<閲覧注意>身の毛もよだつ本当にあった長編怖い話まとめ(69)

kent303
<閲覧注意>身の毛もよだつ本当にあった長編怖い話をまとめました。

もどり雪

真冬、立木も少ない吹きさらしの斜面で、降り積もった粉雪が強風にあおられて、
下から上へと昇ってゆくように見えることがある。
ある地方ではその現象を、天に戻って行く雪という意味で「もどり雪」と呼ぶそうだ。

そんな「もどり雪」にまつわる話。

1月の終わり、山守りのハルさんは山の見回りを終えて山を下っていた。
左側の谷から、強烈な北風に舞い上がった粉雪が吹き付けてくる。
ちょっとした吹雪のような「もどり雪」だった。

と――雪煙の向こうに人影が見えた。
道端にある山土場に佇んで谷の方を向いている。
ヒュゥゥゥ―と唸る風の音をついて、何事か話す声が聞こえてきた。
その人影が誰かと話をしているようだが、相手の姿が見えない。

近付くにつれ、影の正体が判明した。同じ在所の源さんだ。
「おぉい!そんな所で何やってるんだ?」
ハルさんが声を掛けると、源さんはゆっくりとこちらに向き直った。
ゴツゴツとした厳つい顔が、今は少し強ばっているように見える。
「……何だ、ハルさんか」
「何だとは何だ。それよりお前、誰かと喋っていたようだが」
「ああ、ちょっとな、翔太と話をしていたんだ…」
「何だって?」
ハルさんは、しばし呆気にとられた。

翔太と云うのは源さんの一人息子だが、
先年の春、7才になる前に小児ガンでこの世を去っているのだ。

翔太が死んでからの源さんの様子には、一見何の変化もなかった。
元来、黙して語らずといった雰囲気の持ち主だったし、
寄り合いの席などでむっつりと押し黙っているのも、以前と変わりない。
悲嘆に暮れているような姿も、ついぞ見せたことがなかった。

翔太の葬式の時など、俯き加減で泣き続ける細君を尻目に、
居並ぶ参列者を、仇でも見るような目つきで睨みつけていた。
そんな源さんの立ち振る舞いを見て、ハルさんの心中に去来したのは、
――意地を張ってるんだろうなぁ…
という思いだった。

たぶん、そうすることで悲しみを無理矢理押さえ込んでいたのだろう。
あれから9ヶ月余り。今日までずっと、源さんは意地を張り続けている…

「…歩いてたらさ、土場に差し掛かったあたりで誰かに呼ばれたような気がして。
で、そっちを向くと、すぐそこに翔太が立っていたんだ」
ハルさんは、無言で源さんの独白に耳を傾けた。
いつの間にか風は止んでいて、周囲の山は時が止まったかのように静まり返っている。

「翔太のヤツ、お母さんをいじめちゃだめだよ、なぁんて言うんだ。
そりゃあ俺も、翔太のことではアレを随分叱ったからな。
いつまで泣いているんだ、泣いてどうなるものでもないだろう、なんてな」
そのことは、妻を通じてハルさんの耳にも届いていた。
田舎の井戸端ネットワークは全く侮れない。
「悪いとは思ったけど止められなかったんだ。そうやって気力を奮い立たせてたんだな。
いや、逃げていたのかもしれない。で、気が付いたら会話が無くなってた」
源さんは顔を空に向けて語り続けた。いつになく口数が多い。

「あいつはそれが心配だったんだとさ。久しぶりに会った我が子に説教されるとはなぁ。
まったく、腹が立つやら情けないやら……なんだかなぁ………けどよ…」
そこで一旦口籠もり、そのまま空を振り仰いだまま立つ尽くす。

「…けどよハルさん。何でかなぁ…涙が止まらねえんだよ」

上を向いた目からジュワッと涙が溢れ出し、頬を伝ってこぼれ落ちたかと思うと、
源さんは、そのままオォォォォォ…!と声を張り上げて泣き出した。
我慢に我慢を重ね、意地を張り通してきた源さんの号泣は容易には止まらず、
後から後からこぼれ落ちる大粒の涙が、雪面にポタタタタ…と穴を穿つ。
そのすぐ向こう、真っ新な雪の上にポツリと一組だけ、小さな子供の足跡があった。

やがて――再び勢いを増した風が激しく雪を舞い散らすと、
足跡はあっという間にかき消されてしまった。
しかし、それは源さんの心の内に消えることなく焼き付いたのだろう。
山を下りた源さんの厳つい顔は、近頃になく晴れやかだった。

もどり雪が、ほんの少しだけ時を戻してくれたのかもしれない。
もどり雪

腐水の呪

五年前の俺が高校生だった頃の話だ。
中学からの友人Mがオカルトめいた話に興味を持つようになり俺に
よく話すようになった。
個人的には超常現象やUMA、UFOの類は多少の興味こそあれ
実際に目の当たりにしたこともなくMの話はちょっとした時間つぶし程度に聞いていた。

Mは呪いについて色々と模索するようになった。
どこからか情報を仕入れては俺に話し、今度ある呪いについて実践するから
立ち会ってほしいと言われたんだ。
Mがやろうとしている呪いは以下の通りである。

