テルマエロマエの作者として有名なヤマザキマリさん。
14歳で単身ヨーロッパを巡り、17歳でイタリアに留学。
その後もシリア、イタリア、リスボン、シカゴで暮らす。
あいのことば@_love_bot
新鮮な感性を持ち続けながら、エネルギッシュに世界を飛び回るヤマザキさん。
そんな彼女のパワーの源、心の原風景が映し出された珠玉の作品がこちら。
誰の心にもあるはずの、思い出という、たからもの。おさない姉妹の、かわいく、やさしく、じんわりする、ノスタルジックな物語。――小さな姉妹・ルミとマヤ。北国の町に住んでいます。お父さんはいません。音楽家のお母さんは忙しいのでいつも二人ぼっちです。でも、淋しくなんてありません。ノスタルジックな昭和のストーリー!
ルミとマヤとその周辺(1) (Kissコミックス) | ヤマザキマリ | 女性コミック | Kindleストア | Amazon
ストーリーの主人公、ルミとマヤはヤマザキマリさんと全く同じ境遇を生きています。指揮者だった父親を亡くし、音楽で生計を立てる母親。北国の大自然のなか、貧しいながらも大らかに生き、命を繋いでいく人々。寂しさを抱えながらも、姉妹の心には毎日がドキドキワクワクでいっぱいです。
大きな自然に抱かれた子供時代
子どもの頃の私は、人間よりも野生の生き物たちに強いシンパシーを感じていました。
国境のない生き方ー私をつくった本と旅ー
母親の仕事の都合で越してきた北海道。
大自然のなかで、めいっぱい感受性を育んだ少女の心は
大空、旅へと惹かれていったのでした。
だからもう、渡り鳥にはあこがれずにはいられない。
鳥たちには、国境も境界線もない。どこにでも、どこまででも飛んでいける。
国境のない生き方ー私をつくった本と旅ー
未来の彼女の姿のインスピレーションとなった野生の鳥たち。
たくましく生きる動物達に後押しされて、子どもの心も無限に広がっていく。
どこか懐かしく、素朴でピュアな物語です。
あの頃、私の家の近くにはウトナイ湖という渡り鳥の飛来地として日本でも有数の湖があって、小学校の帰りにふと見上げると、白鳥が群れをなしてV字形に飛んでいくのが見えました。
国境のない生き方ー私をつくった本と旅ー
一羽で見ても美しい白鳥が一糸乱れぬ隊列で飛んでいく姿を見ていると、もうそれだけで涙が出てきました。あの仲間に自分も入れてもらいたくて。
国境のない生き方ー私をつくった本と旅ー
北海道の大自然を背景に、子どもと大人、生き物が織りなす生活のハーモニー。
優しく繊細な雰囲気の絵柄は、見ているだけで心が癒されます。
誰の心の中にもいる、喜びも哀しみも抱えたままの、子ども。
彼らにそっと話しかけることができるような、深い作品でもあります。
大人と子どもの心の模様
この作品で主となって描かれているのは、人々の心の関わり、生きるということ。
日々の暮らしの中で問われる、ほんとうの愛とは何か。
貧しくて子供の筆箱も買ってあげられない看板屋のお父さん。息子が失踪し、後に残った優しいお嫁さんと暮らすおばあさん。初めての恋をした病気の女の子。
北国の空気のなかで浮彫りにされる、さまざまな心の模様が
ルミとマヤ、ふたりの少女の目を通して叙情的に描かれています。
音楽に人生を捧げた母の姿
私の母、量子が私と妹を連れて、東京から北海道に移り住んだのは一九七二年、私が五歳の時です。母は、オーケストラのヴィオラ奏者で、札幌交響楽団に初の女性団員として入団するため、両親の反対を押し切り、勘当同然で、縁もゆかりもないこの地にやってきたのです。
国境のない生き方―私をつくった本と旅ー
仕事でたびたび家を空ける母親。”ふたりぼっち”のルミとマヤ。
この物語に漂う切なさは、そんなふたつの幼い心が
母親の音楽への情熱に触れ、自分達も自立していこうとする
そんな心の動きから生まれているものではないでしょうか。
母を変えたのは、音楽でした。本気でやりたいことがあると、人は強くなれる。自分が本当に好きなことをやろうという意志と、生きていく喜びががっちりと結びついた時、人は逆境を逆境とも思わなくなるんじゃないか。いつもエネルギッシュで情熱の塊のような母の生き方が、私にそのことを教えてくれました。
国境のない生き方ー私をつくった本と旅ー
子どもの頃、妹と母の愛車で旅した思い出を振り返るヤマザキさん。
一緒に旅をしていると、感激屋の母は私たちに向かって、いちいちこういうのです。
「見てごらん、この景色。涙が出てくるでしょう。」
国境のない生き方ー私をつくった本と旅ー
母は生きるのが大好きな人。生きるのはこんなにも楽しいことなんだと身をもって私に教えてくれました。見てごらん、世界はこんなにも美しい。生きるのは喜びであり、情熱である。
国境のない生き方ー私をつくった旅と本ー
母から娘へ、大自然の中で力強く生きる魂の交流。
それが今でも、ヤマザキさんの創作のインスピレーションとなっているのでしょう。
テルマエロマエのファンの皆さんにも、漫画好きのあなたにも。
老若男女問わず是非おススメです!
心に染みすぎて全話泣けちゃいます、ホント。