ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない 第二部

makaizou

前編であるデスマ編の続きを書こうと思います。 今北人用に、前編の内容を簡潔に。

10年前後NEETで最終学歴が中卒の俺が、母ちゃん死亡で働く決心がつく。
職業はプログラマ。世にも恐ろしい残業地獄職だ。
一応言っておくと、上流SEや、会社によって違うらしい。
前スレの意見を統合すると、俺の会社が異常すぎるとの事。
プログラマを目指そうと思う人は、こいつの会社やばいって程度で見てくれるとありがたい
俺の入った会社は超絶ブラック。主に人間関係がヤバイ。そして入社日の時点でデスマが始動。
そんな中、俺はここで諦めたら母ちゃんに申し訳が立たんと必死に頑張る。
それが報われたのか、入社して2週間でプロジェクトリーダーにならないかと持ちかけられた俺。

どーする俺!?どーなる俺!?

リーダー
現プロジェクトリーダー。
年齢:30半ばぐらい
髪型:角刈り・眉毛が濃い
体型:ちょいピザ
性格:体育会系。自己中心的で、救いようがない。俺視点では最悪な人間

井出さん
先輩社員。リーダーと仲がいい
年齢:30前後
髪型:坊主・顔が濃い
体型:普通。少し痩せ気味かも
性格:おちゃらけている。仕事を仕事と思ってない。やはり最悪な人間。スレでは人気があるように思える。

藤田さん
先輩社員。この人のおかげで会社は回っている
年齢:29
髪型:パーマ。福山雅治みたいな感じ。フツメンではない(ブサメンかイケメンかは想像に任せる)
体型:痩せ型。
性格:真面目・人間関係の築き方が秀逸。憧れの人と言っても過言ではない。何故この人がこんな会社に居るのだろうか。

上原さん
先輩社員。廃人候補。
年齢:30前後
髪型:ワケわからん。ミディアムで寝癖が凄い
体型:痩せ型
性格:色々とやばい。吃音がひどいのが特徴。リーダーと井出さんにいじめられている。主にリーダー。精神病を患っている可能性高

「藤田くんが一番適任なんだが、彼はその気がないみたいでね。
それで二番目の実力者の君に頼みたいんだよ」

と言われた俺だが、やはりここは悩む。即答はできん。

「すいません、考えさせて頂いて構わないでしょうか」
「ん?おぉ、断らないんだなw いいよ。じっくり考えなさい。答えはいつ貰えるかね?」
「そうですね・・・今週中には」
「わかった」

ということとなり、俺は開発室に戻った。

「おい、1」

リーダーだ。

「はい」
「なんて話だった?」

お前降格だぞ

「いえ、次のプロジェクトの話です。後でご相談に伺うかもしれません」
「そうか、そうかw おーまぁ気楽に相談しろw」

のん気な奴だ。とりあえず藤田さんに相談しよう。

「藤田さん」
「うん?」
「ちょっと相談があるのでよろしいですか」
「あぁいいよ。キリも良いから。それで何?」

ここでは話せない。井出とリーダーが居る。

「ここでは話しにくいので、応接室でよろしいでしょうか」
「OK」

応接室に向かう。そして事の詳細を話した。

「1くんも来たか。私もその話を持ち掛けれた事があってね」
「断ったんですよね?」
「いや・・・あー・・・うん。そうだね」

何かあったっぽいな。

確かに藤田さんは能力もあり、リーダーになってもおかしくないのだが。

「1くんはどうしようと思ってるの?」
「自信がありません。さすがに2週間でリーダーというのは」
「いや、私は良い経験になると思うよ。
1くんは出世頭だと思うし。ただまぁ、楽ではないよね」

リーダーになれと言っているようだ。

「そうですか。前向きに考えてみることにします」
「うん」
「ありがとうございました」

開発室に戻ることにする。
あとはリーダーと井出さんと上原さんだが、上原さんは会話にならないので放置にしておこう
とりあえず井出さんを呼び、事の詳細を話した。

「そりゃびっくりボンバーだ」

意味わからん

「どうしようかなと思ってるんですが」
「受ければ?1くんがリーダーだと俺も安心」

こいつ、リーダーを擁護しないのか?

「いや、やっぱりリーダーの事もありますし」
「何言ってんだよw あの人のこと気にしてたら何もならないってww」

なんという変わり身の速さか

「まぁ確かに横暴なところがあるとは思いますが」
「1くんがリーダーになったら・・・そこんとこよろしルクロード!!」

もうわかったから。

井出さんもなれと言うことか。
リーダーに相談しようかとも思ったが、面倒なことになりそうなのでやめた。
しかし荷が重いので、条件を提示しようと思う。社長室に向かう。

「すいません、例のリーダーの件なんですが」
「おぉ、答えが出たか」
「はい。引き受けようと思います。
ですが、ひとまずは今回のプロジェクトだけということでお願いできないですか?」
「あぁ、それはいいよw そうかそうか、引き受けてくれるかw」

この後、経験者であるリーダーと共に客先に出向くようにと伝えられる。
フォローはしてくれるようだ。

期待が全くできない。

開発室に戻る。
リーダーはあくびしながらイスをグルグルしていた。仕事しろよ。

「おー新リーダーの登場だ!」

井出が言った。まだ俺は何も言ってない。静かにしろ。

「え!?」

リーダーのイスが止まった。

「おい、井出」
「みつめあ~うと~」
「おい、井出!」
「すな~お~に」
「井出」
「おしゃ~べり~」

井出はすでにリーダーを見捨てている。
俺はリーダーの元へと向かった。

「リーダー、お伝えしないといけないことがあります」

リーダーは顔があわわわとなっていた。

「リーダー降格?」
「はい。ですが、次回のプロジェクトの件だけとの事です」

井出がこっちを見た。

「なんだよ、ずっとじゃないのかよ」

すると井出が

「よかったですね、リーダー!!」

お前の頭のがよっぽどよかったよ

「で、結局どうなるんだ。すぐにでも仕事受けにいくのか」

事情を説明する。

「そうかそうか。よし、俺がついていってやる。手本見せてやるからな」

期待できないが、とりあえず一緒に行くことになった。

客先はでっかいビルの中にあるという。
応接間に通された。やはり上流は違う。

「どうも」

松崎しげるのような人が出てきた

「おー柴田さん」
「どうも、ご無沙汰ですね。リーダー、隣の人は?」
「あーこいつは」

自己紹介を終える。

「すでに社長から聞いてると思いますが、お頼みしたい仕事はですね」

プロジェクトの仕様を聞く。
どうやらJAVAを扱うらしい。TomCatのインストールが必要だ。
しかも意外と複雑そうだ。サーブレットやJAVAスクリプトなども組み込まないといけない。
これは納期長めに取らないと無理だぞ

「これをですね、2ヶ月ぐらいでやって欲しいんですよ」

バカかこいつ

「ハッハッハw 柴田さん、大丈夫ですよw」
「おーさすがリーダーさん。頼りになられますなw どうですか、今夜一杯w」

手をくいっとやる。

「いいですねww あとで連絡くださいw 伺いますのでw」

下流がこうなら上流もこうか。さすがブラック・・・。
俺は改めて仕様書に目を追いやった。どう考えても2ヶ月でこなせる内容じゃない。
サーブレット新規作成もあるし、JSPファイルも作らないといけない。
担当分とかどう割り振るつもりなんだ、この人は。

「とりあえず現段階では、お返事が出せないので、また後ほど伺うということでよろしいですか」
「そうですな。契約まであと1週間ほど余裕があるし。何とか上手く調整してください」
「・・・わかりました」

帰路につく

「おい、1」
「なんでしょうか」
「お前、自信が無いはまずいぞ」

かといって快諾もどうかと思うのだが

「あぁいう時は笑顔で任せてくださいの一択なんだよ。わかったか」
「はい・・・」

先が思いやられるな・・・

「おまえだって、これから任せようっていう人間が自信無いとか言い出したら信用できないだろ」
「まぁそうですね」

その前に無理な要望をどうにかするべきだ。
会社の人間、全員が藤田さんでもないとこなせないぞ。

「リーダー、快諾してましたけど、スケジュールのアテはあるんですか?」
「当たり前だ。社長が今月から派遣社員を雇ったみたいだから、人数が一人増えるんだよ」

おぉ、そういうことか!それを早く言ってくれよ!