紙を人型にくりぬき、心臓のあたりと喉元のあたりに穴をあける。
バケツに水をため長い間放置し、その水底に人型の紙を石を上に乗せ沈める。
Mが言うに肝心なのは、汗、血、精液、唾液を混ぜたものを水の中に投入する事らしい。
Mは俺にそのように説明した。
俺は長い間放置したバケツの中の水を覗き込んだが濁りきり
周囲には藻が生えていて、何よりも顔をしかめる臭いを出していた。
Mは水を腐らせたものは周囲に浮遊している霊のよりどころとなり
それに人間の体液を混ぜることにより何かしらの霊現象があるといった。

それを実証するために、とりあえずはカメラでそれを映してみることにした。
あいにく数十枚撮影したものの中に、霊体らしきものは確認されなかったのでMは軽く落胆した様子だった。
しかし、数日後Mには以前の彼の明るさが消えていた。
Mの変化について俺が尋ねると
M「やっぱアレやばかったのかな」
俺「アレって?」
M「俺の家でやった呪いだよ」
俺「マジかよ、どうヤバいって言うんだよ」
M「あの日から背中にかゆみを覚えるようになった。それにあの水の臭いが離れてくれない」
俺「皮膚科には行ったか?気にしすぎかもしれないだろ?」
M「アレはまずかったかもしれん。が、皮膚科には取りあえず行ってみることにする・・・」
Mの背中がどのようになっているのか一応確認しておきたく思った俺は、Mにシャツを脱いでもらい
背中を確認した。

すると背中にポツポツとできものが出来ていた。それを見ると申し訳なかったのだが、俺にもあの水の臭いが蘇ってきて軽く嗚咽してしまった。
Mは病院に行き薬を塗布し続けていたが痛みを伴う背中のかゆみは収まらず授業中に背中を掻き続けるようになり周囲から変な目で見られるようになった。
夜には耳元に大声で叫ばれているような感覚に陥ることもしばしばでロクに寝れずにいるらしい。
目にも力がうせてしまいMは狂ってしまうのではないかと俺は思った。
背中の痒みが酷いためか風呂にも入らないで居るMは、クラスに異様な臭いをまき散らし忌み嫌われた。
学校にも次第に姿を見せなくなり、高校生活残り三か月にして完全に来なくなった。
俺は今は大学に通っているのだが、ごくたまにMを近所の店で見かけることがある。
しかし「ヒヒ・・・ヒヒ・・・」と背中をポリポリと掻きながらフラフラ歩く彼には言葉をかけれない。
Mは元に戻れないのだろうか。
腐水の呪

オコボッサン

>>669
民俗学研究してる方居る?
「オコボッサン」ってのに心当たりないかな…?

自分が体験しただけで、伯父(次男)一家5人と、別の伯父(長男)と、父が死んでるんだ
祟りを逃れるため、母や伯母は全員離婚し、旧姓を名乗ってる
うちや、親族がこんなになった原因を知りたいんだが…

父方の爺ちゃん家の庭に、党首以外近づいてはならないっていうお堂みたいなのがあったんだけど、
爺ちゃんが亡くなった後、伯父(次男)が遺産相続の件でゴネまくった挙句、思い通りにいかなかった腹癒せに、
お堂の中の御本尊?をどっかにやっちゃったらしいんだわ。

基本的にお堂の中は党首といえども、年に一回元日以外には覗いたらダメとのことで、すぐには発覚しなかったらしいんだけど、
気味の悪い海の夢を連日見てた矢先、次男一家が突然一家心中したんでピンと来たらしい。
伯父(次男)は弁護士やってて、長男は国立医大、長女もどっかの有名私大、次男は浪人だったけど別にグレたりとかしてた訳じゃなく、
金銭的にも困ってそうでは無かったんだよね。

ところが、全員が首を釣って自殺。普通一家心中って、纏めて死ねるような方法選ぶよな?
なのに全員が個別に、首を釣って自殺したんだと。
加えて伯父の右手は壊死したみたいに真っ黒になってたらしい。

で、慌ててお堂を調べてみたら、中が空っぽになってて「オコボッサン」が無くなってる。
一族全員緊急で集められて、そこで初めて「オコボッサン」っていう名前と、それが一族の守り神みたいな存在である事、
ただし蔑ろにすると凄まじい祟りがあって、何代か前には一族が全滅する寸前までいったらしい事なんかを話された。

正直、その段階では半信半疑どころか、従兄弟従姉妹の大半が、伯父(長男)もボケたかなっていう感じだったんだけど、
うちの親父(三男)を含めて大人連中全員が真剣に嘆いたり、祟りを防ぐために家から離脱すべきだとか話してるの見て、初めて怖くなってきた。

で、その日可也遅くまで話し合いが持たれた挙句、伯母(長男の奥さん)、俺の母は離婚して旧姓に改め、子供たちも全員姓を変えることに決まった。
それ以外に、伯父(長男)と、親父はそのまま屋敷に留まり、「オコボッサン」を探し続ける事。他の親族は全員本家に近寄ってはいけない事なんかも決まった。
ちなみに、うちの親父は一流に入ると思われる会社の管理職だったんだぜ?

