<閲覧注意>本当にあった怖い話「落書き」「鬼になった女」「双子のような二人」

kent303
<閲覧注意>本当にあった怖い話「落書き」「鬼になった女」「双子のような二人」についてまとめました。

落書き

小学校6年生のときのことだからもう10年以上前の話になります。
私の小学校は鉄筋でしたが内装はすべて新木造といわれるもので、
やわらかい感じが児童の心身にとてもよい効果があるという話でした。
実際にこれを採用した中学校では生徒が荒れることも少なくなり、
小学校でも校内で転んでの大怪我が減ったそうです。

築後10年くらいだったと思います。ただ木の塗装した表面が柔らかかったので、
爪でひっかくとわずかな力で彫れてしまうため、いたずら書きは厳禁されていました。
それでも落書きをするワルガキは後を絶ちませんでした。

クラス替えして6年生になったばかりの4月のことです。私は環境委員になり、
放課後の活動として落書きを見つけたら紙やすりで消すという仕事をしていました。
これをやるとあちこち白くなりますが、そこには後でラッカーのスプレーをかけるのです。
また、ひどい悪口などを見つけたら先生に報告するのも仕事の一つでした。
この校舎は3階建てで、3階が5・6年生、1階が1・2年生と支援学級でした。

私とAさんBさんが6年生の委員で3人でけっこうはりきって消してまわりました。
細かいキズは無数についていて、それを全部消してしまうとあとの処理が大変なので
大きなものだけみんなで紙やすりでこすりました。
個人名が書かれた部分を見つけたらそこに赤いビニルテープを貼って、
後で担当の先生に見せます。あまりひどいのは彫ったのが在校生とわかれば
書いた子が怒られることもありました。

小学生の女子はけっこうこだわりが強いので隅々まで探しましたが、
活動は1時間くらいで終わりました。先生に報告に行こうとしたら、
Bさんが「まだ、屋上へ行く階段を見ていない」と言い出しました。
屋上は立入禁止になっていてドアにはいつも鍵がかかっているはずですし、
その階段で遊ぶのは禁止されていたのできっと落書きなどないと思ったのですが、
まだ帰りたくなかったのでいってみることにしました。

その階段は一般の階段より幅が狭く、防火シャッターが降りて封鎖できるようになっています。
踊り場もなく10段くらいで、突き当りに屋上へ出る上半分がすりガラスになった一枚ドアがあります。
階段は木製なのですが、予想どおり調べてもほとんど落書きも大きなひっかきキズもありません。

戻ろうとしたらAさんが「あ、名前彫ってあるよ」と大きな声でいったので見に行くと、
屋上ドアに近い手すりの部分に、「もういくからね みんなサヨナラ マサミ」と彫られていました。
薄いキズだったのでコンパスなどでなく爪で彫ったのだと思いました。
よく探さなければ見つけられないようなものでした。
かなりホコリがたまっていたので古いものだと思いましたが、名前が出ているのでテープを貼り付けました。

その後、委員会を担当している5年生の女の先生と一緒に確認して歩きました。
先生は「みんな頑張ってやったね」とほめてくれましたが、
屋上への階段へ連れて行ってその落書きを見せると
「マサミねえ。男か女かもわからないね。5年生にはいない。6年生にいる?」と私たちに聞いて来ました。

私たちは各クラスから一人ずつ出てきているのですが、マサミという子供はだれも心当たりがありませんでした。
先生は「卒業生かもしれないね。先生もこの地域に来てまだ2年目だからよくわからない。
後で長くいる先生に聞いてみるね」と言い、
「それにしても サヨナラなんてなんか気持ち悪いね、卒業するという意味なんだろうけど」と続けました。

次の日も活動がありましたが、Aさんが来ていません。どうやら学校を休んだようでした。
その日は話し合いだけでしたので、活動が終わったあと先生に階段の落書きのことを聞いてみたら、
「・・・あれはやっぱり卒業した子が書いていったみたいだね。消しておきましたよ。そんなに深いキズじゃない
と思ったけど、けっこう深く彫られてたね」
という答えでしたが、なんだか話しにくそうな感じを受けました。
帰りにBさんと階段に行ってみたら、きれいに削りとられて厚くラッカーが塗られていました。