「しかもそいつ、プログラム暦5年だ。おまえより長いんだぞ」

なるほど、これならなんとかなるかもしれん!
早速帰って、スケジュールを引くことにする。

リーダー曰く、その派遣社員との面接はすでに済んでおり、確実に戦力となるという事らしい。

正直、俺はメンバー全員の力量を把握してないので、リーダーを中心にスケジュールを引いてもらう。
リーダーはこのプロジェクトの完遂に相当の自信があるらしい。

「スケジュール完成したぞ」

俺が目を通してみる。

上原さんの仕事量が半端ないことになっている。

「ちょっとリーダー、これ上原さんきつくないですか?」
「バカ野郎、上原はこんぐらいがちょうど良いんだよ」
「そ、そうですか」

俺はよく知らんので了承することにした。
上原さん、このプロジェクトで死ぬかもしれんな。
客先にメールで転送し、返事を待つ。

「は、は、は、はは」
「1がお前にどうかって聞いてんだ。答えろ」
「せ、せ、せ、い、せい、ぞ、ぞぞう」

製造がどうした

「ふ、ぺ、ぺ」

まだか

「1くん、上原さんの製造のペースはやっぱりおかしいと思うよ。
いくらなんでも1日で3本仕上げるのは辛い」

そういうことか。

「やはりそうですよね」
「わ、わ」
「上原!お前はもう良いから黙ってろ!!」

リーダー落ち着け

「おい藤田。上原の担当は修正分だけだぞ。3本ぐらい余裕だろ」
「いえ、私だったら無理ですね。2日で3本なら可能ですが」

俺もそう思う。
上原さんを見てみろ・・・スケジュールを凝視しまくってるぞ・・・。

「上原、お前どうなんだ」
「え、は、は」
「どうなんだって聞いてんだ」
「わ、わ、た、わたし」
「上原さん、出来ますか?」
「出来るよな、上原!」
「は、は」

いや、そこは断るんだ。俺はあなたの体調管理まではできない

「は、は、は」

「イノセントクイーン!!」

黙れ井出

「よし、出来るらしいぞ!」

いや出来ないだろ。上原さんの助けを懇願している目を見てみろ。

「上原さん、ホントに大丈夫ですか?」
「おい1。しつこいぞ。出来ると言ったんだから、それでいいんだよ」

コイツ、これまでそうやって計画を押し通して来たな。

「あの、リーダー」

藤田さんだ

「なんだ」
「リーダーと井出さんのスケジュール、偉く甘くないですか?」
「甘くねーよ。俺と井出の担当分は新規作成だからな。こんぐらいないと回らん」
「そうですか」

いや待て。確かにスケジュールの間取りがおかしい。何故1本5日も取ってるんだ。
しかも井出とリーダーの担当は修正分だぞ・・・。
そうか、だんだんと見えてきた。

こいつと井出がブラックの根源なのか。

「ちょっとリーダー」
「なんだよ」
「今は私がリーダーなので、あえて言いますけど、このスケジュールはやはりおかしいですよ」
「何がおかしいんだ。言ってみろ」

目に殺意がある

「上原さんの担当分を、リーダーと井出さんに割り振ります。
リーダーの権限を持って行います」
「ちょまwwwwww」

井出が立ち上がる。

「おい、1。おまえ自分が何言ってるのかわかってんのか?」
「もちろんですよ。自分の発言に責任は持っています」
「おまえ、上原の担当分を俺と井出に回す。つまり、俺と井出の仕事が増えるってことだぞ」
「当たり前じゃないですか」
「それはつまり、プロジェクトが完成しないってことだぞ。良いのか?」

何言ってんだ、こいつは・・・。

「言ってる意味がよく分からないんですが・・・」

こいつらどんだけ思考がやばいんだ。これが社会人なのか

「いやいや、だからな。俺と井出じゃこれが限界なんだよ。これ以上は無理だ」
「その通りでやんす」
「でも上原さんが回らないと思うんですが」
「さっき出来るって言ってただろうが」

脅迫まがいだけどな。すると嗚咽が

「う・・・う・・・」

上原さんだった・・・

「ちょまwwwwwwwwwwwwwwwwww」

井出がリアルに吹いた。いや、笑うとこじゃねぇ

「う・・ぐ・・・う」

上原さんのメガネが涙の雫でベチョベチョになっていく

「上原、どうしたんだ。何か辛いことでもあったのか」

お前が原因だ

「う・・・」
「上原さん落ち着いてwwwwww ほら空を見ろwwwwww今日も輝いているwwww」

井出、空気を読め

「上原さん、やっぱり厳しいですよね?」

俺が声をかける。

「は・・・・・・」
「上原ぁ!!弱音吐くのか!?新人の1がリーダーやってくれてんだぞ!!」

お前は自分の仕事を増やされたくないだけだろう。
そろそろ俺も怒るぞ

「は、は・・・」
「上原さん、ちゃんと言わないと分からないと思うよ。
怖いと思うけど、勇気を出して意見言ってごらん
1くんも考えてくれると思うから」

藤田さんの言うとおりだ。
上原さんが意志を明確にすれば、この話は前に進む。

さぁがんばれ。

「バカ野郎!!上原が居ないとこのプロジェクト完成しねぇぞ!
がんばれるよな、上原!」

肩をバンと叩くリーダー。

「は、は・・・は・・・」

ダメだ。押し切られる

「・・・い」

上原死亡フラグその1成立

「よっし!OK!!」

OKなのは貴様と井出だけだ・・・。
コイツはもう人間じゃない。

「リーダーの説得力凄すぎですよwwwwww」

井出も同種だ。虫唾が走る。

「1くん、後で話良いかな」

藤田さんだ。怒られるのであろうか。
この後、軽く説明をして会議を解散した。

続いて藤田さんとの話だ。

「1くん、なんであの時、上原さんを助けてあげなかったの?」

やはり来た。

「すいません。ですが、やはりリーダーの経験が初めてですし・・・」
「まぁ済んだことは仕方が無い。
けど、やっぱりあのスケジュールは無理だよ」

わかってる。
けど、俺と藤田さんだって限界ギリギリまで引いてるんだ。

引くのならリーダーと井出さん、あとは派遣社員だが・・・。

「そういえば藤田さん、派遣社員さんはいつから来られるんですか?」
「明後日の朝10時に来るらしい。契約日はその後だったよね。間に合う?」
「えぇ。間に合うと思いますが。リーダーと井出さんは頼りにならないので
その派遣社員さんに少し負担を持ってもらおうかと思ってるんですけど」
「うーん・・・。どうかな。私はリーダーか井出さんが良いと思うけど」

