彼女のペース
そのオジサンがまだ20代前半だった頃
若さに任せて単独登山に明け暮れていた
天候が悪かろうが、雪山だろうが、最初に立てた計画を
必ず遂行する!を目標に、闇雲に登りまくっていたそうだそんなある日、いつもの様に登山計画を立てていると
いい雰囲気になっていた女の子が「一緒に行きたい」と言う
正直迷惑だ!と思ったりもしたが、惚れた弱みでOKした
立てた計画を見直し、初心者向けの山を選んだ
必要な装備を買いに行ったり(初デートだったそうだ)、
山の蘊蓄を語ってやると、彼女は尊敬のまなざしで彼を眺めた
正直、調子に乗っていた(らしい)
が、実際に山に入ってみると、彼女のペースはあまりに遅過ぎる
はじめの内は、優しい言葉をかけていたが
その内に、彼女は疲れたのか、頻繁に休憩を要求する様になった
水もがぶがぶ飲んでしまうので、持って来た水筒はすぐ空になった
彼は自分の水筒を渡したが、それもどんどん飲んでしまう
立てた計画はまったくその通りに進まず、彼はだんだんイライラしてきた再度「休憩しよう」と彼女が言った時、パチンとはじける様に
彼は怒鳴った「つい20分前に休憩したばかりだぞ!」
「こんなんじゃ、いつまでも頂上に着かないだろ!
それどころかテントを張る場所にさえたどり着けない!」
彼女は驚いたのか、わっと泣き出してしまった
彼は「勝手に休んでろ!」と言うと、先に進む事にした
しばらく進んだ所で、清水を発見し、手ですくって飲んだ
水筒は彼女が持っているし、実はかなり喉が渇いていた
「何故あんなにイライラしたのか?まるで取り憑かれた様だな」
水を飲んだ後、急に冷静になった
いつもの自分を取り戻した彼は急いで彼女の元へと戻ったが、休憩している筈の彼女の姿がない
「まさか迷ったのか?」「道を逸れてしまったのか?」「どこかで滑落したのでは」
嫌な想像が頭をよぎり、彼は急いであたりを探した途中、何度か呼びかけたが、彼女の返事はない
何度も道を行ったり来たりしながら「まさか怒って帰ったのか?」
とも思ったが、途中にあった難所を彼女1人で越えたとは思えなかった
(ちなみに一本丸太橋。彼女はここをひどく怖がって、なかなか渡れなかった)
彼は涙を流さんばかりに後悔したんだそうだ
「何故、始めて山に登る女の子にあんな事を」「俺はなんて自己中心的な男なんだ」
「あんなに楽しみにしてくれていたのに」「もし彼女に何かあったら俺はもう生きて行けない」ふと、足音に気がつき顔を上げると、登山客には見えない老人が歩いていた
老人は彼に向かって、すっと手を挙げ、指を指した
まるで「あっちだ」と言う様に
それは道を逸れた林の中を指していたそうだ
彼は老人の指差すままに進んだ
老人はまた、指で方向を指示した(様に見えたらしい)
そっちへ向かうと、また指示をする、また向かう、指示を受ける・・・すると、彼女がいた
彼女は木の根っこに足を引っかけて転び、それを取ろうともがいていた
「大丈夫か!すぐに外してやるから!」と足を引っ張る
引っ張っても取れないので登山靴を脱がして、やっと抜ける事が出来た
「大丈夫か、すまない。本当にごめん」彼が言うと、彼女は「私の方こそごめんなさい
ほっとした彼は、さっきの老人にお礼を言おうと振り返った
だけどそこには誰も居なかった
彼女に聞いても、老人など見なかったと言う
道を逸れ、林の中を歩く途中、木の根っこに足が引っかかって転んだのだと言う
彼が呼んでいる声も聞こえなかったし、誰も通らなかったので本当に怖かったのだ、とその後、彼女は足を捻挫までは行かないが怪我してしまったので
結局その日は、近くのロッジに泊まったのだそうだ
彼女とは無事に仲直りして、次の日に下山したその後、彼は単独登山も続けながら、彼女との登山も楽しむ事になる
勿論、彼女のペースを守って数年後、彼らは結婚し、熟年と言われる年齢になった今も
時々近所の山に登るんだそうだ
最後に。
「あの老人は山の神様か精霊かなんかかなあ、と思うんだけど
お前はどう思う?」とオジサンは言っていた
それからオジサンはこうも言っていた
「俺があんなにイライラしてたのも、山の悪戯じゃないか、って思うんだよなー。
清水を飲んで急に冷静になったけど、あの時、水を飲まなかったら
俺は多分、あのまま先に進んでたと思うんだなあ」山には悪戯するモノもいれば、それを助けるモノもいる・・・のかな、と言う話
彼女のペース
滑り落ちた
昔の体験談をひとつ。
高校の頃、授業の一環で地元の山に登山したことがあった。
標高もたいしたことなく、易しい山だったので、みんな思い思いに登山してたよ。
