アイルランドの「歴史の暗部」に翻弄された女性を描く映画『あなたを抱きしめる日まで』が公開に

tanakashun
3月15日から公開の映画『あなたを抱きしめる日まで』は、ヴェネツィア国際映画祭をはじめいくつもの賞を受賞し、米アカデミー賞でも5部門にノミネートされた映画です。
映画『あなたを抱きしめる日まで』(2013年)
原題:『Philomena』

イギリスでベストセラーとなったノンフィクションを原作に、50年前に生き別れた息子を探し続けた女性の物語を、「クィーン」のスティーブン・フリアーズ監督、名優ジュディ・デンチ主演で映画化。
あなたを抱きしめる日まで : 作品情報 – 映画.com

ヴェネチア国際映画祭脚本賞、トロント国際映画祭観客賞次点を受賞するなど、各国で熱い喝采を浴びた本作
映画『あなたを抱きしめる日まで』公式サイト

http://www.youtube.com/watch?v=Gh4HXGq5gd8

実話をもとにした物語

原作となったノンフィクション『The Lost Child of Philomena Lee』
2009年に出版され、イギリスでベストセラーに

1952年、アイルランド。18歳で未婚の母となったフィロメナは親から強制的に修道院に入れられ、3歳になった息子のアンソニーはアメリカに養子に出されてしまう。
あなたを抱きしめる日まで : 作品情報 – 映画.com

当時のアイルランドでは結婚前に妊娠してしまった場合、強制的に修道院(精神病院)に入れられ、生んだ子供と引き離されたそうです。

未婚の母として妊娠する頃のフィロミーナさん。

それから50年、イギリスで娘と暮らしながら常に手離した息子のことを案じ、ひそかにその消息を捜していたフィロミナ(ジュディ・デンチ)は、娘の知り合いのジャーナリスト、マーティン(スティーヴ・クーガン)と共にアメリカに旅出つが……。
あなたを抱きしめる日まで  解説・あらすじ- Yahoo!映画

厳格なカトリック教会があるアイルランドの問題

アイルランドは言わずと知れたカトリックの国で、ヨーロッパの西北の果てという地理的条件も重なり、厳格なローマ・カトリックが色濃く残る数少ない地域のひとつとなっています。
アイルランドからアメリカへ移民が流れていった主な理由とは?

カトリック教会が支配的だった当時のアイルランドでは婚外交渉した女性は罪を背負ったものとされ、表向けは修道院でも、実際には修道女が監督するランドリー(laundry=洗濯所)と呼ばれる施設へ送られました。
ナオコガイドのアイルランド日記 『フィロミーナ』に見るアイルランドのこと、いろいろ・・・

「人工中絶」の問題は現在もアメリカなどの国で大きな注目を集めるトピックですが、当時のアイルランドでは「婚外交渉」がバレただけで精神病院送りという扱いだったんですね。

「フィロミーナ(フェロメナ)」はカトリックの聖女で、この映画はカトリックの処女信仰を批判しているから、実に皮肉で深いタイトル
『あなたを抱きしめる日まで』を「たまむすび」で – ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記

当時の洗濯所を描いた映画『マグダレンの祈り』

そこで出産し、罪の代償という名目で数年間、奴隷的な労働を強いられていたのです。(罪を洗い流す、ということから洗濯所と呼ばれ、実際に洗濯がいちばん過酷な仕事だったようです)
ナオコガイドのアイルランド日記 『フィロミーナ』に見るアイルランドのこと、いろいろ・・・

レイプされた女の子や、未婚の母となった女の子、美しくて男性の興味をひきつける女の子が閉じ込められ、シスターたちからの身体的・精神的な虐待を受けながら、ひたすら洗濯
tnfuk [today’s news from uk+]: アイルランド共和国で、教会による児童虐待についての報告書が出た。

映画『マグダレンの祈り』

このあたりのショッキングな事情は、2002年に公開された別のノンフィクション映画『マグダレンの祈り(原題:The Magdalene Sisters)』を見てご存知の方も多いことでしょう。
ナオコガイドのアイルランド日記 『フィロミーナ』に見るアイルランドのこと、いろいろ・・・

最後の洗濯所は96年まで存在していたんで、実はそんなに前の歴史じゃない
THE MUSIC PLANT 日記: 映画「あなたを抱きしめる日まで」を見ました

つい最近まであったんですね….