で、それから一月もしないうちに親父から連絡があって、伯父が屋敷の近くの崖から飛び降りて死んだっていう話を聞いた。
「次は自分の番だ」って、あの豪胆だった親父が震え声で言ってた。
その時に、もし海の夢を見たら、学校なんか直ぐにやめて、寺に駆け込めとも言われた。

その電話があって更に一月後。東日本大震災で、屋敷ごと流されたらしい。死体は未だにあがってない。
幸い俺はその後海の夢なんか見なかったし、伯父(長男)の息子達も元気にしてる。
だから、祟りは終わったのかもと思う反面、この理不尽な話の理由を知りたいとは今でも思ってる。

以上、大して怖くないかもしれんが、>>699氏の考察の参考にまで

>>702さん(釣りじゃないと思って書きます)
>>696さんも言ってるけど「オコボ」って子供が七五三のお祝いとかで履く下駄の事みたいだね(知識足らんからwikiった)
それを祀ってた理由が子供の守り神的な理由なのか、幼くして亡くなった子供のための供養のためなのか、もしくは後ろ暗い理由があるのか…
七五三って間引きの期間だったり厄除けの期間だったり意味が色々だから、それによって真逆の解釈が出来てしまう…

お堂ってそこにいるであろう神さんが現世に影響できないようにするための結界だったりするから、それを伯父さんが破っちゃったってことになるのかな
ただお家を守ってたものっぽいし、本家が絶えてしまったことで悪いことは終わりじゃないのかな

役に立てなくて申し訳ないです
ご親族のご冥福をお祈りします
オコボッサン

笑う塊

某SNSでも書かせて頂いたから見たことある人もいるかも。
2年ほど前の話です。
広島からから都内の会社の内定式に参加した私はそのまま会社近くのビジネスホテルに一泊する事にした。
そのホテルは1・2階が証券会社。
3・4階が客室。5階がフロントで、そこから上がまた客室という変わったつくりのホテルだった。

チェックインを済ませた私に渡されたのは4階2号室の鍵。
4階に下りた私が自分の部屋を探してフロアをウロウロしていると1枚のドアに目が止まる。
その扉には部屋番号のプレートが付いていた後はあるのだが肝心のプレートが付いていない。
部屋の配置図を見ると、やはりそこは15号室らしい。

ひと部屋も無駄に出来ないその手のホテルで折角の部屋が潰してあるのだから客室でどなたかがお亡くなりになられて使えないんだろうと思った。
私は自分の部屋を探し出し、入って行った。
翌朝も早かったため、一刻も早く眠りたかったので、23時前にはベットに潜っていたが、どうにも寝つきが悪い
部屋の空調を調整しても何をしても眠れない。
テレビを付けてボーっと眺めて時間を潰していたら午前3時半頃ウトウトし始め、いつの間にか眠りについていた。

少しするとパッと目を覚ましてしまった。
起き上がろうとすると体が動かない。金縛りだった。
それと同時に耳元で誰かが「アハハ。アハハ」と笑っている声が聞こえた。
声の方を向こうとするが、金縛りのせいで体が動かない。
なんとか眼球だけ動かせることに気付いた。
声のする方へゆっくり目を向けとそこで笑っていたのは真黒い塊だった。
寝るためにメガネをはずしていたのではっきりとは見えなかったが、
私にはそれが「人の頭」のように見えた。

その笑いかけてくる人の頭のような黒い塊はスゥーと天井近くまで上がって
左右に揺れながら私に向って「アハハ。ハハ。アハハ」と笑い続けていた。
恐怖で声の出ない私は揺れながら笑う塊を見続けていた。
なんとかこの場を逃げ出したい私はありきたりだが、心の中で必死にお経を唱えた。
するとスッとその塊は消えて金縛りも解けた。
後日解ったのですが、やはりそのホテルは、私が宿泊するひと月ほど前に同じ4階で男性が焼死体で発見される事件があったそうです。
そしてその方が焼死されたのは私の誕生日と同じ9月7日だったそうです。

という体験談です。
笑う塊

ガラスの中の人

私はN県の出身で、私が住んでいる街には地元では比較的有名なカトリック系の女子大があります。
私の母はその大学の卒業生でもあり、その頃講師として働いていました。
当時中学生だった私も、放課後や休みの日は母に連れられてその大学に時々遊びに行っていました。

ある日、私はいつものように学生服を着たまま母と一緒にキャンパスへ遊びに行きました。
その日は授業がない日だったようで、一部の職員とシスターがいるだけで、学生は全く見かけませんでした。
キャンパスはそんなに広くないのですが、人も少なくとても静かだったのでまるでゴーストタウンのようでした。

母は会議があるとのことだったので、私をおいて会議室に向かいました。
中学生の私が制服でキャンパス内を歩いているとどうしても目立つので、一人の時は図書館で本を読んで過ごしていたのですが、
その日は学生さんたちがいないこともあって、大学を探検することにしました。

キャンパスの建物の中をあちこち回っているうちに、建物の外に出てしまいました。
この大学のメインとなる建物は、一階の壁面がガラス張りになっていて、鏡のように外の景色の広い範囲を映しています。
建物の外をぐるっと歩いてみようと思い、建物を右手側にし歩き始めました。

