<閲覧注意>本当にあった怖い話「宿直のバイト」「妙見山」「夜神楽」

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<閲覧注意>本当にあった怖い話「宿直のバイト」「妙見山」「夜神楽」についてまとめました。

宿直のバイト

数年前、大学生だった俺は先輩の紹介で小さな診療所で宿直のバイトをしていた。
業務は見回り一回と電話番。あとは何をしても自由という、夢のようなバイトだった。

診療所は三階建てで、一階に受付・待合室・診察室兼処置室、二階に事務室・会議室・炊事場、
三階に宿直室があった。宿直室は和室で,襖がドア代わり。階段はひとつ。
小さいとは言っても患者のカルテやなんかは扱ってるわけで、診療所はALS●Kで警備されていた。

宿直の大まかな流れは以下の通り。
夜9時に診療所に着き、裏玄関(表玄関は7時半には完全に施錠される)の外からALS●Kの警備モードを解除する。
入って見回りをして、三階の宿直室に入る。
宿直室にもALS●Kの管理パネルがあるので、入ったら再びALS●Kを警備モードにする。

警備のセンサーは一階、二階はほぼ隈なく網羅しているが、宿直室にはないため、宿直室内では自由に動ける。
管理パネルにはランプがついており、異常がないときは緑が点灯している。
センサーが何かを感知するとランプが赤く変わり、ALS●Kと責任者である所長に連絡がいく
ことになっている。ドアや窓が開けられると警報が鳴る。

部屋に着いて警備モードに切り替えれば、あとは電話がない限り何をしてもいい。
電話も、夜中にかかってくることなんて一年に一回あるかないかくらいだった。
だからいつもテレビ見たり勉強したり、好き勝手に過ごしていた。

ある日の夜。いつものように見回りをして部屋に入って警備モードをつけてまったりしてた。
ドラマを見て、コンビニで買ってきた弁当を食べて、本を読んで、肘を枕にうつらうつらしていた。
テレビはブロードキャスターが終わって、チューボーですよのフラッシュCMが入ったところだった。

何気なく目をやった管理パネルを見て、目を疑った。ランプが、赤い。
今まで、ランプが赤かったことなんて一度もない。
え?なんで?と思ってパネルを見てると、赤が消えて緑が点灯した。

まともに考えて、診療所の中に人がいるはずがない。
所長や医師が急用で来所するなら、まず裏玄関の外からALS●Kの警備を解除するはずだ。
また外部からの侵入者なら、窓なりドアなりが開いた瞬間に警報が鳴るはずだ。

故障だ。
俺はそう思うことにした。だいたい、もし本当に赤ランプがついたなら、所長とALS●Kに連絡がいって、
この宿直室に電話がかかってこないとおかしい。それがないということは、故障だということだ。

そう思いながらも、俺はパネルから目を離せずにいた。緑が心強く点灯している。
しかし次の瞬間、俺は再び凍りついた。また、赤が点灯した。
今度は消えない。誰かが、何かが、診療所内にいる。
俺は、わけのわからないものが次第にこの宿直室に向かっているような妄想に取りつかれた。

慌てて携帯を探して、所長に電話した。数コールで所長が出た。

所「どうした?」
俺「ランプが!赤ランプがついてます!」
所「本当か?こっちには何も連絡ないぞ」
俺「だけど、今もついてて、さっきはすぐ消えたんだけど、今回はずっとついてます!」
所「わかった。ALS●Kに確認するから、しばらく待機していてくれ。また連絡する」

所長の声を聞いて少し安心したが、相変わらず赤が点灯していて、恐怖心は拭い去れない。
2分ほどして、所長から折り返しの電話があった。

所「ALS●Kに確認したが、異常は報告されてないそうだ」
俺「そんな!だって現に赤ランプが点灯してるんですよ!どうしたらいいですか?」
所「わかった。故障なら故障で見てもらわなきゃいけないし、今から向かう。待ってろ」

