F1愛憎劇場 1989年、セナ・プロストの場合。

本の図鑑
1989年のF1シーンをセナとプロストの戦いを中心に振り返ります。
1989年のF1グランプリ
ターボエンジンが禁止されても、マクラーレンは変わらず強かった。
88年はタイトルを巡ってサーキットで争っていたセナ、プロストの2人は、89年はマスコミを巻き込んでサーキットの外で争いを起こした。
この争いはプロストのマクラーレン離脱と、鈴鹿でのアクシデントによって決着した。
Rd.1 ブラジルGP
ブラジルはリオデジャネイロ、ネルソン・ピケサーキットで1989年のF1は開幕した。
1988年のチャンピオン、アイルトン・セナ。開幕戦はオープニングラップのアクシデントに巻き込まれてノーポイントに終わる。
アラン・プロストはクラッチトラブルを抱えながら走り切り2位に入る。
開幕戦の優勝はウィリアムズから移籍してきたフェラーリのナイジェル・マンセル。
プレシーズンテストで、セミオートマティック・トランスミッションにトラブルが多発していたフェラーリにとっては予想外の勝利だった。
地元ブラジルで初めての表彰台を獲得した、レイトンハウス・マーチのマウリシオ・グージェルミン。
チームがブラジルGP用にラジエーターの容量を拡大したのが奏功した。
前年のランキング7位とブレイクした、レイトンハウス・マーチのイヴァン・カぺリ。
開幕戦は予選7位につけたが、決勝ではリタイアに終わる。
ベネトンの新人、ジョニー・ハーバートは脚のけがを抱えながらも4位入賞。
ベネトンは期待のフォードHBエンジンの開発遅れていたためHB専用のB189は使用出来ず、シーズン前半はB188で参戦を続けた。
チームメイトのアレッサンドロ・ナニーニは6位に入り1ポイント獲得。
5位に入賞したアロウズのデレック・ワーウィック。
ブラジルGPで最多出場記録を更新したウィリアムズのリカルド・パトレーゼ。
フロントローからスタートしたが結果を残せなかった。
ベネトンから移籍のティエリー・ブーツェン。
エンジントラブルで早々にリタイアした。
F1に復帰したピレリ。緒戦の完走はスクーデリアイタリアのアンドレア・デ・チェザリス1台のみに終わる。
予備予選落ちに終わったアレックス・カフィ。
ヴェンチュリー効果を意識したフロントウイング、後退角のついたサイドポンツーン、リアウイングへの気流を考慮した細長いインダクションポッド・・・。
典型的なマーチ881フォロワーのロータス101。
ブラバムは2年ぶりにF1に復帰した。
マーティン・ブランドルは予備予選を突破し予選でも13位につけたが、決勝はメカニカルトラブルでリタイアに終わった。
オゼッラのニコラ・ラリーニは予備予選、予選を通過し決勝に進出したが失格に終わる。
予選落ちに終わったラルースのヤニック・ダルマス。
ラルースは89年からランボルギーニエンジンを搭載しての参戦。
AGSの新人、ヨアヒム・ヴィンケルホックは予備予選を突破できなかった。
AGSは開幕直前のブラジルテストで、フィリップ・ストレイフが重傷を負ったためブラジルGPでは1台エントリーだったが、次戦からガブリエル・タルキーニが加わった。
コローニのロベルト・モレノ。
前年の国際F3000チャンピオンだが、非力なマシンでは予備予選落ちも止む無し。
Rd.2 サンマリノGP
第2戦の舞台はイタリア・サンマリノGP。
マクラーレンのセナがアクシデントで2ヒート制になったレースを制し、シーズン初勝利。
プロストは2戦連続の2位入賞。
3周遅れの3位に入ったナニーニ。
フェラーリのゲルハルト・ベルガーは4週目、タンブレロで大クラッシュを起こす。
燃料タンクが破損し、マシンは炎上したがドライバーは無事だった。
スクーデリアイタリアのカフィは予選9位、決勝7位と健闘。
傑作エンジン、フォードコスワースDFVの末裔、DFR。
ベネトン、ティレル、アロウズ、オゼッラ、スクーデリアイタリア、ミナルディ、リジェ、コローニ、オニクス、リアル、AGSが搭載。
ベネトンは第7戦から新エンジンHBに切り替えた。
コスワースDFRとともにプライベートチーム御用達の、ジャッドCVエンジン。
ブラバム、ロータス、ユーロブルンのほか、第3戦までレイトンハウス・マーチもCVエンジンを使用していた。
いつもの表彰式。だがプロストはレース後の記者会見を拒否してサンマリノを後にした。
