カワサキか・・
ホンダのバイクを
ヤマハに持ち込む:まぁ、ホンダも直せなくはないけどね
スズキに持ち込む:ツマラン、どこかに細工してやろうか・・・
カワサキに持ち込む:出てけゴルァァァァァァァァァァァ!!
ヤマハのバイクを
ホンダに持ち込む:おぅ、ヤマハさんのバイクか
スズキに持ち込む:打倒ホンダの僚友だ、バッチリ直してやるぜ
カワサキに持ち込む:けっ、優等生バイクか
スズキのバイクを
ホンダに持ち込む:けっこう癖のある作りしてんだよね
ヤマハに持ち込む:スズキさんか・・・部品取り寄せとか大丈夫かな
カワサキに持ち込む:スズキか、最近小奇麗にまとまっちまいやがって・・・
カワサキのバイクを
ホンダに持ち込む:カワサキか・・・
ヤマハに持ち込む:カワサキか・・・
スズキに持ち込む:カワサキか・・・
カワサキに持ち込む:カワサキか・・・
マグナ50と少年
30年もバイク屋やってると、色んな客と出会うんだが
今でも印象に残ってるのは、マグナ50を買った高校生の少年だね
あれはマグナ50が発売された頃だったかな
うちの店にもマグナ50を置いたんだよ
ハーレーやリッターマシンに乗ってるような大人たちは
見向きもしなかったんだけど、その少年だけは毎日、店の前からマグナ50を見てたんだ
雨の日も雷の日も、熱心に通ってるもんだから、声をかけたんだ
「いらっしゃい。マグナ50が気に入ったのかい?」
少年は一瞬驚いたような顔をしたけど、照れくさそうに笑って言った
「はい。マグナ50って原付なのにかっこいいから」
「跨ってみるかい?」
「いいんですか?」
「もちろんさ」
マグナ50に跨った少年の手は微かに震えていて
「うわぁ…かっこいい!すげぇ~!」
って感動してやがんだよ。その姿を見てると、俺も初めてバイクに跨ったときはこうだったな…
なんて思い出しちゃってさ(笑)
「バイトして買います!」
そう俺に宣言してからも、少年は毎日マグナ50を見に来てたな
バイトの帰りだとかで、閉店10分前に来るのが日課になってた
そんな少年に心打たれたのかな、ある日、マグナ50を店の前から移動させたんだ
その日も、少年はバイト帰りにマグナ50を見に来たんだけど
昨日まであった場所にないもんだから、えらくオロオロしてた。そんな少年に声をかけた
「こっちに来な」
店の奥に案内すると、そこにあるマグナ50の姿を見て、少年はホッとした様子だった
「こいつはお前に売るって決めたぜ
だからお前が迎えに来るまでは、売らずに置いておくからな」
『売約済!跨らないでね!』の貼り紙を見た少年の目はウルウルしてたよ
それから半年後くらいかな
ついに少年が、マグナ50を手に入れる日が来たんだ
いざエンジンをかけて、跨ろうってときに、少年が泣いちまってさ
そのとき店にいた常連たちも、みんな立ち上がって拍手してた
マグナ50に乗って帰っていく少年の背中は、ちょっと大きくなった感じがしたよ
それから1ヵ月後くらいだったかな
少年がマグナ50に乗って、店に来たんだ
「愛車の調子はどうだい?今日はオイル交換か?」
そう尋ねる俺に、少年は申し訳なさそうにこう言ったよ
「マグナ50って糞バイクですね…。買い取ってほしいんですけど、査定してもらえますか?」
マグナキッド
日曜の朝、都内某所
バイク愛好家たちが集まる小さなサイトのツーリングオフが開かれようとしていた
集合時間10分前、既に来ているメンバーは7人