何という頼りになる所長だ。俺は感激した。
赤ランプはそのままだが、特に物音が聞こえるとか気配を感じるということもないので、俺は少しずつ安心してきた。
赤ランプがついただけで所長呼び出してたら、バイトの意味ねえなwとか思って自嘲してた。

しばらくすると車の音が聞こえて、診療所の下を歩く足音が聞こえてきた。
三階の窓からは表玄関と裏玄関そのものは見えないが、表から裏に通じる壁際の道が見下ろせるようになっている。
見ると、電気を煌々とつけて所長が裏玄関に向かっている。
見えなくなるまで所長を目で追ってから数秒後、「ピーーーーーッ」という音とともにALS●Kの電源が落ちた。
所長が裏玄関の外から警備モードを解除したのだ。

俺は早く所長と合流したい一心で、襖を開けて廊下へ出た。廊下へ出た瞬間、俺は違和感を感じた。

生臭いのだ。何とも言えない、イヤな匂いがたちこめていた。
また恐怖が頭をもたげてきたが、さっき確かにこちらへ向かう所長を見たし、1階に所長が来てるのは間違いないので、
俺は廊下の電気をつけて、階段へ向かった。

診療所の階段は各階に踊り場があって、3階から見下ろすと1階の一番下まで見える構造になっている。
階段の上まで来て、1階を見降ろした。
1階はまだ電気がついておらず、俺がつけた3階の電気が1階をうす暗く照らし出している。
生臭さが強くなった。1階の電気のスイッチは裏玄関を入ってすぐのところにある。

所長は、なんで電気をつけない?早く電気をつけて、姿を見せてくれ!
さらに生臭くなった時、不意に一階の廊下の奥から音?声?が聞こえてきた。
それは無理やり文字化すれば、
「ん゛ん゛~ん゛~~う゛う゛う゛~゛ん゛」
という感じで、
唄とも、お経とも取れるような声だった。

ここに来て俺は確信した。1階にいるのは、所長じゃない。
頭が混乱して、全身から冷たい汗が噴き出してきた。しかし、1階から目が離せない。
生臭さがさらに強まり、「ん゛ん゛~ん゛~」という唄も大きくなってきた。
何かが、確実に階段の方へ向ってきている。

見たくない見たくない見たくない!!
頭は必死に逃げろと命令を出しているのに、体がまったく動かない。

ついに、ソイツが姿を現した。
身長は2メートル近くありそうで、全身肌色,というか白に近い。
毛がなく、手足が異常に長い、全身の関節を動かしながら,踊るようにゆっくりと動いている。

ソイツは「ん゛~ん゛~~う゛う゛~」と唄いながら階段の下まで来ると、上り始めた。
こっちへ来る!!逃げなきゃいけない!逃げなきゃいけない!と思うが、体が動かない。
ソイツが1階から2階への階段の半分くらいまで来たとき、宿直室に置いてあった俺の携帯が鳴った。
俺は「まずい!!」と思ったが遅かった。
ソイツは一瞬動きを止めた後、体中の関節を動かしてぐるんと全身をこちらに向けた。

まともに目が合った。濁った眼玉が目の中で動いているのがわかった。
ソイツは口を大きくゆがませて「ヒェ~~ヒェ~~~」と音を出した。
不気味に笑っているように見えた。
次の瞬間,ソイツはこっちを見たまま、すごい勢いで階段を上りはじめた!
俺は弾かれたように動けるようになった。とは言え逃げる場所などない。
俺はとにかく宿直室に飛び込んで襖を閉めて、押さえつけた。

しばらくすると階段の方から「ん゛~~ん゛~う゛~」という唄が聞こえてきて、生臭さが強烈になった。
来た!来た!来た!俺は泣きながら襖を押さえつける。頭がおかしくなりそうだった。

