでは?という事になっています。
空き家は町から少し離れた場所に建てられ、玄関がないのは出入りする家ではないから、窓・ガラス戸は日当たりや風通しなど供養の気持ちからだという事でした。
こうして誰も入ってはいけない家として町全体で伝えられていき、大人達だけが知る秘密となったのです。ここまでが、あの鏡台と髪の話です。
鏡台と髪は八千代と貴子という母娘のものであり、言葉は隠し名として付けられた名前でした。ここから最後の話になります。
空き家が建てられて以降、中に入ろうとする者は一人もいませんでした。
前述の通り、空き家へ移る際に引き出しの中を見てしまったため、中に何があるかが一部の人達に伝わっていたからです。
私達の時と同様、事実を知らない者に対して過剰に厳しくする事で、何も起こらないようにしていました。
ところが、私達の親の間で一度だけ事が起こってしまったそうです。
前回の投稿で私と一緒に空き家へ行ったAの家族について、少しふれたのを覚えていらっしゃるでしょうか。
Aの祖母と母がもともと町の出身であり、結婚して他県に住んでいたという話です。
これは事実ではありませんでした。
子供の頃に、Aの母とBの両親、そしてもう一人男の子(Eとします)を入れた四人であの空き家へ行ったのです。
私達とは違って夜中に家を抜け出し、わざわざハシゴを持参して二階の窓から入ったそうです。
窓から入った部屋には何もなく、やはり期待を裏切られたような感じでガクッとし、隣にある部屋へ行きました。
そこであの鏡台と髪を見て、夜中という事もあり凄まじい恐怖を感じます。
ところが四人のうちA母はかなり肝が据わっていたようで、怖がる三人を押し退けて近づいていき、引き出しを開けようとさえしたそうです。
さすがに三人も必死で止め、その場は治まりますが、問題はその後に起こりました。
その部屋を出て恐る恐る階段を降りるとまたすぐに恐怖に包まれます。
廊下の先にある鏡台と髪。
この時点で三人はもう帰ろうとしますが、A母が問題を引き起こしてしまいました。
私達の時のD妹のように引き出しを開け中のものを出したのです。
A母が取り出したのは一階の鏡台の一段目の引き出しの中の「紫逅」と書かれた紙で、何枚かの爪も入っていたそうです。
さすがにやばいものでは、と感じた三人はA母を無理矢理引っ張り、紙を元に戻して帰ろうとしますが、じたばたしてるうちに棒から髪が落ちてしまったそうです。
空き家の中で最も異様な雰囲気であるその髪にA母も触れる勇気はなく、四人はそのままにして帰ってきてしまいました。
それから二、三日はそのまま放っておいたらしいですが、親にバレたら…という気持ちがあったので、元に戻しに行く事になります。
B両親はどうしても都合があわなかったため、A母とE君の二人で行く事になりました。
夜中に抜け出し、ハシゴを使って二階から入ります。
階段を降り、家から持ってきた箸で髪を掴んで何とか棒に戻しました。
さぁ早く帰ろうとE君は急かしましたが、ホッとしたのかA母はE君を怖がらせようと思い、今度は二段目の引き出しを開けたのです。
「紫逅」と書かれた紙と何本かの歯が入っていました。
あまりの恐怖にE君は取り乱し泣きそうになっていたのですが、A母はこれを面白がってしまい、E君にだけ中が見えるような態勢で三段目の引き出しを開けたそうです。
E君が引き出しの中を見たのはほんの数秒ほどでした。
何があった~?とA母が覗き込もうとした瞬間、ガンッ!!と引き出しを閉め、ぼーっとしたまま動かなくなりました。
A母はE君が仕返しにふざけてるんだと思ったのですが、何か異常な空気を感じ、突然怖くなって一人で帰ってしまったのです。
家に着いてすぐに母親に事情を話すと、母親の顔色が変わり異様な事態となりました。
E君の両親などに連絡し、親達がすぐに空き家へ向かいます。
数十分ぐらいして、家で待っていたA母は親達に抱えられて帰ってきたE君を少しだけ見ました。
