【閲覧注意】修羅場・復讐・スカッとする話2

haranimashime

◯子供の頃のイジメの痛みはいつ晴らす?

上手く伝えられる自信がないけど書きます。
私が小学生の頃に、よく虐められてるAがいました。
彼に「先生に言えば?」とか言ってもニコニコしてるだけです。

Aは学校で一番頭が良く、正直、何考えてるか分かんなくて少し近寄りがたい存在でもありましたが、 私とは中学、高校とずっと同じクラスで、友達関係は卒業まで続きました。

22歳になると、九州の片田舎な場所ですから、同級生のほとんどは結婚して、子供もいました。
残念ながら私とAは未婚でしたが。

そんなある日、Aと遊んでいると、昔Aを虐めていたBとばったり遭遇。

Bは嫁さんと子供二人と一緒で、こちらに気付かず、私たちの横を通り過ぎていきます。
そしてすれ違い様にAがポソリと呟きました。

「覚えたよ」

その言葉の意味は、それから2ヶ月程後のこと…。
AはBの子供2人に重体を負わせ捕まりました。

幸い子供は後遺症の残るような怪我ではなく、Aも五年ほどで刑期を終えて出てきました。

昔と変わらずニコニコして出所してきたAに、私は何であんなことをしたのか聞いてみました。

「虐められて自殺する奴も居るけど勿体無いと思わない?」
「だって大人になれば虐めていた奴等に抵抗できない痛みを教えることが出来るんだよ」

彼とはそれから会っていません。

◯自殺に追い込まれた最愛の父への鎮魂歌

私の父は多額の借金を背負わされ、自殺に追い込まれてしまいました。
仕組んだのは仕事の同業者…父の葬式の日、偶然それを他の同業者の方から聞いてしまったんです。

父を心の底から愛していた私は、何ヶ月もかけて復讐に繋がる手段を探しました。
当時は学生でバイト漬けの毎日だったので、かなり苦労しましたが…。

彼は結構な頻度でとあるスナック店に行っていたことが分かりました。
部下と呑むときも、ひとりの時も必ずその店です。

派手な化粧を覚え、学校も休学し、すぐその店に面接して働き始めました。
彼は私のことを覚えていなかったようで、私が誘惑すると簡単に男女の中に…。
とにかく媚びて、仕事や私生活など、彼の秘密を探り出しました。

ある日、彼と同業者達、県庁の役員連中が店を貸し切って呑みに来ました。
その飲み会が大事な取引であることは、事前に彼から聞いていました。
絶好の機会でした。

彼の酔いがピークの時を狙って、今まで彼から聞き出した同業者の醜聞や県庁役員との収賄の事実などを洗いざらいぶちまけました。
当然彼は怒り狂い、私に馬乗りになって暴力。怒りに我を忘れた彼の暴力で顔中血だらけになりましたが、すぐ警察に通報され、連行、逮捕。

診断書を提出し、被害届は受理されました。
彼は身柄拘束され調書を取られて送検。
とりあえず示談に応じて、お金の苦しみやその他もろもろを味わってもらっいました。

それ以上に、信頼を失って地元業者から総スカンを喰らう事になったのは予想以上の効果です。

周りからは疎外され、どんどんやつれていく様は本当に無様でした。

大事なものを色々と代価にした分、復讐できたことはとても嬉しかったです。
でも、本当に父が望むのはこんなことだったのかと思うとむなしい気持ちが残りました。

◯悪逆非道の兄に因果応報の復讐を!