「ん゛~~ん゛~ん゛~~」もう、襖の向こう側までソイツは来ていた。

「ドンッ!」

襖の上の方に何かがぶつかった。俺は、ソイツのつるつるの頭が襖にぶつかっている様子がありありと頭に浮かんだ。

「ドンッ!」

今度は俺の腰のあたり。ソイツの膝だ。

「ややややめろーーー!!!!」

俺は思い切り叫んだ。泣き叫んだと言ってもいい。
すると、ピタリと衝撃がなくなった。「ん゛~ん゛~」という唄も聞こえなくなった。

俺は腰を落として、襖から目を離すことなく後ずさった。
後ろの壁まで後ずさると、俺は壁を頼りに立ち上がった。窓がある。
衝撃がやみ、唄も聞こえなくなったが、俺はソイツが襖の真後ろにいるのを確信していた。
生臭さは、先ほどよりもさらに強烈になっているのだ。

俺はソイツが、次の衝撃で襖をぶち破るつもりだということが、なぜかはっきりとわかった。
俺は襖をにらみつけながら、後ろ手で窓を開けた。

「バターーン!!」

襖が破られる音とほぼ同時に俺は窓から身を躍らせた。
窓から下へ落ちる瞬間部屋の方を見ると、俺の目と鼻の先に、ソイツの大きく歪んだ口があった。

気がついたときは、病院だった。
俺は両手足を骨折して、頭蓋骨にもひびが入って生死の境をさまよっていたらしい。
家族は大層喜んでくれたが、担当の看護師の態度がおかしいことに俺は気づいた。
なんというか、俺を怖がっているように見えた。

怪我が回復して転院(完全退院はもっと先)するとき、俺はその看護師に聞いた。
すると看護師は言った。

「だってあなた、怪我してうなされてる日が続いていたのに、
深夜になると、目を開けて、口を開けて、楽しそうに唄を歌うんだから。

『ん゛ん゛~ん゛~~う゛う゛う゛~ん゛』て」。
宿直のバイト

妙見山

ここは関西ではかなり有名な心霊スポットである
名は『妙見山』
彼と知り合ったのは高校3年生のことであった
当時、あるスーパーマーケットでバイトしてる時に出会った彼は霊感が強く「視える」そうであった
彼は一つ年上で、バイトでは私のほうが先輩だったのだが、仮に彼をO君としておく
O君はとても陽気な性格で、皆から信頼をおける人物だった
私もO君の人柄に惹かれ、いつしか先輩のような存在になっていた

ある日「よかったら飲みにいかへんか?」と誘われた
もちろん断る理由もなく、私は一つ返事で了解した
焼き鳥を食いつつ、楽しい話で盛りあがった所、O君はこう言った
「俺な、霊感があるねん」
それは噂で知っていたが、どれくらい信憑性があるかは定かではなかった
酔った勢いで私はO君にこう言った
私は「うわ、、、ほな、なんか怖い話してや~」
「ええで。実は俺の住んでるマンションやけどな、、、」
O君は話し出した

「俺が部屋で雑誌読んでてんや。夏やから暑いやろ?窓あけっぱなしでいてん」
「ほしたらなんか妙な気配がしてな、、、窓の外をみたんや、、、」
「ほんだら、生首がようさん窓の外を並んでこっち見とるねん。めっちゃビビったで!」
「思わず窓閉めてな、なんやねんあれ?って思ったわ。ほんで便所行きたくなってな、小便に行ってん」
「小便しとったら、イキナリ金縛りにあって天井から長い髪の女がいきなり落ちてきよるねん。」
「目があってなぁ~、何ビビらしとんねんって思ったわ!」
霊感がない私だが、これはおもしろい話をきいたと思った
これも彼の陽気な性格のおかげだろう、、、

「ほな、シメよか?」
O君はそう言って、お茶漬けを注文した
ひとしきり食べて会計はO君が支払ってくれた
「ご馳走様、、、」と言ったあと

「俺んちこうへんか?」と誘われた
家も近いことだし、私は即座にOKした
「連れ呼んでええか?」
連れとはO君の同級生で、私の部署の先輩のHさんであった
「ほな、行こか?」
私達は、O君のマンションでおち合せることになった
O君の住居で驚いたのが、あちこちに御札が貼ってあったこと、、、
曰く、O君の家族は皆「霊感体質」であった
O君は言う「あんま意味ないんやけどな、、、」