何かを頬張っているようで、口元からは長い髪の毛が何本も見えていたそうです。
この後B両親も呼び出され、親も交えて話したそうですが、E君の両親は三人に何も言いませんでした。
ただ、言葉では表せないような表情でずっとA母を睨み付けていたそうです。
この後、三人はあの空き家にまつわる話を聞かされました。
E君の事に関しては、私達に言ったのと全く同じ事を言われたようでした。
そして、E君の家族がどこかへ引っ越していくまでの一ヵ月間ぐらいの間、毎日A母の家にE君の両親が訪ねてきていたそうです。
この事でA母は精神的に苦しい状態になり、見かねた母親が他県の親戚のところへ預けたのでした。
その後A母やE君がどうしていたのかはわかりませんが、A母が町に戻ってきたのはE君への償いからだそうです。以上で話は終わりです。
最後に鏡台の引き出しに入っているものについて。
空き家には一階に八千代の鏡台、二階に貴子の鏡台があります。
八千代の鏡台には一段目は爪、二段目は歯が、隠し名を書いた紙と一緒に入っています。
貴子の鏡台は一、二段目とも隠し名を書いた紙だけです。
八千代が「紫逅」、貴子が「禁后」です。
そして問題の三段目の引き出しですが、中に入っているのは手首だそうです。
八千代の鏡台には八千代の右手と貴子の左手、貴子の鏡台には貴子の右手と八千代の左手が、指を絡めあった状態で入っているそうです。
もちろん、今現在どんな状態になっているのかはわかりませんが。
D子とE君はそれを見てしまい、異常をきたしてしまいました。
厳密に言うと、隠し名と合わせて見てしまったのがいけなかったという事でした。
「紫逅」は八千代の母が、「禁后」は八千代が実際に書いたものであり、三段目の引き出しの内側にはそれぞれの読み方がびっしりと書かれているそうです。
空き家は今もありますが、今の子供達にはほとんど知られていないようです。
娯楽や誘惑が多い今ではあまり目につく存在ではないのかも知れません。
地域に関してはあまり明かせませんが、東日本ではないです。
それから、D子のお母さんの手紙についてですが、これは控えさせていただきます。
D子とお母さんはもう亡くなられていると知らされましたので、私の口からは何もお話出来ません。長くなりましたがこれで全てです。
前回の投稿でいろんな方に読んでいただけたのは驚きでしたが、気に入らないと思われた方も多いようで、残念なコメントも中にはありました。
今回のは興味を持たれた方々への返答的なものですし、その方々から見ても突飛な内容でしょうから、得点はなさらないでください。
今回は文章も上手くまとめられませんでしたから。
なにより、町の者でなければとても信じられない話だと思いますし、作り話と思っていただいて構いません。
もともと、誰も信じないだろうという事でこういった場への投稿を許可してもらったのです。
パンドラ以外にお話できるような体験はありませんので、これで私の投稿は終わりです。
読んでくださった方々、ありがとうございました。
パンドラ【禁后】
彼女の家に泊まった
1年位前の話。俺には普通に可愛い彼女がいた。
大学2年の頃だけど、周りには彼女いない奴も割りと多くて、
俺はちょっと優越感とか感じてた。(言いふらしたりはしなかったけど)
彼女のことはそれなりに大事にしてたと思う。俺は実家から通いで、一時間くらいかけて大学に行ってるんだけど、
面倒臭いから、下宿住まいの連れの家に泊まることの方が多かった。
彼女も実家組だったから、彼女の家には行ったことなかったんだけど、
10月か11月のある時に、はじめて彼女の家に行けることになった。
彼女の家は母親と二人暮らしで、その時は母親が出張とかで、泊まっても大丈夫ということだった。
彼女の料理が美味かったこととか、家の中がきれいなこととかにびびって、まぁ色々あって彼女の部屋で寝た。
で、次の日、起きたら彼女が消えてた。