その輪の中へ、俺は愛車のマグナ50で乗り付けた
「おはよう!マグナキッドです!今日はよろしく!」
元気よく自己紹介する
「…あ、おはようございます」
「マグナキッドさんって高校生なんですよね?若いですね…」
なぜか皆の視線が泳いでいる
「遅くなってスイマセ~ン!」
ZZR1400に乗ったオッサンが大きな声を出しながらやってきた
「幹事のカワサキオヤジです。今日は皆さんよろしくお願いします」
この人が今回のオフの主催者であり、サイトの管理人でもあるカワサキオヤジさんだ
「あ、どうも!マグナキッドっす。よろしく」
俺が挨拶をすると、カワサキオヤジは眉間にシワをよせて、俺とマグナをジロジロと見てきた
「え~っと…マグナキッド君だっけ?君さぁ、今日どこに行くか知ってる?」
「え…?富士山を見ながらそば食うオフっすよね?」
「うん。で、君のバイク…それ原付だよね?」
何が言いたいのかわからない。愛車を原付呼ばわりされてイラっときた俺は言った 「何が言いたいんスか?」
「高速道路に乗るんだけど…原付じゃ乗れないよね?」
「…大丈夫っスよ!ブン回せば皆さんに迷惑かけないくらいのスピードは出ますし」
爆笑の渦が起こった。そしてカワサキオヤジは苦笑いしながら言った
「原付は高速道路を走っちゃダメなんだよ。それにそのスピードメーター見てごらん」
視線を落とす。そこには60km/hが限界のメーターがあった
「高速道路は80~100km/hくらいで流れてるからね。君の原付じゃついて来れないよ(苦笑」
俺は泣きながら家に帰ると、そのまま枕を濡らして眠ってしまった
目を覚ますと午後10時、パソコンの電源を入れてあのサイトを覗いてみる
そこの掲示板には、今日のツーリングオフを楽しそうに振り返るメンバーたちの書き込みがあった
俺は偽ハンドルネームを使って『カワサキオヤジ臭ぇんだよ!死ね!』と書き込む。
すぐに管理人からのレスがあった
『マグナ君だね。当サイトのルール通り、君をアク禁にします』
「壊れる」の定義
ホンダ:バッテリー系統の調子が悪い
ヤマハ:オイルが漏れる
スズキ:自分で直せない
カワサキ:原型を留めない状態
耐久性
ホンダ…そもそも壊れない
ヤマハ…壊れても直せば走る
スズキ…壊れてても走る
カワサキ…最初から壊れてる
カワサキ病
◎ガチャガチャ音がないと物足りない
◎ホンダの四発なんて「エンジンかかってんのか?やる気あんのか?このオカマ野郎!あぁん?」と思ってしまう
◎非の打ち所のない綺麗に揃ったアイドリング音を聞くと吐き気がする
◎気がつくとバイクをバラし始めてることがある
◎オイルが滲んでいないと「入っているのか?」と心配になる
◎冷却水は減って当たり前だ
◎カムチェーンやタペット音はノイズじゃなく賛美歌だ
◎どこでも単車をバラバラにできるほどの工具を搭載するのはマナーだ
◎家のそこらじゅうにバイクのパーツや工具が転がってないと落ち着かない
◎「Z」という文字が大好きだ
◎「W」という文字もかなり好きだ
◎洗車するとエンジンが不調(1気筒死ぬ)になる
◎昔は戦闘機を造っていたと誇らしげに語る
◎各ギアに隠れニュートラルが存在する。
◎カウルの裏側に塗り残しが有ると心が和む。
◎「K」という文字も当然好きだ。
◎ホンダに乗ると2週間以内に廃車にしてしまう。
◎やけに完成度の高いバイクを作るとなぜか欲しくなくなる。