ほどなくしてHさんが来訪した
彼も霊感というものがなく、しかし「霊感」ってものは「うつる」らしい、、、
Hさんも奇妙な体験をしていたのであった
「Oの家に行くときの話やけど、、、」
ここでいわゆる、怪談話がはじまったのだ
酒を飲みつつ話に耳をかたむけた

「こいつ(O君)の家、向かうとき車で線路沿いの道を走っててん、、、(能●電鉄)」
「手前に駅があって、電車が止まってるのを見てんや。そいつを追い越して、ほんで次の踏み切りで、あ~踏切待ちかって思うてんや」
「でもな、遮断機は降りてないし、駅の方を見ても何もないねん」
「せやけど、駅待ちしてる電車追い超して踏み切り待ちしてるわけやろ?そんなハズはないねん!」
「あれは不思議やったわ、、、」
電車の幽霊か?
私はそれでも面白いと思った
しかし、話はこれでは終わらなかった、、、

誰かが言った
「妙見山行こか?」
そこは関西でも屈指の心霊スポットとして有名である
「行こ、行こ! おもろいやん!」
なんだかんだで、即座に話は決まった

駐車場で話し合いをしている所に、O君の弟が帰宅していた
実はO君というのは双子で、彼と同じく霊感が強いのだった
話をすると「俺も行きたい!行きたい!」とせがんだ
結局、車で4名『妙見山』に行くことになった
国道173号線をこえ、「一庫ダム(ここも有名な心霊スポット)」を渡り、いざ妙見山を目指し車はひた進んだ

山道を登りながら、O君は言う
「この山上の『野間トンネル』が怖いねん、、、」
「前な、来たことがあるねん。夜やけどトンネルをくぐろうとしたら天気もいいのに急に風が吹くねん」
さらにこう言う
「そん時な、まわりの森がざわめくねん、、、」
「トンネルの入り口に女が立ってたような気がしてん、、、あれは気のせいやったんかな?」
そんな雑談をしながら、私達は目的地へ向かっていた

うねった道を突き進み、とうとう頂上の野間トンネルに来た
ゆっくり速度を落としてトンネルに入る、、、
トンネル中央でO君が言った
「エンジン止めよか?」
ブルン、、、とエンジンが止まる
辺りはしーんとしてる
「なんもないなぁ~」
エンジンをかけ。トンネルをくぐった
トンネルを抜けたところに山茶屋がある
そこの駐車場に車を止めた

口々に言う
「何もなかったやん?」
その時、O君の弟が言った
「おる!うわ~気持ち悪~!!」
そこは更に頂上へめざす道であった
その道を気持ち悪いと彼は言う
「そうかな?」
正直、私は何も感じなかった
頂上というのは、大阪市内の夜景が遠くに見えて私的にはとても好きな場所だったから。
ただ、街灯もなく暗闇が覆っていることは多少、気味が悪かったことは確かだが、、、
自動販売機の缶コーヒーを飲みつつ、ゆったりしてる頃、、、
O君が言った「『首切り場』行こか?」

『首きり場』
この場所はあえて言わないでおく

これはすさまじく怖かった、、、

道なき道、けものみちをひたすら懐中電灯とジッポーライターの灯りだけを頼りに進んだ
進む所が見えない
周りは雑草が生い茂っていて、前を見ることも困難だった
やがて、、、舗装もされていない階段みたいな道を突き進んだ
O君の表情がちらりと光に照らされて見える、、、
人の恐怖した真っ青な顔ってこうなのか?
彼が言う
「首がたくさん見える、、、」
「アカン、ここ来るんやなかった、、、ヤバイわ、めっちゃ怖い、、」

Hさんも同様、あきらかに恐怖している!
もちろん弟も、、、
私ももちろん怖かった
しかし、そんなものは見えない
ただうっそうとした木々が見えるだけ、、、
少し広場的な場所にたどり着いた
O君が言った
「○○ちゃん(私の名前)見えないんか?」
はて?・・・よく目を凝らしてみる・・・
見える、、、