この時私はガラスに映る自分と景色を眺めながら歩いていたのですが、ふと私の後方を映しているガラスに注意を向けると、後ろの方に人がいるのが見えました。
その人は私と同じデザインの学生服を着ていたので、私は同じ中学校の生徒だと思い、後ろを振り向きました。
しかし、後ろには誰もいません。
おかしいな、見間違いかな、と思ってまたガラスを覗いてみました。
やっぱりいます。
「これは変だ!」そう思った瞬間、その人はこちらに向かって、物凄い勢いで走ってきました。

ぱっと後ろを振り向きましたが、やはり誰もいません。
ガラスに映っている中学生は、両手を大きく振る奇妙なフォームで走りながら、どんどん近づいてきています。
混乱してしましまった私は、その場から動けなくなっていました。

どうしよう、どうしようと思っているうちに、ガラスに映る「その人」は、
ガラスに映っている私の目の前まで迫ってきてしまいました。
ぶつかる!そう思った私はガラスを見ながらどうにかして避けようとしたのですが、
あることに気づいて、恐怖で体が固まってしまいました。
ガラスの中で、こちらに向かって走ってきた「その人」は私でした。
顔も髪型も、体格も着ている制服も、全く同じ間違いなく私でした。
ただ唯一違うのは、その「私」の表情が、気味が悪いくら歪んだ笑顔だったという点でした。

ガラスに映っている、その「走ってきた私」は「立ち尽くしている私」の横を通り過ぎると、
その気味の悪い歪んだ笑顔のまま、ガラスに映る景色のなかを走り去って行きました。
本当に一瞬の出来事でした。

怖くなった私は母たちのいる所へ戻り、自分の身に起きたことを全部話したのですが、全く信じてもらえませんでした。
その大学の他の職員やシスターにも話をしたのですが、相手にされませんでした。

あれからもう5年近く時間が経ちましたが、私に特に異常はありません。
ドッペルゲンガーを見たのかもしれませんが、今のところ大きな事故や病気もなく、健康にしています。
ただ、私のこの体験は見間違いや白昼夢ではなく、間違いなく現実のものでした。

あのガラスに映るもう一人の自分を見てから、世の中にはオカルト的なものもあるのだと考えるようになりました。

ガラスの中で、こちらに向かって走ってきた「その人」は私でした。
顔も髪型も、体格も着ている制服も、全く同じ間違いなく私でした。
ただ唯一違うのは、その「私」の表情が、気味が悪いくら歪んだ笑顔だったという点でした。

ガラスに映っている、その「走ってきた私」は「立ち尽くしている私」の横を通り過ぎると、
その気味の悪い歪んだ笑顔のまま、ガラスに映る景色のなかを走り去って行きました。
本当に一瞬の出来事でした。

怖くなった私は母たちのいる所へ戻り、自分の身に起きたことを全部話したのですが、全く信じてもらえませんでした。
その大学の他の職員やシスターにも話をしたのですが、相手にされませんでした。

あれからもう5年近く時間が経ちましたが、私に特に異常はありません。
ドッペルゲンガーを見たのかもしれませんが、今のところ大きな事故や病気もなく、健康にしています。
ただ、私のこの体験は見間違いや白昼夢ではなく、間違いなく現実のものでした。

あのガラスに映るもう一人の自分を見てから、世の中にはオカルト的なものもあるのだと考えるようになりました。

以上です。
書きこむのは初めてだったので、読みにくかったでしょうか。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

やはり私が見たのはドッペルゲンガーなのでしょうか。
ガラスの中の人

無口な男

いきつけの居酒屋であった話。
5年ほど前、ある変わった常連客がいた。身なりのきれいな中年の男で、いつも焼き鳥数本と瓶ビールを頼み、小一時間で帰る。
何度もカウンターで隣になったが、話しかけても無視される。
マスターとも注文以外の会話はなく、無口な男だな、くらいの印象しかなかった。
しかしある日、後から入ってきた他の常連客に向かって男か突然怒鳴った。
今すぐ家に帰れ!女房を病院に連れていけ!と。
常連客は取り合わず、しかし男は訴えかける。
段々口論気味になってきたところで、マスターが制止した。
常連客が家に電話すると、女房は早々に寝てしまったとのこと。
俺たちはなんだか嫌な感じがして、常連客を説得し帰らせた。
俺が男にどういうことか訪ねると、
いつもこうだ、、みたいな愚痴っぽいことをぶつぶつといい、お代を払い帰ってしまった。

後日、先の常連客から聞いたところによると、
女房は軽い目眩を感じ、大事をとって横になっていたという。
店での一件もあり、なにか不気味に感じた常連客は女房を病院に運んだ。
病院で症状を話すと、すぐに様々な検査が行われ、なんと緊急手術となってしまった。
くも膜下出血だった。
手術は成功し、目立った後遺症もなく、女房は無事回復したが、
医師はこの状態でよく気がついた、大概もう少し進んでから来るものだ。しかし、それでは手遅れなのだが。
というようなことを語っていたという。
男はその夜以来店には来なくなったらしい。
マスターが言うには、

・多分男には予知能力みたいなものがある
・しかし、それのせいでなにか損をしてきた過去があり、塞ぎこんでいたんだろう
・どういう訳でうちの店に通ってくれてたのかはわからないが、
会話しないとはいえ、よく顔をあわせる同じ常連客の不幸を黙ってみてはいられなかったのだろう
・なにか詮索されるのを嫌がり、来なくなってしまったのだろう

