【映画レビュー】アイデン&ティティ【田口トモロヲ監督】

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映画「アイデン&ティティ」の感想です。

前書き

「君は僕の作った歌が好きなの?それとも僕自身が好きなの?」

こんなリアルな言葉が、作品中のいたるところで見られる。
劇中の時代はバンドブームで、少し私達にはピンと来ない古い時代だと思うが、伝えられているメッセージは時代を超えて十分にビンビンと来るものだ。

ゴーングステディのヴォーカルだった峯田和伸が、主演のバンド・音楽・恋愛を通じてロックとは?自分とは?を考え、悩み続け、それでも生きて、バンドをやり続けることを決めるまでの生活を切り取った映画である。
他には中村獅童、麻生久美子など色々な登場人物が出てるが、何と言っても峯田に尽きる。
初めての演技なのだが、まるで演技などしてないかのような、ありのままじゃないか?というくらいリアルな部分を曝け出している感じがした。
だからこそ余計にメッセージがストレートに伝わってくる。

感想

まさにテーマの一つはロックなのだが、この時代にこの映画が生まれ、公開されたのは偶然ではないはずである。
音楽シーンも似ている。インディーズとメジャーの線引きが曖昧になり、同じようなバンドが、同じような曲を、同じような格好で同じような事を歌っている。
そしてあっという間に消えていく…。
こんな時代だからこそ、この映画が大きな意味がある。

そして二つ目のテーマが恋愛だと思う。
きっと本当の愛を、本気で人を好きになることで、自分を知ることができると思う。
互いに好きになっているのがただの勢いでなく、静かだけれどもよく分かって、そこにも一種のアイデンティティを見つける一つのヒントとしてあるのではないかと思った。
本当に好きになって、自分以外の人を真剣に考えることによって、改めて自分を考えられる、なんて生意気なことを思ったりもした。
劇中、このカップルは理想の恋愛を描いてるのかもしれないが、正直私のものとは少し違う(それはここで書くことではないので割愛させていただくが)。
しかし再確認したが、やはりバンドは良い。
基本的に私は集団行動が得意ではないが、別に一人が特別好きというわけでもない。
こんな私にとって、4人程度でのコミュニティはほんとに居心地がいい。
一体感を味わえる最小単位であると思うし、一人じゃ味わえないものも味わえる。
皆さんも是非一度バンド組んでみてほしい。
この映画は原作者がバンド経験者なので、バンドのいい所も悪いところ両方をリアルに描かれてある。
それでも見終わる度にバンドはいいなと思う私なのである。

「やらなきゃならないことをやるだけさ。だから上手く行くんだよ。」

この一言に対して皆さんはどう思うだろうか?
下らないだとか、そんなわけないだとか、綺麗事だとか思うかもしれない。
しかし、私はこれを素直に受け入れられたし、これからの人生できっと頭の中でこの言葉を何度も繰り返し思い出すだろう。
この映画は、音楽・ロックを愛する全ての人が見なければならないし、見た人はきっと考え続けるのだろう。
「じゃぁロックって、自分って何だ?」

https://matome.naver.jp/odai/2156933725389665801
2019年10月14日