女の子向けのシングルで小さいベッドだったけど、
俺も男にしてはかなり小さい方だし、狭いけど寝れないことはなかったんで、二人で寝たんだけど、
やっぱり狭くてどっか別の場所で寝ちゃったのかなーとか、ちょっと罪悪感を覚えながら彼女のことを探した。けど、見つからなかった。
家っていってもマンションだし、LDK+3部屋位しかない。
彼女の母親の寝室とかも、やべーって思いつつ探したんだけどいなくて、途中からどんどん焦り出して本気で困った。
コンビニとかに朝ごはんを買いに行ってるのかも、と思い直して待ってたけど、
12時すぎても帰ってこない。(俺が起きたのは8時か9時位だった)
携帯も昨日着てたパジャマも彼女の部屋にあった。
彼女の母親が帰ってきたらどうしようというのもあって、結局そのまま帰った。
鍵は掛けられるわけないから開けっ放しで。で、次の日、学校の帰りに、よく泊めて貰う奴のアパートに行った。
ここではYにしとくけど、こいつとは小学校低学年からの仲で、こいつには彼女がいなかった。
そんな相手に俺は、のろけの様なものから彼女の愚痴まで、酒を持ち込んではよく話してた。
内心嫌だったのかもしれないが、Yはそういうのをちゃんと聞いてくれるいい奴だった。
俺はちょっと多めに酒を買って、いつもののりで昨日のことを話した。
いい加減にしろって感じだよなーという軽い感じのニュアンスを持たせつつ。
だけど、Yは俺の話が終わらないうちに、凄い勢いで「何で俺に言った!?」って言ってきた。
こっちがびびるっつー話なんだけど、その顔がマジでやばかった。
何かブルブル震えてるし。(プルプルよりブルブルって感じだと思う)
何?何でこいつこんな大げさにびびってんの?とか思って、俺は???ってなって、
とにかくYを落ち着かせないと、と思った。
今思うと、俺もYにあてられてパニくってたのかもしれないけど。んで、「まぁとにかく落ち着けよ、何でそんなにびびってんだ?」って、なるべく優しく尋ねたんだけど、Yは、
「ごめんごめん、マジ、マジでごめん。お前とは友達だけど無理無理無理無理これは無理だわ。
ごめんな、ほんとごめん。悪いけど帰ってくれ。ごめん」
みたいなことを言いながら、俺を部屋から追い出した。
「はぁ?何言ってんの、ふざけんな」とか俺ももちろん言ったんだけど、
Yはとにかくごめんとかずーっと繰り返し言いまくってて、俺の言ってることを聞くつもりはないみたいだった。
結局、外まで押されてバタン、ガチャガチャっつってドアを閉められた。
音からしてチェーンをかけたのが分かった。普段はチェーンまではかけない奴なのに。
無理やり出されたもんだから靴もちゃんと履けてなくて、外は寒いし、
俺はポカーンてした後、一気に腹が立ってきた。
直ぐ携帯に電話を掛けたんだけど、Yは出やがらねぇ。
何回か掛けたんだけど、途中で電源を切ったっぽい。
ますますムカついて、Yの部屋のドアを思いっきり蹴った後、どうしようもないからマック寄って帰った。
その後、彼女にメールとか電話とかもちろんしまくったし、
彼女と仲良かった子とかにも話を聞きに行ったりしたんだけど、彼女は行方不明になったっぽい。
どうも、俺が彼女の部屋に泊まった日に失踪したみたいなんだけど、それは何か怖くて警察とかにも言えなかった。
彼氏ってことで色々聞かれたけど、
俺の知らないところで別に彼氏がいたりとかしてて、(しかも彼女の母親に紹介済みorz)
逆に疑われるようなことにはならなかった。
ただ、警察はマジ怖かったけど。
Yが何にびびってたのか分からなくて、それがすげぇ怖い。
あれからYのとこには行ってない。っていうか行かせてくれなかった。
学校で会っても半分無視みたいな感じで交流なくなってたし。
ていうかYも、それからちょっとたってどっか行った。
誰も行き先を知らないらしいんだけど、パソコンに『だれもさがすな』ってデータが残ってたらしい。
よく知らないけど。この前にも身近な人が行方不明になったことが何回かあって正直怖い。
