<閲覧注意>本当にあった怖い話「肝試し」「山賊」「仏壇守り」

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<閲覧注意>本当にあった怖い話「肝試し」「山賊」「仏壇守り」についてまとめました。

肝試し

あれは俺が小学生に上がったばかりだから、もう20年以上昔の話だ。
この前の辻事件を書いてて思い出したが、俺の住んでた村には結構、
そういった怪奇スポットがいくつかあった。今回も少し長めです。

今回は夏に行われたお化け大会の時の恐怖体験ついて書いてみる。
場所は近くの神社。そこはうっそうとした林の中にあり、昼間でも
怖くて一人では近づきたくない場所だった。ルールは簡単。ひとり
ずつ本堂の奥にある祠の前に置いてある箱からゴムボールを1個持ってくるだけだ。

しかし小さかった俺には死ぬほど怖かった。街灯は無いので真っ暗。
皆、懐中電灯を片手に震えながらボールを取ってきた。奥の方では
悲鳴が聞こえる。上級生がお化けの役になって、下級生を驚かして
いるからだ。中には怖くて途中で引き返してくる子もいた。そうい
う子には上級生が一緒に行ってあげてボールを取ってきた。

いよいよ俺の番だ。
心臓が口から飛び出るくらいバクバクしている。半ばヤケクソ状態
で先へと進んだ。本堂までは50m位だったが本当に真っ暗だった。
緊張で懐中電灯が左右にブレる。と、俺の視界左横に何かが見えた。
人魂だ。ゆらゆらと俺に付いて飛んでいる。俺はまったく気にせず先へ進んだ。

前にもちょっと書いたが小さい頃の俺はそういうものが普通に見え
ていた。なので人魂程度ではたいして驚かなかった。ようやく本堂
に着いた。左の脇道から裏へ回る。と、お化けの格好(狼男?)をし
た上級生が飛び出てきた。ヒィ!あまりに突然だったので悲鳴を上
げた。人魂より人間の方が怖い。俺は先へ進んだ。

次に出てきたのは鹿のお面をかぶった鹿男だった。ヒヒーンと鳴い
ている。俺は無視するように祠へ向かうと箱からボールを取った。
と、頭上から白い服を着た人形が垂れ下がってきた。さすがに、
これには腰を抜かした。ブランブランと揺れている人形をしばらく
見ていたが、ハッと我に返り本堂の逆サイドから帰ろうとした。

あまりの怖さに泣きべそをかきながら走った。そして本堂の脇を抜
ける時、誰かが本堂の外廊下に座っているのが見えた。お化け役の
上級生かと思ったが体は俺と同じくらいの大きさだ。着物を着て、
おかっぱ頭。女の子のようだった。手には赤い毬?を持っていた。

(先に行った子かな?何でこんな所に座ってんだ?)

俺は無視してその子の前を走り抜け、そのままスタート地点まで戻
った。俺はゼェゼェ言いながら係の子にボールを渡した。

あれ?何だこれ? おい、こんなの入れてあったか?

俺は何のこっちゃ?と思ったが、渡したボールを見て愕然とした。
それはボールではなく、毬だった。それもあの子が持っていたのと
同じ赤い毬だった。俺は確かにあの時、箱から黄色いゴムボールを
取り出したはずだ。それがいつの間にか毬に替わっていた。。。

俺は訳がわからなかったが係の子達はまぁいいかと言って収まった。
ほどなくして全員の順番が終わり、お化け大会は終わった。もちろん
最後に集合した子供たちの中に、あのおかっぱの子はいなかった。
翌日、あの子がどうしても気になった俺は友達を誘って神社に行ってみた。

今考えれば、やめておけばよかったと後悔してる。

夕方だがまだ明るく友達もいたので全然怖くなかった。本堂の周りを
一周してみたが、これといって変わったものはなかった。付き合って
くれた友達は、ひ~ちゃんというあだ名で彼は昨夜、ここで人魂では
なく大きなUFOが飛んでゆくのを見たそうだ。人魂もUFOも同じ
周波数帯にいるのか?俺は子どもながらに、ふ~んと思った。

