はじめに
このまとめでは、筆者の個人的な経験を主に、これは効果があったというイラスト練習法をご紹介します。そこで、特に効果のあった練習法をひとつひとつご紹介しますので、お好きなところから読んでみてください。道具さえあればすぐにできるものばかりです。
また、本まとめは画力向上を目指すためのもので、実際のイラストの描き方講座ではありませんのでご了承ください。そして、主に男性向けのイラストを描くことを想定しています。とはいえ、女性向けのイラストを描く場合には役に立たないというわけではありません。
以下がこのまとめのアウトラインです。
・始める前にこれだけは意識してほしいこと
・具体的な画力向上法
-画力向上法その1「アニメの模写」
-画力向上法その2「写真の模写」
-画力向上法その3「フィギュアをいろいろな角度から描く」
-画力向上法その4「グラビアを元にオリジナルキャラクターを描く」
・おわりに
始める前にこれだけは意識してほしいこと
イラストの練習を始める前に、どうしても意識していただきたいことが3つあります。以下でひとつずつ説明します。
1.大きく描く
最初は小さいサイズで絵を描く人が多いと思います。
小さく描くということは細かい動きが要求されるわけですから、もちろんペンを上手く使えるようにはなるのですが、上手く見える絵というのはだいたい大きな動きの下で描かれています。
最初は難しいかもしれませんが、絵を大きく、線を思い切り引くことを続けていけば、全体の形を生き生きと捉えることができるようになります。練習用の紙には大きく絵を描くといいですよ。お手本となる絵の実寸よりも大きく描くことを意識するとよりいいでしょう。
2.人物と背景の練習をバランスよく行う
たとえば4コマ漫画は、コマの大きさの制約から背景は簡単に描かれていることが多いです。かといって背景がゼロの漫画というのは逆に描くのが難しい(背景で説明ができないので)でしょう。
また、漫画を描くには、部屋や街の風景などのいわゆる「背景」だけでなく、鞄や携帯やテレビなど「小物」を描くことも必要になってきます。これはイラストであっても同じです。
たとえばたいていのビルは四角く細長いかたちをしていますよね。これはスマートフォンでも同じです。つまり背景を練習しておけばこういった小物をうまく描くこともできるようになるのです。
そもそも、背景より人物を描くほうがずっと難しいのです。曲線もたくさんありますしね。だから、最初は背景の練習を避けていたとしても、人物の絵を描き続けられているなら、絶対に背景も描けるようになります。
そして、人物の絵を描くことで背景の絵を描く助けにもなり、そのまた逆も……と、慣れるにつれてフィードバックが起こるようになります。そのために練習はバランスよく!これがコツです。
3.常に自分に合う練習法を模索する
ここで言いたいことは、技法書やハウツーの奴隷になるな、ということです。
とにかく技法書にはこう書いてあります。「こういう練習法はいけない」「これが正しい方法だ」、と。
はっきり言いましょう、すべて嘘です。真実ではありません。
なぜなら自分にあった練習法はまさに十人十色、千差万別だからです。というのも、ある人はロボットをメインに描きたいし、またある人は人間をメインに描きたい、そしてある人は動物をメインに描きたい、と、興味は人それぞれです。また、やっていくうちに、ある人は人の絵でも髪を描くのが得意だったり、手を描くのが得意だったりと得意な分野も枝分かれしていきます。だから決まりきった方法はありません。
そのため、常に自分に合う練習法を探し続けるのが賢い方法だと言えます。
具体的な画力向上法
ここからは具体的な画力向上のための練習法を紹介します。
画力向上法その1「アニメの模写」
まずは自分の好きな絵柄の絵を模写するのが上達の近道です。
お好きなアニメをひとつ、あるいは複数選んでください。次に、そのアニメのDVDやブルーレイなどを購入、レンタルし、映像をパソコンで再生して好みのところでスクリーンショットを撮ってそれを模写します。一話につき、どれくらいスクリーンショットを撮ってもかまいません。人物も背景もまるごとどんどん模写しましょう。ただしポイントがあります。
それは「描きたい」シーンを撮るということです。「描けそうな」シーンを撮ることではありません。
「描けそうな」シーンを模写する場合、どうしても難しい構図や複雑な事物を避けてしまいがちです。反対に「描きたい」シーンは複雑で最初は上手く描けないかもしれませんが、描きたければ何度も練習するうちにできるようになりますし、長期的に見ればモチベーションも保ちやすいといえるでしょう。また画力もより向上するはずです。
それから、スクリーンショットを撮るのに便利なソフトとして「VLC media player」があります。リージョンも関係なく再生できるフリーソフトですので、この機会にダウンロードしてみてはいかがでしょうか。
画力向上法その2「写真の模写」
アニメで絵の模写をしたあとは、実際の物を模写してみましょう。これによって特に背景や小物を上手く描くことができるようになります。
