【文学】いま本当に読むべき芥川賞のおすすめ12選

bookbug
おすすめの芥川龍之介賞受賞作をセレクト。順位は完全にまとめ主の主観です。

はじめに

芥川龍之介賞(あくたがわりゅうのすけしょう)、通称芥川賞は、純文学の新人に与えられる文学賞である。文藝春秋社内の日本文学振興会によって選考が行われ、賞が授与される。
芥川龍之介賞 – Wikipedia

芥川賞は日本の文学賞の最高峰。毎年二回ニュースになるので、普段はあまり文学作品を読まないという方も名前くらいは聞いたことがあるかと思います。ですが、純文学なんてなんだか敷居が高そう……とか、どれから読んでいいのかわからない……といった方も多いのではないでしょうか。

ここでは、いま読む価値がある作品ということを基準にこれまでの芥川賞からベスト12作品を選んでみました。独断と偏見ですが、何かの参考になれば幸いです。

第12位

「限りなく透明に近いブルー」 村上 龍

第75回(1976上期)

内容紹介

福生の米軍基地に近い原色の街。いわゆるハウスを舞台に、日常的にくり返される麻薬とセックスの宴。陶酔を求めてうごめく若者、黒人、女たちの、もろくて哀しいきずな。スキャンダラスにみえる青春の、奥にひそむ深い亀裂を醒めた感性と詩的イメージとでみごとに描く鮮烈な文学。群像新人賞、芥川賞受賞。

村上 龍(むらかみ りゅう、1952年2月19日 – )は、日本の小説家、映画監督、脚本家。長崎県佐世保市出身。血液型はO型。
村上龍 – Wikipedia

武蔵野美術大学在学中の1976年、麻薬とセックスに溺れる自堕落な若者たちを描いた『限りなく透明に近いブルー』で群像新人文学賞、及び芥川龍之介賞を受賞。
村上龍 – Wikipedia

今や大御所となった村上龍のデビュー作にして芥川賞受賞作。苛立ちに満ちた初々しい初期衝動が感じられて、改めて読むとポテンシャルのある新人だったのだなと感じます。これが気に入った方には『海の向こうで戦争がはじまる』を、もっと爽やかなのが良いと思った方には『69』をお勧めします。

第11位

「タイムスリップ・コンビナート」 笙野 頼子

第111回(1994上期)

内容(「BOOK」データベースより)

海芝浦に向かう「私」を待ち受けるのは浦島太郎、レプリカント、マグロの目玉…。たどり着いた先はオキナワか?時間と空間はとめどなく歪み崩れていく。言葉が言葉を生み、現実と妄想が交錯する。哄笑とイメージの氾濫の中に、現代の、そして「私」の実相が浮び上がる。

笙野 頼子(しょうの よりこ、1956年3月16日 – )は日本の小説家。本姓・市川。三重県出身、立命館大学法学部卒。
笙野頼子 – Wikipedia

笙野頼子のタイムスリップコンビナート、ホント言葉が滅茶苦茶で理不尽極まる作品なのに時折無性に読みたくなってはすぐ放り出すからアレはなに、ジャンクフードみたいな恐ろしさがあるな

なにがなんだかさっぱりわからんけど、とにかくパワーを感じる作品。言葉の過剰の中で海芝浦から幻想へとトリップしてゆきます。存命の作家のなかではおそらく文学に対して一番意識的な人ということでランク入りです。

第10位

「或る「小倉日記」伝」 松本 清張

第28回(1952下期)

内容紹介

「松本清張傑作短編集」は、現代小説、歴史小説、推理小説各2巻の全6巻よりなる。本書は現代小説の第1集。身体が不自由で孤独な一青年が小倉在住時代の鴎外を追究する芥川賞受賞作『或る「小倉日記」伝』。旧石器時代の人骨を発見し、その研究に生涯をかけた中学教師が業績を横取りされる「石の骨」。功なり名とげた大学教授が悪女にひっかかって学界から顛落する「笛壺」。他に9編を収める。

松本 清張(まつもと せいちょう、1909年(明治42年)12月21日 – 1992年(平成4年)8月4日)は、日本の小説家。
松本清張 – Wikipedia

1953年に『或る「小倉日記」伝』で芥川賞を受賞。以降しばらく、歴史小説・現代小説の短編を中心に執筆した。
松本清張 – Wikipedia

1958年には『点と線』『眼の壁』を発表。これらの作品がベストセラーになり松本清張ブーム、社会派推理小説ブームを起こす。
松本清張 – Wikipedia

@sawadaban

『恋情』とか『或る「小倉日記」伝』とか、松本清張の短編は、定期的に泣かせてくる
三寒四温の時季になると、松本清張の「或る小倉日記伝」、無性に読みたくなる。
何故だかよくわからない。風呂入ってから読もう。

大推理作家のイメージの松本清張ですが、デビュー当時は本作のような社会派の現代小説を書いていました。とはいえこの作品も鴎外の謎を中心とした一種のミステリとしてワクワクしながら読み進めることができます。大作家の原点ということでランクイン。