いや・・・あの二人は信用できん・・・。
というか仕事そのものを投げるかもしれん。

「ひとまず派遣社員さんに仕事を割り振っておきます。
過剰な期待はしないようにしておきますので」
「うんわかった。また何かあったら相談しにおいで」
「ありがとうございます」

藤田さんの存在はとてつもなく大きい。
この人が居なくなった瞬間、会社は潰れるであろうな。

そして派遣社員のやってくる日になった。

朝10時。
派遣社員はまだ来ない。

「あの、リーダー」
「なんだよ」
「派遣社員さんのことなんですが」
「知らんよ。お前が電話しろ」

役に立たない人だな。電話番号を調べる。
すると派遣社員がやってきた。

「こんにちは」

女性だった。

それを見た瞬間

「俺、井出です!!!!!!よろしく!!!!!」

必死すぎだ。

「中西と申します。今日は遅刻して申し訳ありませんでした」

おぉ、第二の常識人だ。
すでにこの感覚がおかしいと思うのは俺だけでないはず。

「こんにちは。プロジェクトリーダーの1です。席をご案内します」
「はい」

井出がはしゃぎまくっている。
タイプなのか。リーダーに耳打ちしてるぞ。

「ここです。パソコンや動作環境はこちらで用意しますので、お待ちください」
「はい」

「ここで俺参上」

井出だ。呼んでない。帰れ。

「1くん」

なんだよ

「ここは私がやるよ。君は忙しいから、別の作業をしておきなさい」

口調が藤田さんになっているぞ。

「ホントに大丈夫ですか? まぁTomCatをインストールすれば製造環境だけは整いますけど」
「任せなさい。ほら、君は別の作業をするする」
「わかりました。ではお任せいたします」
「あの、1さん」

中西さんだ

「1さんお若いのに、もうリーダーやってらっしゃるんですか?」
「や・・・」

まぁいいか・・・。ブラックというのを言うこともない

「えぇ、そうです」
「凄いですね。ちょっと尊敬しました」

それはどうも。
井出が、口半開きでこっちを見ていた。

俺はスルーした。

すまん、まさかこんなに書かれるとは思ってなかった。
すぐに書くよ、すまんww

名前:中西
体型:スリム。身長は165ぐらい
胸:小さい
尻:パツンパツン
脚:たまらん
性格:これから描写

現在の関係
井出→中西
中西→?

顔は川村ゆきえに似てる。

人を選ぶかもな。

ちなみに俺は胸は大きい派だ。

動作環境の設定は井出さんにお願いすることにしたから、俺は自分の作業に戻る。
俺は恋人を作るとかは全く興味がなかったため、中西さんはスルー状態だった。

女が苦手だって人居るけど、俺には男・女という概念があまりない。
だから、割と普通に喋れる。まぁ、業務関係に限るけど・・・。
メールをチェックする。
一つは客先からだ。
あと二件入ってるな。誰だ。

リーダーと井出さんだった。

メールを閲覧してみる。
まずはリーダーから

リーダー:協力しろ。添付Zipファイル。housyuu.mpgファイル

何だ一体。
協力ってのは、中西さんのことだろうな。
mpgを開く。

「あぁん」←音は出てないぞ

のAVだった。

バカかよ!!!
会社になんてものを持ち込むんだ!

心底腐っている・・・。この調子じゃ井出のメールも・・・。

俺はネクタイを緩めて、ため息をついた。
寿命が縮まる・・・。
井出のメールを開く。

井出:一目惚れした。俺に仕事回せ。アピールする良いチャンスだ。

これは予想外だ。中西さん投入は良い方向に回ってきた。
しかしどのぐらい回すべきか。
まぁいい。とりあえず客先のメールをチェックするか。

どうやらあのスケジュールで良いらしい。

上原さんの担当見たのか?

どうも不安だが、OKならOKで良いや。
井出さんと話をするか。

「井出さん」
「うん?」
「環境設定が終わったらで良いので、話させてもらってもいいですか」
「あぁいいよ」

口調が藤田さんのせいで違和感がある。
俺はその間、客先の要望をレビューしていた。
といっても、はっきり言って意味がわからないので、目を通すだけだ。
それをリーダーに渡して、再レビューするという形を取らなければならないが。

「上原に聞け」

いや上原さんに聞いてもわかるわけないだろ。

「上原さんはリーダー経験があるんですか?」
「知らん」

ダメだこいつ

上原さんは会社を休んでおり、来週から出勤という形になっていた。
プロジェクト毎に満身創痍なのか・・・。

「1さん」

中西さんだ

「はい、どうしましたか」
「えっと・・・井出さんにインストールして頂くTomCatなんですが」

俺は説明できないぞ・・・。JAVAは詳しくない・・・。

「CDが、えっと」
「すまん、1くん」

井出、おまえなにをした

「コーヒーこぼしてしまったんだ」

井出氏ね

「あ、いえ!違います!わたしが!」

中西さんがやらかしたのか?でもコーヒー無かっただろ

「中西さんは悪くない。わたしだ」

言わんでもわかっとるわ。
おまえさっきカッコつけてマグカップからずずーっとすすってただろ。

「とりあえずCD見せてくれませんか」

見せてもらう。こりゃダメだ。
コーヒー漬けも良いところだ。

「リーダー」
「なんだよ」
「TomCatのバックアップないです?」
「上原に聞け」
「上原さんは今日休みです」

「おい上原ぁ!!!」

キチガイか、こいつは

「上原さんは休みですよ」
「サボりか?」
「違います。最近、激務が続いてたので、療養してます」

すると

「どうかした?」

おぉ藤田さん。あなたはいつもタイミングが良い。

「実はですね」

事情を説明する。

「あぁ、サーバにexeファイルか何かあげてたと思うけど。
それに、エクリプスの参考書にもあったと思うから、それも見てみると良いよ」

サラサラと無問題だよ。
を前面に出して言う藤田さん。あなたが神か。

「あ、ありがとうございます」

と言う俺に

「すいません、ホントにありがとうございます」

中西さんが重ねて言う。性格良いな。

「気にしなくて大丈夫。失敗は誰にでもあることだから」

ニコリと笑う藤田さん。
井出が小さく見える・・・!