以下で特に画力向上に効果のある事物を紹介します。
1.バラ窓
ゴシック建築など、西洋の建築でよく見られるバラ窓。曲線が多く、かつ画像のように角度がついているものだと余計に難易度が上がります。部分部分の形状だけでなく、全体をひとつの円として捉えなければバランス悪く仕上がってしまいますので、全体を捉える練習としても最適でしょう。
また、将来的にこのようなデザインを背景で使う機会もあるかもしれませんので、練習しておいて損はありません。
2.車
ゆるい曲線ときつい曲線がバランス良く組み合わさっているのが車です。また角度によっても見え方が全く変わりますので、練習にはもってこいのモデルです。また、同じように車輪の付いている自転車やバイクなどもなかなか歯ごたえのあるモデルだといえます。
車のカタログや雑誌を見て模写するのももちろんありですが、ある程度精巧な模型を買って、いろいろな角度から描くという方法もおすすめです。
3.楽器
画力の高い人でさえ、不格好な物を描いてしまうことの多い楽器。特にギターやベースなどのポピュラー音楽に使う楽器は、意外と登場機会が多いものの実態を把握せず描いている人が多いように見受けられます。それというのも、楽器を描くのは面倒であり、実はかなり難しいからでしょう。
画像のように人が実際に楽器を持っている写真を元に描くと、より説得力の絵を描くことができるようになります。そして、楽器のきつい曲線は、画力を上げるためにはもってこいのファクターです。
上記以外の楽器でも、ホルンなどの金管楽器、ヴァイオリンなどの弦楽器も曲線が多いためなかなか難易度が高く挑みがいがあります。一方でキーボードなどの鍵盤楽器は直線が多いため、それに比べれば難易度は落ちるかもしれません。
画力向上法その3「フィギュアをいろいろな角度から描く」
アニメのスクリーンショットや写真を模写したあとは、フィギュアの模写に挑戦してみましょう。
フィギュアの利点はなんといっても、同一人物をいろいろな角度から描くことができるという点です。具体的には、まず正面からフィギュアを描いたら、次は少し回転させて描くということを繰り返しましょう。それを繰り返していくうちに、描く対象を立体的に捉えることができるようにもなります。
フィギュアは自分の好きなキャラクターのものでよいでしょう。また、必ずしも高いフィギュアを買う必要はありません。どんどん精巧になっているとはいえ、プライズの安価なフィギュアのほうが大雑把に作ってあるため、かえって細部を自分で想像する訓練にもなります。
画力向上法その4「グラビアを元にオリジナルキャラクターを描く」
1~3の練習を続けていくうちに、オリジナルのイラスト、つまりオリジナルキャラクターを描きたいという気持ちが出てくるのではないでしょうか。ここでは、雑誌やネットの画像を使って、オリジナルキャラクターを描く練習法を紹介します。そして、最初におことわりした通り、このまとめでは男性向けの絵を描くことを主眼にしていますので、ここでは女性のキャラクターを描くことを想定しています。
まず、キャラクターの髪型、目つき(ツリ目、タレ目etc)、体型(貧乳、巨乳、ぽっちゃりetc)を決めます。これは描いているうちに変わっていくものですので、そこまで厳密に決める必要はありません。次に、そのキャラクターのイメージにあう人物の画像(グラビア)を見つけます。これは直感で決めましょう。
そして、その画像を元に背景を含めオリジナルキャラクターの絵を描きます。髪型、目つき、体型はオリジナルキャラクターにあわせて変えて描いてください。ですが、表情は画像の通り描くのがポイントです。こうすることで本当にオリジナルの絵を描くときの表情のストックができますし、このキャラクターにはこういった表情が似合う、などキャラクターの内面を掘り下げるのにも役立ちます。
ただし、この方法で描いた絵を自分のオリジナルのものとして喧伝すると著作権違反になりますので、あくまで練習法のひとつとして考えてください。
おわりに
いかがだったでしょうか。
「常に自分に合う練習法を模索する」の項目でも描きましたが、これらの練習法はほんの一例です。
ですから、この記事で紹介する方法がまったくあっていないという方もいるでしょう。でもそれはそれでいいんです。「ここに書いてある方法は自分に向いていなかった」とわかるだけでも進歩です。それはつまり、「自分にあった練習法を見つけるのに一歩前進した」ということでもあるからです。もしくは一部は使えるな、と思う人もいるかもしれません。おそらくそれが一番多いケースですが、それも素晴らしい進歩です。
また、以前は合っていないと思っていた練習法が、画力が上がることで有用になることもあります。逆にもうこの練習法をやらなくていい、と思うようになることもあるかもしれません。つまり、常に練習法をブラッシュアップし、適宜変えていくことが画力を向上させるためのコツなのです。ぜひ、今日からイラストの練習を初めてみてください。
あなたの画力向上に一役買うことができたのなら、これ以上の喜びはありません。