まずはじめに–双極性障害とは?
厚生労働省による双極性障害(躁うつ病)に関する説明です。症状、治療法、研究状況などがコンパクトにまとめられています。うつ病がなかなか治らない方など、双極性障害がどのような疾患なのか、まず知りたい方におすすめします。
抗うつ薬について
双極性障害なのにうつ病と診断されて抗うつ薬を処方され、症状が悪化する場合が報告されています。
うつで長期間通院して、複数の抗うつ薬を飲んでいるのによくならない、怒りなどの衝動が止められないようなことがあるようです。
まだはっきりしたことはわからないのですが、双極性障害の方が抗うつ薬を飲むと、アクティベーションシンドロームと呼ばれる、かえって焦燥感などが強まって悪化してしまう状態が起きやすいのではないか、と疑われています。
双極性障害(躁うつ病)|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省
抗うつ薬が有効な病態では躁転率も高いという、抗うつ薬の諸刃の剣様の性質が浮き彫りになった。
双極性うつ病と抗うつ薬(鈴木・小山 臨床精神医学40(7))
抗うつ薬を服用していた患者の自己報告によると、服用開始から12週以内に44%で躁転の既往があり、(以下略)
NIMH–STEP-BD研究が明らかにした双極性障害の事実と今後の課題(中島他 臨床精神医学40(3))
(まとめ者注:双極性障害のうつ病相に対する抗うつ薬の使用に賛成の意見、反対意見の双方に)共通しているのは、①躁転のリスクはある、②抗うつ薬を使用する場合であっても気分安定薬を併用するのが妥当である、③症例によっては抗うつ薬の中止が困難な場合があるということであろう。
双極性うつ病と抗うつ薬(鈴木・小山 臨床精神医学40(7))
わが国の一般人口あるいは精神科医療機関における抗うつ薬の単剤処方率は約70-80%で米国、韓国と同様であった。
平成22年度 厚生労働科学研究費補助金 「向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究」
反対に考えると抗うつ薬が、約20-30%は複数同時に処方されていることになります。
安易な併用療法の適応には慎重を期すべきである。
NIMH–STEP-BD研究が明らかにした双極性障害の事実と今後の課題(中島他 臨床精神医学40(3))
STEP-BD研究は、躁症状を伴う双極性うつ病や急速交代型の症例では抗うつ薬の使用を控えるべきことを示唆している。
双極性うつ病と抗うつ薬(鈴木・小山 臨床精神医学40(7))
(抄録)双極性うつ病に対する抗うつ薬の使用に関しては(中略)今までのところ、抗うつ薬使用のリスクもベネフィットも強調できない結果となっている。
双極性うつ病と抗うつ薬(鈴木・小山 臨床精神医学40(7))
しかし特に、以下の三環系、四環系抗うつ薬、SSRI、SNRIに関しては注意が必要なようです。
特に留意が必要と思われる薬と副作用
「因果関係が否定できないと評価されたものを含め,因果関係を精査した副作用報告の多くが,
躁うつ病患者や統合失調症患者のうつ症状等の併存障害を有する状況において,抗うつ薬を処方されたことにより,興奮,攻撃性,易刺激性等の症状を呈し,他害行為に至ったか,あるいはその併存障害の進展により他害行為が発生したことが疑われ,SSRI及びSNRIと同様の傾向が認められた。」とあります。
躁転率が低いと思われていた三環系以外の抗うつ薬についてもsubthreshold(まとめ者注:閾下)の軽躁症状に注意が必要ということになるだろう。
双極性うつ病と抗うつ薬(鈴木・小山 臨床精神医学40(7))
双極性うつ病に対する抗うつ薬追加の効果は明確ではなく積極的な使用を控えるべきであるが、(中略)さらなる検討が必要である。
NIMH–STEP-BD研究が明らかにした双極性障害の事実と今後の課題(中島他 臨床精神医学40(3))
「小児等を対象とする臨床試験の結果、有効性が確認できなかった」との記述があります。
この資料で厚生労働省が発表した6種類のお薬の中の1つ、ミルナシプランの詳細は以下。
「慎重投与」に躁うつ病の患者があげられています(原典は不明)。
米タイム誌2011年1 月号の「暴力を引き起こす処方薬トップ10」。同じく上記厚生労働省発表の6種の一つ、フルボキサミンマレイン酸塩(商品名ルボックスなど)が第8位にあります。
抗不安薬はちょっとならいいですよ、2週間とか1カ月はいいです。でも1年も2年も使って、だんだん量が増えてきて、種類がたくさんになってくると、必ず人格障害に育て上げられます。
中でもデパス(エチゾラム)です。(中略)デパスが横綱だけど、ベンゾジアゼピン類似の骨格を持つ抗不安薬はすべて同じ有害性があります。
第1回福岡精神医学研究会公演記録 双極性障害の診断と治療-臨床医の質問に答える-(神田橋・(神庭) 臨床精神医学34(4):471-486, 2005)
2005年の資料で若干古いのですが、神田橋先生の講演をそのまま記録したものです。神田橋先生の自説展開はかなり独特ですが、共感が持てる部分が多い内容でした。話し言葉ですので読みやすく、患者さん本人への接し方アドバイスなどもあり、参考になります。
ベンゾジアゼピン系の処方薬、アルプラゾラムについての説明。
米国麻薬取締局の規制薬物一覧。アルプラゾラム(Alprazolam)は3ページ目に記載。
また、以下のように、抗うつ薬だけではなく気分安定化薬の副作用にも、重篤なものがあります。
気分安定化薬について
バルプロ酸とカルバマゼピンは、米国食品医薬品局が自殺関連行動を増加させると2008年に発表しているため、留意が必要である。
双極性障害と気分安定薬(尾鷲 臨床精神医学40(7))
また、リチウムとバルプロ酸の効果に関しては、以下のような報告があります。
双極Ⅰ型障害を対象としたBALANCEでは、リチウムとバルプロ酸、両者の併用群において、2年間の再発率がそれぞれ59%,69%,54%で、バルプロ酸単剤よりリチウム単剤もしくはリチウムとバルプロ酸の併用療法の有用性が示唆されている。
双極性障害と気分安定薬(尾鷲 臨床精神医学40(7))
もっとも効果があったリチウムとバルプロ酸の併用でも、半数以上の54%が再発しています。
これはⅠ型での結果ですが、Ⅰ型とⅡ型の治療方針は、どのように違うのでしょうか。
双極性障害の治療指針について
Ⅰ型とⅡ型を分けての指針はいまだ明確に打ち出されていないことが多い。双極Ⅱ型障害治療は、双極Ⅰ型に準じていることが多かった。しかし、双極Ⅰ型とⅡ型とは治療経過が異なることは、臨床家なら誰でも感じているところであろう。
双極性障害と気分安定薬(尾鷲 臨床精神医学40(7))
双極Ⅰ型とⅡ型に関して、まだそれぞれの治療法に関する方針が定まってはいないようです。
さいごに
このまとめに使用した論文の多くは、大学図書館で閲覧する事もできます。
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つたないまとめですが、最後までご覧くださり、ありがとうございました。