俺は知り合い二人と一緒にゆっくりと登ってた。卒業後の話なんかしながら。
その山、登山道が細く曲がりくねった、なんていうか非常階段みたいな感じで、はるか上のほうまで見える道だったんだ。
上のほうで、同じクラスの奴が騒ぎながら走ってた。
で、危ないなぁなんて思ってたら、案の定そいつは足を踏み外して滑り落ちた。
土砂をどんどん転がり落ちてくるそいつを見て、なんとか助けようとした俺はそいつの滑落してくるであろう位置に動いた。
とはいえ、まだ上のほうなので大声で「誰かそいつを止めろ!」みたいなことを叫んだよ。
ところが、俺が叫んでも誰も反応しない。それどころか、みんな微動だにしない。
さすがに怖くなって知り合いに「上の奴ら、聞こえてないみたいやで」と言いつつ振り向いたら、驚いた。
そいつ、白目を剥いたまま舌をチロチロ動かしてた。
慌てて他の奴らを見ると、知り合い同様白目を剥いて舌をチロチロやってる。
気がつけばあんなにたくさん人がいた登山道なのに、風で木々が揺れる音しかしない。
恐ろしいほど静かだった。俺はパニックを起こして、声の限り叫んだ「誰か!誰かあいつを助けるぞ!…頼む返事してくれよ!」って。
それでも誰も反応しない。気がつけば、落ちてくる奴も無音で落ちてきてた。
恥ずかしい話だが、どうもこらえきれなくなって俺は泣き叫んだ。それこそ赤ちゃんみたいに。
すると突然ヴワーンって、なんか銅鑼?みたいな音が鳴り出した。
それと同時にその場にいた全員がこちらを向いた。舌をチロチロやりながらね。
で、だんだん俺のほうに近寄ってくる。「おまえら、なんの真似ね!」とか叫んで手を振り回して振り放すも、構わず近づいてくるクラスメイト。
もう駄目かな…なんて思ってたら、滑落してた奴がとうとう俺のところまで落ちてきて「ケン!大丈夫か!」って叫んで俺の手を掴んだ。
そこで、どうにも限界だった俺は気絶した。気がついたらベッドの上だった。
目が覚めた俺を見て安堵を隠せない担任。
話を聞くと、どうやら俺は滑落して意識を失ってたらしい。
そんな俺を、例の滑落した(と俺が思ってた)奴が引っ張りあげてくれたらしい。
そいつは窓のそばに座ってたんで、ひとまずお礼を言った。
するとそいつは「なんじゃったんじゃ…アレ…」と言ったきり押し黙った。
二日後、目だった問題もなかった俺はなんとか退院して登校した。
すると、例の助けてくれた奴は欠席だった。
あの不思議な現象を、あいつも見たのだろうかと思った俺は、そいつが登校してくるのを待った。
一日、二日、一週間。
とうとう一ヶ月たってもそいつは来なかった。一ヶ月たった日、HRで担任が「彼は転校しました」と短く告げた。
その日、担任からそいつの住所を聞いて家に行ってみたけど、すでに引っ越していた。
結局あれはなんだったのか、あいつは今どうしてるのかがすごく気になる。今から15年ほど昔の話です。
滑り落ちた
ふくらはぎに木の枝
子供の頃の話。
山で遊んでたら転んでふくらはぎに木の枝が刺さった。
ブツ!って皮膚を貫いて肉に深くまで枝が刺さるあの感触は今思い出してもゾっとする。全身に響くような感触、体の中から音がしてるような
ブツ!ってかんじ…あー気持ち悪い。実はそのとき一人で遊んでたのではなくて友達と二人で遊んでた、秘密基地ごっこみたいな遊びをしててふくらはぎに枝が刺さって、私は痛みと自分の脚に起きている光景と、流れる血を見て言葉も出なくてただただその場に横たわって「死んじゃうかもしれない痛い、怖い」って頭の中がグルグルしてた
友達も慌てちゃって「お母さん呼んで来る」って言って走って行っちゃったのね
自転車で10分くらいかけて山に遊びに来てるのに、自転車置いて走って行っちゃったのです。
一人ぼっちになったから余計に「ダメダ、もぅ死ぬんだ私」とか思っちゃって子供らしく嗚咽しながら泣いてたら女の人がなんでか知らないけどそばに来てくれて私はてっきり友達のお母さんかと思った。
「こんなところで遊ぶから怪我するのよ」とか小言を言われた覚えがある
で、すっごい不思議なのが私のふくらはぎに刺さった枝をズボ!って抜いた。痛くもなんともない、本当にズボ!!って
ものすごい勢いで抜いて、なんだかそこいらに生えてた草をブチブチ抜いて
両手で揉んで刺さったところに押し付けて「強く押さえてなさいね」と
私は頷いて自分のふくらはぎを両手でギューっと押さえながら
「おばちゃん、ありがとう」って言おうとしたら、もういないの
あれ?って思ってたら、車に乗って友達と友達のお母さんが来た。
さっきの女の人は?????誰???