「そうそう、失敗は誰にでもあるよ」

フォローを入れたつもりの井出だろうが、お前が真っ先に謝らないといけないだろ

「ありがとうございます。みなさん優しくて助かります」
「はははww 任せてちょんまげ!」

・・・

「とりあえずサーバを確認してみてください。
無かったら無かったで、エクリプスの参考書持ってきますので」
「わかりました」

こうして環境設定は無事に終えた。
そしてプロジェクト開始日を迎える。
続々とやってくるソルジャー達。戦力外が約二名。

「おはようございます。1くん、今日から頑張ろう」

藤田さんだ

「客先から電話が来たら、要望をしっかりとメモするようにしたら良いよ。
それが可能かどうかは、リーダーが判断してくれるから」

リーダーは頼りにならん。
俺はあなたに判断してもらいたい

「リーダーが不在だったら、私か上原さんに聞いて。答えれることなら答えるよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「じゃ、がんばろう」

軽く会釈する。

「お、お、お、お」

上原さんがやってきた

「お、おは、お」
「おはようございます。上原さん、先週はゆっくり休めましたか?」
「は、は、はは」

はい、か。休めたな、よし。

「今日からプロジェクトスタートです。よろしくお願いします」
「よ、よ、は、よ、は」

はい、よろしくお願いします、だな。

「では」

席につく俺。設計書作成から開始だ。
割り振りとしては、俺2割、藤田さん3割、井出さん1割、リーダー1割、上原さん3割といった具合。

この段階ではまぁ、デスマにはならんだろう。
ちなみに中西さんは仕様確認で、スケジュールは取っていない。
製造から参加だ。

「おはヨーグルト!」
井出がやってきた

「おはようございます」
「おはよう。設計書の担当は割り振らなくて良かったの?」

設計書はそこまで大変ではない。
その代わり、上原さんの製造分を少し担当してもらう。

「えぇ。その代わり、製造を担当してもらいたいので、明日の会議の時に」
「おっけーおっけーおっけー牧場」

中西さんが居ないとこのノリだ。
あとは仕事をこなせば文句は無い。

「おはよう」

リーダーが来た。

「おはようございます」
「あ~あ。今日からプロジェクト開始か。どっち~な~」

朝からこれでは社内の空気が悪い。

「リーダーにも期待していますので」
「せんでいいよ」

元よりしてねぇ

後に中西さんを加え、プロジェクトが始まった。
順調に仕上げていく。
藤田さん・上原さんを中心に設計書を固めていき、その内容を中西さんが目を通すと言った感じだ。

しかし井出がうざい。

「1くん」
「はい」
「Whereの綴りなんだっけ?」

バカか貴様

「1くん」
「なんでしょうか」
「ORDER BYって昇順?降順?」

ダメだこいつ

「1くん」
「はい」
「このSQL文、なんかおかしいらしいんだけど、何でかわかんない?」

見る。

SELECT 値1 IS 値2 FROM テーブル名
うんたらかんたら

ISっておまえ・・・英語じゃねーぞ・・・。
SQL文なんか知るかって人のために、正しくはASです

俺はここで思った。
製造担当してもらうことになってるが、こんな調子では逆に完成から遠のくのではないか。

以前言っていた
『それはつまり、プロジェクトが完成しないってことだぞ。良いのか?』
これはハッタリなどはでなかったのだ。

上原さんには悪いが、負担をかぶってもらうしかない・・・。
とりあえず藤田さんに相談しよう。

「すいません、藤田さん」
「うん?」

事情を説明する。

「うーん・・・」

さすがの藤田さんも唸った。あなたは神だ。頼む

「上原さんに回すのは無理じゃないかな・・・」
「ですが、他に適役が居ません。私もこれ以上の負担は・・・」
「しょうがない。私が引き受けるよ」

なぬ

「えぇ!?藤田さんもすでにいっぱいいっぱいじゃないですか」
「誰かがやらないといけない仕事だから。
といっても2、3本しか引き取れないよ」

それで十分です。助かります。

よし、これで何とか目処はついた。
一番の元凶は、全く役にも立たないリーダーと井出さんだったが
もうこれは仕方がない。嘆いても何も始まらんのだ。
やれる戦力でやるしかない。
そして設計書を完成させ、次は製造だ。
設計諸段階では、22~23時には帰れていたので、まだマシだといった所。
本当の地獄はこれからにある。
所が、中西さんが悩みがあると言ってきた。

脱落するのか

「すいません、1さん」
「相談ってなんでしょうか?」
「あの・・・上原さんでしたっけ・・・」

む?

「えぇ。上原さんがどうかしましたか?」
「ワキガ凄くないですか?」

ワキガかよorz

「あぁ・・・そうですね・・・」

俺にはどうしようもできん

「部屋中に臭いが充満してないですか?」

き、気付かなかった。いや、慣れてしまっていたのだ。

「そ、そんなにひどいです?」
「はい・・・わたし香水つけてるので、特に・・・」
「それがちょっと辛いと・・・」
「はい・・・。」
「他に誰か相談されました?」

藤田さんに相談すれば何か良い答えが貰えるぞ

「井出さんに・・・」

よりによって井出か!?

「いや・・・井出さんより藤田さんの方が」
「わたしもそう思うんですが、えっと・・・藤田さんって話しかけにくいんです」
「うーん。そうですか・・・。ちょっとそれは言っておきます」
「え!?い、いえ、良いです!カッコ良いから、ちょっと話しかけにくいっていうか!」

あぁこの会社はどうなってしまうのだろう

そ、そうですか、わかりました」
「あ、すいません!なんでもないです」
「上原さんの件については、ちょっと考えておきます・・・。今は案が浮かばないですが」
「わかりました。どうもありがとうございます」

ややこしい事になってきた。リーダーって大変だな・・・。
雑用がとても多いし、メンバーの一人一人に気を配らないといけない。
特に上原さんが要注意だ。
しかし、時間は待ってくれん。俺はリーダーだ。
責任者という立場なため、何としてもプロジェクトを完成させないといかん。
だが障害がまたもや発生する。
井出とリーダーの行動が不審なのだ。

(一体、何やってんだよ・・・。頼むから問題を増やさないでくれ・・・)

ちまちま監視するが、何をやっているのかはわからない。
上原さんに何かやっている事までは分かった。

一応、声をかけておくか・・・。

しかし、俺の行動はすでに遅かった。

上原さんが席を立ち、俺の方に向かってきた。

「す、すす、すい、すいま」

すいませんか。なんだ

「はい、なんでしょうか」
「す、す、すこ、すこ、よ、よろ、し、すこ」

少しよろしいでしょうか、だな。

「はい。どうぞ」
「し、し、しご、しご」

仕事・・・?なんだ

「し、し」
「おい上原ぁ!!しっかり喋ろや!!」

お前は黙ってろ

「すすす、すい、す」

ほら見ろ・・・ややこしくなったじゃないか。
黙ってれば良いんだよ。俺が解読する。

「1くん、上原さん、仕事をやめたいんじゃないんかな」

神よ、あなたは何を言うか

「は、は、は」

マジかよ。

何故このタイミングに。

「えっと・・・そうですか」

俺にまず話を通してきたと言うことか・・・

「おい上原」

リーダーが言う。

「おまえ、この仕事やめてどうすんだ。他に雇ってくれるとこなんか無いぞ」
「え、え、え、えと、た、たべ、たべれ、れば」
「だからお前みたいな奴を雇ってくれるとこなんて、これっぽちも無いんだよ」