確かに見える!
見えるという感覚は正解ではない。
感じるのだ
それは空間から複数が確かに私達を見ている!
それも見ているだけじゃない
どう表現すればいいか?
『怨念』のような気配を感じる

それがジワジワと迫ってくる感じと言えばいいか、、、
恐怖としか言いようがなかった
「ヤバイ!帰ろう、、、」O君が言う
O君「みんな落ちついてな!」
とてもじゃないが、落ちつける雰囲気じゃなかった
帰りすがら何度もコケまくり、ヒザをすりむき、、、
皆、パニック状態、、、
命からがら?車に戻りました
そして帰路に着いた

「やっぱりあそこは行くべきじゃなかった」
これが正直な感想です
実はこのまま帰るのもシャクなので、帰りに無謀にも『野間トンネル』でいくつかの写真を撮りました
が、、、現像してみるとほとんどが真っ黒なネガでした、、、
これも霊のしわざなのか??

それは定かではない、、、

長々とすみませんでした、、、

霊感のない私でも明らかに、“何か”を感じとることができた体験です(今でも不思議ですが)

実はこの場所は「奇跡体験アンビリバボー」の心霊写真でも登場した土地です
「くびきり場」のことも触れてます

ここはむやみに行く場所ではありません

訪れたいのなら、「自己責任」で。

あしからず、、、
妙見山

夜神楽

高校3年の冬。
「ボード行こうぜ、車出すからさ」と梶が言って来た。
「何時?メンバー誰よ?」と聞くと
「クリスマス、俺とおまえと貴美」
ヤツの頭にコンパチ食らわせた。
「どアホ。二人で行って来い」
別に拗ねてる訳じゃないが、特別の日に、大切な人と一緒にいたいのが、女の子の気持ち。
それを察してやれない程、鈍くはない。
しかし、この年で、そう言う日に一緒に過ごせる相手が家族と言うのも、かなり侘しい。
気分転換に、金剛にある温泉“天狗の湯”へ出かけた。
金剛は、大阪南部で奈良・和歌山の県境にも程近く、山間には小さいが温泉場が幾つもある。
中でも一番鄙びているのが天狗の湯。バイクに乗り出してからは、遠出する程暇はないが、
少し走って気晴らししたい時によく行く所だ。満員なら日帰りでと思っていたが、折りよく
空きがあったので、泊まる事にした。

とっとと飯を済ませ、露天風呂で四肢を伸ばす。月明かりの下、2・3日前に降った雪が
梢に残り、それが風に吹かれてさらさら飛んで来る。この季節ならではの風情だ。
もう30分もすれば、夕飯後の休憩を終えた人たちで、ここもいっぱいになるだろう。
それまでの贅沢な一時だった。
ふと背後に人の足音がし、ちゃぽんと誰かが湯に入った音がした。
何気に振り返った俺の目に、ショートカットで卵形の小さな色白の顔と、ほっそりした首、
優しげな肩の線が目に入った。

じょ、女性?!混浴じゃなかったはずだが…
慌てて目を逸らした俺に、その人はくすりと笑って声を掛けて来た。
「僕は男です、ご心配なく」
「あ、失礼しました、済みません」再度振り返り、謝りながら相手の顔をよく見てみた。
少女にも見紛うような、とはよくある表現だが、目の前の彼が本当にそうだった。
「いえ、いいんです。僕、女顔なものだから、良く間違えられるんです」

「済みません」謝るしかなかった。
「夜神楽を見に来られたんですか?」と彼が聞いて来た。
「え?この辺でも夜神楽が見られるんですか?」
高千穂の夜神楽は有名で、そのうち行ってみたいと思っていたが、まさか金剛で夜神楽を
やっていようとは思わなかった。
「ええ、今夜近くの神社で、もう二時間もすれば始まりますよ」
「へえ、行ってみたいな」
「じゃあ、一緒に行きませんか」と言う彼の誘いを、ありがたく受ける事にした。
宿の人に、お使い物にしたいのでと断って、地酒の一升瓶を二本分けてもらい、玄関前で
待っていると、程なく現れた彼がそれを見て、目を丸くする。
「お供えですか、二本共」
「いや、昔、俺の祖父さんから、御神楽を見る時は必ず酒を二本持ってって、一本は神様に、
もう一本は神様を身に宿す舞い手さんに差し上げるもんだ、って聞かされてたので」
俺がそう答えると、彼はくすりと笑った。
「正解ですよ、それ」