二人で神社の周りをアレコレと散策していると、ビシッ!という何か
が突っ張るような音がした。ん?何だ今の?音はひ~ちゃんにも聞こ
えたようだった。視線を回してみるが誰もいない。俺は祠のあたりを
調べたが特に何も異常はなかった。と、本堂の正面を調べに行った
ひ~ちゃんから俺を呼ぶ声がする。正面に行くと彼は本堂の正面の戸から中を覗いていた。

どした?
シーッ・・・あれ見てみろよ。

俺も同じように格子の隙間から中を覗いた。
中には大きな神棚がありご神体祭られている(フタが閉じていたので
ご神体は見えなかったが)。と、その神棚に向かって小さい子供が座っ
ているのが見えた。咄嗟に昨日の子だ!と気がついた。しかし、どう
やって中に入ったのか、鍵は外からかけられているではないか。

何だあの子?どこんちの子だ?

何も知らないひ~ちゃんは、あの子が近所の子だと思ったらしい。
俺は必死に昨日のことを説明しようとしたが、なぜか声が出ない。
それどころか体が思うように動かなくなっていた。つまんないから帰
ろうぜ~と彼は言うと俺を置いてさっさと鳥居(昨日の大会の出発地点)
に向かって歩き始めた。俺は(ま、まってくれよ・・・)と心の中で叫ん
だが、まったく気づく様子もなく行ってしまった。

と、そこにビシィッ!という音が聞こえた。さっきより大きい音だ。
目線を本堂内に戻すと、あの子が両手で何かをしているようだった。
ビシィッ!それは両手で何かを引っ張った際に出る音だと気づいた。
と、その時、おかっぱの子がこっちに振り向いた。

顔がない

えっ!?
昨日は暗く、うつむいてたから気がつかなかったのか・・・!?俺は完全に
パニックになりかけていたが、とにかく鳥居のほうへ・・・この神社の敷地
から外に出なくては!と思い、うまく動かなくなった体を引きずるよう
に本堂の階段を降り、庭の石畳を鳥居方向へと進んだ。ひ~ちゃんは
かなり先まで行ってしまっている。。。と、本堂の戸が開く音が聞こえた。

ギィイィィ・・・

俺は振り返らなかった。いや、恐ろしさで振り返れなかったんだと思う。
ズリッ・・・ズリッ・・・重くなった足を引きずりながら、おかぁちゃん、おか
ぁちゃん、と泣きながら叫んだ。

一緒にあそぼ・・・

確かに聞こえた。おかっぱの子が言ったんだと思う。正確には聞こえたと
いうか心に響いたというか。。。しかし恐怖でいっぱいの俺は、とにかく
逃げたい一心で先へ進んだ。いや、これも正確には進んでいなかった。。。
俺は見てしまった。自分の足元を。重いと感じていた原因を見てしまった。

俺の両足には真っ赤な糸?がフォークで絡め取ったパスタのようにぐるん
ぐるんに巻きついていた。えっ!?何これ! その糸はおかっぱの子から
伸びていて俺の足をがんじがらめにしていた。そしてさっきから聞こえてた
ビシッ!という音はその子が赤い糸を引っ張ってる音だったのだ。。。

俺は「もうダメだ・・・」と思い諦めた。明らかに小学1年生に出来る範疇を
越えていた。

ここで一緒にあそぶんだよ・・・ずっと一緒に・・・

そう聞こえたと同時に、ズルズルと本堂の中へ引っ張られてゆく感じがした。
俺は仰向けに倒れ、空を見ていた。フフフッ・・・フフフッ・・・というおかっぱの子の笑
い声と引きずられる音だけが響いた。まるでここだけ時間が止まっているか
のようだった。俺は諦めた。怖さより、もうこれで親や友達に会えなくなる
ことが悲しかった。そして本堂の中に体が入る瞬間、何かがひっくり返った。