スズ菌感染者
自覚症状が少ないのはスズ菌の特徴です。
自覚症状が出た場合すでに アヒャ か 神 です。
感染後の自覚症状発現までの期間は不定で潜伏期との見分けが難しく、さらに治療を困難にする。
症状に関して自覚症状が無いだけで発症後は、健常者からみるとすぐに判別がつきます。
ただし、すでに発症しているので、治療は困難で、患者もいうことを聞きません。
よくある症状で、「ちがう。俺は鈴木が好きなわけじゃない!!好きで乗ってるんじゃない!!違う!!」などと叫ぶことが多いです。
この状態でも、 自 覚 症 状 は あ り ま せ ん 。
【一般人】
ある意味で幸せ
「バイク?車の方が便利だろ?」
【要注意】
趣味にならないよう割り切れれば安心です
「通勤通学に原付でも使ってみるか」
【要観察】
感染の機会が多くなります。既に感染の可能性もあります
「よーし、二輪の免許とっちゃうぞー♪」
【軽度発症】
日常生活に支障はありません。悪化しないよう自己管理に努めてください
「今度買うのは(スズキ車)にするか」
【中度発症】
日常生活に支障が出始めます。
仕事や勉学、生活費を犠牲にしてまでのめりこむ事のないように
「いやっほー!!スズキ最高!!(*´д`*)ハァハァ」
【重度発症】
すでに人間としての限界を突破しています。
周囲に被害を与えかねないので、隔離が必要です。
「やる気!元気!スズキ!!グヘヘヘヘ」
4大メーカーの特徴
ホンダ :質
ヤマハ :実
カワサキ:剛
スズキ :変
置いてきた
ふと思い出した二年ほど前、
俺がコンビニから出ると俺のバイク(ハーレーのファットボーイ)にDQNなガキが張り付いて眺め回してた
「なにしてんだ」って言ったら、
「あ、スイマセン。バイク興味あるんで」って言ったきたから、リヤシートに載せて山道を走ってやった
凄く喜んでた。
見た目は金髪でアレだけど、中身は純粋なイイ奴だった
山の頂上付近に置いて帰ってきたけど、今アイツはどうしてるんだろう?
ヤマハの歴史
ヤマハの歴史
・最初は輸入ピアノの修理→楽器関係作る
・楽器やってた流れで電子楽器も作る→DSPも作る
・DSPを他に利用しようとして→ルータ作る
という流れで、楽器、電子機器、ネットワーク関係の製品を作るようになった。
じゃ、なんで発動機や家具とかも作ってるかというと、
・ピアノの修理で木工のノウハウが溜まる→家具を作る→住宅設備も作る
・戦時中に軍から「家具作ってるんだから木製のプロペラ作れるだろ」といわれて戦闘機のプロペラ作る→ついでにエンジンも作る
・エンジン作ったから→バイクも作る
・エンジン作ったから→船も作る→船体作るのにFRPを作る
・FRPを利用して→ウォータースライダー→ついでにプールも作る
・プールの水濁ったんで→浄水器作る
・失敗作の浄水器で藻が大繁殖→藻の養殖始める→バイオ事業化
バイクはローンで買うべき
お前が1年我慢している間に、俺たちは慣らしを終える。
お前が2年我慢している間に、俺たちは日本を1周している。
お前が3年我慢している間に、俺たちは無数の出会いと別れを繰り返している。
お前が4年我慢している間に、俺たちは気付くだろう『バイクとはなんぞや?』
お前が5年我慢している間に、俺たちは愛車に無数の傷が付き一心同体となっている。
お前が6年我慢している間に、俺はローンを終えている。
イヤッッホォォォオオゥオウ!