Aさんは次の日もお休みでしたので、Aさんのクラスの担任の先生に尋ねると、
この季節には珍しいインフルエンザで出校停止になっているとのことでした。
そして次の日Aさんは亡くなりました。
これは後でわかったのですが、40度近い高熱で寝ている最中、
おかあさんがちょっと目を離したすきにマンションの5階のベランダから飛び降りたのです。
次の日、朝集会で校長先生からそれについてのお話がありました。

それから3日くらいしてBさんが学校を休みました。BさんとはAさんよりも親しく、
元気のない様子が続いていたのでとても気になりました。
そこで家に帰ってからBさんの家に電話をかけましたが、ずっと留守でした。

夜10時過ぎ、Bさんから電話がかかってきました。Bさんは沈んだ声で、
「今日はお父さんとお母さんの入ってる宗教の施設に行ってずっと拝んでもらってたの。
私、転校するかもしれない。この学校にいてはいけないんだって。それからね、マサミって子のことわかった。
8年前に学校の屋上から落ちて死んだ6年生の女の子だよ。遺書もなにもなかったから事故にされたんだって。
でも、このこと忘れたほうがいいよ。

・・・来るから。あの階段に行っちゃだめだよ。・・・お母さんが怒ってるからもう切るね、さよなら」
これで電話は切れてしまいました。
そしてBさんは一度も登校しないまま転校してしまいました。
新興宗教の本部のある都市に行ったと後で聞きました。

それからはその階段の場所へは近づかないようにしていました。
環境委員にはAさんBさんのクラスから新しく選ばれた人が来て、そのうちのCさんと仲良くなりました。
そしてそのCさんに階段の話をしてしまったのです。Cさんは活発な子で、見てみたいというので、
学校にみんながいる時間なら変なことも起きないだろうと思い、昼休みにいってみることにしました。

階段のあるところに行っても他の子どもたちのがやがやした声が聞こえてくるので
怖いという感じはしませんでした。
前に書き込みのあった手すりを見ると、ラッカーが塗られた上に新たな文字が浮かんでいます。
「友だちができたよ マサミ」と読めました。

「えっ、これウソ~」と私が言ったとき、けたたましい音がして非常ベルが鳴り出しました。
シャーンと音がして非常シャッターが下り始めました。「たいへん」とCさんが言って半分まで降りたシャッターを
くぐり出ました。私が下まで行った時にはもうくぐれない高さになっていました。
シャッターが全部降りると非常ベルの音が小さくなり、コツコツという音が背後からするのがわかりました。

振り返ると屋上へのドアのガラスを外側からだれか叩いています。すりガラスに人の影が映っています。
やっとガラスに頭が出るくらいの背丈で大人ではありません。その人の右後ろにもう一つ影が見えます。
「・・・ここ開けて」亡くなったAさんの声です。
それに重なるように「あ・そ・ぼ・う・よ・・・」別の声も聞こえてきます。

ガタガタとドアのノブを揺するような音がしてきました。
私はドアに背を向けて階段の下のシャッターをガンガン叩きました。屋上へのドアが開いた音がします。
思わず後ろを振り向くと、逆光でよくわかりませんでしたが、
ねじくれたような人が半分開いたドアから入ってこようとしています。
私は涙でびしょびしょになりながらシャッターを叩き続けました。

「だれかいるのか」男の先生の声がします。「誤作動だ、今開けるからな」
シャッターがゆっくりと上がり始めます。
膝くらいの高さになったところで身をかがめてはい出し先生の手の中で泣き続けました。
シャッターが完全に上がったとき、ちらりと階段を見ましたが、屋上へのドアは閉まっており、
そこには何もいませんでした。
落書き

鬼になった女

これから話すのは友人からの伝聞だ、まるで見たかのように話す所もあるが勘弁してもらいたい、
そして文才の無い俺が書く為に異常に長文乱文な上に偉そうな文章になるかもしれない事も許して貰いたい。
嫌な方はスルーして欲しい。

では本題だ。

今のようにジメジメとした梅雨の時期だ、友人の高村から一本の連絡があった。
「久しぶりに会わないか?聞いてもらいたい事がある」
就職で京都にいる高村とは連絡も途切れ、半ば疎遠となっていたが「聞いてもらいたい事」と深刻な赴きを感じた俺は二つ返事で了解した。
内容に入る前に軽くだが説明を挟ませてもらう。

高村とは高校大学ともに一緒で今思えば気味が悪い位に仲が良かった、だが周りから見たら俺と高村はどうみても友人同士として釣り合いがとれないように見えただろう。
高村はルックス、センス、運動神経、頭の出来、どれをとっても一流だった。
そんな高村に比べ、俺はこれといった才能も無く、本当にごくごく平凡な男だ。