友達のお母さんは、大慌てで私を抱えて病院へ
で、病院の待合室のとこで、草をはずして見てみると枝が刺さったのがウソみたいだった、怪我はしていて血も出ているのだけど
穴あいていてもおかしくないはずなのに、ちょっとなんかえぐっちゃったって感じの怪我
消毒してガーゼ置いて終わりって怪我。
友達も私もふくらはぎに枝が刺さって大慌てだったのに、なにがなんだか
友達はお母さんに大げさだとか、あんなとこで遊ぶからだとか叱られて
私も山で遊ぶから怪我するんだと両親&友達のお母さんに叱られた。
信じてもらえなかったなぁ…枝、刺さったのになぁ。
女の人の話も信じてもらえなかった。
あの女の人は誰だったんだろう?すっごい謎。
雑草を傷口に押し付けても平気だった私も不思議だけど。ちなみに山梨県茅ヶ岳でのお話。
あ、レスついてた。
ふくらはぎに枝が刺さって怪我したはずの者です。後日談を…。
山での傷もすっかり癒えた頃。
怪我をしてから数ヶ月経ってたはず。夏に怪我して、痒くなったのは紅葉も終わる頃。
枝が刺さったところが痒くてぼりぼり掻いてた。よくみると皮膚の表面に近いところに棘みたいなのが見えて、
母親にピンセットで抜いてもらった。で、出てきたのがモロに木屑みたいな
なんていうか、割り箸を割ったときに縦に斜めに割れちゃったみたいな感じになってて
長さ4センチくらいの結構な大きさ、ちょうど爪楊枝くらいかな。
そんなのが出てきて母に
「だから言ったじゃん、枝が刺さったんだよ。知らんおばちゃんが抜いてくれたのは本当なんだもん」な類の文句を言った。
母には「あんたロクでもない遊びしてたから山の神様がバチくれたんだ、女の人は山の神様だったんだ」と藪蛇に…。
今でもふくらはぎの傷はうっすら残ってる。
私も山の神様だったと思いたい。
美人じゃなかった、どこにでもいそうな女の人だった。
もう一度会えるならきちんとありがとうっていいたいなぁ。あの時心細くて大泣きしたけど
あの女の人のお蔭で怖くなくなったし(すっげー叱られたから別の意味で怖かったけどw)
ただ顔は覚えてるけど服装とかそれ以外はもう忘れちゃった。
「あれほど他人に言っては・・云々」とか言われちゃうと泣けちゃうから書き逃げ。
ふくらはぎに木の枝
お通夜の日
おじいちゃんのお通夜の日の話です(長いです
当時高2の俺は、別に手伝う事も無かったので、準備が終わるまで
自分の部屋で音楽を聞きながらマターリとしてたんです。
それでちょっと眠くなってきた頃に、ドアがノックされて
「おい、○○(←俺の名前)そろそろお坊さんが来るから、
こっち来とき」と、父に呼ばれ、おじいちゃんの遺体が
ある部屋に行きました。
部屋に行って、みんなでおじいちゃんの遺体を囲んで、
お坊さんが来るのを待ってたんですけど、俺がよそ見をしてた間に
おじいちゃんが生き返ったんです!マジで!