雪の名残がまだそこかしこに残る道を、二人で並んで歩いた。吐く息が真っ白になる。
街灯は何もなく、辺りは真っ暗だったが、俺は夜目が利くから、多少の月明かりがあれば
十分だったし、彼は歩き慣れていると見えて、危なげもなく歩いている。
「御神楽はよく見に行くんですか」と彼が聞いて来た。
「いや、舞楽は何度か見ましたが、御神楽は、本物を見るのは今日が初めてです」
「へえ、珍しいな。普通の人は、舞楽なんかあまり見ないでしょう」
「家の近くに、四天王寺楽所があるんで、目にする機会が結構あって…」
「ああ、それで」
そんな話をしながらしばらく歩いていくと、向こうの方にぼんやりと、橙色がかった丸い
灯りが見えて来た。高さは、大人のひざ辺り。街灯にしてはえらく低い位置にある。
何んだろうと思いながら歩いて行くと、光の正体は、俺の胸程の背丈しかない小柄な巫女さんが
持っている、提灯の灯りだった。
俺たちの姿を認め、彼女はこちらにぺこりと頭を下げる。

「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」
彼女の後に続き、俺たちは木造の古い鳥居を潜った。
とたんに、なんだか闇の濃さが一段と深まったようで、提灯の灯り無しにはほぼ何も見えない。
嫌な気配は感じないが、ここまで深い闇の中と言うのは、全く体験した事がない。
その時、俺は彼の名も何も聞いておらず、自分もまた名乗っていない事に気が付いた。
彼も同じ事に気が付いたらしい。
「ああ、まだ名前も言ってませんでしたね。僕の名は加賀地三郎と言います」
一瞬躊躇ったが、俺は自分の名を相手に告げた。
「よろしく」
差し出された手は、なんだか心地よい冷たさだった。

やがて、行く手がほの明るく見えて来る。
闇トンネルのような参道を抜けると、いきなり世界が広がった。
それは境内に幾つも焚かれた篝火のせいで、辺りはかなり明るくなっていた。
御神楽の舞台は6畳程の広さで、社の正面、境内の真ん中に設えられている。
結構な数の見物人が来ており、そこにカメラの三脚が一つも据え付けられていないのが

不思議なくらいだった。
社務所へ酒を届けた後、拝殿に詣でていると、水色の袴を着けた男性が小走りに駆けて来て、
こちらに呼びかけた。
「三郎様、困った事になりました」言ってから、彼は俺に気が付いたようで、後の言葉を言い淀む。
「どうしました?言って下さい」
三郎さんに促され、彼は声を潜めながら「御兄様たちが怪我をされまして…」
「兄さんたちが怪我?」三郎さんは少し眉をひそめた。
「はい、ちょっと装束がもつれて、転倒したはずみに捻挫されまして…」
「わかりました。すぐ行きます。支度をしておいて下さい」
はい、と返事をして頭を下げ、袴姿の男性は向こうの方へまた小走りに駆けて行った。
こんな時に面倒をかけちゃいられない。どうぞ、行ってあげて下さい。そう言おうとした時だった。
三郎さんが真剣なまなざしを俺に向けて来た。
「…お願いがあります」

「はい?」(な、なんだ?)
「御神楽を舞って下さい」
誰が?俺が?え?なんて?幾つもの言葉が頭の中で飛び交い、思わず即答していた。「無理です」
「大丈夫。御神楽は知らなくても、舞楽を見た事があるのでしょう。それで十分です」
「そりゃ無茶だ。見るのと演るのは、大違いです」
「いいえ、あなたなら出来る」
どう言う訳だかわからないが、彼は断言した。