次は俺に何かあるんじゃないかって。
『彼女の家に泊まった』 – 怖い話まとめブログ
鏡が怖い
私はあるビジネスホテルで客室清掃のバイトをしているのですが、
先日掃除した部屋がとても怖かった。その部屋はファミリーダブルというダブルベッドよりも幅が広い
3人で寝ることができるベッドがある部屋で、名前のとおり家族向けの
部屋なのですが、その部屋の客は数日前から連泊しているようで荷物が
置いてあった(連泊の荷物類は触らないよう指導されている)。シーツ替えや掃除機かけをしているときにふと気づいたのだが
部屋のすべての鏡が新聞紙でふさがれている。
ドレッサー、姿見など。
もしかして…とユニットバスに入ってみると洗面所の鏡まで。
しかも新聞の記事に載っている誰かの顔写真にはさらに別の紙で見えないように
ふさがれている。
あまりにも病的で気持ち悪くさっさと掃除を終わらせ、先輩に
「○○号室の部屋の鏡が全部ふさがれていて気持ち悪かった」と報告したら
「私あの部屋の客見たことあるけど、男2人女1人だった。家族ではないようだった。
宗教的なかんじがした」と言っていた。
家族ではない男女3人が一つのベッドで寝るのも変だが、鏡を見てはならない宗教なんて
あるのか?文字にしてみるとそんなに怖い話ではないですね。
一人でその部屋を掃除しているとあまりにも気味が悪かったので。
鏡が怖い – 死ぬほど洒落にならない怖い話
髪寄りの法
祖父が子供の頃の話。
祖父は子供の頃、T県の山深い村落で暮らしていた。
村の住人のほとんどが林業を営んでおり、山は彼らの親と同じであった。
そんな村にも地主が存在しており、村の外れにある大きな屋敷に住んでいた。
地主は林業を営むわけでもなく、毎日をのんびりと暮らしていた。まさしく牧歌的な暮らしの村であるが、村特有のルールも存在していた。
そのルールというのが、
『毎月3日は髪取り師以外は地主の家に近づいてはならない』
『屋敷に来る客人に声をかけてはならない』
というものだった。
毎月3日の朝に村外から数名の人間が訪れては、夕方には帰っていく。
物心付く前からそのルールを教え込まれていた祖父は、何の疑問ももたずにルールを守り続けていた。ある日、村の外から一人の男が流れ着いてきた。その男をAとする。
男は村のはずれにある屋敷から少し離れた場所に、勝手に小屋を造り住み着いたそうだ。
村人たちは不審人物であるAに誰がこの村のルールを説明するのかを会議し、祖父の父親(B)がその役をする事になった。
Bは早速Aの小屋へ赴き、この村のルールを説明した。
このルールを破れば大変な事になるので、必ず守って欲しいと念をおした。
俺が不思議に思ったのが、なぜ村から追い出さなかったのかだが、
祖父曰く「村の人間の半数が流れ者なので、追い出すという考えがなかった」だそうだ。話を戻す。
AはBの説明を聞き、ルールを守る事を了解した。そしてAが訪れてから最初の3日が訪れた。
この日も20代の男女と40代の男一人が村へとやってきた。
3日にやってくる者はみな身なりもよく、良家の出である品をもっていたそうだ。
この村に何故村外の者が訪れるのか。
その秘密は『髪寄りの法』にある。
この髪寄りの法とは、人間にかけられた呪いや付き物を落とす術であり、
この村の地主がその術を代々受け継いでいたらしい。
術はその名の通り、髪の毛に邪念を寄せ取り除くというもの。
しかしその髪を取り出す場所は、被術者の腹部から取り出される。
その髪を山へ封印にいくのが、地主から洗礼をうけた髪取り師である。その日もいつもと同じように時間が流れ、屋敷の裏口にそっと置かれた包み紙を髪取り師が持ち、山へと封印にいった。
だが、村に来て日の浅いAは村のルールは聞いていたがそれを無視し、屋敷の側の雑木林からその様子をうかがっていた。
Aは髪取り師が持ち去った包み紙に、何かいいものが入っているものだと考え髪取り師の後をつけた。