悲しいが正論だ。働けていること自体が奇跡に近い・・・。
しかし言葉を選んであげてくれ

「わ、わき、わき」

ワキガがなんだ。
俺はどうすりゃいいんだ、と思いつつ考えていると、井出が笑いをこらえていた。

「井出さん、何か知らないですか?」
「ぶふっし、知らんww 知らん知らんww」

何か知っているな、こいつ。

「1くん、中西さんを除く全員で話をした方が良いんじゃないかな」

中西さんは無関係だと藤田さんは言っている。
しかしまた業務外に時間をとられるのか・・・。

「わかりました。応接室に行きましょう。
中西さんは申し訳ありませんが、仕事の続きを」
「あ、はい」

応接室に入る俺たち。
藤田さんが全情報を握っているのか。

藤田さんが口を開く。

「私は見ていただけなので何とも言えませんが」

上原さんは怯えているのか、目がキョロキョロしていた。

「上原さんの机に毎朝、消臭力が置かれていました」

な、なんだってー!!
藤田さんは朝来るのが一番早い。それで俺は気づかなかった。

「私が毎日、元に戻していましたが、これが毎日毎日続いていましてね」

井出とリーダーだな・・・。

「犯人は誰とは言いませんが、他にも嫌がらせをしてたんじゃないかと思ってます。
それで、その積み重ねで上原さんはやめたいんじゃないかな、と思ってるんですが」
「・・・」

上原さんは無言である。

「井出さん、リーダー、何か知りませんか?」

もういいや。藤田さんに全部任せよう。
俺は最終的な判断を下せば良い。

「俺は知らんぞ。消臭力なんかおかん」
「俺も俺も」
「1くんは?」
「え?私も当然違いますよ」
「うーん、そうなると、中西さんが犯人って事になるかな。
そう思って、1くんに中西さんは除くようにしたんだけど」

これはまさか

「あ、思い出した。俺でした、さーせんww」

井出だ。
藤田さん、あなたがコナンか。

「井出さんでしたか。何でそんな事をしたんですか?」
「いや、まぁちょっとしたイタズラ心?ww」

とりあえず、この件は井出さんが頭を下げて事なきを得た。
リーダーも100%関わっているが、最後までしてないの一点張り。
しょうがないので、解散という事で業務へ戻る・・・。
肝心の上原さんは、やめるのは取り消した。

しかし、心に負った傷は深いだろう。

しかし藤田さん、あなたは本当に凄い。

そしてひたすら製造、製造。

ホントはもっと間が空いてて、藤田さんも色々とトークを混ぜてたんだけど
内容を忘れてはしょってしまった。でも凄さが伝わっただけで良かったんだぜ

製造中、当然質問が多く来る。
派遣社員である中西さんからもだ。
しかし、俺は経験不足でシステム的な事を聞かれても分からないので
藤田さんに丸投げをしていた。

「あの、すいません・・・藤田さん」

中西さんだ

「うん?」
「ここの所なんですけど・・・」
「あぁ、うん。良いよ。席に行こうか」
「はい、すいません」

井出が口を開けて、おいおいおいおいという顔で二人を目で追っている。

「そうだね、ここは・・・」

中西さんがマウスを握っているその手に、さらに手を置く藤田さん
さりげなくそんなことするのか。
凄いな。俺はさりげなく感心・製造・製造。

一方の井出

「手、手」

見りゃわかるよ・・・つか仕事してくれ

「あ、あの」
「うん?」
「手が・・・」
「あぁ、ごめん!」
「い、いえ。良いんです。ごめんなさい」

微笑ましいのう。
そんな恋の始まりを予感させつつ、仕事は進んでいく。
例の消臭力事件以来、井出とリーダーも大人しくなった。

この会社の人間関係は、奇妙なほどガッチリと固まっていた。
リーダーには上原さんが必要で
俺と中西さんには藤田さんが必要。
そして井出さんには中西さんが。
さぁ、製造も半分を切った。

残りの半分、このデコボコチームワークで乗り切れるのか。

さぁ、製造も半分を切った。
残りの半分、このデコボコチームワークで乗り切れるのか。

プロジェクトリーダー編・後編
俺はいつも通り出社した。
さて、今のところは順調だ。
帰宅時間は相変わらず遅いが、0時には帰れている。

「おはようございます」

中西さんだ。
最近、この人は来るのが早い。何かあったのかな。

「藤田さん、ちょっといいですか?」

藤田さんか。なるほどな。井出が居ると落ち着かないからな。

「おはヨーグルト!!」

ま、こいつも来るのが早くなったんですけどね。
しかし良い傾向だ。

よし、今日も頑張るぞ。

すると電話が鳴った。

「はい、○○(会社名です)」
「すいません、○○の柴田と申しますが、1さんおられます?」
「あぁ、1は私ですが」
「えっとですね・・・」

どうやら修正が入るらしい。
まぁ、この業界じゃこんなの日常茶飯事だからな。
どの程度の修正かが問題だ。

「内部処理のうんたらかんたらを、大幅に変更して欲しいんですがね」
「え?」
「いえ、今はどうのこうのって処理になってるでしょ?」

こ、こいつ何を言ってるんだ。
納期まであと1ヶ月しかないんだぞ・・・。

「それは分かりますが、納期的な面で見ると厳しいのでは・・・」

みんなが俺に視線を集めてくる。

「あーリーダーさんに代わってもらえます?」

ダメだ。渡すと全てが終わるぞ。

「いえ、リーダーは今席を外しておりまして」

「居るぞ。1、渡せ」

終わった。

「あーもしもし、私ですが」

頼むからどうにかしてくれ。
相手先に少し仕事を渡すとかしないと、マジで回りきらんぞ。

「えぇ。あーそうですか。はははww」

笑ってられる余裕はない

「あーあー。余裕ですよww」

まて。

「了解しましたww いえいえww どうもすいませんww」

お、おま・・・

「おい、1。修正作業はいったぞ。スケジュールを引きなおせ」

このバカをどうにかしてくれ・・・。

「いや・・・リーダー、作業分担の件ですが」
「知るかよー。俺に聞くな。お前がリーダーだろ?
それでも聞く場合は上原に聞け」

こいつの思考回路はどうなっているのか。
しかし嘆いても始まらん。
スケジュールを引きなおさねば・・・。

前半は順調だったのに、何故ここで転ぶのか・・・。

頼む、どうにかなってくれ

しかし経験不足で俺は何もわからん。
コナン神の藤田さんに聞きにいくことにする

「すいません、藤田さん・・・スケジュールの件なんですが・・・」
「あぁ。引き受けたものはしょうがないからね。どの程度の作業なの?」
「日数にして7日ぐらいかと思います」
「・・・大きいな」
「ですよね・・・」
「ちなみに修正プログラムの担当者は誰?」
「上原さんです」
「うーん・・・上原さんなら出来ると思うから、直接本人と話してごらん」
「はい。ありがとうございます」

上原さんの元へ。

「すいません、上原さん」
「は、は、は、は」
「プログラムの修正が入ったので、少し相談してよろしいですか?」
「は、は」
「今現在、どのくらい作業進まれてます?」
「え、え、えと、い、い」

スケジュール表を確認した方が早い。
・・・2日遅れになっている。

「遅れてますか?」

「あ、い、い、は、はは」

上原死亡フラグその2が成立した。

「上原さん、スケジュールを見る限り二日遅れとなっているのですが、
これはこれでよろしいですか?」

頼む。違うと言ってくれ。
ただスケジュール部分を埋めるの忘れていただけだと言ってくれ。

「はははは、は、は」

マジかよ・・・。
修正分を渡してしまったら死んでしまうぞ、この人・・・。
修正分の話をするのは後にする。
まずはこの人の状況の詳細を知るのが先決だ。

「取り戻せる予定というか、見込みあります?」
「え、えと、え、え、とえ、と」

まだか

「ど、どど、どど、に、どど、にち」

土日か。土日で取り戻せるのか?