考え過ぎだとは思うが、そう思うとなんとなく筋道が通るような気もする。
もちろん、こういった場でしか話せない、とりとめもない話なのだが。
男は嫌がるだろうが、出来れば詳しい話を聞いてみたかった。
無口な男

亡くなった叔父

もう、何年にも前になる話です。
叔父は、ちょうど私が小学生の時に、亡くなりました。
別にただ、亡くなっただけなら良いのですが、その亡くなった時期が今考えてみれば恐ろしくなります。

母方の祖母は、蜘蛛膜下内出血で10年は入院していました。
とはいってもその前に亡くなった祖父とは違い、病院をたらい回しにされていました。
そして亡くなる1ヶ月位前に、ようやくある私立病院に落ち着きました。
祖母が亡くなった時、私は当時小学生で何が起こったのかわかりませんでした。

葬儀の後の親戚一同集まった食事の席で今話すべきではないことを話しているのは亡くなった叔父の奥様でした。
叔父の奥様は酷く金銭に関してケチで、生前祖母が母に愚痴を零すほどでした。
その祖母が、亡くなった。
それは奥様にとって、好都合だったのでしょうか。
土地や家財に関しての話しをしていました。

そして葬儀も済み、母の実家を取り壊し、自治祭が済んだ翌日です。
今度はその奥様の夫、つまり叔父が亡くなりました。
叔父は母と叔父の兄を挟んで次男で、よくお酒を飲む人で、家に帰らないことも多々あったので
その日奥様は、またどこかで呑んで帰らないのだろうと思っていました。

ところが、一週間経っても叔父は帰ってきません。
叔父の兄はすぐさま捜査願いを出しました。
すると、叔父は水死体となって地元の海岸で見つかりました。
叔父は不審な点があるのに、事故死で済まされました。
親戚は、叔父の亡くなった日が、自治祭の翌日だったので、こう云いました。
「きっと、チエコさんは、息子の嫁が嫌いだったから、息子を連れていったのよ」
亡くなった叔父

声魂

私本人が体験した話です。
今からちょうど10年前、私がまだ大学生だったころのことです。
当時、私には一つ年下の彼女がいました。

彼女は霊感の強い子で、それまでにもさまざまな体験をしていました。
妙な音を聞く、街中でおかしな人影をみる、金縛りにもよくあっていたようです。
特に、嫌な場所(彼女が言うには、空気がよどんでいるらしい)
の側に行くだけで、頭が痛くなるほどでした。

その日、いつものように僕は彼女の家に泊まりにいっていました。
場所は渋谷区笹塚にあるワンルームマンションで、甲州街道を渡り、
商店街を抜けて左に折れてしばらく行ったところにある白い建物です。

わずか4畳半ほどの狭い部屋で、入り口を入ると左側にキッチン、
右側にはユニットバスという、よくある間取りです。
部屋には窓が二つありました。
一つはバルコニーに面した大きな窓、そしてもう一つ、問題の小さな窓が左側の壁面、
エアコンの真下に、ちょうど人の胸の高さのところにありました。

その日はいつもより早く就寝し、
大きな窓に添うように置いてあるベッドで二人寝ていました。
時間は覚えていません。僕はふと目がさめたのです。
頭の上にある窓とエアコンの辺りから、パシン、パシンと
何度か音が聞こえており、その音で目覚めたのでした。
妙な目覚めの良さで、頭がすっきりしていたことを覚えています。

季節は冬ということもあり、部屋の内装の乾燥による音だと
思って、しばらくエアコンを見つめていました。
それが起きたのは次の音が鳴り響いた時です。

突然、隣に寝ていた彼女が「ううぇ」と何度も唸りはじめ、
体を硬直させ全身震え始めたのでした。
悪い夢にうなされているのだと思い、すぐさま彼女を起こそうと
僕は彼女の体を揺り動かしました。彼女はうつろな、どこにも
焦点のあっていないような目で天井を見つめたまま、こう言い始めたのです。

「おぉ、女の、中年の女の声が・・・。『お前の子供が6才になったら、海で溺れ死にさせてやる』」
僕はなぜかとっさに思いました。さっき自分の聞いた音は、乾燥による
建材の音ではなく、ラップ音なのだと。
訳もわからず僕は彼女を抱き寄せて、お腹の中で叫んだのでした

ただ頭の中にあったのは、テレビで聞いた『声魂』でした。
霊に襲われそうになった時、声にならずとも腹の底から叫べば
霊を追い払う事ができるというものでした。
「彼女のところに来るんじゃない!来るのなら俺のところへ来てみろ!」
2度ほど叫んだと記憶しています。

2度目を言い終わったと同時に最後の音が同じ窓のところから響きました。
パシンッ
次の瞬間、彼女がこう言ったのです。
「女が『クソッ、チクショウ』って言った・・・」

彼女はこの部屋に越してきてから何度か妙な体験をしており、
僕にはそれを話していなかったのです。霊の通り道というのを
どこかで聞いたことがありましたが、何度か彼女はそれを
この部屋の中で体験していたのでした。

