コンサート市場は盛り上がる一方で、問題として掲げられるライブチケットの高額転売問題。これは本来の価格とは逸脱した値段でチケットを販売することにより利益を産み出す人たちによるものですが、「どうしても観たい!」というファンの気持ちを利用した悪質な行為です。その差額分でグッズを買えたかもしれない、というところを考えると、転売をしている人しか得をしない仕組みになってしまっています。転売に関する取り組みを客観的に見ていると意外なことが見えてきました。
成長を続ける音楽ライブ市場とイタチごっこが続く転売問題
Aqua Timez、小田和正、きゃりーぱみゅぱみゅ、坂本龍一、サザンオールスターズ、スキマスイッチ、浜田省吾、X JAPAN、RADWIMPSなどさまざまな世代を代表するアーティストたちが足並みそろえて動いた出来事がありました。それは「チケットの高額転売反対運動」です。

https://www.tenbai-no.jp/
さまざまなアーティストの名前が並びます!
転売目的での購入は詐欺、神戸地裁が有罪判決
一般のファンも実質的な被害者と言及
チケット転売問題
2016年8月に116組のアーティストが名前を連ねた意見広告が当時話題となったので、覚えている方もいるかもしれませんね。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8038
音楽業界の苦戦は叫ばれて久しいですが、新しい取り組みのハイレゾや配信楽曲ダウンロード、定額の聞き放題のストリーミング配信サービスは盛り上がりを見せています。そして、新しい取り組みをしり目に右肩上がりで伸び続けているものもあります。それは「コンサート」市場です!一般社団法人コンサートプロモーターズ協会発表資料によると、公演数、入場者数、年間売上額いずれも成長を続けていることがわかります。
それぞれの資料が掲載されています!
一方で、業界内では「2016年問題」として渋谷公会堂・日本青年館・SHIBUYA-AX・横浜BLITZといった多くのホール・ライブハウスが相次いで閉館し、劇場不足といった問題に直面し、それは同時に別の課題を引き起こすことになりました。

https://www.barks.jp/news/?id=1000121308
それが、チケットのプラチナ化であり、冒頭の意見広告の話に繋がります。とはいえ、実際には公演場所・回数が大幅に減ったかというと数字の上では確かに伸び率は鈍化したくらいで減少しているわけではありません。そこから考えられることは、意見広告や各社の報道により「これはビジネスチャンスだ!」とばかりに、高額転売の取り組む人たちが増えたのではないでしょうか。勿論、主催側は黙認するわけではなく、さまざまな対策を講じています。
そもそもチケット転売って何が悪いの?
「チケット転売は問題だ」と言われると問題に感じますが、「どうしても行きたいチケットがオークションにあった!」と喉から手が出るほど欲しいチケットを見つけた場合には、高額であろうと手に入れます。需要と供給がマッチしていること自体に、どんな問題が含まれているのでしょうか。
まやぽん@モンスト垢@mnst_mypn
誰か転売してないの~???
高くてもいいから売って~!
ほんと行きたい…(´•̥ ω •̥` )
7/1のチケット2枚欲しい…(泣)

KAI@0893G
城間駿介ってやつが落選してしまって困ってます。
本人もちょー悩んでいます。
どうかチケット1枚売って欲しいです pic.twitter.com/Y5Yjf8dyYl



tanamism@tanamism
そこで、チケット転売行為自体の是非について考えてみましょう。まず、チケットの枠に限りがあることが大前提です。募集より応募数が多ければ多いほど、そのチケットには希少価値がつきます。本来欲しいと思っている人だけでなく、利益を狙う人たちはあの手この手でチケットを入手しようとするので、それこそ当選確率は何倍にも膨れ上がってしまいます。実際にオークションサイトに上がっているものを見てみましょう。音楽フェス、アーティストのライブ、野球、映画の前売り券、パークの入場券など、幅広く存在します。

https://matome.naver.jp/odai/2152957063355968801/2152957261456827703

https://matome.naver.jp/odai/2152957063355968801/2152957261456827803
音楽業界だけではない!?チケット転売対策が功を奏した“テーマパーク”があった!
2015年11月にチケット転売対策にいち早く取り組んだのは、大阪市此花区のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」でした。平日でも2時間待ち、休日だと何時間待たなければならないのかというくらいの大人気映画「ハリー・ポッター」をテーマにしたアトラクション。その長蛇の列に並ばずに優先的に利用できる7200円や9800円のエクスプレス・パスは特に人気が高く、すでに完売が続出していました。

https://www.usj.co.jp/ticket/expresspass/
このため、オークションサイトなどで高値で転売されたチケットで入場しようとするケースが続出することも想定されていたところに、一気に対策に取り組んだのです。その取り組みは鮮やかで、無効になったチケットは4000枚を越えながらもそのまま入場しようとしたのは11組、そこからクレームに繋がったのは2組で、使えないとわかったと同時に7~8割が返金を申し込んだそうです。
効果的な転売対策にはアナログが有効?
USJの転売対策は、クレームもなくユーザーへも枠が還元され、転売をしようと考える業者も個人も淘汰されたことで、全てが丸く収まりました。その取り組みを紹介している各メディアも「ノウハウを提供してほしい」と纏めていますが、そんなUSJの取り組みはデジタルではなくアナログなものでした(2015年当時)。