数日後、セナがプロストとの「スタートで前に出た方が第1コーナーの優先権を持つ」とする約束を破っていたことが判明する。
両者は88年のポルトガルGPで、セナがプロストに幅寄せした事で一時険悪な関係になったことがあったが、サンマリノで再び亀裂が走った。
Rd.3モナコGP
前年のモナコではレース終盤に謎の単独スピンで勝利を逃したセナ。89年は同じミスを繰り返すことなく完勝。
プロストは周回遅れのアルヌーに邪魔をされ、3戦連続の2位に終わり、ポイントでセナに追いつかれる。
ロン・デニスはレース前の記者会見でサンマリノで起きた問題は解決したと話していたが、ピット内での2人からはぎこちない空気が漂っていた。
ホンダは2人の関係に配慮して、モナコGPからエンジンをくじ引きで分配することにした。
予備予選組のブラバムは、ステファノ・モデナが3位、マーティン・ブランドルが6位とW入賞。
89年のブラバムは予備予選組ながら、ピレリからワークス待遇を受けていた。
前戦サンマリノでも好走していたカフィは、モナコで4位入賞と確かな才能をアピール。
チェザリスは10番グリッドからスタートしたが、4周遅れでゴール。
サンマリノのクラッシュの影響でベルガーは欠場。マンセルのみ出場のフェラーリ。
開幕戦こそ制したものの、セミATはまだまだ完成の域に達しておらず、モナコでもミッショントラブルによりリタイアした。
フェラーリ640の初期型はモナコが最後になった。
トップのセナを追うプロストを妨害し、89年のモナコGPを台無しにしたリジェのルネ・アルヌー。
実力者ワーウィックは6番グリッドを獲得。
ジャッドのニューエンジン、EV専用のCG891をデビューさせたレイトンハウス・マーチ。モナコではカぺリにのみ用意された。
レースでは6位を走っていた最終盤にエンジンブローでリタイアに終わった。
資金難でDFRではなくDFZを使用したAGSのタルキーニは一時5位を走行。
ロータスのネルソン・ピケは33周目、チェザリスと接触してリタイア。
ロータスの中島悟は、モナコで2年連続の予選落ち。
コローニのピエール=アンリ・ラファネル。
予備予選、予選を突破して決勝にこぎつけた。
ユーロブルンは、グレガー・フォイテクが予備予選をクリア出来なかったため、木曜午前9時にグランプリウィークを終えた。
Rd.4 メキシコGP
一度目のスタートは、オープニングラップでアクシデントが起きて再スタートに。
スタートのやり直しでメカニックたちは大忙し。
予選4位のカぺリは、リアブレーキにトラブルが見つかりピットスタートに。
1周のウォームアップランの後・・・
グリーンシグナルが点滅し・・・
スタート!
序盤こそフェラーリがマクラーレンデュオに食い下がったものの、メカニカルトラブルでリタイアに。
セナは3戦連続のポールトゥウィン。
プロストはタイヤ選択を誤り5位に終わった。
復帰戦のベルガー。セミATのトラブルでリタイアに終わる。
640はインダクションポッドが装備され印象が変わった。
ロータスのピケは予選26位と最後尾からのスタート。
表彰式。優勝はセナ、2位パトレーゼ、3位はティレルのミケーレ・アルボレート。
アルボレートは予選7位スタートから3位表彰台と絶好調だった。
Rd.5 アメリカGP
アリゾナ州フェニックスの、市街地コースで開催されたアメリカGP。
セナ、8戦連続のポールポジション。
通算34回目のPPはジム・クラークの記録を更新するものだった。
セナはレースをリードしたが、44周目電気系のトラブルでマシンを降りた。
アメリカでシーズン初勝利を上げたプロスト。
ポイント争いでセナを逆転しトップに立つ。
地元フェニックスで3位入賞、アロウズのエディ・チーバー。
4位入賞のリアルのクリスチャン・ダナー。
ジョニー・ハーバートは5位。
日曜朝のウォームアップで2番手のタイムを出していたマンセル。
レースでもセナの後退により、2位にまで順位を上げたが、その直後にオルタネーターのトラブルでリタイアした。
フェニックスで400戦目のレースを迎えたロータス。
しかし予選ではピケが22位、中島も23位と低迷し決勝でも全滅に終わる。
予選で7位につけたブラバムのモデナ。
3戦連続予選落ちのダルマス。
カナダGPでシーズン5度目の予選落ち後、チームから解雇を通告された。
コローニのラファネルは、金曜午前8時の関門を突破できなかった。
Rd.6 カナダGP