そんな違い過ぎる俺達だが一つだけ共通点があった。
それは恐怖体験談が好きという一点だ。
それも一般的に知られるような心霊体験では無く、人間に関する物だ。

皆が皆では無いだろうし、間違った考え方かもしれないが俺達はこんな考えを持っていた。

「心霊現象というのは根源的な恐怖だ、得体のしれない謎に満ちた物を恐れるという根源的な物だ、俺達は人間に秘められた狂気的な恐怖を求めている」

心霊を否定している訳ではない、けれど俺達は人間の中にある狂気を求めていた。
だが因果なもので今から話す事は心霊現象だ、真実かは分からない…俺に確かめる術は無い、だが何かがあったのは間違い無いと俺は考えている。

少し長くなったが内容に移らせてもらう。

数年ぶりに会った俺達は話しもそこそこに居酒屋に向かった。
久しぶりの再会を祝おうと少し高い酒を頼んだのだが、何故か高村はあまり進んでいなかった。
「お前どうかしたのか?好きだったよな酒?」
高村は苦笑いしながら一口だけ飲み、また手が止まった。

余りに前と違う高村を見て「やはり環境が変わると人も変わるのか?」と少し淋しげに考えていた。

会話も途切れ途切れになり沈黙が多くなる中で高村のある行動が目についた、一人一人店内の女性を確かめるかのように見つめていた。

俺は変わってない所を嬉しく思い「この変態がwそんな所は変わらんなw」と高村を茶化すと、溜め息混じりにこう言った。

「俺は本当に…やったらいけない事をしたのかもしれない…」

俺は「?」となったがそこから高村はぽつぽつと話してくれた。

京都へ行った高村だったが京都での生活は合わず、仕事でもミスばかり繰り返していたようだ。
一人暮らしで荒れた生活だった事もあり、かなりのストレスを抱えていた中で高村の唯一の楽しみは冒頭で述べたように恐怖体験談を読みあさる事だけだった。
そんな億劫な毎日の中で高村は一つの考えに辿りついた。
「俺も人間の狂気に触れてみたい」
今思えば何処か壊れてたんだろうなと高村は語っていた。

高村が考えて導き出した答えは、狂気を生み出す原因の一つ「嫉妬心」を利用する、つまりは浮気をする事だ。
恵まれたルックスを活かし、何人もの女性と股をかけ、しかもわざとバレるような振る舞いをしていたようだ。

だが全く上手くいかなかった、皆が一様に浮気がバレる前に離れていくか、バレたらバレたであっさり終わりの繰り返しだった。

それでも高村は諦めずに繰り返し女性との関係ばかりを求めた。

そんな中、高村は一人の女性と出会った、由美さん(仮名)という女性だ。

由美さんは浮気がバレても高村から離れていく事も無く高村を本当に好きでいてくれたみたいだった。
そんな由美さんを高村自身も本気で好きになった。

それからは由美さん以外の女性関係を絶ち、由美さんの支えもあり生活も仕事も上手くいって、高村は本当の意味で苦難を乗り越えたようだ。
だがその幸せも長くは続かなかった…
ある晩の事、余りの寝苦しさに高村は目を覚ました。
その日は由美さんが泊まりがけで高村の世話を焼いてくれたらしく、一緒に床についていたらしい。

時間は午前二時…そう丑三つ時と呼ばれる時間帯だ。
高村は目を覚ましたはいいが金縛りのように体は動かず、動かせたのは目だけだった
普段の疲れがある為、大して気にも留めず眠れるようになるまで天井を見つめながらボーっとしていた。

時間にして10分位だろうか、高村はある事に気付いた。
誰かが部屋を歩く気配がする…
部屋の角にベッドがあり、壁側で寝ていた高村は気付かなかったようだ。

「こんな時にマジかよ…空き巣だったら洒落にならんぞ…」

そう考えた高村は必死に目を動かし、歩いている者を目で追った。
それは女だった、しかし様子がおかしい…女は歩き回るだけで何かを物色している感じでは無かった…

異様な光景に高村は女から目を離せずにいると、今まで歩き回っていた女は急に立ち止まり、高村達の方へフラフラと近付いてきた。

女はベッドの前で立ち止まり、由美さんの顔を俯くように見つめていたらしい。
高村は恐怖もあったがそれ以上に「由美さんに何かあったら」とずっと女を睨みつけていた。
そして数十秒程女を睨みつけていると女はゆっくりと顔を高村の方へ顔を向けた。
高村は女の顔を見た瞬間心臓が止まるかと思う程に驚愕した。