4大メーカーを女性に例えると
ホンダ→石原さとみ、長澤まさみ
ヤマハ→えびちゃん、山田優
カワサキ→神取忍、谷亮子
スズキ→小倉優子、山口もえ
4大メーカーを歌手に例えると
ホンダ:宇多田ヒカル
ヤマハ:浜崎あゆみ
カワサキ:中島ミカ
スズキ:しょこたん
カワサキのバイクと付き合う十戒
1:カワサキと気長に付き合ってください
2:カワサキを信じてください。それだけでオイル漏れは止まります
3:カワサキは作った人の思いが込められているのを忘れないでください
4:カワサキが言う事を聞かないのは理由はありません
5:カワサキにたくさん触れてください
6:カワサキを乱暴に扱わないでください
7:カワサキが古くなっても、仲良く大事にしてください
8:貴方には自転車もあるし、車もある
カワサキにだって航空機もあれば船舶もある 負けてません
9:カワサキが何年も元気に走れるように、
できるだけカワサキと会話してください
10:カワサキに別れを告げる時は、どうか覚えていてください
カワサキがずっとオイル漏れしていた事を
kwsk(カワサキ)
ある新参2ちゃんねらーがバイク板にやってきた。
新参「バイク初心者なんですが、かっこいいバイクってなにかありませんか?」
バイク板民「kwsk」
新参「すみません……説明が足りなかったようです。
バイク暦三ヶ月の者です。日曜など暇のあるときに近くを二、三時間
ツーリングしたいと思っています。オフロードは走らない予定です。
デザインがよく、なおかつ値段も手ごろなメーカーがいいです」
バイク板民「kwsk」
新参「最近女にモテたいと思ってバイクを始めたバイク暦三ヶ月の
東京都在住○○(24)という者です。日曜日や有給、盆休み中や会社をサボったときなど、
東京都周辺(具体的には都心から半径三十キロ以内)を二、三時間ツーリングし、
可愛いツーリストなどがいたらひっかけて一発やらせてもらおうかなどと思っています。
しかし当方高卒でしかも派遣労働者なので年収は少なく、予算もコツコツ貯めた300万円が限度です。
若い女がいない山中を走る予定はないのでオフロード仕様でなくても構いません。
女が一目見て惚れるくらいカッコよく、値段もお手ごろなバイクはありませんでしょうか?」
バイク板民「だからkwsk」
新参はついに怒り、捨て台詞を残してブラウザを閉じた。
ガキ共唖然。
さっきスーパーで買い物終えて外に出たら、駐輪場で厨房くらいのクソガキ3人組がバイクにまたがってんの。
ムカついたから思いっきりにらみつけてやったら、それに気づいたガキの一人が
ガキA「お、おい!おい!」
ガキB「あァ?何だよ?・・・あ!す、すんません・・・。」
とかマジびびりしてやんの
俺「いや、別に良いけど。カッコイイだろ?このバイク。でもあんまりそういう事すんなよ?」
ガキB「ハイ。すんません!」
と言いながら俺は横に置いてある自分の自転車に乗って帰った。
ガキ共唖然。
ニュートラルから1速に落とした時の音
信号待ちでちょうどバス亭の目の前止まったんだけど
7人くらい全員年寄だらけで、ニュートラルから1速にしたとき
ガコン!って音するじゃん?
その音にみんな(゜д゜)(゜д゜)(゜д゜)(゜д゜)(゜д゜)(゜д゜)(゜д゜)
ってこっちみて驚いてやんの「あんちゃんバイク壊れたで!」「ちょっとちょっと!」
2~3人くらい騒ぐから、ウィンクしながら親指たてて進んだら立ちごけした
マグナキッド続編
『うん。で、君のバイク…それ原付だよね?』
『高速道路に乗るんだけど…原付じゃ乗れないよね?』
『原付は高速道路を走っちゃダメなんだよ。それにそのスピードメーター見てごらん』
『高速道路は80~100km/hくらいで流れてるからね。君の原付じゃついて来れないよ(苦笑』
『マグナ君だね。当サイトのルール通り、君をアク禁にします』
・・・・・・・!!
「うぅ…夢か…」
俺はあれからほぼ毎晩のように、あの日の悪夢にうなされている
時計を見ると、午前0時をちょっと過ぎたころだった
冷たい水で顔を洗うと、ベッドに腰掛けてため息をつく
「俺のマグナ…50ccだけど…本当に遅いのか?」
夢に出てくるZZR1400に乗ったあのオヤジは、いつも俺のマグナ50をバカにしやがる
だがどうしても俺にはマグナ50が遅いバイクだとは思えなかった
ハーレーと並んでも負けない堂々としたスタイル
ホンダが生んだパワフルタフエンジン
ライダーの意志と共鳴する4速ミッション
こんな素晴らしいバイクが、どうして世の中に認められないのか?
本当に高速道路に乗れないくらい遅いのか?
