大村智氏は有機化学者です。
これまでに450種以上の新規化合物を発見してきており、現在は北里大学特別栄誉教授をしています。
(画像はhttp://www.theguardian.com/science/2015/oct/05/william-c-campbell-satoshi-omura-and-youyou-tu-win-nobel-prize-in-medicineより引用)
北里大特別栄誉教授の大村智氏がノーベル医学・生理学賞を受賞
3氏の受賞内容について
大村智氏、およびWilliam C. Campbell氏は寄生虫によって引き起こされる感染症の治療法を発見したことによりノーベルノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
また、Youyou Tu氏はマラリアに対する新しい治療法の発見によりノーベル賞を受賞しました。
この3人の発見により、毎年数億人が発病する病気に対し有効な治療法を提供できるようになりました。
The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2015 was divided, one half jointly to William C. Campbell and Satoshi Ōmura “for their discoveries concerning a novel therapy against infections caused by roundworm parasites” and the other half to Youyou Tu “for her discoveries concerning a novel therapy against Malaria”.
The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2015
インタビューに対し「私はラッキーだ」
ノーベル医学生理学賞に決まった大村智さんは5日、ノーベル財団のインタビューに「ありがとう。驚きました。他に優れた研究者はたくさんいるが、私はラッキーだったのかもしれない。とても幸せな日です」と話した。また、テレビ局の取材に「私は微生物を研究してきたので、微生物にあげたらいいのではと思います」
【ノーベル賞】受賞の大村氏「賞は微生物にあげたい」「私はラッキーだ」 – 産経ニュース
大村智氏の偉業
大村氏は昭和50に静岡県内の土壌中で発見した細菌が作り出す物質から、寄生虫や昆虫に対して有効な抗生物質「エバーメクチン」を発見しました。その後米メルク社と共同研究により、エバーメクチンを改良し「イベルメクチン」の開発に成功することとなります。
イベルメクチンは線虫類やダニ、ウジなどの寄生虫に高い効果があり、動物用の薬として普及しましたが、人にも有効であると判明し、メルク社が商品化しました。
イベルメクチンは線虫が目に侵入して発生するオンコセルカ症(河川盲目症)や、フィラリアを病原体とし、足が大きく腫れるリンパ系フィラリア症(象皮症)の特効薬として普及し、大きな成果をあげています。
イベルメクチンは毎年2億人あまりに投与されています
イベルメクチンは毎年2億人あまりに投与されています。
世界保健機関(WHO)は、この薬のおかげで2020年代にはオンコセルカ症(河川盲目症)とリンパ系フィラリア症(象皮症)を撲滅できると見込んでいるそうです。
また、イベルメクチンは世界中で年間3億人以上の人々が感染しながらも治療法がなかった疥癬症や腸管糞線虫症としても有効であることがわかっています。
さらに、イベルメクチンは世界保健機関(WHO)を通して10億人以上に無償提供されています。
異色の経歴の持ち主でもあり、大学卒業後は高校教師をへて大学院へ
大村さんは山梨大学を卒業後、東京都立墨田工業高校の夜間部で教師となりました。
高校教師であった当時、この高校の生徒が昼間働き、夜に勉強しにくる熱心な姿に感動したそうです。
試験監督で教室を見回っているとき、ある生徒の手が目にとまった。仕事で使った油を手に付けたまま、一生懸命、答案を書いている。わが身を振り返り「自分は大学まで出してもらった。それなのになぜ、あまり勉強しなかったのか」。この経験をきっかけに「もう一度勉強し直して、学問をしよう」と決心した。
【ノーベル賞受賞】元高校教師、スキーで国体出場も 学んだ「人まねをしないことの大切さ」…有言実行の大村流人生(4/6ページ) – 産経ニュース
その後東京理科大大学院修士課程に入学し、昼間は大学で実験を行い、夜は教師として生徒に授業をするという大変忙しい生活を送ったそうです。
「つらいとは思わなかったけれど、睡眠は足りなかった。それでも充実した生活だった」。東大に合格して上京してきた弟の面倒をみるため、私立大の非常勤講師のアルバイトもした。
【ノーベル賞受賞】元高校教師、スキーで国体出場も 学んだ「人まねをしないことの大切さ」…有言実行の大村流人生(6/6ページ) – 産経ニュース
おまけ
リンク先にあるpdfファイルでは大村智氏と、千里ライフサイエンス振興財団の岸本理事長との対談を見ることができます。