「兄たちが舞う事になっていた御神楽は、この神社縁の未婚の男性しか舞えないんです。僕は
ここの三男だから問題ないとして、今から僕の知り合いを呼んでも間に合わない。あなたには
申し訳ないけれど、ここまで来て頂いたのも何かのご縁だと思います」
彼は必死だった。
正直、どうするか散々迷った。
「頼みます、僕と一緒に舞って下さい」
彼の懸命な言葉と、ひたむきな目に負けた。
「…俺はド素人ですよ」

「ありがとう!」
それから、彼の後について行き、別棟の奥の部屋まで通ると、彼の祖父、両親、湿布の匂いがする
二人の兄と、何人かの人々が何やら話し合っているところだった。
そこで、彼がきっぱりと言い切った。
「彼に御神楽を舞ってもらいます」
とたんに人々の目が点になる。当然だ。御家の御神楽に、どこの馬の骨とも知れない者をいきなり
出演させると言うのだから。
しばらく沈黙があり、それを破ったのは、彼の祖父だった。
「…それでいいんだな」
「はい」力強い応え。
そこから物事はフルスピードで展開し始めた。
俺たちが舞う事になった演目は『おろち』。スサノオノミコトのヤマタノオロチ退治の話だ。
俺がスサノオで、彼がオロチを演る。
時間が無いので、ざっと動き方を教わり、衣装を身に着ける。普通は御面も付けるが、慣れていないと

視界が確保出来ないので、今回はパス。
それから何とか通し稽古をつけてもらって、いよいよ本番と相成った。
目立たない場所から表へ出る。
篠笛や太鼓など、楽の音がしている事に、今の今まで気付いていなかった。
よほど緊張していたんだな。我ながら可笑しくなる。

演し物は既に山神祭、国譲りが終わり、茅の輪に入っていた。
とりあえず、舞台脇の幔幕の後ろに控える。
本来なら、一つの演目が終わると、少し間をおいて次の演目に移るものだが、俺たち二人の参加は
予定外だったため、御神楽を舞う前に受けておくべきお祓いを受けていない。
そこで、今回は変則的に、舞台に上がる直前にお祓いを受ける事になった。
被り物を付けぬ俺たちが、拝殿の階を上がって行くと、観衆の間から小さなざわめきが起こった。
彼の祖父が、張りの有る声で朗々と祝詞を上げる。
どうぞ、つつがなくこの大役を努められますように。ただ、それだけを祈った。
さっき参道を案内してくれた巫女さんと、もう一人、同じぐらい小柄な巫女さんが、俺たちの前に
盃に入った御神酒を運んで来る。

普段は喉につかえて飲めない日本酒が、この時は何故か素直に腹に納まった。
一礼して神前を下がり、左右の脇で、俺は烏帽子を、彼はオロチの被り物を付けてもらう。
こちらの用意が出来、あちらを見ると、彼の目が(行きますか?)と問う。
俺たちは小さく頷き合い、ほぼ同時に立ち上がった。
二人して拝殿から姿を現すと、観衆が再びざわめく。
真正面を向いたまま、階段をゆっくり下りた。一足下ろす毎に、さっき腹に収めた御神酒が、暖かな
力となって全身に広がって行くのがわかる。
不安はもう無い。演れる、と言う確信に近い気持ちがあった。
注連縄を張り巡らせた舞台の手前で、俺たちの気配を察し、楽が始まる。
この『おろち』には、テナヅチ・アシナヅチは何故か登場しない。

さっそく楽の音に合わせ、オロチが舞台へ上がった。
何かを求めるように所狭しと駆け巡り、尾に見立てた足で舞台の四方を強く、音がする程踏みたてる。
やがて、彼の勢いが収まり、中央にとぐろを巻いておさまると、俺の出番だ。
舞台に登場したスサノオを、むくりと頭をもたげたオロチが、角を振りたてながら威嚇。
負けじとスサノオも太刀を抜き放つ。
普段の俺ではない、別人の俺がその場にあった。