私が幼少の頃から約20年に渡り、暴力と虐待を続けてきた兄。
親はずっと見て見ぬふりでした。
受験でストレスが溜まれば私に対する暴力で発散し、職場でストレスが溜まればやはり暴力。

物心ついた時から、兄のストレスのはけ口にされてきたんです。

4年前に私が結婚しようとした時も、兄は相手の職場まで押し掛けて行って、執拗な嫌がらせと恫喝を繰り返す始末。当然結婚話は破談になりました。

2年前、そんな兄も結婚して、息子が生まれました。
職場のブログに息子の写真を載せて、同僚も「心優しいパパ」とコメントしていました。
他人の前では大人しく振る舞い、外面だけは良い兄。
「良い人」
「女性に優しい人」
そう持ち上げられて紹介されていました。

兄の結婚式には、私だけが呼ばれませんでした。
理由は「嫁の前で過去をバラされるのは困るから」。
元より兄とは離れて暮らしていたので、最近になるまで兄が結婚した事も息子が生まれた事も知りませんでしたが。

当然、兄嫁にも1度も会っていません。

あまりにも口惜しいので復讐を考えました。
ただ兄嫁や職場にバラしても、効果がないと思った私は、地元の役所やNPOに出向いて、兄の実名を出して、自分の虐待体験を詳しく話しました。
この先、兄の息子も虐待に遭う可能性が高いので、息子の実名も出してです。

兄は母を通じて、「お願いだから嫁には何も言わないで」「もう縁を切りたい」と持ち掛けてきているようですが、誰が縁を切るものですか。
今後は、兄の息子が誕生日を迎える度に、性犯罪・虐待防止の書籍を自宅へ送る予定です。

兄が独身の頃は、近所の小学校の周囲をうろついて、女子児童の後をつけていた事もありましたから、自分の子供はおろか、他の家のお子さんに手を出さないか、そちらの方も心配です。

だから、あえて実名を出して、行政に話しました。

◯大学のゼミの人間関係に注意しろ!

私は大学でゼミに所属しています。
正直、単位が楽に取れるということで選んだゼミでした。
そんなゼミでしたから、推薦上がりか頭の回転が遅い野郎ばかり。
しかし、殆どの連中は悪い人間ではなかったので安心していました。

ただ、一人だけT山だけが屑でした。
柔道部のスポ選野郎というだけでも警戒はしていたんですが…。
彼は私みたいな一般入試で入った人間に異様なまでのコンプレックスを持っているらしく、相当な嫌がらせをしてきます。

適当にあしらっていたのですが、企業の最終面接の日に無理矢理酒を飲まされまして…。
物の見事に寝坊してしまい、面接をダメにされた事から本気で復讐してやろうと決意したんです。

チャンスはすぐに来ました。ゼミの飲み会です。
私はわざとT山の隣に座って、普段は酒を全く飲まないのですが、この日に限って彼の言われるがままに酌を受けました。

普段、殆ど酒を飲まない私が倒れるのは簡単で、ウイスキーの一気飲みの後、急性アルコール中毒で倒れ、病院に担ぎ込まれることになりました。

目が覚めた後に、「無理矢理にT山に酒を飲まされた」と言って即通報。
彼は警察に任意同行されたらしく、示談交渉してきました。

もちろん、示談に応じる理由はありません。
全部突っぱねた挙げ句にT山に前科をつけてやりました!

彼は推薦で相当大手の内定を確保していたらしいですが、当然お流れ。
大学からは停学処分が下されただけでした。
しかし、その煽りで柔道部も活動中止処分を喰らうことになり、彼は部のOB連にきつーい制裁を喰らったらしいです。

その後、学校内でも居場所を無くして自主退学していきました。その後の事は知りませんが、しかし我ながら無茶な復讐だったと思います。

◯隣の同僚は実は殺人者だった!

