トルコの炭鉱事故後、いろいろな写真が回ってきている。その中の一枚。
Turkey Observed@TurkeyObserved
https://matome.naver.jp/odai/2140022038785852801/2140022440690573103
5月に、イタリアで、雪?
……というわけでGoogle画像検索。
このツイートの写真の画像のURL:
https://pbs.twimg.com/media/BnrxA69IAAAo6au.jpg
これをGoogleに投げて画像検索します。そうすると……
https://matome.naver.jp/odai/2140022038785852801/2140022440690573403
と表示されます。私はハングルは読めないのでまったく意味はわかりませんが、韓国で話題になった写真だということはわかります。
この画像を含むサイトのところでは、日本語ではヘイトスピーチをメインとして含むと判断するのが妥当な言葉遣いのサイトが上のほうに表示されていますが、そういうところは見るとこっちが病気になるので無視します。
するとハングルのサイトがほとんどなのですが(2013年5月にはすでに画像が存在)、1件、私がよく見ているサイトがありました。「らばQ」さんです。
2013年06月05日 12:05
「らばQ」さんは英語圏の掲示板などで話題になった写真や映像を紹介する「おもしろい話題」系の情報サイト。このページは、Redditをソースに、イタリアのガテン系デモがかっこいい、という話題を紹介しています。
「炭鉱」、関係ないですね。
「らばQ」さんのソースとなっているRedditはこちら。日時は「11ヶ月前」としかわかりません。大雑把に、2013年6月ということですよね。
雪があるのだから冬から春の写真だろうと思うのですが、その点はもっとつっこんで調べない限りは確認できず(2013年は欧州の春は異常低温で、変な時期に雪が降ったりしていたことは記憶しています)、ここでは「2014年5月の写真ではない」ということを確認するという目的には達したので、とりあえず先に行くことにします。
いずれにせよ、この写真は、「2014年5月のトルコの炭鉱事故のあとに撮影された写真」ではなく、「2013年6月には既に撮影されてネットにアップされていた写真」です。
よって、本ページ冒頭の@TurkeyObservedのツイートは誤情報です。というより、かなり明確に「デマ」です(トルコ政府非難が目的)。
@TurkeyObservedが自分から「デマ」をまいているのか、「デマ」をつかまされたり拾わされたりしたのかはわかりません。
いずれにせよ、あんなにひどい事故が起きて、みんなが非常に感情的になっているときには、いちいち画像を確認したり検証したりしてからRTする、などという行動が取られると期待することは、できません。人間はそのときの感情でものを言うし、書くし、Twitterのようなメディアはそういった「個人の感情」を個人が書く場です。
誰が何のためにばら撒いた誤情報なのかは私にはわかりませんが、そういう人間の習性を利用するような形で、こういう「一見もっともらしい嘘」をまいて、何らかのアジェンダ(この場合は、政府への怒りを掻き立てること)を推進するのは、実に卑劣な行為といわざるを得ません。
私がTwitterで見ていた範囲ではっきり覚えている類似例は、シリア内戦でありました。内戦になってまだそれほど時間が経過していないころに、「アサド軍が町を包囲しているので、病院の電源・サプライが切れて、新生児棟が悲惨なことになっている」という文字情報とともに、劣悪な医療状態を示す写真が回ってきていました。しかしその写真は、数年前にエジプトで撮影されたものだということがネット上の有志によって突き止められました。「アサド軍が町を包囲していた」のは本当だったのですが、こういう写真がばらまかれたことで信用は失われました。
ほかにも「パレスチナのヨルダン川西岸地区で、家業の手伝いで、家畜を解体したあとの血を掃除する子供」の写真が、「シリアでアサド軍に殺された兄弟の血を掃除する子供」として出回ったこともありました。
今回のこの「一面のヘルメット」も、これらと同様の「画像デマ」です。
nofrills@nofrills
よってこの2つのアカウントに、疑問点をはっきりと提示してみました。「本当に2014年5月の撮影なのか? 雪の小さな塊があるが?」ということと、「ヴァチカンなのか?」
(元の写真はイタリアっぽくは見えますが、どう見てもヴァチカンではありません)
nofrills@nofrills
この「イタリアでのデモ」では、これとは別に何枚もの写真が撮影されていることが、画像検索で確認できます。それらも使われているかもしれません。
そもそも「イタリアに今、炭鉱があるのかどうか」というのも疑問ですが、さくっとググってみたところ、2012年にサルディーニャの炭鉱閉鎖が持ち上がり、労働者が抗議をして、その結果、閉鎖は免れた、ということがあったということが確認できました。
http://globalvoicesonline.org/2012/09/18/italy-workers-occupy-sardinian-coal-mine/
http://www.miningaustralia.com.au/news/italian-miners-win-coal-mine-occupation-battle
これがイタリアの最後の炭鉱だったそうです。
http://www.ibtimes.com/sardinian-workers-occupy-italy%E2%80%99s-last-coal-mine-demand-government-funds-759161
一見、すばらしい美談ですが、「トルコ政府」を非難しているのが気になります。それに……