霊感の強い人間と一緒にいると影響されるとも聞きます。
それまでの僕にはこうした体験は一度もありませんでした。
興味深いのは、彼女が1ヶ月ほど前に見てもらった占いのなかで
「あなたの彼はあなたを救う星の位置にあります」
と言われていたことです。
現在、その白いマンションはまだ存在しています。
声魂

死者の通り道

これは母から聞いた話です。
私の曽祖父、つまり母の祖父が亡くなったときのことです。
曽祖父は九十八歳という当時ではかなりの高齢でした。
普段から背筋をぴんと伸ばし、威厳ある老人だったとのことです。

しかしそんな曽祖父も老衰には勝てず、床に着くようになりました。
曽祖父は、母の住む家のごく近所に住んでいたため、
母の母、つまり祖母が看病に通っていました。

母は当時高校生で、曽祖父が亡くなった日も学校へ行っていました。
一週間くらい前から、そろそろだと言われていたそうですが、
まだ大人でない母に、人の死に目など見せないほうが良いという祖母の判断で、
母は曽祖父の床へは近づくことを許されませんでした。

学校から帰った母は、自分の部屋で畳の上に仰向けになり、
とりとめもない考え事をしていました。
一時間にいっぺん、ぼーんぼーんと、居間にある柱時計の音が聞こえてきます。
(いま、何時だろう)
そう思って母が、机の上の置時計を見上げた瞬間でした。
(あっ!)

体の自由がききません。視線以外はまったく動かせないのです。
(これは金縛りだ)
この事実に少し混乱しましたが、それと同時に母は曽祖父のことを思い浮かべました。
(まさか、おじいちゃん……)
すると、曽祖父の家がある方向の壁から突然、白い馬の首が現れました。

馬はそのまま、壁を抜けて母の部屋に入ってきます。
白い馬は、着物を着た人を乗せていました。
何もかも真っ白で、額には三角頭巾。幽霊の装束です。
幽霊を乗せた白い馬は次から次へと現れ、全部で六頭になりました。

彼らはゆっくりと、重々しく進んで行きます。
真っ白な着物のたもとが、風になびくように揺れています。
その集団が母のすぐ側まで来たとき、その中の一人が母の方を見ました。
(おじいちゃん!)
それはまぎれもなく曽祖父の顔でした。

曽祖父は威厳に満ちた穏やかな、しかし感情のない顔で、
しばらくの間ただじっと、母を見ていました。
やがて曽祖父は前を向いてしまいました。
その時になってようやく、母は首なら動かせるようになっていました。
彼らがどこへ向かっているのか気になって、母は首をめぐらせて彼らの行く方向を見ました。

部屋の反対側の壁へ消えて行くのかと思いきや、彼らの進む方向には穴がありました。
ぽっかりと、灰色の渦のような、異次元への入り口を思わせるような穴でした。
(おじいちゃん、死んでしまったんだ)
その穴を見た瞬間、母ははっきりとそう思いました。

母が見ている前で、彼らは静々と進んで行き、やがてその穴の中へ消えてしまいました。
彼らが消えると同時に、母の金縛りも解けました。
そしてその日の晩、母は曽祖父が亡くなったことを知ったのでした。
亡くなった時刻はちょうど、母が金縛りにあっていた時刻だったそうです。

この話には、すこしおまけがあります。
後年のことですが、機会があって、母は友人と金縛りの体験について話をしたそうです。
その友人の旦那さんは、頻繁に金縛りにあう方で、
親戚の誰かが亡くなると必ず金縛りにあい、しかもその間、
亡くなった人が穴へ吸いこまれていくのを見るとの話でした。

穴、と聞いて、母が自分の体験談を話すと、友人にその穴の絵を描くよう言われました。
旦那もそんなような穴だと言っていたから、と言うのです。
母は近くにあった子供用のクレヨンで、その穴の絵を描きました。
帰宅した友人の旦那さんにその絵を見せると、その穴はまさに、旦那さんが見る穴にそっくりだったそうです。

スレチ感もありますが、自分としては死後の世界への扉が、
非常に身近に感じられ、怖かったのでカキコします。
長文乱文失礼しました。
そして読んで下さってありがとうございました。
死者の通り道

とどめ

中学の時の実際あった話。

ちいさい頃、うちの家の近くに
蔦の絡まる古い洋館があって
なにもない田舎の風景にポツンと建つその洋館が
違和感ありまくりで、かなり不気味だった。

当時、仲のよかった友人3人と
駄菓子屋に寄った帰り、その洋館の前を通った。
大工のせがれだったキヨミチは

キヨミチ「この家、うちの親父がつくったんぞ!」

と自慢しだした。
レンガ作りの物珍しさで村一番の話題の家だったそうだが
年月が経つにつれ、いわく付きの建物として有名になった。
何度も続くボヤ騒ぎ、赤レンガは黒いシミに覆われ
建物の周りでカラスがねじれて死んでいるのが
発見された事もあったとか。

キヨミチ「小学校の美術室に白うんこあるじゃん、ここの家の人が
学校に贈ったんだよ」

白うんことは、石膏で作られた女性像なのだが
流線型のポーズが遠目からみると巨大なうんこに見えるので
みんな白うんこと呼んでいた。

懐かしの白うんこで盛り上がり
古洋館のフロアに白うんこが残ってるという話になり
見に行こうという事になった。

窓から覗くと・・・
白うんこ4本、真ん中に、ちいさな白うんこ1本。
女性像4体が子供像を囲んでいた。
キヨミチとトキオはゲラゲラ笑っていた。
・・・が、俺には不気味で恐ろしかった。