髪の封印場所は山の中腹に建てられた祠であり、この祠の管理も髪取り師の仕事であった。
Aは、髪取り師が祠の中に包み紙を入れ山を下りたのを確認すると、祠のなかからそれを取り出した。
中を確認すると、血で濡れた一束の髪の毛。
Aはその髪を放り出し逃げ出した。その次の日、Aの小屋が燃えた。
Aは小屋から逃げ出し無事であったが、不審に思った地主がAを呼び出した。
Aは昨日の事を話さなかったらしいが、地主にはAについているモノが見えていた。
地主は、「死にたく無ければ、お前が髪取り師を受け継げ。それを拒否すれば命はない」と。
Aにすごむが、Aはそれを拒否。
その日の内にAは村から追放された。
それから数日後、地主の屋敷が全焼し一家が死亡した。
その焼け跡からはAと見られる遺体も発見された。
村人はAが放火し、そのまま逃げ遅れたのだろうという結論になった。さらに数日後、髪取り師が祠に行くと、
祠は完全に破壊され、中にあった髪もすべて持ち去られていた。
真相は不明だが、村人たちの話ではAは祠を破壊し、髪をもって屋敷にいった。
髪の呪いや邪念が一気にたかまり、屋敷炎上を引き起こしたんじゃないかという事になった。地主がいなくなってからは、村外の者からの収益もなく次第に村がさびれていき、やがて捨て村となっていった。
それ以来、祖父は髪の毛に対し強い恐怖を覚えるようになったと、ツルツルの頭を撫でながら話してくれた。
髪寄りの法 : 怖い話らぼ −怪談・都市伝説まとめ−
赤ちゃんを返せ
今から10年ほど前、高校生の時に体験した話です。
私たちは修学旅行で、ある海に行きました。グループ毎にホテルの部屋をあてがわれたのですが、
私のいたグループは、A、B、C、私という
メンバーで、みんながみんな、いわゆる不良でした。
夜になって、他のグループはみんな就寝しましたが、
当然私たちのグループがおとなしく眠るはずがありません。
結局女子の部屋に行こうなんていう流れになり、その場も「いいねえ」という雰囲気になりました。
B「と言ってもうちのクラスの女最悪だから、他のクラスの女にしようや」
ということで私たちのクラスがいたホテルから
少し離れた場所に宿を取っていたクラスの女子の部屋に行くことになりました。
私たちはこのとき、Cが一切口をきいていなかったことに気づきませんでした。
前もって公衆電話からそのクラスの女子のポケベルに連絡をいれ、
入れるようにしておいてくれ、と伝えてから、
とりあえずホテルを抜け出しました。
ホテルの裏側は海岸で砂浜になっており、
私たちは月明かりで見えるほどの岸壁沿いを歩いて
目的のクラスのホテルに向かいました。50メートルほど歩いた時だったでしょうか。
Cがぼそっと呟きました。
「ここは嫌な感じがする・・・・帰った方がいい」
彼は快活で、いつも笑いを振りまくような男だったのですが、
そのときの彼の声は今までに聞いたことがないほど、
真剣で思い口調でした。
さすがに一瞬私たちもドキッとしたのですが、
その動揺は、
「お前、霊感とかあんの?怖がってるだけじゃねえの?」
というAの言葉にかき消されました。
いや、みんなも意識的に消そうとしていたのでしょう、
その場が小さな笑い声で包まれました。
ところが、
「違う!そんなんじゃない。どうなっても知らないぞ!」
とCは強い口調で反発しました。
ただ私たちも、もう乗ってしまった流れを止めるわけにはいかず、
B「あほらしい。行くぞ」
という一言で歩を進めることにしました。
Cはそれからは黙って歩いていました。100メートルくらい来た時でしょうか。
何十メートルか先の波打ち際に人影が見えました。
その人影はどうやら海を見ながら歩いている様子でした。
私たちは、教師が見回りをしているかもしれないと思い、
咄嗟に岸壁を背に身を屈めました。
その人影が波打ち際を歩き、徐々にその影が大きく見えてきました。