https://newsdeblog.com/post-2939/
具体的には、転売を目的にインターネットで購入されたチケットは、同一人物が販売開始直後に数百枚を買うなど不審な点があることに着目します。チケットには番号が付けられていることから特定は可能で、監視チームが購入履歴やインターネット・オークションなどをチェックし、転売を確認できたチケットは使えないようにするというものです。十数人の専門チームの“目”で確かめるため、経費は年間で2~3億円もかかるようです。確かに、日常的に運営しているテーマパークだからこそできる取り組みだと言えます。
高額転売はアーティストのモチベーションを下げ、ファンのモチベーションも下がる
高額転売対策の実施で、2017年初頭に音楽業界で大きなニュースが走りました。それは、2016年に「恋ダンス」で大ヒットを起こした星野源のライブでのことです。ヒット曲「恋」をリリース後の初のワンマンライブとして良くも悪くも注目を集めることになりました。それは、5000人キャパの会場で空席が700席もあったというのです。

http://digitalkoshikaworld.com/archives/4614

https://matome.eternalcollegest.com/post-2148530927927277801
その事実のみが報道されると「なんだ、星野源人気ないじゃん」と言われてしまいますし、当日会場を見渡した当人は勿論のこと、参加したファンも「なんで?」と首をかしげてしまいたくなるほどの大問題なのです。空席があるということは、グッズの売上も下がるということでもあり、主催者側にとっても良いことがありませんが、これはUSJよろしく「私たちは本気で取り組んでいるんだ!」という猛烈なPRでもあったのです。つまり、空席は不人気が理由ではなく「顔写真付き身分証がなくて入れなかった」ことだったのです。
ikumi 嵐垢@masaki_122438
私は、今回落選でした。
本気で行きたくて、去年からお金貯めていました。
落選したからこそ今強く思っています。
本当に行きたいって思ってるファンはたくさんいると思うし、転売目的でチケット応募して、発表と同時に売って、しかもめっちゃ高くて、本当にやめて欲しいです。 pic.twitter.com/orYSitNSkc


まこっちゃん∞れぴっこ@okuradisney888
チケット高値で売ってるやつしばくぞ。
もう一回言うよ?
チケット高値で売ってるやつしばくぞ。
おい。高値で売ってんじゃねーよ
応募してんじゃねーよ。
落選した人の気持ち考えろよ。
どんなにエイトが好きで応募してると思ってるの。
ノラネコ@tomimasu_h
それでも対策をせずには防げない!さまざまな事情に考慮できるようにする必要あり
生みの苦しみと言えばそうなのですが、現状で哀しむ人が多くなってしまっていることを考慮すると、何か最善策がないのか考えてしまいます。ももいろクローバーZはNECの最新システムで顔認証を行うという新しい取り組みでした。

https://jpn.nec.com/ad/onlinetv/concert.html
ジャニーズやサザンも!
一方で、ジャニーズの人気グループ嵐は事前に顔写真を撮影・登録したものと一致しているかをスタッフが目視で確認する方法だったり、サザンオールスターズは写真付きの身分証明書を持っているか、と厳重な管理がされています。

https://johnnys.jocee.jp/user/info_johnnys/d746becb414d2f904b62

http://blog.livedoor.jp/kuwatamanpgspot/archives/40630700.html
買った人も、号泣するしかありません。
名前が証明されるものを1~2つ持っていれば大丈夫、というグループも存在するようで、コストをどこまでかけるか、というところが運営上で違いが生まれているようです。勿論、USJのように全面禁止にした方が手っ取り早いでしょう。しかし、「一切の事情を考慮せずに転売はNG」としてしまった場合は、冠婚葬祭や感染症などの特別な事情があっても考慮しない、ということになってしまうため、全てを禁止するのは難しいと判断せざるを得ないのが現状のようです。
善意の行動が思わぬ被害を受けることも!?
他にも「同行者に特別な事情が生まれたので1枚知り合いに譲ったら転売され、自分がペナルティを受けた」というようなケースもあるようです。一人一人の事情に合わせた対応をするというのは、顧客に寄り添った取り組みでもありますが、非常に果てしない道のようです。
全員が同じ方向を向くことの難しさ…それでも
ライブチケットの高額転売問題は、抜本的な改革をするには事務所単位ではなく業界全体の取り組みにしなくてはならないようです。しかしながら、意見広告に賛同しているのは一部のアーティストでしかありませんでした。勿論、賛同していないと言っても、別の取り組みを講じると声が上がっていますが、足並みを揃えることは並大抵なものではないようです。一日も早く、ファンの人たちが純粋にライブを楽しめる環境になってくれると良いですね。