普通に「あー、よう寝た」とか言いながら目を覚ましたみたいな感じで。
それで、みんな怖がるとかじゃなくて、感動して喜んでたんですけど、
誰かが「オイ!遺影とか隠せ!」って言ったんです。
俺は一瞬意味が分からなかったんだけど、多分そういう葬式とかに
関係あるものを見たら気づいて、おじいちゃんがショック死するからかなぁ、
とか思いながら俺も手伝って、大きい花みたいなのを隠してました。
でも蘇ったおじいちゃんは異常にに力が強くて、父を力づくでどかせて、
父が隠してた祭壇を見つけたんです、おじいちゃんはそれを見て
「うわ、今日誰かの葬式かなんかか?こういうのを乱暴に扱ったら
あかんやろが」とか言いながら、祭壇を整えてたんですけど、
そのうち自分の遺影を見つけて「あ、わし、死んだんか。そうか」とか
言い残してまた死んでしまいました。
それから俺はまた部屋に戻ってマターリとしてたんですけど、
じきにまた父が呼びに来て遺体のある部屋に行ってみたら、
もう祭壇とかを片付け始めている。
俺は不思議に思いながらも片付けを手伝っていたんですが、
片付けている時に、父とか母とかは違う部屋に行ってて、
そのおじいちゃんの遺体がある部屋には俺1人で、
おじいちゃんの遺体と二人っきりになった瞬間があったんですね。
そして、俺がまたおじいちゃんの遺体から目を離してる隙に
また生き返ったんです、おじいちゃんが!
でも今度は前とは違って明らかに様子がおかしくて、
なんか映画のゾンビのように、奇声を発しながら
暴れまわってるんですよ!
それでおじいちゃんが外に出ようとしてるので、俺はそれを
必死で止めてたんです。
そして、おじいちゃんに「おじいちゃんは死んだんやで!もう気づいて!」と
言ったところで俺はある事に気づきました。
俺は高2の男なんかじゃない、俺自身が今目の前にいるこの老人なんや。
わしは死んだんか?これは夢か?と思ったところで目が覚めました。
ああ、まだわしは死んでない。でも、最後に嫁はんや孫の顔でも見とくか、
と思ったんだけど、目も開かないし、体も動かない。
そうか、やっぱりもうわしは死んでんのか。
まわりからは皆の泣いている声が聞こえる。と、いうような夢を一昨日みました。
オチが洒落になってなくてめちゃくちゃ怖かったです。
この直後に目が覚めたんですけど。
お通夜の日
あんがいみどぅち
数ヵ月前体験したちょっと不思議な話をしようと思います
ある日のこと、私は釣りの師匠と地図を見ながら釣り場をチェックしておりました
地図と言っても普通の地図ではなく、島の郷土史もかねた分厚い一冊の本です
私たちが住んでいるのは車でなら一時間ほどで一周できてしまうような沖縄の小さな離島なのですが地形は険しく人が簡単に入れないような所も沢山あります
その郷土史兼地図には、海岸から山中に至るまで事細かく区分された地名から、島に何十と点在する御獄やお拝所までが解説付きで載っていて私は釣り場を見ながら知らない場所を見付けると、ココは知っているかだのどんな場所かだの、ことある事に師匠に聞きながら読んでいました
しかしある地名を聞いたとき
「今何と言ったか」
それまで私の質問に答えるだけだった師匠が急に聞き返してきたのです
「あんがぃみどぅちと言いましたが、どうかしましたか?」
聞くと師匠は三ヶ月ほど前、畑仕事をしているときにこの『あんがいみどぅち』と言う言葉が急に頭に浮かできたとのこと
一度ではなく何度も何度も
不思議には思ったが聞いたこともない言葉だったので、すっかりそのことを忘れていたが私に聞かれはっとそれを思い出し驚いて聞き返したと説明してくれましたまだ書いていませんでしたが師匠はいわゆる『見える人』でたまに予知めいたことを的中させ周りを驚かせたりだとか、ちょっと人とは違った不思議な力がある人です
もしやこれはその予知的な何かなのか?