部屋の明かりは豆電球だけだったが、豆電球の赤さと無関係に女の顔は赤かった、まるで朱で塗られているかのように…

女は高村を見ると、見るからに醜悪な笑顔を浮かべ、部屋を出て行った。
しばらくして自然と金縛りが解けた高村は玄関へ行き鍵とチェーンを確認したが何かされた様子は無かった。

由美さんを起こして話そうかとも思ったが、見てもいない由美さんを怖がらせる必要は無いと思い、その日は毛布に包まって必死で忘れようと眠る事に努めた。

高村はいつの間にか寝ていたのかアラームの音で目を覚ました。
由美さんはまだ寝ていた、いつもなら自分より早く起きて出勤の為の用意をしてくれているのだが珍しくまだ眠っているようだ。

「疲れが溜まっているのかな?」と考え、起こさずに身支度を整え高村は静かに家を出た。

その日、由美さんから連絡は無く、いくらなんでも寝過ぎだろと思ったが万が一寝ていたならと高村から連絡を入れる事はしなかったようだ。
仕事も早くに終わり直帰したが由美さんはまだ寝ていた。

「やっぱりか、寝過ぎだろw」と高村は由美さんを起こそうと由美さんの腕に触れた。
その瞬間、高村は凍り付いた…
由美さんの体が異様に冷たく、そして息をしていなかった…

高村は直ぐさま救急車を呼んだり、人工呼吸など施したが由美さんは助から無かった。

死因は「心不全」だと医者からしっかり説明して貰ったらしいが、体は丈夫で元気の良かった由美さんが何故?という気持ちは拭えなかった。

それから高村は会社にも行かず、自宅に引きこもっていた。
そしてあの晩の事をずっと考えていた、もしかしたらあの女が…と頭から離れなかったからだ。

高村は決心し、町の拝み屋の所へ行った。
高村はどうしても由美さんが死んだ本当の理由を突き止めたかったからだ。
死因は「心不全」だと医者からしっかり説明して貰ったらしいが、体は丈夫で元気の良かった由美さんが何故?という気持ちは拭えなかった。

それから高村は会社にも行かず、自宅に引きこもっていた。
そしてあの晩の事をずっと考えていた、もしかしたらあの女が…と頭から離れなかったからだ。

高村は決心し、町の拝み屋の所へ行った。
高村はどうしても由美さんが死んだ本当の理由を突き止めたかったからだ。

拝み屋は初老の女性だった。
高村は事情を説明し、あの晩の事を詳しく拝み屋に説明した。
すると拝み屋は何も言わず祭壇の用意を始め高村にこう尋ねた。

「今から神懸(神憑?)を行いますが、貴方の考える物とは違う結果が出るかもしれません、それでもよろしいですか?」

高村は迷わず頷き、神懸の儀式は始まった。
高村は決心を固め真実を確かめようと拝み屋を真っ直ぐに見つめていた。

そして10分程たった時に異変は起きた。
急に拝み屋は動きを止めたかと思うと、真っ青になりトイレへ駆け出して行った。
高村は唖然としてその光景を見つめていたが、数分して拝み屋から今回の事の真相を告げられた…

「失礼しました、高村さん…今から告げる事は貴方にとって酷な事です、聞く聞かないは貴方が決める事です、どういたしますか?」

高村の決意は固く高村は拝み屋にこう告げた「どんな結果でもいいです、俺は本当の事が知りたいんです」

その決意をしっかりと汲んだかのように、拝み屋は暗く重たい口調で話し出した。

「わかりました、結果から言います、確かに貴方が言う女性が由美さんの死に繋がる事は間違いないです、ですが…はっきりと言います、きっかけとなった要因は貴方です」

そう聞いた高村の頭には疑問しかなかった、普段恐怖体験談で語られるような事はしていないし、近付くような真似もしていない、なのに何故と考え高村は拝み屋に尋ねた。
「あの…俺は危ない所には近付いたりとか無いし…要因って具体的には何なんですか?」