「休日出勤ということですか?」
「は、はは、は、は」

修正分をそこで修正してもらいたかった俺。いや、いかん。
上原さんだって人間なんだ。休みを潰させてまで仕事をさせるなんて外道だ。
俺は自分の良心と、必死に闘っていた。

「わかりました。それで現在の遅れを取り戻すということですね」
「は、は、ははは、は」

修正分をどこで対処するかだ・・・。使える人間は限られている。
藤田さんか、ギリギリで中西さんか、知識・経験は無いが、根性はある(と思っている)俺か。

取り戻せる状況は聞いた。
とりあえず、修正分について話をしておくか。
上原さんは会話できないが、仕事はできる部類の人間だ。

「修正分についてお話したいのですが、よろしいですか?」
「は、は、はは、は」

修正分について話していく。
画面レイアウトの変更から内部的なロジックに至るまで、俺の少ない語彙で説明していく。
俺は設計書を片手に、ふと上原さんの顔を見た。

真顔だった。

いや、魂が抜けていっている、が正しいかもしれん。大丈夫なのか・・・。

しかし俺は説明の義務がある。
一言声をかけるよりも、まずは話を進めるべきだ。

「以上です」

「は・・・は・・・・は」

上原さんは放心状態となっていた。

ダメだな。上原さんは使えん。
しかしこの膨大な修正分をどうすればいいのか。

元はと言えば、リーダーが簡単に引き受けてしまったからこうなってしまったんだ。
俺はリーダーの元へと向かった。

「すいません」
「なんだよ」
「修正分のことなんですが」
「知るかって言っただろ。上原に聞けよ」
「上原さんに回すのは無理があると思うので、ご相談に来ました」

むしろこいつに少し受け持ってもらう。

「上原は無理じゃねぇよ。あいつは何だって出来る」

何を言ってるんだ、こいつは

「リーダーに受け持ってもらえませんかね」
「はぁ!? なんでこの俺が上原の仕事をやらんといけんのだ。
お前がやれよ。リーダーだろうが」

だ、ダメだ、話にならない。いや、わかっていたんだ。
分かっていたが、これっぽちの光が見えると思った。だから賭けたのだ。
しかし、いとも簡単にそれは崩れ去った。

仕方がない・・。そう思い、俺は藤田さんの元へと向かった。

あの人なら、あの人なら何か妙案を出してくれるはずだ。

「すいません、藤田さん」
「うん?」
「修正分のことなのですが」

頼む。どうにかしてくれ。

「いや・・・これはちょっとな・・・」

だ、ダメなのか。

「リーダーに頼んではみたの?」
「は、はい。ですが、やらないと言われまして・・・」
「わかった」

そう言って、席を立った藤田さん。リーダーの元へと向かっていく。

「リーダー、今よろしいですかね」
「おう、藤田か。なんだ」

まさか

「1くんの言っていた修正分に関してなんですが」

来た。藤田さんがリーダーを説得する。
動かざること山の如しのリーダーを動かせるのか。

「おう、お前がやってやれよ」
「それがですね、そうしてあげたいのは山々なんですが、私も仕事を多く抱え込んでるんですよ」
「お前ならどうにでもなるだろ」

藤田さんでもダメなのか。

「うーん、さすがに時間的な余裕がないので、厳しいですね」
「そんなの知るかよ。俺だって時間がないんだぞ」
「そうなると、このプロジェクトは潰れますね」
「そうだな。まぁ俺がリーダーじゃないから良いけどなwwww」

おい、ちょっと待て

「いえ、そうとも言えませんよ。
今回のプロジェクトは、リーダーが補助・指導に回っているわけですから
責任の半分はリーダーにあるという訳です。しかも1くんは未経験で、今回が初体験」
「はぁ?知るかよ、大体」
「さらに」

藤田さんが強引にさえぎる

「これは社長の判断です。ということは、逃げ場がありませんよね。
1くんは私の目から見てもかなり頑張っていますし、前半部分は少なくとも彼に過失はありませんでした」

流暢な口調で話を進めていく藤田さん。

凄いぞ、あなたが孔明か。

「しかし、ここで過失が出た。私は実際、現場に行ってないので知りませんが、
おそらくリーダーが契約の話を進めたんじゃないかと思っています」

その通りだ。俺はこの納期じゃ無理だと思ったんだ。
中西さんのおかげで、無理→凄く厳しいになってはいるが。

「となれば、先述の半分の責任が8割程度にまで増加してしまうんじゃないですか?
そうなると、リーダーが社長から責めをくらい、最悪クビになってしまうとは考えられないですか?
1くんから聞きましたが、最近社長に怒られたんですよね?
今こそそれを取り戻す時期だと思いませんか?」
「うーん・・・」

おぉ、あの「やらん」で一辺倒だったリーダーが悩んでいる。
しかし、後一歩が足りない。後一歩で落とせるんだ。

がんばってくれ、藤田さん・・・!

「それに、これでもしプロジェクトを完遂できたとしたら、
私は1くんだけでなく、リーダーの補助が良かった、と社長に報告しますけどね」

フィニッシュブロー。

「・・・うーん・・・。うーん・・・・。まぁ・・そうだな・・・・。
しょうがない、俺が引き受けてやるよ」

諸葛亮孔明は、平成の日本に居た。

俺は心の中で、藤田さんありがとうございます、と15回ぐらい言った。
これでどうにか修正分は回る。おっと、藤田さんに直接お礼を言わなければ。

「藤田さん、ありがとうございます」

小声で会話する。

「いやいいよ。1くん、リーダーみたいな人は使うのにコツがいるんだよ。
誰でもそうだけど、まずは人の性格をキッチリと掴んで、それを元に説得方法を頭の中で展開させるんだ。そうすれば、お客さんの所に出たときでも上手く行くから」

それが出来れば苦労はしない・・・。
藤田さん、あなたは何者なんだ。

「はい、すいません。ホントありがとうございます」

こうして俺は、何とか事なきを得た。
早速、作業に戻る。
自分のスケジュールだけで手一杯な状況だったが、俺は藤田さんのおかげで何とかなっていた。

みんなが協力し合い(井出はあまり役に立っていない)着々とプロジェクトを進めていく。
しかし、問題はこれだけでは収まらない・・・。

プロジェクトリーダーである俺の苦悩はさらに続くこととなるのだ。

「1さん」

中西さんだ。

「はい、どうされましたか?」
「少し、相談があります・・・」

上原さんのワキガか?確かにあれから対策は取ってないが・・・。
しかし、今の状況を見ればそれ所ではないと察してくれるはずだ。
中西さんは常識人だからな。

「はい、なんでしょうか」

仕事のことだろうか。
確かに派遣社員である中西さんにとっては、激しく辛いかもしれん。

「ここでは話しにくいので、応接室で・・・いいです?」
「えぇ」

俺はこれから始まる彼女との会話で、リーダーの大変さを思い知ることになる。

「相談というのは」

中西さんが口を開く。

「藤田さんのことなんです」

藤田さん何かしたっけか・・・。全く思い当たらない。

「何かされました?」
「いえ、そうじゃなくて、気になって仕事に集中できないんです」

し、知らんがな

「そ、そうですか・・・。どうしましょうか、部屋を別々にしますか?」
「それはイヤです! 先週、藤田さんがリーダー説得してたじゃないですか。それが凄くカッコよくて」