オカルト好きの私は興奮しました
本によるとあんがいみどぅちは海岸沿いにあり、意味は『東の水のあるところ』だそう
この島では川や水の湧き出るところは神聖な場所とされておりここも数あるお拝所(神様を崇め祭っている場所)のひとつのようです
お拝所であることを告げると「それはもしかしたら神様に呼ばれているのかもわからん」
と師匠も行くことに乗り気になってくれました
その後島の年長者に聞いて周り、あんがいみどぅちは元々は川の名前であること
お拝所には大潮の日の一番潮が引いたときに危険を侵して海岸づたいに歩いていかねば行けないが
川ならば道路から山に分け行って比較的簡単に行ける、ということがわかりました(できたらお拝所の方に行きたかったな…)
次の大潮まではまだ日がありましたし、師匠も私も海の怖さは十分に知っていましたので
残念ながらとりあえずは川の方に行ってみることにしました
ガードレールをくぐり崖を降るとすぐ見えてきたその川は
小さな清流で岩壁の所々から水が湧き出るとても綺麗な川です
私たちは川を散策しながら、何かご利益があるかもと湧き水を飲んだり顔を洗ったりなどして
最後は川の神様にお礼を言うとその場を後にしました
「師匠行ってみて何か変化はありましたか?」
「うーん、少し体が重いくらいか」……。
正直私はかなりがっかりしました二十歳も過ぎて恥ずかしい話ですが、この場所に来れば何か師匠の体に劇的な変化があったり
奇跡のような現象が起こるのではと密かに期待していたのです
テンションが下がったまま今度は海に行き
最早二人の日課ともいえる釣りで今夜の酒の魚を手に入れると
師匠の家で一杯やってそのまま眠りこけてしまいました「…ぶつぶつ」
しばらくして私を起こしたのは隣で寝ている師匠が何か呟く声でした
最初寝言かと思いましたが、段々声が大きくなるしどうやら違うようです
聞き耳をたてると
「…ふざけんじゃねぇ…ぃぃ加減にしろょ…しね…」
などといったことをこっちに向かって延々と繰り返し言っている
他に人はいないし言っている相手は私以外ありえませんそうと理解した瞬間私の中に強い怒りが込み上げてきました
「何なんだよっ!!!!」
何に怒ってるか知らんがそんなに文句があるなら
ぶつぶつ言ってないで直接言えばいいじゃねえか!!馬鹿にしやがって…!!!跳ね起きると電気を付けて、キレつつもヘタレなので
師匠から離れたところでまた酒を煽りながらふてくされていましたしかし程なくして私は飲んだばかりの酒と一緒に、胃の内溶物を全て吐き出すことになります
師匠が暴言を吐いていた本当の相手を知ったからです「そいつ」は私と師匠が寝ている丁度間に一緒になって寝そべっていました
もちろん見たのは師匠で私ではありません
息がかかりそうなほど近くにいるそいつと、師匠は金縛りにあいながら必死に戦っていたそうです
しかしそいつは一体そんなところで何をしていたんだ?
背筋が寒くなりました
寝ていたとき師匠と私の距離は半畳ほど、
そいつがいた場所はつまり私のすぐ近くでもあったということです「お前に成りすまそうとしていた。」
私の質問に対する師匠の答えを聞いた瞬間
ものすごい吐き気に襲われてトイレに駆けこみました
あんがいみどぅちは川の神様が呼んでいたんじゃなかったのか?!
起こるならご利益こそあれ何で変なのが付いてくるんだ!
師匠はあれはあんがいみどぅちとは恐らく関係ないし
もういなくなったから大丈夫と言ってくれましたが
吐き終わった後も私のテンパりは中々治まらず、結局朝まで師匠の家で起きていました
あれから数ヵ月たちましたが、まだ師匠が聞いた声の正体は分かっていません
別段私たちに変わったこともありませんでもまだ私はあの声はやはり川の神様で、これから何か師匠に奇跡を起こしてくれるんじゃないかと密かに期待しているのです
あんがいみどぅち
山還り
山還り
私共の地元では山を神聖視した土着の自然信仰が行われています。
現在廃れて来てはおりますが、それでも老人方は信仰すると共に畏怖、畏敬の念を絶やしません。
それには理由が在りまして、昔私共の地元では、口減らしと共に姥捨てが行われていました。
しかしながら、姥捨てとはもうしましても他所とは若干考え方を異にしています。
地方によって呼び方も変わると申しますが、私共の土地では「山還り」、「山還し」 と呼んでいたそうです。
今でも私共と老人方、信心深い方は同じように考えておりますが、
「人は死ぬと山に還り、そして山、土地と一つになる」
と、このように考えておりました。
その為、不作等か続くと労働力の低い老人方に子供が、
「山に還ってくんねぇか」
と、こう言うわけです。すると多くの老人方は
「分かった。山に還ったら、うちの畑が肥えるようにするからな」
と返し、同意して山に当時の私共や、今は絶えてしまった私共と同じ山に連なる方々――ササギと共に入るわけです。
無言、無言、無言。静寂こそ美徳。その様にしてただひたすらに山へと登ります。