拝み屋は更に暗く重たい口調で話した。
「貴方は最近女性関係を重複したり、幅広く関係を求めたりしていましたよね?それが女性を呼び寄せるきっかけになりました」
話してない事を当てられ唖然としている高村に拝み屋はこう続けた。
「その女性は世間一般で言われる「悪霊」とは違います、遥か昔に嫉妬に狂い生きながらにして鬼となった女性です、その方から貴方は魅入られた…」

「鬼…ですか?」高村は混乱していた、ただでさえ初めて心霊現象に見舞われた上「鬼」等と言われたらそうなって当然だ。

そう聞かれた、拝み屋はこう告げた。
「そうですね、分かる範囲ですが経緯から話させてもらいます」

ここからは何故鬼になったかまでを話させてもらう、伝聞で長い為うろ覚えの部分もあるが聞いてもらいたい。

時代の背景までは聞いてはいないが遥か昔、呪術などを信じ、行使されていた時代だ。
ある良家(公家?)に一人娘がいた。
その娘がとある縁談で庄屋の次男の所へ嫁いで行った先での話だ。

最初の内は仲睦ましく良い夫婦と世間でも評判の夫婦だったらしくとても幸せに満ちていた。
そして家を構えたが実家の家業柄か男は実家への通い婚となった。
初めの内は毎日帰宅していた男だったが年月が過ぎるにつれて二日に一度、三日に一度とどんどん帰宅する回数が減ってきたのだ。
男は仕事が忙しいと言っていたが実際はそうではない、男は浮気をしていた。

女はもちろん気付いていた、だが心底男に惚れ込んでいた女は只々男を待ち続ける日々を過ごした。
だがその思いも虚しく、男は遂に帰らなくなった。

元々嫉妬深かった女が狂うまでにそう月日は必要無かった。

そして女は「貴船大明神」にこう願った。
「貴方を七日間願い奉る、どうか憎々しい女を呪い、取り殺す方法を教えて貰いたい」

その願いが通じ、「貴船大明神」は女にある呪術を教えた。
その呪術とは周知であり世間一般で最も有名な呪術だと思われる…そう「丑の刻参り」だ…
だが世間で知られる物とは違く、恐らくこれが元祖の物と思われる。

白い衣装を纏い、髪を五つに分けて角のようにし、顔には朱、身には丹を塗り、鉄輪を逆さに被り、鉄輪の足に松を塗り火を付け、更に松明を口にくわえ両端に火を付ける。
その状態で河瀬に二十一日間浸かるという壮絶な物だ。

その苦行を達成し、遂には女は生きながらにして鬼となった。
鬼となった女は四十九本の頭の無い釘を女の家に向け人型に刺し、女を取り殺した。

女は歓喜とした男が戻って来ると…だが男は戻らかった…鬼となった女は完全に見放されたのだ。
だが女は諦め無かった、どんな仕打ちをされても男を慕う気持ちは無くなら無かった。
そして女は更に歪んだ思想を持った「自分以外の女がいなければいい」

女は山に入り、一人の幼子を拾う、頭が通常より大きく異業な姿、奇形児だ。
女は子供を育てた、自分の目的の為だけに…

その育て方は悍ましいの一言に尽きる物だった。
山を通る人を襲い、路銀を奪い、殺した。
だがそれだけではない、必ず2人一組を狙い、片方を惨たらしく殺した後にもう片方を殺す、そして後に殺した方の首を切り落とし、砕き、粥に混ぜ子供に与えていた。

古い思想だが、人間の頭には「魂魄」が宿るとされてきた。
だが「魂」と「魄」は別物で「魂」は死後天に昇る魂で「魄」は重く濁り、死後は頭部に留まり、やがて散って行く魂とされている。

女は「魄」だけを子供に与え続けた。
そうする事で怨鎖の念を増幅し断ち切らぬように。
そして十年の月日が経ったある日、女の目的が実行された。
恐らく歳にして十二歳位だろうか、自分が育てた子供を生きながらにして首を切り落とした。
生きながら殺す事で「魂」も「魄」共に頭部に残した。

そして頭部を人の行き交う街道に埋め、人が行き交う事で「魂」が昇るのを防ぎ、怨鎖の念が増幅する事を待った。
そして怨鎖の念が増幅し続ける事十二日目、女は頭部を掘り起こし、頭部の中の土と自分の血を混ぜ合わせ土像を作った、悍ましいまでの鬼の像だ。
それを箱に納め封をし、出来上がったのが「外法箱」だ。
通常とは作り方も意味も根本から違う恐ろしい物