バサァァァッ

ひっくり返ったのは俺だった。視線が前後上下左右に揺れまくった。一体、
何が起こっているのかわからなかった。気がつけば本堂を上から見下ろして
いる感じだった。えっ!?俺は足が軽くなったのがわかった。何だこれ!?
と思う間もなく、急降下してそのまま鳥居がある入口のほうまで一気に飛ん
でいった。あろうことかすぐ目の前には、ひ~ちゃんの背中が見える。

俺はそのまま映画のスローモーションのようにゆっくりと地面に足をつけた。
瞬間、時間の流れが正常に流れ始めたのがわかった。俺は振り返ろうとした
が、地面の底から響いてくるようなおぞましい声が聞こえたので固まった。

おぉぉのれぇぇぇ・・・邪魔をしおってぇぇぇぇ・・・

何のことかわからなかった。俺は振り返らずそのまま鳥居の外まで出たほう
がいいと思い、ひ~ちゃんと走った。無事、外へ出るとひ~ちゃんはずっと
俺がそばに付いてきてると感じてたと言った。俺は起こった事を彼に話した。
彼はふ~んと鼻くそをほじりながら聞いていたが、こんなことを言った。

じゃぁさ、それって誰かがおまえを助けてくれたのかもな。

え?誰かって誰だ?

日が沈みかけていた。俺は泣きべそをかきながら家に帰り、お袋に話した。
お袋は「それは天狗様が守ってくれたんだね」と言い、おかっぱの子につい
ては、あそこの神社の裏には無縁仏のお墓があるから、たぶんそこに埋まっ
とる子なんじゃないかと言っていた。翌日、俺とお袋はお菓子とおもちゃを
持って、その無縁仏のお墓にお供えした。ゴムボールも3個置いてきた。
たぶん鞠遊びがしたかったんだろうな、と思ったからだ。

それ以降、友達とその神社へはたまに遊びに行ったが、何事も起こらなかった。
ただ、たまに近所の人があそこでボールが跳ねる音がした、と言ってることが何度かあった。

今回の事件では俺は天狗の姿を見ていない。でも俺が3歳くらいの時、じつは
自宅で天狗を見ているんだ。その時は本当に怖かった。3際の頃の記憶で覚え
ているのなんて、その天狗のことと釣堀に落っこちたことだけだ。それは機会
があったらまた書くことにする。

おしまい。
肝試し

山賊

文才無いので長くなっちゃった。
住職にはしゃべるなと言われたが、10年前の話だしいいよね?

10年前、俺が前の会社で測量士をやっていた時のこと。
携帯電話の普及で、携帯の鉄塔を建てるための測量を下請けしていたんだが、
予定地が村里の中、他の案件の納品の締切もあり、急遽、俺一人で現地に向かうことになった。
といっても山奥でもなく、地方都市に付属した一地域の集落の中の山だった。
不安になる点は、そのあたりは国土調査を業者が役所ぐるみでアンポンタンをやったらしく、
地籍測量図も公図も何もかも信用できず(各測量社から嫌われている地域)、
建設予定の字名が「盗○沢」という、なんじゃそりゃという名前だったくらいだ。

公図は無理やり旧公図(美濃紙の巻物状態)を写したらしく、まったく現地に一致しておらず、
町道もまったく公図に一致していなかったが、大体のあたりは付いており、
携帯会社の方からも現地の写真で、山のあの頂きだっつうことはわかった。
問題はそこへ行く道が全然わからないことと、
地主は東京に住んでおり、地元もよくわからないということで、
現地住民との話がまったく進んでいないようだった。

公図をよく見てみると、南北500m、東西300mくらいの規模の小さな山で、標高も50m程度、
確かに携帯の中継地には適していそうな山で、工事用の道路の確保もスグに出来そうだった。
公図と登記簿からは、全ての地番で同じ人が所有者になり、地主は一人のみ、
他に山道が交差し走っていることがわかった。
その山のふもとにある民家に登る道を聞いたところ、一様に道はないとか、
あっても大正のころの学校に向かう道の話で、要領を得ない。
何十年も山に入る人はいないのでわからないということだった。