しかし、それも山の七合目に入ると、ササギの者が山に礼をした後、老人に聞きます。「早く還るか」
これにはいと答えると、ササギの者は老人を殺し、その遺体を私共が埋葬します。
その後祈りと敬い、崇拝と感謝、謝罪を込めて頭を墓に二度下げ、山の頂きに三度下げて帰ります。
しかし、山を見て歩きたいと言われると、これ以上は登らぬようにと厳重に注意します。
その後村の為に良い影響を与えて下さいと私共とササギの者が老人と山に祈り、老人を置いて山を去ります。
お気付きでしょうが、その当時の老人方は、納得した上で、いえ、寧ろ喜々として死んで往きました。
さて、老人を山に還した家では、大方様々な幸運が起こります。畑が肥える、病が急に治る、神通力がつく、と言った具合です。
……昔、感謝を忘れ、これに目がくらんだ者が居たそうです。自らの母が山に還り、残った父を山に還そうとしたそうです。
その男は父に山に還るように言いますが、父は頑として首を縦に振りません。「今はその時でない。おれが還るのはまだ先だ。あいつは言った。わたしが還ったら畑を見てくれ。荒れてしまったらあなたも還って二人で肥やしましょうと」
男は納得できず、ある晩父を殴りつけて口を聞けなくし、縛り付けて山に向かいました。
言葉を喋ってはならぬと当時の私共や他の山に連なる方々に聞いたのでしょう。無言で登り続けます。
七合目に差し掛かり、男は父を殺して埋めようとしましたが、ここでは私共にばれてしまうと考えたのでしょう、頂上まで行くことにしました。
八合目を越えると、虫の声が聞こえなくなりました。
九合目を越えると、風が止みました。
そして頂上――男は父を殺そうとしますが、父を殴り続けるにつれて殺すのが怖くなり、父を縛り付けたまま四肢の骨を折り、村に帰りました。
しばらく経つと、男の畑が枯れ、男は病に倒れました。身重の妻が、二年経っても子を産みません。
仕方なく子堕ろし婆を呼び、子を堕ろしました。堕ろした子には四肢がありませんでした。
その子の顔は、しわくちゃの顔をしておりました。
そして――男の顔を睨み、叫びます。「畑が荒れた。次はお前が還る番だ」
男は当時の私共とササギの者に連れられ、山に還りました。
山還り
空家
幽霊話じゃないんだけどね・・・
子供の頃に住んでいた家は、現在住んでいるところから、自転車でわずか
五分程度。近所に幼馴染みも一杯いたし、自分とはもう関係ない家だという
認識があまり働いてなかった。
うちが引っ越した家はしばらくは空き家になって
いたけど、暫くしたら若い夫婦が入居して、お門違いにも、自分の家を取られた心境になってました。
それから暫くして、その若い夫婦も転居してしまい、私の元家は、またしても空き家に。
この時、うっかり出来心を起こしてしまい
ました。私は自分の元家に忍び込んだんです。
昔寝室に使っていた部屋の柱には、
私がまだ片言も話せない頃に描いた落書きがある筈で、どうしてもそれを見たかったんです。
引っ越したのは小2、忍び込んだのは高2の時です。
私はどこか鍵が開いていないか探りを入れ、居間の小窓の鍵が甘くなっている事に
気が付きました。よじ登って鍵をこじ開け、私は居間に侵入しました。
居間の隣の部屋が寝室です。
私はドキドキしながら柱を見ましたが、しかし私が昔に描いた絵は消されていました。
よく考えたら絵はクレヨン画だったんです。
消そうと思えば容易に消せる訳で、引っ越しの時にうちの両親が消したのかも
知れないし、若夫婦が消したのかもしれませんでした。
そうしてそこに至り、私が初めて思い出した事があります。私は知っていたんです。
若夫婦がこの家から転居した理由を。
いいえ、転居したのは若夫婦の内の旦那さんの方だけです。
奥さんは、この家の居間で、ある日眠ったまま、二度と起きる事はなかったんです。
死因が判らず、当時話題になっていた事を、私は知っていたのに。
薄暗がりの空き家は、それでも私にとっては、幼少時代を過ごした懐かしい家でした。
ですが、私がずっと心に記憶していた落書きはすでになく、すぐ隣の居間で奥さんが眠ったまま死んでしまった事を思い出し、急にぞぉっとしたんです。
なんで私はこんな所にいるんだろうかと、真剣に背後が気になりだしました。
居間→寝室と忍び込みましたが、その更に奥には、内側の鍵をひねるだけですぐに
外に出られる子供部屋がありました。
私は慌ててそちらへ行き、さっさと逃げだそうとしたんです。
内鍵をひねろうとして、しかしそこでハタと気が付きました。
こんな場所の鍵が開いていたら、浮浪者が入り込み兼ねない。
そうしたら周辺に迷惑がかかる、と。
私は泣く泣く子供部屋→寝室→居間へと引き返しました。
泣きそうでした。今思い出してもゾッとします。
私は亡くなった奥さんがまだ生きていた頃、庭で洗濯物を干している姿を見た覚えがあります。
髪型と、その全体的な雰囲気はうっすらと覚えているのに、顔は全く思い出せません。
だから、イメージの中の彼女は、ノッペラボーです.