石膏で作られた子供の像は、ところどころ黒く変色し
膝から壊れて足が無かった。
柱が支えになって立っていたが
俺には、鉄柱に串刺しになって
拷問を受けている様にしか見えなかった。

キヨミチ「もっとあるかもしれない、中入ってみようぜw」
トキオ「入れるの?鍵かかってるんじゃない?」
キヨミチ「裏口の扉腐って開きっぱなしになってるから
そこから入れる! 行こうぜw」

冗談じゃない!!・・と思ったが、二人のおかしなテンションに負け
中に入ることになった。

塀に囲まれ雑草が伸び放題の中を進んで行くと
裏口に着いた。
足元がやたら泥濘を帯びていた。
フッ・・・と生暖かい空気が流れた、と、同時に生臭さが
周りを包んだ。

キヨミチ「クッサ・・・ゆで玉子が腐ったみたいな」
トキオ「屁だろこれww屁こくなやキヨミチwwww」
キヨミチ「こいてないわww」

裏口に着いた。 扉は半壊し腐って朽ちていた。
蝶番が辛うじて木片を繋ぎ止めてはいたが、扉とは
呼べない状態だった。
中を覗き見ると、意外と綺麗な状態。
植物に侵食されている様子もなかった。
ただ、床は変色し、奥に行くにつれその色は
濃くなっていった。

キヨミチ「けっこう広いな」
トキオ「秘密基地に使えるよな!」
キヨミチ「俺この部屋もらうわww」
トキオ「おお!ベット!!いいなーw」

我が物顔で屋敷の中を歩きまわる二人。
そんな中、俺はさっきの子供の像が気になっていた。
怖いもの見たさ、好奇心がそうさせたのだろうか
どうしても近くで見ておきたかった。

吹き抜けのフロアに出ると、さっき窓から覗いた
場所に着いた。
4体の女性像と、1体の子供の像。
思っていたより大きい・・・子供を囲む女性像は
それぞれ流線型のポーズをとり、直立する子供を
守るように囲んでいた。

子供の像を目の前にした俺は
本当に・・・・後悔した。

これ、石膏じゃない・・・。
石膏だと思っていたのは包帯だった。
全身を包帯で巻かれボロボロの服を着た子供が
鉄柱に串刺しにされ立っていた。

コーーー・・・っ・・・・ホーーー・・・っ・・

コーーー・・・っ・・・・ホーーー・・・

生臭い・・・においが・・・
え?呼吸?・・・まだ生きてるの!?
た・・・・たすけなきゃ・・・・・・・・!!!!

そのときっ!!!
馬鹿二人がフロアにやって来た!!

キヨミチ・トキオ「白うんこ発見!!キーーーーック!!!!」
ドカドカッ!!!! ドンガラガッシャーーーーん!!

ドミノ倒しになった白うんこ像・・・の下敷きになる子供。

おぎいいいいいいいいいい!!!!!!!!!
ああああ大丈夫?大丈夫なのか??
あ、息してないわw うわあああああ!!息してないよ!!!!!
死んだ!!!今死んだwwwww
こいつらが、とどめ刺しやがったあああああ!!!!!
いやああああああああああああああああああ!!!!!!
とどめ

・・・・。

で、ここからあまり記憶がはっきりしない。
警察官呼んで、警察来て、事情聴取されて
・・・と、曖昧。

警察が来て子供の遺体は回収された。

俺たちは散々怒られたが、お咎めなしで帰された。

当時の新聞にも載り、第一発見者の俺は人気者になった。
古い洋館は市が取り壊し、今はセカンドストリートが建ってる。

あの出来事から27年。
同窓会で久々にキヨミチ・トキオに会う。
そろそろ話してもいい頃合いだと思うので
今まで警察にも黙っていた事を話そうと思う。

当時新聞の記事
「少年の遺体発見され・・・足が切断され・・・
亡くなって間が無いことから・・犯人は近隣に潜んでいる可能性・・・」

会ってちゃんと話そうと思う。
あれ、お前らが殺したんだよって。

最後に
福井に住んでる人なら覚えてる人いるかも知れない。
実際、新聞にも載ったから。
もし当時の新聞見付けたら譲ってください。
お願いします。

でわ。
とどめ

深夜の潮干狩り

もう10年も前の話になるんだが、いまだに思い出すと不思議で怖い。
自分には霊感なんか無く、肝試しや夜の山とか海とか人並みに行ってたけど
霊体験なんてしたことなかった。
信じてないわけでもなく、普通に怖がりだけどテレビで見たり文章を読んだりする程度。

その時も、当時の彼女とデートというわけでもないけど
車でふらふらしながら行き先もなくドライブしてた。
たしか、平日で近場の夜景を見に行ってラーメン食べて帰りしなに海でも寄る?って感じだったと思う。
翌日休みだったから朝まで車でフラフラしてるのがよくある事だったんだけど
その日はなんとなく海でヤドカリ用の貝があるか探してみようかって話になった。