仕方がないので公図をにらみ、山道が始まってそうなところに目星をつけ、
山裾に入ると、わずかに道らしきもの残骸、獣道の方がましそうな感じの後を見つけ、
そこを登ると公図通りに田んぼの跡地が広がっていた。
この道に間違いないだろうということでいったん作業車に戻り、
剣鉈、鉈鎌(ウナギ鉈の柄が1mもあるようなやつ、杖代わりにもなる)、
見出しテープ、GPS測量用にプラスチック杭数本、石頭ハンマーなどで重武装し、
見つけた山道を切り開きながら登り始めた。

誰も登ったことのない山という話だったが、わずかに使われているような感じの山道で、
ツタを払ってやれば問題なく登れそうである、山を切って作っている道だからかもしれない。
30mほど登ったところ、腐臭が漂ってくる。空気全部が腐臭を含んでいるかのように。

元はどこだ、何が腐っていると思いつつ(先輩は別の山で自殺者を見つけたことがある)進むと、
笹だらけの法面に祠が埋められており、強烈な腐臭が笹が生えるのを拒むがごとく、祠前だけ拓けている。
祠の正面は空いており、黒く変色したような感じの犬のミイラがこっちを睨むかのように座っていた。
それはまるで、前を通るものを見張っているような感じだった。

この段階で何かやばいと感じたが、怖いからダメというのも容認できるわけもなく、
公図に辺りをつけ「犬」と書き込み、山道を登る。

人の手が入るスギ林と違い、下草や笹が伸びており、視界が悪く場所を見失いそうになる。
山では所有者が違うと、植林した木の違いにより植生が変わるために土地の境が分かったりするものなのだが、
人の入っていないという山だけあって、まったくわからない。
かれこれ一時間は上ることになり、あれ?距離的におかしくねと思った。

遭難したかとも思ったが、場所場所に見出しテープ(ピンクで目立つ)を結び、
伐採した跡が後ろにあるので戻るのは簡単なはず、
時間がかかるのは伐採しているせいと考え、先を急ぐべく進む、
すると突然、横道がつながり十字路になった。
公図上にも十字路があるので、これかと図面とにらめっこしていると、
子供の笑い声と、囃子歌のようなものが聞こえて来た。
地元の子がいるのかと思ったが、現地の人も入らない山、というか子供には入れないような荒れ具合。
ぞっと一気に冷汗が。

引き返そうと振り返ると、来た道の方の法面の上に気配がします。
そちらに気を取られていると十字路の方から「おっさんだれじゃ?」と声をかけられた。
ビクッとした次の瞬間、気配のあったところから、
昔の百姓ような恰好の男が鉈を片手に「ヌッッガァァァ!」と飛び出してきた(俺こけた)。
男は鉈でいつの間にか見晴らしが良くなっている道にいた、
昔の格好の子供たちに切りかかり、一人が血まみれで倒れ、
他の子らは泣きながら「鬼やぁ鬼やぁ」と逃げていく、
予想外の展開で身動きできずにいると、鉈の男が何かを叫びながらこちらに切りつけてきた。
とっさに出した鉈鎌にあたり、鉈鎌を飛ばされました。
「ヤベェってヤベェってヤベェって」パニック陥って、
走って逃げようとすると、すぐ後ろを笑いながら鉈で切りかかってきているのがわかった。

ふと気付くと完全に山の中、鉈鎌はなく、どこをどう来たかもわからない。
リュックに水筒などを入れていたので、水分を補給し一心地つく。
何があったのか整理もつかないまま、現地点がどこかを確認しようとすると、
そばに頂があるようでしたので、そちらにむかいます。
町道からそれほど外れているわけはないので、高いところからなら見えると思ったから。