そりゃZZR1400と比べれば、少しは遅いのかもしれないが…
「そうだ!」
頭の中にひとつの提案が浮かんだ 『マグナが速いってことを証明してやる!』
そう決めた俺は、着替えてヘルメットとキーを持つと 家族が起きないように静かに家を出た
相棒に跨ると、あの場所を目指して走り出す
マグナ50の実力を試す場所、俺とマグナ50の魂が一つの壁に挑戦する場所、高速道路へと…
ウインカーを点滅させ、インターチェンジへと進入していく
もちろん原付は高速道路に乗ってはいけないという法律を知らないわけじゃない
だけどこれは、俺とマグナ50の挑戦なんだ
もう戻ることなんかできない
発券機から券を抜き取ると、スロットルを全開にして走り出す
「行くぜ!マグナ50の実力を証明してやる!」
初めて走る高速道路
だが親父の車で何度も来ているので、どういう場所かは理解している
メーターの針はまもなく60km/hを指そうとしている
しかしトラックや車に次々と追い越されていく
やっぱりマグナ50は遅いのか…いや、違う!まだ実力は発揮されていない
「まだだ!マグナ50はこんなもんじゃない!」
前傾姿勢になると、前方を走る軽自動車を睨みつける
行ける!追いつける!追い越せる!
ここからは一瞬が勝負の世界だ
右のミラーを見て、後方からの車がないことを確認する
右のウインカーを出す、そして目視 素早く車線を変更すると、3速に落としてエンジンのパワーを開放する
「行っけぇぇぇぇぇ!!!!!!」
再び4速!並んだ!そして抜いた!
マグナ50が軽自動車に勝利した瞬間だった
軽自動車の排気量は660ccある
CBR600RRよりも上だということだ
その軽自動車に勝ったということはつまり マグナ50は、CBR600RRよりも速いということになる
激しいバトルを終えた俺は この先2kmにあるサービスエリアの看板を見つける
「少し休もうかマグナ50…」
夜のサービスエリアは静寂に包まれていて 戦士が休息を取るには最適な場所だった
「俺たち勝ったんだぜ。お前も疲れただろ?ちょっと休もう」
マグナ50を二輪の駐車場に置くと 建物の中へと入り、食堂でうどんを注文する
さっきのバトルで、かなりエネルギーを消費したから栄養補給だ
あとでマグナ50にも給油してやろう
今日は頑張ってくれたから、特別にハイオクを入れてやろうかな
そんなことを考えていると、食堂のおばちゃんから声がかかる
「3番のうどんでお待ちのお客さま~」
熱々のうどんを頬張っていると、誰かが俺の肩を叩いた
振り返ると警察官が二人、俺を見下して立っていた
「あっちに停めてある原付は君のか?」
「…原付というか、マグナ50っスけど…」
「ちょっと来い!」
食べかけのうどんを残し、俺はパトカーのほうへと連行された
午前6時、連絡を受けた親父が警察署まで迎えに来た
そして殴られた <終>
マグナキッド ハーレー編
ハーレーに跨って信号が青に変わるのを待つ俺は恥ずかしい過去を思い出す
まだ大型どころか中免も持っていなかった20歳の頃…
車の免許を取ったのはいいが、当時学生だった俺に車を買う金はなく バイク屋で一目惚れしたマグナ50を乗り回していた
クラッチ操作、ギアチェンジ、スロットルを回すと走りだす感覚
そして風を切って走る感動、全てが新しかった、50ccなのに立派な風格のマグナ50に俺は酔いしれていた。
街中で他のバイクを見かけては、隣に並んでメンチを切って空ぶかしした。
マグナ50に敵う奴なんかいないと信じていた
そんな俺が現実を知る日は、突然やってきた
あの日もいつものように信号待ちで隣に並んだ
スティードに乗ったオッサンを睨みつけ空ぶかしをして威嚇していた
だがオッサンは俺に向かってニコッと笑うと話しかけてきた
「かっこいいなぁ。それなんてバイクだい?」
不意を突かれた俺は、強がって聞き返した
「そっちこそなんてバイクだよ!デケーけど何cc?」
オッサンは余裕の笑みを浮かべながら言った