自分の家でもない家の中で、隣の部屋でこの奥さんが亡くなったのだと思い出した時、私のイメージでは、
今と寝室を区切る扉を半分開け、突然の侵入者たる私を覗き込んでいる、
ノッペラボーの奥さんの姿なんです。
イヤな記憶(←イメージ)です・・・・・・
背後が寒かったです。子供部屋の鍵が開いていようとも、居間の鍵を開けてしまったの
なら同じ事・・・なのかも知れませんが、それが私に出来る精一杯でした。
居間の小窓はもともと鍵が甘かったし、よじ登らなくては入れないような場所でした
ので、もしも何かあったとしても、私だけの責任とは言えないなどと、
訳の分からない理屈を胸に、かなり自己中心的な逃げ方をしました。以上です。
空家
結界
うちのじいちゃんは土地持ちで、畑や田んぼや山を持っています。
じいちゃんは関東T県のT市と言うところに住んでいて、そのT市はものすごいど田舎でじいちゃん家の周りは180°田んぼでした。
私の父が長男なので私たち一家はじいちゃん家に行くことが多く、私なんかはじいちゃんの山を小さい頃からよく登ってました。
じいちゃんの山は買った山が一つと、じいちゃんの二代前から持っている山の二つで、私がよく登ったのはじいちゃんが買った方の小さめな山でした。
ここまでが前置きで、話は私が小学校中学年か高学年の時のことです。
長年同じ山ばかりで遊んでいた私は別の遊び場を欲しがっていました。
一緒に山に遊びに行ってた一つ上の姉も同じ様に思っていたらしく、私たち二人はじいちゃんのもう一つの山に遊びに行きたいと思っていました。
前に麓から見たことがあり、買った方の山の二倍くらいの大きさで木々も鬱蒼としており探検にはもってこいだと言うことで、じいちゃんや父親から危ないから行くなと言われていたのをきかずにある日姉と山まで向かい、探検を始めました。
その山は昼間なのに木々の影で薄暗く感じて、気味悪いながらも冒険心をくすぐり奥へ奥へと足を運ばせます。
迷わない目印に姉がチョークで木に一本線を書いていたのを覚えています。
山を4分の1ほど登った頃でした、姉が前方を指差し「家を発見!」息切れた声で軽快に言いました。
怖い話なんかが姉妹で好きだったので、ボロボロの空き倉庫や古トンネルなどに肝試しに良く行く私たちには恰好の肝試しスポットを見つけた喜びが走りました。
「入ってみようよ」
「鍵かかってないといいね」
私たちはそんなことを話しながら早足にその家に向かいました。
その途中、私は木と木の間(木の上の方)に縄のようなものがかかっていて、何本かと繋がっているのを見つけましたが気にせずに姉の後ろを小走りでついていきました。
その家の周り4・5メートルには木が無く、そのかわり背の高い草が生えていました。
草を掻き分け家を目の前にすると、遠くで見たときと比べ異様に威圧感というか重圧感というか、そんな感じの雰囲気がありました。
姉は感じないのか、ずんずんと進んでいって、ドアとおぼしきところでガタガタとし始めました。
「だめだ、鍵閉まってるや」
姉はそう言ってため息を漏らしました。私はその時、内心「良かった」と思い、安堵のため息。
「窓とかないかな?」
姉はそう言うとまたずんずん別の方へ回り込んで行きます。
私は独りになるのが嫌で姉を追いかけようとしたときでした。
背の高い草の隙間に黒い、人の頭のようなものがゆっくりと移動しているのが目に入りました。
………!