業務に関係なくないか?早く切り上げて仕事をするべきだ。

「私どうすればいいか分からないんです。
今まで付き合った人とか、こんなの全然無くて」

そうなんですか。
でも俺は童貞でいない暦=年齢で、恋愛の経験なんてないから、そんな話をされても

「1さん、藤田さんに彼女いるか聞いてくれませんか?
もしかしたら既婚者かもしれないですし」

な、なんだ。なんで俺はこんな事を頼まれているんだ。

「えぇ? 私がですか? 中西さんが」

聞けば良いでしょ、なんて空気の読めない発言はできん。

「お願いします! それだけ分かれば、どっちに転んでも私の中でケジメがつくんです」

し、知らん・・・。そんなの知らん・・・。大体、どうやって切り出せば良いんだ。
あの藤田さんだぞ・・・。業務外の事では、ほとんど何も会話したことがないんだ。

「井出さんに頼めば・・・」
「ダメです。井出さん、何か気持ち悪いです・・・。
1さんから何か言っておいてくれませんか?」

な、何なんだ。俺はこの女からとんでもない事を頼まれていないか?
リーダーとは言え、まだ新入社員なんだぞ・・・。

「は、はい・・・。井出さんの方は、了解しました・・・が・・・」

藤田さんのことは知らんがな。自分で何とかしてくれ。俺の管轄外だ。

「このままじゃ・・・業務に影響出るかもしれません・・・」

中西さんは、常識人という名のヴェールを被った非常識人だったようです。

「・・・わかりました。お伝えするのが遅くなると思いますが、それで良いのであれば」
「あ、はい! それで結構です! お願いします、ありがとうございます!w」

そう言って部屋を出て行く中西さん。
俺はとんでもないことを引き受けてしまったぞ。
井出さんへの忠告は言葉を選べばどうにでもなるが、藤田さんの件はどうにもならん。
いや、今はとにかく仕事だ。藤田さんの方は大した問題じゃない。後回しにするべきだ。
まずは会社に来たくなくなる要素を潰すことだ。つまり井出さんに忠告する。
中西さんから具体的な被害を聞き、俺は井出さんを呼び出した。

「井出さん、仕事中に呼び出してしまってすいません」
「おう、いいよw で、なにw」
「中西さんがですね」
「おうおうww 中西さんが俺のこと好きだって?w」

ホントめでたい奴だな

「いえ、そうじゃなくて」

お前の会社のポジションで、どう中西さんが惚れるんだ。

「なんだよ、違うか。でなに」

態度変わりすぎだ。

「えっとですね、最近仕事に来るのがイヤだと言ってまして」
「なんだと。1くん、中西さんに変なことしてないだろうな!?」

してねぇ。おまえだ。

「いえ、私はしてませんよ」
「誰だよ」

おまえだよ!

「えっとですね・・・」

直接言うべきか。遠まわしに言うべきか。
藤田さんの、人の性格を掴め、というアドバイスを思い出す。
井出は遠まわしに言っても気付かない可能性が高い。直接言うべきだ。

「井出さん、中西さんの匂い嗅いでませんか?」
「へ!?」

「か、か、か、嗅いでねぇよ?」

嗅いでるな。
井出さんの席は部屋の出入り口の近くに居るのだが、中西さんが部屋を出入りしたら、鼻をクンカクンカしているようだ。
俺もコイツ変なことやってるな、とは思っていたが、匂い嗅いでるとは思わなかった。

「井出さん、中西さんが嫌がってるので、やめてあげてくれませんか」

ホント何をやってんだ、コイツは・・・。

「いや、だから嗅いでないよ」
「そう言われましても困ります。もしそうであるなら、そういう素振りをやめて欲しいんですが」
「いやいや、知らん、知らん」

人の話を聞けよ。そういう素振りだけでもやめればいいんだ。

「このままでは中西さんが会社に来なくなりますので、よろしくお願いします」

藤田さんなら、中西さんを説得の材料に使うはずだ。

「ドンマイww」

ダメだった。

「ドンマイ、と言われましても」
「事実無根、毛根無根なんだよ」

おまえはただの坊主だろうが

「うーん・・・。まぁ、普通にしてくれるだけで良いんで・・・お願いできないですかね・・・」
「しょうがないな。1くんの頼みならしょうがない。気をつけるようにするよ」

納得行く形ではないが、結果オーライだ。
しかしリーダーって人間関係にまで気を使わないといけないのか・・・。
精神的に参るな、これは。

そんな心配をよそに、再び問題が浮上する。
納期まであと2週間に迫った時だった。
この頃では、みんな会社を出る時間が日付が変わってからになっていた。
特にスケジュールが厳しい上原さん、その上原さんの仕事を受け持った藤田さんに至っては
会社泊まりこみが週に1~2回はあった。

そんな絶体絶命のピンチの時、事件は起きた。

「やってられるか、ヴォケがッ!!」

リーダーだ。上原さんの修正分を担当していたが、ついにその限界が来たのか。

「おい、1!おまえちょっと来い!!」

またどやされるのか。何なんだ、一体。

「はい」
「おまえ、マジいい加減にしろよ」
「すいません」
「なんでこの俺が上原の仕事を受け持たんといけんのだ。おかげで帰れねーぞ」
「ですが」
「ですがじゃねぇ、お前がやれよ」

ダメだ。この人は完全にキテいる。
だが、俺だってもう限界なんだ・・・。睡眠時間が絶対的に足りていない。
それにみんな同じ状況なんだぞ。
お前だけが辛いんじゃないんだ。なのに駄々こねやがって。
俺の中で憎悪が渦巻いていく。

「私も正直、辛い状況ですので」
「知るかよ。あと少しだから、残りはお前がやれ」

ダメだ。寝てないせいで、頭が働かない。
説得の材料が出てこない。このままでは押し切られる。

「リーダー」

藤田さんだ。頼む、孔明の再来を願う。

「藤田、お前も1に何か言ってやれ。コイツ、自分がリーダーだと思って、調子乗ってるぞ」

何を言ってるんだ。言いがかりだ。ふざけるなよ。

「1くん」

藤田さんだ。そんなバカな。常識人の最後の牙城、藤田さんまでもが。

「君が悩むことはない。今の正直な気持ちを言ってごらん。
リーダーの仕事を、誰かに回すアテはあるの?」

違う、藤田さんは俺の味方だ。藤田さんの言う通りに動くべきだ。

「ありません。みんな手一杯です」

例外をあげるとするならば井出さんだが、彼の能力を考えると、それこそプロジェクトが潰れてしまう。

「お前がやればいいだろうが。休みに出てやれば、どうにでもなんだろうが」
「それでリーダー、この修正分が終わったら、リーダーは何時ごろに帰れる見込みなんですか?」
「20時ぐらいだよ。今は修正分のおかげで、日付変わっても仕事やってるがな」