マクラーレンのセナはレースを支配していたが、残り3周でまさかのエンジンブローでリタイア。ノーポイントに終わる。
プロストもフロントサスのトラブルでリタイアしており、ともにポイントを加えることができなかった。
優勝はウィリアムズのティエリー・ブーツェン。参戦95レース目での初優勝。
ルノーはF1復帰後、初めての優勝。
2位は同じくウィリアムズのパトレーゼ。ウィリアムズは1-2を達成。
競争力が高かったカナダGPのスクーデリア・イタリア。
予選で2台ともトップ10に送り込むと、決勝でもチェザリスが3位、カフィも6位とW入賞を果たす。
予選落ちのハーバート。この後ベネトンから休養を命じられ、事実上解雇された。
リジェのアルヌーは5位に入ってシーズン初ポイントを獲得。
F1を代表する極貧チーム、コローニ。
メキシコ、アメリカはドライバーの他はマネージャー1人、メカニック2人と極限の状況で戦ったが、カナダでニューマシンを投入し挽回。モレノが予選通過に成功した。
Rd.7 フランスGP
二人のボス。F!A会長にしてFISA会長のジャン=マリー・バレストルとFOCA会長のバーニー・エクレストン。
レーススタート。
予選2位のセナが好スタートを決め、ポールのプロストを抑え1コーナーへ。
しかしその後方で・・・、
レイトンハウスのグージェルミンが、前方のマシンに乗り上げる大クラッシュが発生!
大クラッシュを演じたグージェルミンは体に異常はなく、再開後のレースでキャリア初のファステストラップを記録した。
ポールトゥウィンでシーズン2勝目のプロスト。
プロストはレースウィーク中に、89年限りでのマクラーレン離脱を発表した。
サンマリノ以降、セナとプロストの対立はすべて噂、憶測でしかなかったが、プロストの離脱発表はそれを裏付けるものだった。
コースサイドに止まっているのは、デファレンシャルのトラブルでわずか200mでレースを終えたセナのマシン。
2位に入ったマンセル。1回目のスタートでマシンをクラッシュさせたため、ベルガーのTカーでピットからのスタートだったがしっかりと結果を残した。
フェラーリは開幕戦以来の完走を果たした。
4人の若手ドライバーがデビューしたフランスGPで、最高のデビューを飾ったのはティレルのジャン・アレジだった。レースでは一時2位を走行し、4位でゴールした。
予備予選から這い上がったオニクスのステファン・ヨハンソンが5位に入賞し、シーズン初ポイントを獲得。
オニクスにとっても初のポイント獲得だった。
オニクスORE01は、1年目の新参チームながら横置きミッションを装備しており、競争力のあるマシンだった。
シーズン後半のポルトガルではヨハンソンを3位表彰台に導いている。
ニコチンの効果はすごかった?
カナダGPで予選落ちに終わったリジェのオリビエ・グルイヤールだが、フランスGPでシーズン初ポイントを獲得した、
ベネトンはフォードHBの開発が完了し、B189がようやくデビュー。
フランスGPではナニーニにだけニューマシンが与えられた。
ミケーレ・アルボレートが「最高のマシン」と語り、ジョナサン・パーマーが「初めてまともなF1マシンをドライブできた」と感動したハーベイ・ポスルスウェイトとジャン=クロード・ミジョーのコンビによる傑作マシン、ティレル018。
018のハイノーズの様子がよくわかる1枚。
アロウズからF1デビューしたマーティン・ドネリー。予選14位からスタートし12位完走。
ダルマスを解雇したラルースはエリック・ベルナールをデビューさせた。
ロータスは、ティックフォード製5バルブジャッドをトライした。しかしパワー不足でそれ以降音沙汰無し。
金曜午後に進出できなかったオゼッラのピエロカルロ・ギンザーニ。
Rd.8 イギリスGP
マクラーレンはプレシーズンテストでトライしていた横置きトランスミッションをイギリスGPがら投入した。
またベルガーの来期からのマクラーレン入りが発表された。
セナ、12周目ベケッツでコースアウト!
横置きミッションのトラブルでスピンし、リタイアに終わったセナ。優勝したプロストとのポイント差は20にまで広がった。
ミナルディは5位にピエルルイジ・マルティニ、6位ルイス・ペレス=サラとW入賞。西ドイツGPからの予備予選降格をギリギリで回避!
7位でゴールしたグルイヤール。
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