【侃々諤々】漁業権の改正案の件

m.satoaki
都会の人はあまり考えることもない漁業権ですが、日本の食卓に大きく影響を与える重要な漁業権です。都会の人も漁業権に関心を持ったほうがよいようです。

〇水産改革関連法案

水産改革関連法案は、漁業者の高齢化などで水産業が低迷する中、およそ70年ぶりとなる漁業制度の見直しが盛り込まれており、先月、衆議院を通過し、現在参議院で審議が行われています。
70年ぶりの水産改革 野党側は慎重審議求める | NHKニュース

〇漁業権の基礎知識

都道府県知事の免許に基づいて,一定の漁場において一定の漁業を独占的・排他的に営む権利。

本来公共の用に供せられる水面における漁業は何人がこれを行うのも自由であるのが原則であるが,その性質上他人の利用を排除しなければこれを営むことのできない漁業がある。漁業権は,行政庁がこのような漁業を営むことを免許することによって発生するものである。
漁業権(ぎょぎょうけん)とは – コトバンク

漁業権は大きく2種類に分けられています。
一つは特定のだれかに与えられれば他の人は使えなくなる権利で、カキやホタテなどの養殖業に適用される「区画漁業権」と、漁具を固定してブリやサバなどの漁獲を目的に定置網を仕掛ける「定置漁業権」。

もう一つが、漁場を交代で利用する「共同漁業権」です。貝や海藻、刺し網漁など、比較的陸地に近いところで行われる漁業に必要とされます。
民間企業への「漁業権」開放に思う | 生活と自治

〇改正案が出てきた背景

漁業権の民間開放の動きは、東日本大震災の直後、宮城県が水産業復興特区を実施したことが突破口になっている。
隠れて進む漁業権の民間開放 9月臨時国会で法改定の動き | 長周新聞

漁業生産量が長期的に減少し、漁業者の減少・高齢化も進んでいる。こうした状況に終止符を打ち、漁業者が将来展望を持てるようにするため、基本的制度を一体的に見直す
入管法の陰で… ひっそり衆院通過した、もう一つの「重要法案」(J-CASTニュース) – Yahoo!ニュース

権利は、一般に地元の漁業者、またはその組合に独占的に与えられ、他のものがこれを得ることは難しい。また、農地と異なり、漁業権の転売はできない。埋め立てなどで漁業権を放棄するのは、漁業権の転売ではなくて補償と理解される。

この権利がなければ、沿岸の魚介類を根こそぎ獲って、漁獲資源を枯渇させることが起きるだろう。たまたま地元の漁民だけにその権利を与えることは不合理かもしれない。
漁業権問題 企業参入は本当に「悪」か  WEDGE Infinity(ウェッジ)

●日本の漁業の問題点は何か?
(a)「オリンピック方式」。「早い者勝ち」の方式なので、漁師が小さい売り物にならない魚まで獲ってしまい資源が枯渇。
(b)漁協・漁業調整委員会が参入障壁。漁協が漁業権の主体になっており個人で漁業権を得て沿岸漁業・養殖業を営むことができない。
なぜ日本の漁業(水産業)はダメなのか? – 社会時評/書評

非効率な家族経営体が公共物の浜を勝手に占有しているのはけしからん、そのせいで日本漁業が衰退した、既得権益化した漁業権を規制緩和し、民間活力を最大限に活用し、平等に誰でも浜にアクセスできるように、漁業権を競売にかけ、資金力のある企業的経営体に参入させろ。
【漁業権問題】亡国・売国の漁業権開放|ニュース|農政|JAcom 農業協同組合新聞

〇主な改正点

養殖の区画漁業権を民間に開放するとともに、沖合・遠洋漁業の漁船のトン数制限の撤廃や、産地市場の統合・水揚げ漁港の集約化
隠れて進む漁業権の民間開放 9月臨時国会で法改定の動き | 長周新聞

漁業権のルールの変更と漁獲量による資源管理の拡大が2本柱である。

特に漁業権が最大の注目点だ。

改正案は、漁協が適切・有効に管理していなかったり、既存の漁業権がなかったりする場合は「地域の水産業の発展に寄与」する企業などに免許を与えるとした。
入管法の陰で… ひっそり衆院通過した、もう一つの「重要法案」(J-CASTニュース) – Yahoo!ニュース

〇改正案に反対の意見

規制撤廃して個々が勝手に自己利益を追求すれば、結果的に社会全体の利益が最大化されるという論理のコモンズ(共有資源)への適用は論外である。

資源管理のためには、総量規制だけすればよいというのは、現場を知らない絵空事である。異なる現場ごとに、漁協を中心としたきめ細かなファインチューニングで、絶妙なギリギリのバランスを保って各漁場は調整されている。漁協による共生システムは、その点で優れている。

その地に長く暮らしてきた多数の家族経営漁家の集合体が漁協であるから、漁協が本来の姿であるかぎりは、漁協と営利企業は同列ではない。漁業権は多数の漁家の集合体に付与されている。まず、そこに暮らしてきた漁民の生活と地域コミュニティが優先されるのは当然である。企業が参入したいのであれば、地域のルールに従って、漁協の組合員になるべきである。
【漁業権問題】亡国・売国の漁業権開放|ニュース|農政|JAcom 農業協同組合新聞

漁業権は本来、資源管理をして漁業を営み、漁村で暮らしていく人びとのためにあるものです。

(企業が参入すると)最終的には漁業権は証券化され、投機対象として自由に売買できるようになる恐れまで出てきます。私たちの共有財産であり、いのちの源でもある海の「切り売り」が許されていいはずがないのです。
民間企業への「漁業権」開放に思う | 生活と自治

〇改正案に賛成の意見

漁業制度の改正を含む同法案は、衰退する日本の伝統産業を変えるための施策が多数盛り込まれ、水産改革の起爆剤となることが期待されている。
一人負けのニッポン漁業、どう成長産業に変えていく?

〇成立したあとの報道

https://matome.naver.jp/odai/2154375663502512401
2018年12月08日