「これはスティードさ。排気量は600ccだよ。で、君のは何ccなんだい?」
頭が真っ白になった
600ccのバイクがあるなんて知らなかった。
マグナ50の12倍じゃないか…敵うはずがない…
そんなことを考えているうちに信号は青に変わり
オッサンは、俺がどう足掻いても追いつくことができないスピードで走り去っていった
そして俺は今、あの時の俺そっくりなマグナ50に乗った青年に話しかける
「かっこいいバイクだね。速そうだなぁ、何cc?」
青年は一瞬驚いた顔をしたが、不敵に言い放った
「に、ニーハンだよ!ニーハン!!勝負すっかゴラァ!」
信号が青に変わったことに気づき走り出す。
マグナ50を尻目に更に加速する ミラーに写るのは点になったあの日の俺だった
マグナキッド 親父編
俺は今マグナ50を駆っている。
闇のなか、峠、俺は風になる。生まれ故郷へ向かって…。
それは唐突に起きたことだった。いつものように会社から帰宅する。
習慣になっている留守電の再生を始めた時だった。
母からの連絡だった。親父が過労で倒れ、危篤であるとのメッセージが残されていた。
すぐさま愛車であるマグナ50に飛び乗り故郷への長い道を走り始める。
5年前に、高校卒業、大学進学と同時に実家を離れることが決まると、 親父は家計が苦しいにも関わらず俺にこのマグナ50をプレゼントしてくれた。
実家から離れても このマグナがいる限り、俺は寂しくなかった。コイツの中には親父がいるから…。
ショットガンマフラーから奏でられるエキゾーストノートが親父の鼓動のような気がした。
焦る俺を心地よい振動と重低音がなだめてくれる。
『事故を起こさないように安全運転でな。』
不意に親父の言葉がその中に聞こえた気がした。
『親父、死ぬんじゃねーぞ!』
そう叫ぶと俺はアクセルを目一杯開けた。 闇の向こう側、大好きな親父のもとへ向かって…。
どれくらい走っただろうか。あたりは薄明るくなっている。
と、突然何の前触れもなくマグナ50のエンジンがストールした。焦る気持ちとは裏腹に、 セルも弱々しい。
押しがけしてようやく掛かった頃にはすっかり日が昇っていた。
走っていると大型トレーラが数台玉突き事故にて道路が封鎖されていた。
仕方なく廻り道をし病院につくとそこにはただ泣いている母と、冷たくなった父がいた。
先生に話しを聞くと、朝方エンジンが止まった時刻と同じ時刻に他界したそうだ。
父さん僕があのまま走ってたらトラック事故に巻き込まれてた。
父さん、ありがとう…さようなら…
式も終わり落ち着いてきた頃、俺は居間でバリマシを片手に マグナ50のパーツを物色していた。
そんな俺に、すこしやつれた表情の母が生前の親父のことを話しかけてくる。
俺の大学合格を心から喜んでくれたこと、マグナ50をプレゼントすることを 母が反対するものの
「風を切って初めて見える世界があるから」
と 強引に決めたこと、定年後は俺とツーリングするつもりだったこと――。
たまらなくなった俺はバリマシを投げ捨て、キーを掴み、 路駐のマグナ50に跨ると、親父の野生とプライドを載せて走り出した。
『親父!今日は飛ばして行こうぜ!』
いつもより気持ちいい音を響かせ、俺のマグナ50は風になった
マグナキッド 旅情編
最悪だ…、土砂降りなんて…。
私は、雨宿り出来そうな場所を探してバイクを走らせたが、 こんな山道じゃ期待できそうになかった。
あきらめかけた頃、道路わきに小さな屋根の建物が見えた。屋根付のバス停の様だ、あそこで雨宿りをしよう。
バス停の横にはバイクが1台、先客だろうか。
私は、バイクを停めて屋根の下に入った。
「こんにちは、雨宿りですか?」
先客の男性が声をかけてきた。 大学生ぐらいだろうか、まだあどけなさが残った顔つきだ。
「えぇ、さすがにこの雨じゃ危ないですから…」
私は、濡れたウェアの水を払いながら答えた。
今日はあまり人と話す気分ではないんだが。