その海は 潮干狩りもするしイベント事もあり怖い話なんて聞いた事もない
地元民なら何度か行ったことのあるわりと有名なヨットハーバー。
駐車場も広いし、砂浜もあるし、週末にはナンパ車が集まったりカップルがいたりする普通の海。
なぜか車が1台もいなかったけど、平日だし夜中だったし「今日人いないな」程度だった。
もともと街灯が届くので 暗い海でもないのだけど、その日は月がすごく明るくて砂浜もすいすい歩けた。

つきあって数年たってたカップルとしては特にいちゃいちゃもせず2人は距離を置いて貝を探してたんだけど
ゴミや海草が多く、なかなか割れてない貝は見つからない。
少したって、彼女が「これヤドカリ入ったらかわいくない?」と言ったので近付いてみた。
白い巻貝で欠けも無く大きさもいい感じで「いいね持って帰ろう」と俺は言った。
その時、ふと彼女の右手を見ると 長い髪の毛がからんでた。
彼女はショートカット。
俺は排水溝に溜まった濡れた髪の毛を思い出し、少し気持ち悪くなった。
別に霊的な感じで気持ち悪いわけではなかった。
海に来た人の抜け毛としか思わなかった。
俺は「きもいなー」と言いながら髪の毛を捨て、貝を海の水で洗った。

他にも無いか探そうとすると彼女が「もう帰ろう。」と言い出した。
まだ1つしか見つけてないし、砂浜は広い。
月明かりでなんかいい感じだし 俺はもう少しいたかった。
「月の光を瞼に受けて とてもキレイな気持ちになる」とアンルイスの歌が聞こえてくるようだった。
時計を見ると3時前。まだ早いと思った俺は「もう少し」と渋った。
しかし彼女は俺の手をにぎり、急ぎ足で車へと向かう。
ちょっとむかついて何か言おうとした時、ふと左を見ると堤防の手前の砂浜を男子学生が歩いていた。
なぜ学生とわかったかと言うと、学生帽をかぶって学ランを着ていたのだ。
「へー今時 学生帽ってあるんだ」と感心してしまい
彼女に「ちょっとあの子見てよ めずらしいよ」と小声で伝えた。

でも彼女は見なかった。
「あとで」と言って真っ直ぐ前を向き、俺の手を強くにぎっていた。
「なんだよ・・」と思った時、ふと不思議に思った。
学生帽もめずらしいけど、この時間に学生服??民家からも歩くには距離ないか?
あれ?と思いもう一度見ると彼の姿はもう無かった。
この間、おそらく1、2分程度。
堤防はずっと先まで見渡せる。月明かりと街灯で真っ暗な場所は無い。
でも怖いとは感じなかった。
「もしかしたら幽霊って、意外に普通に見えていて気付かないものなのかもしれないなー」と思った。

俺は、彼女が見ていたらどう見えたのか、と知れなかった事がとても残念だった。
あまりに直線的に歩く彼女に対し、共感できなかった事を不愉快になりながらも
もしかしたらトイレなのか?と考え 車まで俺も急ぎ始めた。

彼女は車のドアを開けると駆け込むように乗り込み、コンビニ行こう!と強めに言ったので
「やっぱりトイレだったのか。言えばいいのに・・」と思いつつエンジンをかけた。
車がマリーナの駐車場を抜けてコンビニの明かりが見えた頃、彼女の肩の力が抜けたように感じた。
そこで俺は「さっき堤防で学生帽かぶった男の子見たよ~」と切り出してみた。
すると彼女はいきなり泣きだし、「早くコンビニへ行って!」と叫んだので驚いた。
そんなに余裕が無かったのか・・と思い駐車場へ着くと
「笑ってた!」「女が耳元で笑ったの!」と泣き出した。

彼女の話によると、貝を拾った後 何か聞こえたような気がして海面を見たらしい。
すると藻の中に女性の頭部が見えて 口元ギリギリまで水に浸かってたと。
大きく開けた女の口は1/3は水の中にあったのに 彼女の目を見ながら甲高い笑い声をあげていた。
波打ち際からそう距離は無く、海水浴場にもなるあの場所は大人の膝までしかないはずだ。
そこから彼女は近付いてこようとしているように見えて 急いで場を離れたかった。
車に乗る直前、ミラーに女の全身が見えた。そして耳元で笑い声が聞こえた。
笑いながら女は「次はお前だ」と言ったと・・。

俺は半信半疑で震える彼女が落ち着くまで待った。
コンビニで暖かいココアを買い、飲ませた。
次はお前ってなんだろう・・と思い 「そういえば」と貝の事を思い出した。
いい貝あったから良かったと思おうよ。貴重な体験だったよね。となだめようと
貝をポケットから出してみた。
コンビニの明かりに照らされたそれは、貝ではなかった。
なぜ巻貝だと見間違えたのかわからないほど小さな
人間の奥歯に見えた。
俺たちはコンビニのゴミ箱に歯を捨て、もう明るい道を無言のまま帰った。

次はお前だ・・この意味がわかったのはそれから3日後だった。
週末になり、気を取り直していこうと彼女を迎えに行った時
彼女は白いアメカジを着ていた。
それは彼女がミラーで見たと言っていた 女の姿そのものだった。

アメカジと聞いて。ちなみに彼女はおらんが嫁がいる。
深夜の潮干狩り

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2019年08月25日