やはり着いたところは鉄塔の建設予定地である山のささやかな頂きでした。
下に町道が見え、さっきのは幻覚なんだと言い聞かせ、測量用の杭を設置しようとすると、
藪の端に供養塔みたいなのだいくつも…10基位目につきました。
苔むしている上に、昔の字は読めません、ただひときわ大きい石碑(1m程度)が
阿修羅を意味するカンマーンという凡字のように覚えている。
どうする、ここにするのか?と思っていると、誰かに見られているような気配がしんしんと。
殺意に満ちた、恨む、恨むぞって感じでいくつも視線を感じ始めました。

もう駄目だ、俺は止める。

そう決心したものの、道がわからず、わかってもさっきの男のところには戻りたくはない。
どうする?
町道側は崖になっており、道までは降りることは難しい、つまり戻るしかない?
するとその崖下から「そこに誰かいるのか!」と誰何された。
ビビって「はっはい、測量のものです。話は付けてあるのですが…」としどろもどろに言うと、
「いいから降りてこい、梯子かけてやるから」と言われ、頂から崖に沿って横に降りて行って、
完全に崖になる所に竹梯子を掛けてもらってそれを降りた。

下では恰幅の良い住職が待っていた。とりあえず寺に来いというので、そのまま連れて行かれた。

ここからは住職に聞いた話だ。
あの山一帯は、江戸末期の旧道に面していて、盗人や山賊が住み着いていたそうだ。
当初は旅人のみを襲っていたので、村人からは黙認されていたが、
女癖の悪い奴が村の女を襲い始めたので、村の男らが酒を持ち込み、
山賊を酔わせたところで、犬をけしかけ一味10名近くをなぶり殺しにしたそうだ。
殺したのが見張り場所に最適なさっきの頂きの所で、そこに供養塔を建てたが、
それから山の中で怪現象が続き、山の傍の住民は犬が何かを払うようなので犬を飼いつづけ、
山は事情の知っている地主(今の地主の先祖)に所有してもらい、なるべく立ち寄らんようにしていたそうだ。

明治になって尋常小学校が山向こうにでき(今でも普通の小学校と中学校がある)、
世代が変ったことで、怪異現象への恐れが薄れ、通学路を山の中に切り開いたところ(これが山道)、
山中で何者かに襲われる子供が出たために、山道の登り口に祠を建て、山を封じた。 という話だった。
住職いわく、怪異に襲われて助かったやつは、なにがしかの刃物を持っていたといわれ、

剣鉈を見てみると、山では使っていないのに、斧でも受けたかのように刃が大きく欠けていた。
鉄塔建設の件は、住職から先代の地主に話を通すと言われ、山にはもう入るなと釘を刺された。
(事実、後日地主からの連絡で建設予定地はダメになり、別の山を選定した)

当日、別れる前にどうして俺がいることがわかったんですかと聞くと、
読経していたところに犬が現れ、山の方へ吠えるので、前の住職から聞いていた話を思い出して
山に異変があったと思い、いったとのことだった。
山賊

仏壇守り

その仏壇は部屋の中央、入り口正面の壁際にあった。
衣装ダンスを二周りほど大きくしたその黒い箱の両脇には、デスクが二つ箱に向けて置かれていた。
これらは総務1課長、2課長の席である。
彼らの部下達は、仏壇に向けて机を並べていた。つまり課長席とは90度向きが異なる。そして1課、2課の間は通路になっているため、部屋を開けるとまっすぐに仏壇を見据えることになる。あるいは見据えられることになる。
仏壇は格別に色の濃い黒檀で、表面に精巧な彫り物が施されているが、金具は取っ手と蝶番以外何もなく。全くの黒一色である。
そしてその扉は閉ざされている。常に閉ざされている。

この部屋の部署に配属された者は最初にこう言われる。
「決して触れるな。決して聞くな。決して語るな」
こうしてこの部屋には線香も花も供えられない仏壇があるのだった。