「ツーリング帰りですか?僕はこの先の渓谷まで行って来ました。 今日はバイクがいっぱいで~」
男性は、ツーリング先の出来事を話し出した。
私は軽く相槌を打ちながら、話半分で聞いていた。
「で、あなたはどちらへ?」
どちらへ…、私はどこからの帰りなんだろう。
先週までは私の住んでいたところ。今では、ただの他人の部屋。
同棲していた彼氏にフラれて、今日は合鍵を返しに行った帰り道だった。
何も、そんな最悪の帰り道に土砂降りの雨に遭わなくても。
「大丈夫ですか?」 声をかけられて気がついた、自分が泣いていることに。
あれだけ泣いたのに、まだ涙が流せたんだ。
「何かあったのなら話を聞きますよ。雨、まだ止みそうにないですし。」
人と話す気分ではなかったが、誰かに聞いて欲しかったんだろう。
堰を切ったかのように、私は一気に話した。
彼との出会い、初めて乗ったバイクの後ろ、彼と初めて行ったツーリング。
先週の出来事、自分の未来が消えたこと…。
「雨、止みましたね。」
どのくらい時間が経ったのだろうか、雨はいつの間にか止んでいた。男性は空を見上げながら言った。
「バイクっていいですよね。僕も昔は、高速で最高速にチャレンジしたり、バイク仲間で蕎麦を食べに 行ったりしました。
バイクがあったから、楽しい思い出が沢山作れたと思います。 彼氏さんとの別れは辛かったでしょうが、彼のおかげでバイクに出会えた。
だから、僕達もここで会うことが出来た。 出会いがあるから別れがあって、別れがあるから出会いがあるんだと思います。 あなたには、きっといい出会いが待ってるんですよ。」
男性は、グローブの水気を払いながら言った。
「また、あなたと会えますか?」
私の口から、自然とその言葉が出ていた。 恥ずかしくて、思わず下を向いてしまった。
「あなたがバイクに乗り続けていれば、また会えますよ。」 男性はそう言うと、ヘルメットをかぶってアゴ紐を締めた。
バイクに向かって歩き出す彼。 何か言わなきゃ…、でも何を言えば…。
私は夢中で声をかけた。
「あ…、あの…、そのバイク、何て言うバイクなんですか?」
男性はとびっきりの笑顔で答えてくれた。
「マグナ50です」
~マグナキッド 旅情編~
マグナキッド 家族編
「ちょっとコンビニに行ってくるよ」
ヘルメットを抱えて、妻に言った。
「あのバイクで行くの?」
「そうだよ」
妻は、あきれた、とでも言いそうな表情をして、台所に向き直り、夕飯の支度を続けた。
「すぐ戻ってくるから」
僕はヘルメットとグローブを持つと、ブーツを履いて家を出た。
愛車のマグナは50ccだ。
数あるマグナ中でも、気軽に乗れるところが気に入っている。
エンジンに火をいれると独特の排気音が住宅街に響く。
丁寧に暖気してから、僕はゆっくりと走り出した。
最寄のコンビニはバイクで五分もかからないだろう。
自転車でも、歩いてでも行ける距離であることはわかっている。
だけど、僕は何か理由をつけてはこのマグナに乗りたかった。
今日は日曜日だったにもかかわらず、 妻と子供の服を買うために、午前中から家族で洋服店をまわっていたため、まだバイクに乗っていなかったのだ。
休みの日はほんの少しの時間でもいいから、バイクに乗るようにしている。
だから、もうすぐ夕飯の時間であるにもかかわらず、五分だけでもいいからバイクに乗ることにしたのだ。
住宅街に挟まれた坂道のバス通りを走り抜けていく。
街路樹のプラタナスの葉がすっかり落ちている。 夕暮れで辺りは薄暗くなっている。
西の空が夕日で幻想的に染まっている。
反対車線を走る大きなハーレーに乗ったおじさんが手を振ってくれた。
小高い丘の住宅街を抜け、市街地へ向かうカーブで、少しだけアクセルを開けて走り抜けた。
エンジンの鼓動が僕の体に伝わってきて、胸を高ぶらせる。
左手にコンビニが見えてきた。僕はコンビニには寄らず、そのまま通り過ぎた。
線路の上を渡る高架を上りきったところで、沈もうとしている太陽の光が差し込んできた。