20時っておまえ・・

「派遣社員で、女性である中西さんでさえ、それをこなしていますがね」

そうだ。リーダーは元々、中西さんを気に入ってたんだ。
今はそういう感じではないが、唯一の女性だ。
とんでもない事を頼まれたが、やはり中西さんの存在は大きい。

「うるせぇよ。男女差別すんじゃねぇ。俺はもうやらねーぞ」
「男女差別ではありません。派遣社員の中西さんが不平不満を漏らすならともかく、
正社員で、しかも元リーダーのあなたがそれを言うのはどうですか。おかしくないですか」

藤田さんが俺を見る。一人では手強しと言っている。加勢するべきだ。

「藤田さんの言う通りだと思います。私は新人で」
「うるせぇ!」

「うるさいのはあなただ。リーダーである1の話を聞け」

藤田さんがキレた。

「あぁ!? 藤田、おまえ自分が何言ったかわかってるのか!」

これを機に、上原さん以外がこっちを向く。戦慄が走る。
上原さんは口ですーはーしながら、仕事を進めていた。

「それは私のセリフだ。あなたみたいな責任感の無い人は始めてだ。
自分がリーダーから降りた途端、手の平を返すなんて、社会人のすることじゃない」

つまり、リーダーは自分がリーダーであるならば、きっちりと義務をこなす人間らしい。
いや、それでも自分に割り振る仕事は最低限にしているが。

「藤田、おまえ自分の立場わかってるんだろうな!?」

この会社の主柱だ。藤田さんが抜けた瞬間、全てが終わる。

「立場など関係ない。人間としてどうなのか、道徳としてどうなのかと言ってる。
リーダー、仮にあなたが1くんの立場ならどうしますか。
新人で、初めて体験するリーダーやって頼りになる人があなたしか居ない状況で
もうやらん、なんて言われたらどうしますか」

最後は違う。頼りにしてるのは藤田さん、あなただ。

「うるせぇな!」
「今日はもう仕事にも話にもならないでしょう。家に帰って、ゆっくり考えてください」
「ヴォケがッ!」

そう言い、席を立つリーダー。ゴミ箱を蹴飛ばし、ドアを乱暴に締めて帰っていった。

一体どうなるんだ・・・。やはり失敗してしまった。

新人で、経験も知識も無い人間がリーダーなんてやれるわけがないのだ。

ストレス爆発。それを見て愕然とする俺に、藤田さんが声をかけてきた。

「1くんは気にしないでいいよ。リーダー、相当ストレス溜まってただけみたいだから」
「ですが・・・」
「私も溜まってて、自分を抑えることができなかったな。
見苦しい所を見せてしまってすまないね」

違う。藤田さんは俺の代わりにキレてくれたのだ。
俺は一度、ぽりんきー事件でキレている。
あの事件を見て、キレると理詰めで話をすることができない、社長など他人に頼る、などの特徴を捉えられていたのかもしれない。

「ホントにすいません。リーダー、明日来てくれるでしょうか」
「来ると思うよ。来なかったら、君の指導を断ったって事だから、その時に社長に言ってごらん」
「はい・・・。どうもすいませんでした」
「あぁ、いいよ」

そう言って席に戻る藤田さん。俺も戻る。ふと井出さんと目が合った。

「パプアニューギニア」
・・・俺は無反応で席についた。

そして翌日。リーダーはすでに来ていた。

「おはようございます」

席につく俺。俺に全く過失はないが、今後を考えるならば謝っておくべきだろう。

「すいません、リーダー」
「・・・」

無視のようだ。

「昨日はホントにすいませんでした。
私のスケジュールミスで、リーダーだけじゃなく、メンバー全員に苦労をかけてしまってます」
「うるせぇ。仕事中だ。とっとお前も席にもどれ」

藤田さんの言う通りのようだ。
ストレスが溜まっていただけだったらしい。
つまり、それを見抜けなかった俺の過失でもあったわけだ。ここは反省すべき点である。
これで何とかなりそうだ。
みんな死にそうになりながらも、確実かつ着々とプロジェクトを進めていく。

しかし藤田さんは凄い。
キレると我を忘れて、自分のエゴを他人に押し付け勝ちだが
それを制御して、リーダーの考えを改めさせてしまった。

ちなみに、井出のパプアニューギニア発言で、場の空気は和んだ。
あぁいう存在も悪くはないのかもしれん。

さぁ、納期まであと一週間だ。
約一名、廃人が居るが(あえて名前は伏せさせてもらう)プロジェクト自体に問題はない。
社内の空気も良好だ。

「1くん」

井出さんだ。

「このプロジェクト終わったら、飲み会で二次会にカラオケとかいかね?」

唐突な話だ。しかし、それも悪くはない。
俺は友達がおらず、飲み会やカラオケの経験は皆無だった。

「うーん、どうでしょうか。みんなに意見を聞いてみます」
「おっけww」

そして一斉にメールを送信する。
みんな忙しすぎて、口頭で説明する時間が勿体無いのだ。
次々と返って来るメール

藤田さん
私は構いません。飲みが決定したら、私に連絡をください。
社長に経費の方を出してもらうよう、要請しておきます。

中西さん
藤田さんが出席されるなら、私も出ます。

うーん、これはどうなんだ。まぁいい。出席しますよと返信。

絶対行きます。
と来た。ですよね。

リーダー
出てやる。お前飲ませるから覚悟しとけよ

何を言ってるんだ、こいつは・・・。しかも冗談に聞こえない。

上原さん
出ます。誘ってくださってありがとうございます。初めてです。本当に感謝してます。

メールだと偉く流暢だな。
てか、この人のメールの内容、割とやばくないか・・・。

い、いや、気のせいだ。上原さんは出席する。それだけしか書いてなかった。
これ以上、同情の余地を広げないでくれ。

全員出席ということで、飲み会の開催が決定した。
よし、あとはプロジェクトを完成させるだけだ。がんばるぞ

さぁ、ついに俺の担当したプロジェクトも終わりを迎えるぞ。

正確にはリーダーと藤田さんが担当した、だが・・・。
みんなで必死に単体テストをこなしていく。
テスト件数が足りない、ハードコピーを撮って編集するのに時間がない・・・・・・・
細かな問題は次々と発生するも、気合と根性という精神論で仕上げていく。

しかしこのプロジェクトは怒涛であった。
システムの内容はもちろん、スケジュールが厳しかった。

ケンジ(俺の唯一の友達)の忠告を聞き、JAVAを少しでもかじっておいて良かった。

そして

「みなさん、おつかれさまでした!!」

『おつかれーっ!』

プロジェクト完遂。(正確に言えばまだだけど。あくまで社内では)

「よっしゃー! これから飲み会だ!!」

井出さんだ。溜まってたのだろう、声のトーンが微妙に高い。

「久々の飲みだなww 井出、おまえ脱ぐなよww」
「わかってますよww そのかわりスネ毛盛りはwwwwww」

訳のわからん会話をしている。

「1くん、本当におつかれさま」

藤田さん、俺はあなたに何度助けられたことか。これからもよろしくお願いします。
さぁ、人生初の飲み会だ!

こうして俺は無事にプロジェクトを完遂し、飲み会へと繰り出していく。
果たして人生初の飲み会はどんなものなのか!?
そんな期待を胸に抱いていた当時の俺は、この飲み会が次の不幸への布石になるとは夢にも思っていなかった。

どうする俺!?どうなる俺!? 続くぅ!!

次回、第3部『そして廃人へ・・・』

https://matome.naver.jp/odai/2149545714172242501
2020年01月24日