クライマックスも近づいた頃、俺の目前を右側から左側へ横切ったオロチの身体が、まだ半分以上
残った状態で、勢い良く回れ右をして反転しようとした。その時だった。
あまりにも勢いが付き過ぎて、オロチの尾が唸りを生じて俺に迫った。
(………!)
とっさに、太刀でそれを横薙ぎに薙ぎ払う。いい手応えがあった。って、え?!
どたりと落下した尾が、きれいに一尺ばかり、横一文字に裂けている。

($¢£%#&*@§☆★………)
舞台の上と言う事をすっかり忘れ、しばし固まった。
オロチも動きを止め、舞台に横たわって動かない。
(うわっ!?)俺はすっかり素に戻り、青ざめていた。
…タン!
突然、太鼓の音に合わせるように、オロチの身体が上下に跳ねた。尾の裂け目が少し広がる。
…タン!
ややあって、また太鼓が鳴り、オロチが上下に跳ねる。裂け目は更に広がった。
繰り返すうちに、彼の白いふくらはぎが、なんとも扇情的に現れる。
ゆっくりゆっくり、腿、尻、腰と次第に顕わになって来る、衵一つの彼の身体。
それは、ちょうど蛇の脱皮を見るようで、俺は自分が演者である事も忘れ、完全にその様子に
見入ってしまった。

やがて、最後に彼が頭を大きく振りたてると、被り物がするりと外れる。
完全に身一つになった彼が、こちらを振り向いた。
はっとして、俺は自分がまだ舞台の上にいた事を思い出し、いつの間にか下げていた太刀を
取り直す。いざ、討たん。
しかし、彼の目線がそれをしまえと合図を寄越す。では、この先は?
そこへ、再び別人の俺が戻って来た。あたかも慣れ親しんだ所作のように、俺の身体は彼と共に
世界を作り、無事に舞台を努め終える事が出来た。

舞台から退がり、衣装を着けた部屋まで戻った時、まだ衵姿のままの彼が俺に抱き付いて来た。
「ありがとう。本当によく努めて下さいました。感謝します」
「や、でも、オロチ壊しちゃって、御神楽も無茶苦茶に…ごめんなさい。謝って済む事じゃ
ないんですけど、済みません」
ドキドキ・ビクビクしながらひたすら謝る俺に、彼は済まなそうな顔になり、
「いえ。あれは本来、ああ言う舞いなんです。舞い手の器量如何によって、上手く行かない事が

あって…あの、あなたも御神楽は初めてだと言ってたから、出来ないかも。そう思ってて…
だから、その、気にしなくていいんです」
はぁ?どう言う事だ?俺が教わったのは、あの横薙ぎが出来ない奴のための舞だったのか?
訳がわからなかったが、とにかく衣装を返し、風呂を使わせてもらった後で、彼に元来た道を
宿まで送られて帰って来た。
「今日は本当にありがとうございました」
「いえ、こっちこそ、お世話になりました」
彼は上着のポケットを探り、小さな箱を俺に差し出した。
「これは祖父から。お守りです」
俺は礼を述べ、ありがたく頂戴した。
「あなたでよかった、本当に。やっぱり………だな」
彼の言葉の最後の方が、なんだか聞き取れなかった。
「え、なんですか?」聞き返したが、彼は笑って手を振り、そのまま夜道を戻って行った。

翌朝、昨夜の道を辿ってみた。しばらく歩くと、見覚えのある木造の鳥居と、何となく覚えている
参道があって、そのまま進んで行くと、確かに神社があった。
しかし、社殿も境内もずっと小さく、とても昨日のような事は出来まい。
だが、まるきり夢ではない証拠に、彼の祖父がくれたお守り、それは鶉卵ぐらいの大きさで、
中央が青く周囲が白いメノウが、俺の胸ポケットに納まっていた。
ま、いっか。来年はちゃんと人間の女の子とデートしよう。そう心に決めた。
夜神楽

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2019年03月31日