日本国有鉄道史 気動車の発展と開発 電気式気動車試作のお話 第3話

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戦後、石油の輸入事情が改善したことから、再びデイゼル機関による気動車の開発が始まりました。総括制御出来ることを考慮し、当初は電気式が開発されますが、構造が複雑な上重量も嵩み高価になることから、液体式も試作され比較されるました。

戦後に導入された電気式気動車

本日は、戦後の電気式気動車のお話をさせていただこうと思います。
電気式気動車自体は、戦前キハ43000形式が試作されましたが、戦争の激化により開発は中止、戦後は中間付随車が電車の付随車として飯田線で使われたそうです。
さて、今回は戦後試作された電気式気動車、キハ44000のお話を中心にさせていただきます。

キハ43000
戦前の試作気動車、キハ43000
DMF31H系エンジンを搭載した電気式気動車

開発が再開されたディーゼル気動車

戦後しばらくの間は、石油も未だ自由に使うことができず、かつ列車増発の要請も強かったことから、千葉並びに新潟では天然ガスが噴出することから。天然ガスを動力源とする天然ガス動車が改造で使用されましたが、石油も比較的安価に流通するようになったこと、特に軽油は比較的安く手に入ることから戦前から試作されていたディーゼル機関を使った気動車を使う気運が高まってきました。
軽油はガソリンと比べて引火の危険性が少なく、ガソリンの1/4の価格で調達できるとのことで注目されました。


https://matome.naver.jp/odai/2155153199157001801/2155162092984647003
経済比較【再掲】
ガソリン動車、天然ガス、軽油、石炭【蒸気機関】の比較が出ています。

試作気動車、キハ44000誕生

そこで、昭和27年8月、2両編成各2の4両が製造(日車及び汽車が製造)され木更津機関支区(当時の名称)に配置され。房総線で活躍しました。
その後、好評であったため追加で11両が製造された他、九州向けには、仕様を一部変更し、乗降口が両端2か所のキハ44100、中間車のキハ44200(後液体式改造後はキハ19)が合計15両製造され、こちらは、北九州地区で活躍しています。

試作車 キハ44000形


https://matome.naver.jp/odai/2155153199157001801/2155162092984647303
キハ44000試作車
100年の国鉄車両 交友社から

試作車は80系電車のような1枚窓で3ドアの独特のスタイル、また、連結部を覆うようになっており間延びした印象を受ける


https://matome.naver.jp/odai/2155153199157001801/2155162092984647403
キハ44000試作車 室内
100年の国鉄車両 交友社から

軽量化のためシートの背ずりは低くなっている

量産型 キハ44000形


https://matome.naver.jp/odai/2155153199157001801/2155162092984647703
キハ44000量産型
100年の国鉄車両 交友社から

量産型は、改良が加えられ、間延びした印象であった前面がスッキリしたほか、軽量化を兼ねて当時のバスに採用されたような明かり取り付窓【通称バス窓】仕様になった。昭和32年頃までの量産される気動車の標準仕様となりました。

北九州地区には3両編成を基本とした、キハ44100形、中間車はキハ44200形が製作された


https://matome.naver.jp/odai/2155153199157001801/2155162092984648103
キハ44100
100年の国鉄車両 交友社から

北九州地区に導入された、気動車は同じ電気式でも2ドアで。3両編成が基本となりました。
そこで、中間車のキハ44200形も製作されました。


https://matome.naver.jp/odai/2155153199157001801/2155162092984648203
キハ44100 室内
キハ44000とほぼ同様の室内、背ずりが低く軽量化とはいえ居住性は劣るものでした。

比較として試作された液体式気動車 キハ44500


https://matome.naver.jp/odai/2155153199157001801/2155162093084648903
キハ44500
100年の国鉄車両 交友社から

液体式との比較として、DMH17に液体変速機を搭載した車両も比較として試作されました。
外観上の特徴は、電気式が3ドアであったの対し、その後の10系気動車同様の2ドアになったことで、外観的には殆ど差異はありませんでした。

更に、これ以外に比較のために液体式気動車の試作として、キハ43000形と同じ車体としたキハ44500形4両を試作車として製造、川越線などで試用されたと記録が残っています。

加藤追記
電気式気動車は、DMH17エンジンに直結した発電機、300V100kwと直接繋がっており、この電電力を使って、45kwモーター2個を駆動するもので、0.5Mのイメージになります。
実際、勾配では速度が出ず、途中で停車してしまうなんてこともあったそうです。
駆動方式は直角カルダンが採用されており、国鉄では電車よりも一足先に実用化されていたと言えます。
電気式は、従来の機械式と異なり、総括制御は容易になりましたが、いかんせん、エンジン+発電機+駆動用モーターを装備するので構造が複雑になる上重量も嵩むため、その比較として液体式が試作されました。
結果的には、液体式の方が構造がシンプル(エンジン+液体変速機)になることから、その後の国鉄気動車は液体式で量産されることになりました。

最終的に液体式を国鉄としては選択

以下に、液体式(当時の資料では液圧式)は電気式と比較した場合、電気式の方はエンジンを常に最適な回転数を保っておけ、速度制御も容易ですが車体重量が大きくなるほか液体式と比較すると変換効率が悪い(液体式の場合高速域ではエンジン直結となるため結果的に効率は高くなる)こと 等の理由から、その後の国鉄形ディーゼル機関車は気動車で増備されることとなり、量産型としてキハ45000(後のキハ17)が誕生することになるのですが、その辺のお話は明日以降にさせていただきます。


https://matome.naver.jp/odai/2155153199157001801/2155162093084649103
気動車形式別イラスト

併せてご覧ください

https://matome.naver.jp/odai/2155153199157001801
2019年04月14日