第9位

「普賢」 石川 淳

第4回(1936下期)

内容(「BOOK」データベースより)

中世フランスの女流詩人の伝記を書く主人公「わたし」、友人庵文蔵、非合法の運動をする文蔵の妹ユカリ―日常の様々な事件に捲込まれ、その只中に身を置く「わたし」の現実を、饒舌自在に描く芥川賞受賞作「普賢」

石川 淳(いしかわ じゅん、1899年(明治32年)3月7日 – 1987年(昭和62年)12月29日)は、日本の小説家、文芸評論家、翻訳家。東京府浅草区生まれ。
石川淳 – Wikipedia

無頼派、独自孤高の作家とも呼ばれ、エッセイでは夷斎先生の名で親しまれた。
石川淳 – Wikipedia

社会不適合者が家を飛び出して何かやらかし、死にたいと思いつつ戻ってくる的な話で、個人的には現代的ダメ男小説の元祖という認識。戦前の作品ですが、面白くて読みやすいと感じると思います。併録の「佳人」もおすすめ。

第8位

「糞尿譚」 火野 葦平

第6回(1937下期)

内容(「BOOK」データベースより)

出征前日まで書き継がれ、前線の玉井(火野)伍長に芥川賞の栄誉をもたらすと共に、国家の命による従軍報道、戦後の追放という、苛酷な道を強いた運命の一冊「糞尿譚」。

火野 葦平(ひの あしへい、1907年(明治40年)1月25日 – 1960年(昭和35年)1月24日)は、昭和戦前・戦後期の小説家。本名玉井 勝則。
火野葦平 – Wikipedia

読書ひと@edonosinjin

火野葦平「糞尿譚」読了
いや、兵隊三部作の火野葦平の芥川賞、それも戦時下の作であるから、どんなに戦争についてが刻々と書かれているものかと半ば恐れ、半ば興味で読み始めた訳だが、いや〜、汚い
俺が過去読んできた作でもとりわけ汚い、生活の貧窮がよくよく書かれている、「糞尿汲取人」のだが

これも戦前の作品。戦争の愚かしさとそれに振り回される人々をユーモラスに(かつ汚く)書き上げています。いまこそ読むべき名品。

第7位

「月山」 森 敦

第70回(1973下期)

内容紹介

出羽の霊山・月山を背景に、閉ざされた山村で村人と暮しをともにする一人の男が知った比の世ならぬ幽冥の世界…芥川賞の表題作ほか姉妹篇「天沼」など七作を収録

森 敦(もり あつし、1912年(明治45年)1月22日 – 1989年(平成元年)7月29日)は、日本の小説家。
森敦 – Wikipedia

ゆーい’ち@nyaposhine

今年読んだ本のベスト (今年出た本ではない)は、森敦 月山・鳥海山 でした。

幻想的で幽玄な作品ですが、ちょっとしたサスペンス的な手法も仕組まれており、引用させていただいた方がおっしゃっているようにどこかマジックリアリズム的な趣も感じさせます。佳品ですが今はあまり読まれていないようなのでこの位置に。

第6位

「石の来歴」 奥泉 光

第110回(1993下期)

内容紹介

レイテで戦友から聞かされた言葉によって岩石に魅せられた男に訪れる苦難。夢と現が交錯する中で妻は狂気に誘われ、子は死に奔る

奥泉 光(おくいずみ ひかる、1956年2月6日 – )は、日本の小説家。近畿大学文芸学部教授。
奥泉光 – Wikipedia

これは入れるか迷ったのですが、いまをときめく作家さんの原点ということで、敢えてお勧めさせていただきます。いささか高踏的なので馴染めない方もいるかもしれませんが、ミステリ要素も絡めつつ石に宇宙を読み込む味わい深い作品です。

第5位

「プールサイド小景」 庄野 潤三

第32回(1954下期)

平凡なサラリーマンである主人公はふとした出来心から会社を首になり、持て余した時間で二人の息子をプールに連れてゆく。日常生活のスケッチを通して、ささやかで脆い小市民の生活を描き出してゆく。

庄野 潤三(しょうの じゅんぞう、1921年(大正10年)2月9日 – 2009年(平成21年)9月21日)は、日本の小説家。
庄野潤三 – Wikipedia

山形県東田川郡三川町出身。埼玉県立川越高等学校、国際基督教大学 (ICU) 教養学部人文科学科卒。同大学院修士課程修了(博士課程中退)。
奥泉光 – Wikipedia

何気ない日常を描かせたらピカイチの作家。そしてこの作品では、その日常に忍び込んだわずかなヒビが少しずつ割れ目を広げてゆくような不穏さを冷静な筆致で描き出しています。名品。

第4位

「飼育」 大江 健三郎

第39回(1958上期)

黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇の物語。“閉ざされた壁のなかに生きている状態”を論理的な骨格と動的なうねりをもつ文体で描いた、芥川賞受賞作品。

大江 健三郎(おおえ けんざぶろう、1935年1月31日 – )は、日本の小説家。
大江健三郎 – Wikipedia

愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)出身。東京大学文学部フランス文学科卒。大学在学中の1958年、「飼育」により当時最年少の23歳で芥川賞を受賞。
大江健三郎 – Wikipedia

おれは大江健三郎の「飼育」から漂う、原理的な差別感と古い田舎の閉鎖的な感情と病んだエロスが大好きなのだ。

モリシ@mori_shi_

そのあと大江の飼育を読んでたんだけど、めちゃくちゃ胸糞悪い話で、(美しく緻密で豪奢な表現で残酷・グロテスクなモチーフや目を背けたい感情ばっかり描きやがって!つらい!!好き!!)みたいな気持ちになっている、ただし食欲はうしなわれる

初期から中期にかけての大江は本当に素晴らしい。この作品が読めたら、ぜひ『万延元年のフットボール』に挑戦してみてください。日本文学史上最高傑作の一つだと思います。

大阪府堺市出身。1981年、バンド「INU」のボーカリストとしてアルバム『メシ喰うな!』で歌手デビュー。(中略)1996年には処女小説「くっすん大黒」で文壇デビュー、2000年に小説「きれぎれ」で第123回芥川賞受賞。
町田康 – Wikipedia

第3位

「岬」 中上 健次

第74回(1975下期)

作家の郷里・紀州の小都市を舞台に、のがれがたい血のしがらみに閉じ込められた青年の、癒せぬ渇望、愛と憎しみ、生命の模索を鮮烈な文体でえがく。著者独自の哀切な主題旋律を初めて文学として定着させた記念碑的作品として、広く感動を呼んだ。芥川賞受賞作『岬』

中上 健次(なかがみ けんじ、本名同じ、結婚前までは「なかうえ」、1946年8月2日 – 1992年8月12日)は、日本の小説家。和歌山県新宮市生まれ。和歌山県立新宮高等学校卒業。
中上健次 – Wikipedia

被差別部落の出身であり、部落のことを「路地」と表現する。羽田空港などで肉体労働に従事したのち、執筆に専念する。
中上健次 – Wikipedia

ちこ@pony__1982

「岬」を読んでから一日何をしていても中上健次のことが頭にちらつくようになってしまった。どうしてくれよう。

これは文句なしでしょう。中上健次はこの作品を皮切りに、フォークナーやガルシア=マルケスにも比肩するような、のちに「紀州サーガ」と呼ばれる一大叙事詩を紡いでゆくことになります。圧倒的。

第2位

「きれぎれ」 町田 康

第123回(2000上期)

内容(「BOOK」データベースより)

絵描きの「俺」の趣味はランパブ通い。高校を中途で廃し、浪費家で夢見がちな性格のうえ、労働が大嫌い。金に困り、自分より劣る絵なのに認められ成功し、自分が好きな女と結婚している吉原に借りにいってしまうが…。現実と想像が交錯し、時空間を超える世界を描いた芥川賞受賞の表題作と他一篇を収録。

町田 康(まちだ こう、1962年1月15日 – )は、日本の小説家、ミュージシャン。旧芸名は、町田 町蔵(まちだ まちぞう)。本名は同じ漢字で「まちだ やすし」である。
町田康 – Wikipedia

norinori368@368hoshi

町田康の『きれぎれ』読みました。最高にCOOOL

芥川賞は良くも悪くも秀才的な書き手に対して与えられてきた賞。町田康はそんな芥川賞の歴史のなかでは数少ない天才の一人。現代の無頼派、天性のパンクロッカー、偉大です。

第1位

「壁」 安部 公房

第25回(1951上期)

内容紹介

ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。そして……。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。

安部 公房(あべ こうぼう、1924年(大正13年)3月7日 – 1993年(平成5年)1月22日)は、日本の小説家、劇作家、演出家。本名は公房(きみふさ)。
安部公房 – Wikipedia

limたくや→∞@kenritumugen

安部公房の「壁」を読み始めたけれどすでに安部公房ワールドに引き込まれてしまっていい意味で疲れてる。

予想通りだった方も多いでしょうが、一位は阿部公房の「壁」。日本のカフカ、グレッグ・イーガン的SFを50年前に書き上げていた男、しかも受賞時27歳。すべてにおいて完璧な芥川賞受賞作です。

おわりに

いかがだったでしょうか。かなり個人的な見解が入っていますので、納得だという方も俺ならこれを入れるという方も全然ダメだという方もいらっしゃるかとは思いますが、いずれにしてもなにか議論のたたき台になれば幸いです。そして、もしみなさまが一つでも関心を惹くような作品を見つけて頂けたならなによりです。それでは、これからも素晴らしい芥川賞ライフを!

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https://matome.naver.jp/odai/2149001863662651901
2017年03月21日