ただその人影は何か異様な雰囲気を漂わせていました。
やがてその姿がはっきりとした形になってきました。その人影は長い髪の女性でした。
A「こんな時間に変だよな?」
私「ただの散歩じゃねえの?」
B「夢遊病とかじゃねえ?」
などと勝手なことを言っていたのですが、
私はふとCのことが気になりました。
彼の方を見ると、俯いて震えながら何やら言っています。
耳をそばだててみると、
「助けてください・・・、助けてください・・・」
と繰り返しているではありませんか。
女性は私たちの見える場所で海を見ながら、
つまり、私たちに背を向けて一旦立ち止まりました。さすがに私もヤバイものなのではないか、という気持ちが強くなり、
みんなに帰らないかということを合図しました。
ただ、そんなことを聞くような連中ではありません。
とりあえず、その女性が通り過ぎるまで待機しようという
Bの合図もあって、とりあえず女性の様子を見守っていました。すると突然、女性が大声で叫び、騒ぎ始めました。
「私の赤ちゃんを返せ!!私の赤ちゃんを返せ!!」
髪を振り乱すように騒いでいます。
私たちはさすがに怖くなり慌てましたが、
今ここで声を出して逃げ出すわけにはいきません。
少し気の触れた人かもしれませんし、
ともかく更に息を潜めてその様子を見守っていました。
何十秒、何分経ったかわかりませんが、
女性は海に向かって叫び狂っています。
そしてそれは突然のことでした。女性は私たちの方に体の向きを変え、突然走って私たちに向かってきたのです。
「お前らか!!お前らか!!」
恐らくそう言っていたと思います。
私たちは大慌てで逃げ出しました。
ところがCだけがその女性に向かって走り出したのです。
「おい、何やってるんだ!逃げろ!!」
そう言う私たちに見向きもせず、
Cは「うわーっ!」と叫び声を上げながら走っています。正直私たちにCをかまっている余裕などありませんでした。
とにかく大急ぎで私たちは自分たちの部屋に戻りました。
各々が自らの身体を抱きかかえるようにし、
息を整え、震えを沈めようとしていました。
しばらく時間が過ぎましたが、Cはまだ帰って来ません。
幾分落ち着きを取り戻していた私たちは、さすがにCの事が心配になり、
誰が言うでもなく、先程の場所に戻ってみようということになりました。
護身用の武器を持って。私たちは一団となって、恐る恐る現場の方に向かいました。
ところがその場所の方には全く人影が見えません。
不審に思った私たちは駆け出すようにその場所に行きましたが
やはり誰もいません。もちろんCもです。
辺りを調べてみましたが、やはり見つかりません。
困り果てた私たちは仕方なく教師に事情を話すため、
教師の部屋に向かうことにしました。
教師に一部始終を話しました。
ところが普段から素行が悪かった私たちの話など信用してくれるわけがありません。
埒があかないと思った私たちはとりあえず部屋に戻り、
Cの帰りを待ちました。
当然眠る者など誰もいません。
何時間経ったでしょうか。私たちはうとうとしていたようです。
その声で、私たちは目を覚ましました。「おい!起きろ!!」
教師の声が私たちをたたき起こしました。
教師の顔を見た瞬間、私は最悪を予想しました。
そして的中したのでした・・・。
朝、釣り人が、Cの死体を発見したそうです。
Cは溺死ということでした。
ただ不審なのは、水の浅い場所で死んでいたことでした。
泳いで溺れて流されたわけではなく、足を砂浜の方に向け、
顔を沈めてその場所で死んでいたとしか思えないということなのです。
誰かに頭を抑えられて死んだように・・・・。それから、私たちは各々違う進路を進みました。
Aは大阪Bは東京に就職、私は京都の大学に進学しました。
卒業から1年半ほど経った夏、ふたつめの不幸が訪れました。
Bが亡くなったのです。
海水浴に出かけ、泳いでいる時に波に飲まれて水死したということでした。
Bの葬式の後、Aと私は、