それを用いて、町の女を呪い殺そうとした。

だが、十年という長い歳月が経ち、あれだけ恐ろしく悍ましい事をしてきた女が噂にならない筈がない。

町に堂々と出て来た女は町人から捕まった「鬼」として。
そして今までの数々の所業の償いとし、無論処刑となった。

だが町民達は恐れた、生きながらにして鬼となった女をそのままにしていいものかと…祟りに見舞われるのではないかと…
そこで丁度来訪していた歩き巫女に相談した。

歩き巫女はこう町民に告げた。

「このままで怨念による祟りに見舞われるでしょう、私の指示通りにして下さい」と…

歩き巫女がとった方法は「逆さ埋葬」だ。

仏説に基づく物で、地獄など悪趣に堕ちた者は現世とは逆の姿をしていると、つまり屍体を物理的に地獄と同じにする事で祟りを封じた。

それだけでは済まさず、「黄泉還り」を防ぐ為、街道に地中深く穴を掘り「逆さ埋葬」した上で何重にも石で封をし、埋葬した。
そうする事で「黄泉還り」を防ぎ、よく人が往来する事で霊が浮かび上がるのも防ぐようにした。
そして鬼となった女の祟りは封じられた…

俺はここまで聞き一息入れ、そして疑問となる事を高村に問い掛けた。
「今の話が本当だとしても何でその女は死んだ後の事も知ってんの?おかしいだろ」
正味、今の現代に呪いだ、怨念だが残っているとは思え無かったからだ。

高村はこう話してくれた。
「正確に言うと…女の霊が起こした事じゃないらしい、問題は「箱」の方らしいんだよ…」

拝み屋の話によると、霊は今だに元街道に封じられたままか、すでに地獄に堕ちているらしい。
今回の事を引き起こしたのは女が残した「外法箱」だと言った。

「魅入られたのは「箱」に残る怨念なんだよ…」
高村は泣きそうな声で呟いていた。
俺は重過ぎる雰囲気を軽くしようと高村に言った。
「言い方悪いけどさ…由美さんが亡くなったならもう終わった事じゃないかな?お前が元気無かったら由美さんだっ…」
高村は遮るように怒鳴ってきた。
「何も終わってねーよ、知った風に言うな」

高村は怒鳴った後、ハッとして「悪い」と一言言って俯いた。
俺は周りに軽く頭を下げ、高村に尋ねた。
「終わってないってなんだよ?何が終わってないんだよ?」

高村はか細い声でこう言った。
「最近見えるんだ…昼間だろうが夜中だろうがあの女が…俺もう無理なのかもな…」

高村が周りを確認していた理由がようやく分かった気がした。
高村は女性を見ていたわけじゃない、女の怨念がいないかを見ていたんだ。

俺は空元気を出し高村を励まそうとした。
「大丈夫だって、話も眉唾だし、由美さんが亡くなって落ち込んでるのが原因なのかもしれないしな?それにさ、もし何かあったらその拝み屋に頼めばいいじゃん」

高村は更に俯きながら呟いた。
「拝み屋は死んだよ、心不全だった、隣に住んでた女子大生も死んだ、それも心不全だ、そんな偶然あるか?」

俺は何も言えなくなり、それから一言も話す事も出来ず居酒屋を後にした。

そして高村と会ったはその日が最後になった。

冒頭で述べたが「心霊は根源的な恐怖、人間は狂気的な恐怖」そう言ったが間違いだったのかもしれない。
心霊も元が人間である以上、本当の根源的な恐怖は人間の狂気なのかもしれない。
そして俺は一人の男性の為にここまでの事が出来、遠い先にまで恐怖を残す、俺は人間の持つ狂気に心底恐怖した。

正直この話が真実かは分からない、かなりうろ覚え部分もあるし、最愛の人を亡くした高村がノイローゼになっただけかもしれない。
だが俺は確かに聞いた…丁度高村が失踪する前日に
高村からかかって来た電話の先で高村の怯える声に混じり、狂ったように笑う女の声を…

高村は行方は現在も判明しないままとなっている…


鬼になった女

双子のような二人

長い批判上等。
つうかそうじゃなきゃ語れない。面倒だったらNGにでもしてくれ 。

俺(M)には義弟(B)がいた。二人とも叔母に凄くよく似てたけど、俺は紛れも無く俺の両親の子。
Bも叔母夫婦の子供だってのは間違いない。
叔母夫婦が子育てができなくなった後、俺の両親が話しあってBを引きとった。