島崎も異動するなりそう言われ、最初こそ面食らったものの、慣れてしまえばどうということもなかった。課長の席の向きが変だが、課長に書類を見せている間にこの課で一番かわいい(だから一番前の席なんだろう、課長め)三波さんが隣に見れてかえっていいくらいだ。
雑務に追われ、たまには同僚と飲んで、ごくごくたまには合コンもして、そして最後には寂しく一人ワンルームマンションに帰る日々だった。
雑務と言いながら時には至急に対処しなければならない仕事もあり、そういう仕事が溜まって残業になることもある。
「お先、明日までな」と課長に言われて、島崎がひとりぼっちになったのは9時を回ったころだった。
「これ、徹夜じゃねぇの」
他人事みたいに言ってみて、却ってひとりげんなりする。そんなのやってられない。

11時になる頃、一段落というよりも仕事に飽きて、ゆっくり伸びをした時、例の仏壇が見えた。
会社に仏壇?
日常の喧騒が消え去り、闇夜をわずかに電灯が照らすのみの今初めて気付く。なんだってこんな異常な事を今まで見過ごして来たのだろうか。自分自身の思考の不可解さに首の周りが気持ち悪く感じられた。

そっと席を立つ。
仏壇の前に立つ。自分の背より高いそれは、ひどく精神的に圧迫してくる。
軽く、ゆっくりと、触れてみる。
しばらくそのまま動かない。何もない。当たり前だ。
今度はじっくり撫でてみる。ひんやりと冷たい。そう言えば細かい彫刻に埃が積もっていない。誰かが掃除しているのか?あんがいあの掃除のおばちゃんだったり。
「決して触れるな。決して聞くな。決して語るな」
そらぞらしく抑揚を込めて呟いてみる。
「だいたい目障りなんだよな。部屋のど真ん中にありやがって」
両手が取っ手の鉄の輪に触れる。
開かずの仏壇。中身には全く興味が沸かなかったが、今まで開いたところを見たことがない仏壇を今日、こんな日に開けてみるのは面白いと思った。
しかし見た目が随分古めかしい。開けないんじゃなくて、もう開けられないんじゃないのか?

すっと手を引く。と簡単に開いた。
中には・・・何もない。いや、ひとつだけある。位牌だ。
もうここまで来ると何も怖くない。手に取って見てみる。何も書いていない。
無記名の位牌が壇上に1つ。隅から隅まで眺めたが、巨大な空間にあるものはそれだけだった。
なんとなく白けた島崎は扉を閉め、仕事に戻った。徹夜にはならず最終電車で帰れた。

翌日島崎は異動を言い渡された。
昨日の仕事を意気揚々と渡したところでのカウンターパンチだ。しかも北海道の聞いたこともないような名前の支店だ。
「か、課長、俺が何を?」
「それは君が一番分かっているんじゃないの?」
今日中に荷物をまとめるようにと冷たく言われて追い払われた。
三波さんを見るといつもの笑顔で返してくれただけだった。
独身者だからといってあんまりだ。組合か?裁判か?机に向って怒りを煮詰めこんでいると、知らない宛名のメールが来た。
「3F東端の喫煙室」
それだけの内容だった。

しかし何か頭の隅にまとわりついてくるような気がした。
3Fの喫煙室。
島崎は煙草を吸わないので、煙まみれの異常な部屋にげんなりした。
なんとなく席に座っていると向こうが声をかけてきた。
伊藤と書かれた社員章をぶら下げたその男に促されて部屋を出ると、煙のいくらかも外にあふれ出た。それを通りがかりの女子社員が煙たそうにはたいていく。
「喫煙者は今では最悪の悪役だよ」
伊藤はそういって口だけで笑った。かけているメガネは分厚すぎるのか、レンズに直接目を描いたジョークグッズのように見える。
連れられた小部屋には、テレビやビデオデッキらしきものから編集機器まであるようで、まるでテレビの編集室みたいだ。うちの会社とは畑違いもいいところだが。
その部屋の真ん中のクッションのよくきいた席に伊藤は座り、島崎にはパイプの丸イスを勧めた。
ひどい無精ひげを掻きながら話し始めた。