映画『マグダレンの祈り』(2002年)
原案はジューン・ゴールディングによる同名の回想録であるノンフィクション作品。
この映画は、1996年までアイルランドに実在したマグダレン洗濯所(マグダレン精神病院)を舞台としている。
この施設は、当時のアイルランドで支配的だった厳格なカトリックの戒律に依拠した道徳観に基づき、婚外交渉した女性などを収容していた。原作者のジューン・ゴールディングは、かつて施設の助産婦をしていた経験があり、収容されていた女性たちの願いによる約束のために回想録を書き上げた。
(wikipediaより引用)

近年、カトリック教会で行われてきた「性的虐待」が明らかになってきている

2002年、アメリカのボストン大司教区の元神父が、35年以上にわたり青少年に性的虐待をしていた事実が発覚した。
カトリックの神父は少年が大好き!? 三大宗教と同性愛のイビツな関係 | ビジネスジャーナル

04年には、1950年から02年までにアメリカ・カトリック教会の神父4450人が1万1000件の性的虐待をした疑いが報じられ、その後、ヨーロッパでも同様の事例が次から次へと判明
カトリックの神父は少年が大好き!? 三大宗教と同性愛のイビツな関係 | ビジネスジャーナル

ヨーロッパでは1万人を超える子供たちが、彼らを守る立場にあるはずの神父たちに虐待され、レイプされた。
聖職者の手から子供たちを守れ | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

それでも信仰を失わない彼女が突きつける「信仰とは?」という問題

本作の根幹はカトリック教会の非人道を糾弾することではなく、実のところ我が子を想う母の愛情に涙することでもない。
映画『あなたを抱きしめる日まで』 – シネマトゥデイ

それは、喜びも悲しみも全てをありのままに受け入れ、他人を恨みも憎みもせず、一途に宗教を信じる主人公フィロミナの確固たる人生観だ。
映画『あなたを抱きしめる日まで』 – シネマトゥデイ

どれほど熱心なカトリック教徒として育っても、そのカトリック教会に自分の子を奪われたら普通信仰は失うと思うのですが……なかなか理解しがたいですね。

ラストのフィロミナの選択は、あまりに気高く、慈愛に満ちている。我々はここであらためて彼女の人間としての非凡さに気付き、襟を正す思いをするのだが、そのときはすでにフィロミナを聖人ではなく、愛おしい隣人のように感じているだろう。
あなたを抱きしめる日まで : 映画評論・批評 – 映画.com

映画公開をきっかけに”フィロミーナ・プロジェクト”が発足

フィロミーナ・リーさん

アイルランドにおけるこうした女子修道院での出来事は紛れもない事実であり、今なお6万人を超えるアイルランドカトリックの女性は、わが子の居場所がわからないままだという。
衝撃の実話を映画化した『あなたを抱きしめる日まで』がヴァチカンで異例の上映会が行われた理由とは? | ニュースウォーカー

ローマ法王と面会するフィロミーナさん

本作のモデルとなった現在80歳のフィロミナが、この映画公開を機に、捜索の依頼があった養子縁組の情報公開を推し進める“フィロミナ・プロジェクト”を設立。
今回こうした事実に応じる形で、ローマ法王がフィロミナをヴァチカン市国に招き、面会までされたのだとか。
衝撃の実話を映画化した『あなたを抱きしめる日まで』がヴァチカンで異例の上映会が行われた理由とは? | ニュースウォーカー

https://matome.naver.jp/odai/2139444511108998701
2014年03月14日