苦い思い出が一杯だ。
子供ってめちゃくちゃ純真だけど、暇な主婦の悪知恵がくっつくと残酷に早変わりする。
あんまりにも似ているものだから
本当は実の兄弟なんじゃないかって
誰が言い出したのかしらんけどそういう疑念を生んだ
それを真に受けた同学年の誰かから噂が広まって
親父はそいつらの噂の中では叔母と不倫した最低野郎扱い
汚いだのなんだの俺もBもさんざんイジメられたもんだ
Bが悪いわけじゃないのはわかってる
けど小坊でこんな目にあったおかげで
Bのことを恨みに思うことも少なくなかった

俺たちがやっとまともな兄弟に戻れたのは高校の終わりの頃
なんかの拍子でものすごい大げんかやった
何がきっかけだったのかはおぼえてない
Bは肩を脱臼して俺はアバラに罅がいった
ふたりそろっておんなじくらい青紫色になるまで打撲多々
恨みつらみ吐き出したあとは揃って仲良く入院
ベッドの上で和解した
俺たちが悪いわけじゃないと分かった上での喧嘩だったしな
トラウマ引きずって中学高校と随分お互い攻撃しあった
その分の恨みをすっきり解消したら普通に理解しあえた
下らない妄想好きの主婦は死んどけって言ったら
Bがそうだそうだってのってきて
病院内で死ぬとかなんてこというのって二人して看護婦さんと医者にこってり絞られた
ごめんな
でもあの時ああやって笑うことが俺たちの見えない傷にとって一番の薬になったんだ

俺とBは同じ大学に進学した
うちはBを引きとったものの
けして裕福じゃなかったんで
ふたりとも進学希望だったから
学費の工面に苦心した親父は
勤務先で募集されてた海外赴任に名乗りでて
房総半島の海岸沿いにあった
小さいけれども楽しい我が家を売り払って
俺とBの学費と学生の間の生活費を工面してくれた
お袋はその親父の赴任についてった
二人で学校推薦の寮に入った

大学での俺達は公然と従兄弟だけど双子同然と名乗った
入学する前に話し合ったんだ
また妙な噂が立って嫌な思いする前に
こっちから言って陰口叩かせないようにしないかって
Bは兄貴とまた関係こじれるのも嫌だし
親父には悪いがそうしようと言った
親父が不倫でもしたんじゃねえかとかいって
二人してゲラゲラ笑う作戦は大成功
小学校の時みたいなトラブルは起こんなかった
当の本人達があっけらかんとこんなこと言えるくらいだから
ありえないよねって感じで変な噂はこれっぽっちもなかった

やっと俺たちは本当に兄弟になれた
そんでもって嘘じゃなく双子同然だった
良いと思う女子も同じ
興味を惹かれたサークルも同じ
興味のある講義も同じ
二年から少しずつ選択増えてったんだけど
申込書見せ合ったら選択内容がほぼ同じで二人してげらげら笑った
本当は従兄弟なのにやけに波長が合ってた
多少違いはあったけどな
俺の方が空手サークルでは強かった
そのかわしあいつのほうが冬山ではかっこよかったな
俺はスキー板はかせてボーゲンでゆっくりだったけど
あいつは板並行にして雪飛沫あげる技ってあるじゃん
たった一日であれできるようになってたし
あいつのほうがモテた

三年の12月のことだ
11月の終わりから俺には彼女(Y)ができてた
ある日Yがデートしてない日のデートのことを語りだした
最初に浮かんだのはもちろんBのこと
まさかBがこんな下らない真似をするわけはない
俺の頭がどうかしたんだろうかと思いついて
ものすごく心配になった
その場はYに喋らせて肯定する形でかろうじて乗り切った
この頃の俺達は親父達が工面してくれた生活費は使いきっていて
二人で交代でバイトして必死でやりくりしてた
病院にかかるとか頭の病とか言われたら
生活なんて一気に成り立たない
脳みその心配をしてたある日
かなり荒れてた中学高校時代の記憶が朧げすぎることにきがついて怯えた
本当に脳の病なんじゃないか
もしかしたら若くしてボケてBの面倒になるんじゃないか
それだったらいいが脳がどうかして植物人間になったりするんじゃないか
だとしたらそうなる前に死んだほうがいい
Bに余計な負担をかけたくない
Bだけでも立派に育った方がいいんじゃないか、なんてな