「君もこのままでは納得いかないだろう。まず俺だが、単なる観察者だ。つばめの巣作り、アサガオの成長、超新星を観察する奴もいるらしいな。この辺りでは明るすぎて無理だろうが」
「いらついていて気長に付き合ってられないんだが」
「まあ待ちなって、話には順序ってのがある」

伊藤がリモコンの1つを操作する。
するといくつも積み重ねられたテレビの1つが点灯する。映っているのは、
「あんたの部署だ」
確かにその通り、天井の片隅から部屋全体を映している。そして例の仏壇が見える。しかし社員の姿が見当たらない。いや、一人だけ机に向って仕事をしている社員がいる。その席はそう、島崎本人の席である。
テレビ内の島崎は大きく伸びをして、席を立った。
そしてゆっくり仏壇に近づいていく。
これは昨日の夜の映像だ。

やはり今朝の異動は仏壇が関係しているのか?しかしなぜ?
「もう1つも見てみよう」
伊藤が別のリモコンを操作すると、今映っているものの左側のテレビが点灯する。
こちらは真正面に仏壇が映っている。このアングルだと部屋の出入り口の真上にカメラがあることになる。そんなところにカメラがあったか?島崎は見た記憶はない。いや、確か空調のフィンがあったはずだ。その中に?
やがて左側のテレビにも島崎が映り、仏壇の前で立ち止まった。
そして仏壇の扉がゆっくり開かれる。
「ここからだ」
伊藤が左側の画面を指差す。
すると、仏壇の内部から黒い靄のようなものがあふれ出してきた。
それは重みがあるかのように床に溜まり、島崎の足のところで両脇に分かれてさらに先へと流れだす。
画面を見ていた島崎が驚いて右側のテレビを見る。
こちらではそんな黒い靄など見えず、ただ緊張感もなく仏壇を覗き込んでいる島崎が見えるだけである。

もう一度左側を見ると、二つの流れになった黒い靄は、先端が合流するところだった。1つになった流れはしばらく続き、突如三つ又に流れが変わる。
「ああ」
思わず島崎が呻いた。
三つ又になった流れはそれぞれ、右手、頭、左手の形になったのだ。根元の二つの流れはちょうど足に見える。島崎がそれに気付いた時、靄の動きが変わった。
右手に当たる部分が床に手を付き、そこから靄全体が前に進んだのだった。腹ばいのまま手足を前後させ前に進んでいく。その動きはヤモリか何かのように見えた。

「こっちのカメラは特注でね。人間に見えない波長の光も捉えるんだ。まあ、それだけじゃなくて特別なチューニングを施しているけどね。ま、人には見えないものが見える」
島崎には伊藤の言葉がほとんど頭に入ってこなかった。仏壇からはさらに黒い靄が流れ出している。2体目だ。
全く同じ経過を辿って画面から消えていく黒い人型の靄。そして3体目が姿を表していた。

永遠に続く悪夢のように思えた現象は、画面内の島崎が仏壇の扉を閉めた事であっけなく終わりを遂げた。
「都合3匹」
伊藤がそう言いながらテレビを消した。そして机の上に置いてあった書類を三枚島崎の方へ投げかける。
会社向けの訃報だ。全然知らない部署の奴ばかりだ。
「死亡時刻と死因と死亡場所、死亡状況を見てみな」
・上野純平加工食品事業部開発部主任11時30分窒息死第3実験室他の開発部員と製品開発作業中に突然昏睡状態に、救急隊員の到着時には既に死亡。
・高原幸太郎ゲノム作物事業部副事業部長11時42分動脈瘤破裂事業部長室事業部の重役会議で発言中に即死。
・川辺喜一瑞鶴警備派遣11時35分頃脳挫傷巡回中に行方不明。他の警備員が捜索の結果、コンクリート製柱に頭部からぶつけた状態で発見。
島崎は眩暈がしてきた。
確かに時計を見ていたから覚えている。仏壇を開けたのは11時過ぎ。仏壇から這い出した黒いモノは3体、死人が3人。偶然で片付けるわけには・・・
「あいつらが憑き殺したんだ」
伊藤はあっさりと言う。
「つまり、俺のせいだっていうのか?」
伊藤が3つ目のリモコンを手に取った。