高架をくだり、僕はもっと見晴らしのいい場所へ向かおうと走り続けた。
しばらく、商店やガソリンスタンドなどが並ぶ通りを進んでいたが、そのまま走っていると大きな川の土手へ上がった。
太陽は見えたが、半分沈んでいた。
夕日が、僕と愛車の長い影をつくっている。
僕は川の下流へ向かって、見晴らしのいい土手沿いの道を走っていた。
いつの間にか、僕は海まで来ていた。
港に愛車を停めて、ホットの缶コーヒーを飲みながら、すっかり暗くなった太平洋を見ていた。
時計を見ると、あれから一時間以上経過していた。
妻は怒っているかもしれない。
子供たちに「パパったらしょうがないね」と言いながら、僕のいないまま夕飯を食べているかもしれない。
だが僕は、まだまだこのマグナに乗っていたかった。
このままどこかへ行ってしまいたい。
北海道へ行くのもいいし、四国や九州へ行くのもいい。
そんな非現実的な想像にふけながら、僕は愛車に跨り、家族の待つ自宅へ向うため、軽いクラッチをゆっくりとつないだ。
マグナキッドとNS-1
俺は県内有数の進学高に通っている。
月日は矢の如く通り過ぎて、 楽しかった高校生活もあと一年になる。
「もう三年か~、なんも良いこと無かったなぁ」
と思いながら俺はクラス替えをした新しい三年のクラスに入った。
俺は黒板に貼ってある座席表をみて、自分の席に座ってクラスを見回した。
俺は目を疑った。 なんと前から気になっていたあの子がいた!!
廊下で見かけてから気になっていたのあの子だ
ヘタレの俺には声をかけるチャンスなんかないと思っていたのだが・・・
人生なにが起こるかわからないな
俺はこれからどうやって仲良くなるかを 妄想しつつNS-1で飛ばして帰った。
途中でモンキーに抜かれたが今の俺には気にならなかった
俺はNS-1に乗っている。原付だけど速いし、峠では最強だと思う。
事実峠ではスクーターをバンバン抜かせるし、どんなコーナーだって俺が一番上手い。
俺はこの峠の主なんだ。
「そろそろ行くか・・・」
バトルスーツに着替え、俺は走り出した。
峠の頂上に辿り着くと、そこにはマグナ50に乗った男がいた。
マグナの男はこちらに気づき、近寄ってきた。
「いつもここで走ってるの?」
「ああ。俺はここの主だ。」
「俺のマグナと勝負しないか。CBR600RRよりも速いぜ」
俺はこの発言に何かひっかかるものを感じていた。
「いいだろう。麓のうどん屋がゴールだ。」
「あの夕日が山に隠れたら、バトルスタートだ」
うなるN1のエンジン。一方、マグナは重低音を奏でていた。
ここには俺たちしかいない。これは命がけのバトルだ。
「負けた方がうどんをおごる。それでどうだ?」
「いいだろう。」
夕日が山に隠れる!
俺とN1は勢いよく飛び出した。
20、30、40・・・どんどんスピードが上がっていく後ろを見るとマグナは小さくなっていた
「いける!」
俺はこの峠を知り尽くしている。だから誰も勝てない。
しかし、それは一瞬の出来事だった。
前から来たおばちゃんトゥデイを避けたはいいが、俺はバランスを失い転倒してしまった。
「・・・」
遠のく意識。おばちゃんトゥデイは見えなくなっていた。
「おい!大丈夫か!」
男の声で気が付いた。ここは・・・?俺は死んだのか?
「おい!」
マグナの男が俺を介抱してくれていた。
俺は気を失っていただけだった。
「N1!」 N1は草むらに突っ込んで止まっていた。
フォークは曲がり、カウルは割れていた。
N1は死んでしまった。俺は泣いた。
「N1はお前を守ったんだよ」
マグナの男が言った。
「俺もいままでこいつと色々なことをした。高速を走ったりもしたんだ。こいつは俺の一生の相棒なんだ。」
高速・・・まさか!
俺は恐る恐る聞いてみた
「お前はまさか・・・ マグナキッドか?」
「そうさ。俺はマグナキッドさ。」
俺は驚愕した。あのネットで話題になったマグナキッドが実在したとは。