BとCの死を偶然で、結びつきのないものだと考えるようにしようと、
話し合いましたが、各々内心怯えきっていました。
それからは何もない日々が過ぎ、BとCの死も心の隅に追いやっていました。
卒業から5年経っていました。
Aは結婚し、女の子を一人もうけていました。
私は単位の関係で大学にまだいなくてはならず、学生生活を楽しんでいました。
そんなある日、私の家の電話が鳴りました。
それは聞き覚えのない男性の声でした。
そして驚くべき事を耳にしました。
「Aの妻の父です。A君が海で溺れて亡くなりました・・・」Aは家族で、海水浴に行きました。
そこで、ボートに乗っていたのですが、
2歳になる娘さんが何かに呼ばれるように
海に転落したのです。そしてそれを助けるためにAが海に飛び込んだのですが、
娘さんが暴れるので思うようにいかなかったようです。
カナヅチの奥さんが周りに必死に助けを呼んだそうですが、
助けは間に合わず、Aと娘さんは亡くなったそうです。
奥さんもそのことが原因で精神を病んでしまわれました。
あれから5年私の身にはまだ何も起きていません。
ただ、2歳になった娘の寝顔を見ると今でも思い出します。「私の赤ちゃんを返せ!!私の赤ちゃんを返せ!!」
赤ちゃんを返せ
入ってはいけない部屋
俺んちは田舎で、子供の頃から絶対入るなと言われていた部屋があった。
入るなと言われれば入りたくなるのが人情ってもんで、俺は中学生の頃こっそり入ってみた。
何て事は無い、普通の部屋だった。
変な雰囲気もないし、窓からはさんさんと日光も入ってきて、何も怖くない。
なんだ、ただ単に部屋を散らかされるのが嫌であんな事言ってたのか、と思い拍子抜け。
退屈ということもあって、その場で眠ってしまった。
それでも金縛りにも全然あわないし、数時間昼寝して起きた。
寝てるときも起きてるときも怪奇現象一切無し。やっぱり全然怖くない。
入るなと言われてた部屋だから、怖いのを期待してたのに・・・部屋を出るときに、何気なく部屋にあったタンスの引き出しを開けたら、
和風の人形(雛人形を小さくしたような感じ)が一体だけ入ってた。
人形が入っている引き出しはそれだけで、他の引き出しには普通に着物とかが入ってた。
こえぇええと思った。
後になって(人形の話とかはせずに)ばあちゃんに聞いてみたら、
なんでもあの部屋は親父の妹さん、つまり俺から見ると叔母さんに当たる人の部屋だったらしい。
タンスの中の物も全て叔母さんの物。
といっても、もう当時からも30何年も前の話。
家を今の状態に建て替えたのは、両親が結婚してすぐのことで、
将来子供が(まあ俺のことなんだが)出来たときのために、二世帯住宅化したわけだ。
で、その時に、少し庭を潰して増築したのがまずかったらしい。
その増築したところに建っているのが『入ってはいけない部屋』。
つまり叔母さんの部屋だったんだが、どうも家を新しくしてから叔母さんの様子がおかしくなった。
まず最初は、部屋で寝たくないと言うようになったらしい。
叔母さんの話によると、新しい部屋で寝るようになってから、
どんなに熟睡していても、夜中の3時になると決まって目が覚めるようになったらしい。
そして、目を開けると消したはずの電気が点いてて、枕元におかっぱの女の子が座って居るんだって。
そして、不思議なことに、煌々と点いた灯りの下で、女の子の顔だけが真っ黒になっていて見えない。
でも、何故か叔母さんには解ったらしい。笑ってるって。そんなことが1週間くらい続いた。
叔母さんは頭の良いしっかりした人で、最初はみんなに気味の悪い思いをさせたくない、と黙っていたんだけど、
もう限界と、じいちゃんに言ったらしいんだ。
だけどじいちゃんは、
「嫁にも行かんで家に住まわせて貰っているくせに、この大事な時期(親父とお袋のこと)にふざけたこと言うな。
出て行きたいなら出て行け」
と突っぱねた。
それから半月くらい経って、ばあちゃんふと叔母さんの話を思い出した。