また1つテレビが点灯する。そこに映っているのはゲノム作物事業部の事業部長室だ。
事業部長を中心に年配の社員達が集まっている。副事業部長の高原がグラフや表の表示されたスクリーンを前に話をしている。
そこに例の黒い靄が、猿のように腰を曲げて二本足で歩いて現れる。当然誰も気が付かない。
黒い人型は高原に近づくと、ゆっくりと手を高原の胸に差し入れた。
途端に高原が胸を押さえて倒れる。他の連中が慌てて高原に駆け寄る。
そこで伊藤は画面を止めた。
まさか、本当に?島崎はゆっくりと伊藤を見る。「知らなかった」で済まされる事なのか?
伊藤は眉と肩を上げてみせた。
「ま、事故だわな。代々そういう扱いにしている」
内心ホッとした自分が情けなくなる。
「左遷で済むだけマシって訳か。しかし、線香を上げに行く時間もないのか?」
異動先へは明日朝に発たねばならない。

「当たり前だ。仏壇と怪死は決して結びつけられてはならない。そう決まっている。お前さんも今見た事は忘れるか、墓まで持って行くかしてくれないと困る。俺が」
「今まで何度こんなことが?」
「俺がここに配属になって5年。その間、同じ事をやらかした間抜け・・・失礼、は8人だな。人間誰しも開けるなと言われたら開けたくなるわな。しかし、あれをあそこから動かす訳にはいかない」
「動かすとどうなる?」
「余計ひどい事になる。3年前にあんたの上司の前の前の奴が『撤去する!』と叫んでな。そうやって腕を振り上げた状態で死んだんだそうだ。その後、息子に娘さん嫁さん父さん母さん、半年間で全員死んだそうだ」
「ひどいな」
「ひどいだろ?それを見続ける俺の身にもなってみろよ。こんな仕事を5年もさせやがって、ひどい会社だぜ、まったく」
そう言うと不貞腐れたようにイスにもたれ掛かる。

「大体この特注カメラを何で取り付けてると思う?何かあったら偉いサンだけ逃げようって魂胆だったのさ。だから重役室にはこのカメラが付いている。
ひどい会社だぜ。ただ、オペレーターが報告しなけりゃそれも分からない。ま、偶然早く帰っていて報告できなかったってことも、あるんじゃないの?」
伊藤がキキキと笑った。
島崎は未だ頭の中が混乱していて伊藤の言葉が頭に入ってこない。だから伊藤が、自分自身今回の一件を防げる立場にあったのを棚に上げ、タブーを犯した本人に
どうにもならないこんなものを見せ付けて楽しんでいる悪趣味に気付けなかった。
「ま、死ぬわけじゃなし、異動先でも頑張んな」
伊藤に肩を叩かれて意識が戻る。
「あ、ああ、ありがとう、教えてくれて」
ふらふらとした足取りで部屋を後にする島崎。

「死ぬわけじゃなし、か」
島崎が部屋を出た後で伊藤はそう呟き、リモコンを手に取った。
高原の死を写した画面が再生される。
倒れた高原に駆け寄って跪く社員達と反対に、黒い人型がゆっくりと背筋を伸ばした。
そしてやはりゆっくりと周囲を見回し、来た時と同じように部屋を出て行った。
「事の張本人が無事で済む訳ないだろ?せいぜい周りに迷惑をかけないように、誰もいない営業所に飛ばすわけさ。ひどい会社だぜ、まったく」
そう言いながら伊藤は陰険な笑みを浮かべキキキと呟いた。

(終)
仏壇守り

https://matome.naver.jp/odai/2155400708740174401
2019年03月31日