クリスマスイブはBが働いてるコンビニにいた
Bが体調が悪いっていうものだから
兄貴の俺が代わりに頑張りますつって無理言って働かせてもらってた
バイトの交代が風邪だのっていって朝までコースになった
超過勤務で増える手当もあったんでるんるん気分
Bに電話入れて朝帰りになるって告げた
午前一時近くまで働いてると店長の奥さんがきた
学生さんにこんな時間まで働かせる主人を許してやってねみたいに言われて
ハッピークリスマスって言って封筒に入った五千円札を給料とは別に下さった
がんばってりゃいいこともあるもんだなと喜んで
惣菜屋によってBと俺が大好きな唐揚げ沢山買い込んで帰った

寮に戻ると静か
寝てるんだろうから起こさないように気をつけて
台所の電気だけつけて
惣菜を冷蔵庫に閉まってた
「え?きゃっ」
そんな声が聞こえた
Yの声だった
振り返るとベッドの上でYが肩まで毛布をかぶってた
「B君、ご、ごめんね」
Yの横でBが毛布から裸の胸をさらしてやがった
台所の包丁立てが目に入った
俺はYに返事をするより包丁を凝視してた
「B君。む、向うむいててくれる?」
そんな声が聞こえながら
俺はあの包丁をたまらなく手に取りたくなった
それをしなかった
それは嘘だな
手を伸ばしてつかむ寸前で
親父の顔がぱっと頭に浮かんだ
だからつかわなかった
Yがそんな俺をみて怯えた様子だった
凄く長いため息をついた

Bは起きなかった
Yは着るもの着てそそくさと帰ろうとした
タクシー乗れる場所送っていくよといってついてった
B君、B君とYが俺を呼んだ
タクシーが捕まるまで結局Yは俺をBだと思い込んだままだった
「じゃあね。B君」
「俺がMだったとしたら、こういう時どう言えばいいんだろな」
「え?変な冗談やめてよ。なんか変だよ」

家に帰って始末をつけた
Bを叩きおこしてYを送ってきたと告げて
Bの荷物をほうり捨てて追い出した
真夜中に寮で随分騒々しくしたおかげで
同じ階の連中にとんでもなく迷惑かけちまった

Bは二週間近く俺をつけまわして土下座したりなんなりしたが
俺は進行方向を邪魔されても踏みつけてその上を歩いた
そうやって徹底して無視を決め込んでいたらBは消えた
消えて数週間後に教授から呼び出されて
前払いで預けてあった翌年分の学費の払い戻しを告げられた
Bが退学届をだしにきて学費の払い戻しは兄貴に渡してくれといってたそうだ
これだけどでかい騒動だ
Yがあの冗談が本当だったと気づいた
Yは俺に詫びに来て二言目には別れようと言ってきた
気まずそうに言っていたら承諾はしてなかったかもしれない
Yが号泣してたから俺は頭をぽんと叩いて
いつでも健康を祈ってるつって別れた

あれからもう十年近く経ってる
最近になって仕事からかえると玄関先で土下座するBが見えた
俺のみたそのBの幻覚は喉に穴が空いていた
この話を親父達にするとオヤジ達はBが最近咽頭がんの闘病も虚しく死んだと言った

Bは親父達にはとんでもないことをしでかしたと白状して
もう兄貴には顔向けできないといって
大学を中退したあとホストをやってたらしい
喉に負担をかけたのがわるかったのか
癌とわかるより一年以上前から
喉に違和感を感じてたらしいんだが
ホストってきつい仕事だったらしくて
昼間も営業の他はぐーすか寝る仕事だから
病院に行く暇がなかったらしい
分かったときは咽頭癌はじめ全身転移72ヶ所
骨髄もやられて鎮痛剤もきかずに毎日拷問をうけてるようにのたうって死んだそうだ
あいつが命懸けで稼いでいた金は親父達のもとにいって
俺が大学院を卒業するための学費になっていたといまさらになって知った

もう謝らなくて良いと声をかけても
これまでのところただの一度も顔を上げない
未練を残したまま死ぬもんじゃないな
生前も苦しんで死後やっと許しをもらってもそれにすら気づかないとか
どんな地獄だよそれ
双子のような二人

https://matome.naver.jp/odai/2155235541824546901
2019年03月12日