近頃は叔母さん何も言わなくなったし、一日中妙に優しい顔でにこにこしていたから、
もう新しい家にも慣れて変な夢も見なくなったんだろう、くらいに考えて、叔母さんに聞いてみたんだ。
そしたら叔母さん、にこにこしたまま、
「ううん。でももう慣れたよ。
最初は一人だったんだけどね、どんどん増えていってる。
みんなでずっとあたしのこと見下ろしてるんだ」
そう言って「あはははは」と、
普段は物静かな人だったという叔母さんには、とうてい似つかわしくない笑い声を上げたらしい。
たぶん、叔母さんのその話が本当だったにせよ、夢や幻覚のたぐいだったにせよ、
この頃にはもう手遅れだったんだろう。
叔母さんの部屋の隣は、じいちゃんとばあちゃんの部屋だったんだが、
その日ばあちゃん、真夜中に隣から「ざっ、ざっ、ざっ、ざっ」って、穴を掘るみたいな音がして起こされた。
叔母さんの部屋に行ってみると、部屋の畳が引っぺがえされてる。
そして、むき出しになった床下で叔母さんがうずくまって、素手で一心不乱に穴を掘ってるんだよ。
「何やってるの!?」
ばあちゃん、さすがに娘が尋常じゃないことを察して怒鳴った。
でも、叔母さんはやめない。口許には笑みさえ浮かんでいたという。しばらくして「あった……」と言って、床下からはい出してきた叔母さんの手に握られていたのは、
土の中に埋まっていたとは思えないほど綺麗な『小さな日本人形』だった。
叔母さんはばあちゃんに人形を渡すと、そのまま笑顔で壁際まで歩いていき、
ごんっ、ごんっ、ごんっ、
何度も何度も自分の頭を壁にぶつけだした。
ごんっ、ごんっ、ごんっ、
「何やってるの××(叔母さんの名前)!」
ばあちゃんは慌てて止めようとしたけど、叔母さんはすごい力で払いのける。
「何やってるんだろう?本当だ。あたし、なんでこんなことやってるんだろう。
解らないわからないわからない……」
叔母さんの言葉はやがて、意味のない笑い声の混ざった奇声に変わっていった。
そして、ばあちゃんは聞いてしまったという。
叔母さんの笑い声に混じって、確かに子供の、しかも何人もの重なった笑い声を。
叔母さんはそのまま10分以上頭を壁にぶつけ続け、最期は突然直立し、そのまま後ろ向きに倒れ込んだ。
「おもちゃみたいだった」ってばあちゃんは言ってた。
起きてきたじいちゃんが救急車を呼んだが、駄目だったらしい。
延髄だの脳幹だの頭蓋骨だのが、ぐっだぐだだったとか。
話を聞いたお医者さんは信じられない様子だった。
「自分一人でここまでするのは不可能」とまで言われたらしい。
殺人の疑いまで持たれたとのこと。さすがにここまでになったらじいちゃんも無視できず、娘をみすみす死なせてしまった後悔もあって、
お寺さんに来て貰ったらしい。
住職さん、部屋に入った瞬間吐いたらしい。
何でも昔ここに、水子とか幼くして疫病で死んだ子供をまつるほこらがあって、
その上にこの部屋を作ってしまったから、ものすごい数の子供が溜まっているらしい。
「絶対この部屋を使っては駄目だ」と、住職さんにすごい剣幕で念を押された。
ばあちゃんが供養をお願いした例の人形は、
「持って帰りたくない。そんな物に中途半端なお祓いはかえって逆効果だ。
棄てるなり焼くなりしてしまいなさい」
と拒否られたらしい。で、そこからは怪談の定石。
ゴミに出したはずの人形が、いつの間にか部屋のタンスに戻ってたり、
燃やそうとしても全く火が点かず、飛んだ火の粉で親父が火傷したりと、
もう尋常じゃないことになって、
困りあぐねて最後は、とりあえず元の場所に埋め戻して、部屋は丸ごと使用禁止にしたって訳。
悲惨な話だから、経緯は俺に言わないでおいてくれたらしい。
「とりあえず、元の場所に戻したのが良かったのか、人形はそれっきり。また出てこないと良いけどねえ」
うん。ちゃんと出てきてたよ、おばあちゃん。
『入ってはいけない部屋』 – 怖い話まとめブログ