私は立ち尽くしてその移動する頭を凝視していました。そうしてる間に、姉が回り込んでいった私のいる側とは反対の家の陰の方へゆっくりと移動していきます。
私は姉に危機が迫っているのを全身で感じ、勇気を振り絞って、その移動するモノとは逆回りに姉のいる方へ回ろうとしました。
すると、
「いや~、やっぱそううまくは鍵あいてなかったよ」
私は何も言わず、姉の腕をつかみ走り出しました。振り向かないで走って、縄のかかった木をくぐり抜けてまだ走りました。
その時、戸惑いながら後ろを振り向いた姉が悲鳴を上げる。
姉の悲鳴に私も思わず後ろを振り向いてしまいました。
さっきの移動するモノが、まだゆっくりと家の周りを回るように草のなかを移動している…。
草の薄いところをそのモノが通ったとき、私も悲鳴をあげました。
異常な程に髪の毛が長く多く、髪の裾から子供の脚のようなものが出ている化け物じみた、前にアダムスファミリーで見た髪の毛のおばけみたいなのが見えたんです。
私たちは発狂せんばかりの心持ちで逃げました。チョークの目印を辿り、息を切らせて、麓まで降りました。
下りとは言えあの距離を全速力で走ってこれるなんて、火事場のバカ力とはこのことだと思います。
その後家に逃げ帰り、父親に泣いて事情を説明すると、父親は真剣な顔で話し始めました。
「お父さんも、その家の近くまで行ったことがある。なんでか木に縄がかけてあって、家の周りを円状に囲んでて、怖くてお父さんはそれ以上家に近づけなかった。」
私は話を聞いてますます震えました。縄がかけられているのは結界で、あの髪の毛おばけは、あの結界から抜け出したくて草の中をぐるぐるとまわっていたのかもしれません…。
じいちゃんが亡くなった後、その山は手放してしまいましたがまだじいちゃん家から20分くらいで歩いていける距離にあります。怖い…。
結界
人影
二年前に彼女とS高原にボードに行ったんです
そこはいくつかのゲレンデが横並びに点在してて俺達は1番端の比較的初心者向けのゲレンデ側に宿をとりました
と、いうのも彼女が初心者だったので。
一日目はそのゲレンデで滑り大分馴れた様子だったので「明日は違うゲレンデに行こうか」なんて話してました翌日起きてみると霧で全く先が見えない状態
リフトも運転を見合わせてるくらいで
「こりゃ無理か」
宿で昼ぐらいまで時間潰してると宿の人がリフト動き出したことを伝えにきてくれた出ると確かに天気は回復していた
ゲレンデ間の移動はバスがあったので行きはバス
帰りは林間コースを通って元のゲレンデに帰ってくる、と予定を立てました
山の天気は変わりやすい。
中級者ゲレンデで滑ってるとまたしても霧が
「そろそろ戻ったほうがいいかな」
そう思ってリフトに乗り林間コースに向かいましたリフトに乗ってる間にどんどん天気は悪くなり林間コースに入る頃にはふぶいてきました
林間コースに入るために頂上まできたので
そのゲレンデの麓まで降りるためには上級者コースを通る必要があり
視界も悪くなっているので彼女にはまだ無理だと判断したので
予定通り林間コースを抜けることにしました
林間コース自体は連絡道のようなもので距離はあるが初心者レベルでした
しかし少し滑りだすとますます吹雪は強くなり、本当に5m先も見えなくなりました
コースが右に曲がっているのか左に曲がっているのかもわからなくなった
「やばい」内心焦り始めた
彼女も不安はピークに
少しでも離れるとまずいと思い、最初は彼女に合わせて滑っていたが
彼女を背負い脇に板を挟むというかなりの荒業をしながら滑ることにしました少しずつ少しずつ滑っていたが何も見えなくなってきて
「止まったほうがいいか」と思った頃です
いつの間にか前にうっすら人影が
「人だ!この人についていけば!」
そう思って離されないように体もきつかったけど必死でくらいついていった
その人影は全く上体がブれず「滑り上手だな」なんて思ってました
それだけ上手なのに彼女を背負いゆっくり滑らざる得ない状態の俺と距離が離れない
近づくこともなければ離されることもなかった10分か20分か、そんな調子で滑っていた
すると何か音が聞こえてきて、それがゲレンデのアナウンスの声だとわかり始めた頃
少し視界が良くなってきました
「現在、強風に伴う吹雪によりリフトの運転を見合わせております」
そんなアナウンスでしたはっきり聞こえるようになったぐらいで元のゲレンデに着きました
ゲレンデの麓の宿が見えるくらい視界が回復していて
彼女を降ろし、さっきの人影を探した
ゲレンデには人ひとり居なかった
ゲレンデに着く直前まで前にいたのに
「なぁさっきの人もう降りたのかな?」と彼女に尋ねると
「人って?」
「俺らの前ずっと滑ってた人だよ、俺あの人についていったんだよ」
「私も前ずっと見てたけど誰もいなかったよ?
て、いうか話しかけてたのに全然返事してくれなかったからすごい不安だったよ」彼女に話しかけられた覚えは全くありませんでした
あの人影は何だったのでしょうか
無事着いたから良かったけど
人影