昔勤めていた会社での話です。
中途採用で採用されたAという男性がいまして…。
彼が勤め始めて2カ月たった頃、変な電話がかかってきました。

「御社に在籍してるAですけど、実は人殺しですよ」
最初の電話はイタズラかと思って流していました。しかし何度も何度もしつこく電話がかかってきます。

しかも「話を聞いてください」と言うのです。
いったい何の話か聞いてみると、かなり残虐な殺人事件の犯人だったとのこと。

電話の主は「新聞の切りぬきを送ります。後は御社の良心に任せます」とだけ話して切れました。

後日、送られた新聞記事の切り抜きコピーを元に本人に尋ねると、あっさり認めました。

「入社時に身分を偽った」として、もちろんAはクビ。
ちなみに、会社に電話をかけてきたのは興信所の方でした。

実は遺族からの依頼で、Aが出所してから10年ほど、 同じ手口で嫌がらせを行っているようです。

それを知って、法で裁くなんて綺麗事でしかないように思えてきます。
怨みは本当に怖いですね。

◯爆音と共に車内を包む臭ぁいアレの匂い

友達の家の近くのアパートが暴走族の溜り場になっていました。
彼らが集まると家のガラスが震えるくらい大音量で音楽かけ、エンジンもうるさいわで非常に迷惑してました。

迷惑でしたが、文句を言ったら何されるかわからないので耐えていたそうです。

ある日、相変わらず聞きたくもない騒音が…。
友人のイライラも限界寸前だったようです。しかし、ほどなくして彼らは出かけたのか、騒音が止まりました。

友達はホッとして、愛犬の散歩に出たそうです。
止めてある連中の車を眺めながらタイヤに穴でも開けてやろうかな…などと、復讐を色々考えたそうです。

そのとき、たった今処理した愛犬のウ○チを入れたビニール袋を見て、瞬間閃いたらしいです。

友人はおもむろに彼らの車の外気取入れ口に、愛犬のウ○チを乗せて、上から押し込んだそうです。
出したてで、程よく柔らかいウ○チはしっかりと、めりこんだとのこと。

数時間後、彼らが戻ってきたのか、再び大音量の嵐。
彼らの反応を、家の陰から友達はワクワクしながら覗きこんだそうです。

「うわあ、なんだこの匂い?」
「へ?どうしたんだよ?」

一瞬の沈黙の後…。

「でぇぇぇ、クソの匂いだ!」

友達は笑い過ぎて涙を流しながら愛犬にペット用ビスケットをあげたそうです。

そんな事があってから、暴走族の連中は、少し離れた軟式野球グランドの側に車を止めるようになったとか。

いやぁ、やはりウ○チの威力はスゴいと生まれて初めて思った次第です。

◯上司が突然ストーカーに大変身

バイト先で知り合った二つ上の彼氏と付き合って約1年の頃の話です。
お互いに新社会人になり、忙しさに参りながらも励まし合って頑張っていました。

私の就職先は言わば弱小で、でも仲良く頑張る貧乏家族のような雰囲気でした。
入社から半年経ち、少しずつ色んなことを任せてもらえるようにもなりました。

その時期から、研修で大変お世話になった上司の様子が変になりました。
困ったことはないか?の心配から始まり、相談していいよ!と繰り返します。

挙句、私が悩んでると決めつけて二人で飲みに行こうと執拗に誘ってくるようになりました。
断っても拒否しても、それを遠慮と捉える上司(40代独身)に寒気を感じるように…。

そんな上司の行動は社長からの注意が入るくらい問題視されるようになり、仕事にも支障がきたしてきたので、結局上司はクビになってしまいました。

彼氏に相談はしていたんです、「おっさんスゴいね」と言ったような反応で…。
悩んでるのに!と怒ったりもしたんですが、次第に私も気にしなくなっていました。

3ヶ月ぐらいが経ったある日、彼が私のアパートに遊びに来ることになりました。
玄関のドアは、普段はチェーンまでかけるけど、彼が来るときだけは、鍵だけかけてチェーンはしないんです。

その時はいつもの癖で鍵をかけた後すぐにチェーンまでかけてしまいました。
それに気付いて、彼が来るからチェーンを外そうと思った時、私は変な匂いに気付きました。
それは調味料の類いの匂いで、朝ご飯作った時のものかな?

換気しなきゃなと思って、チェーンを外さずに部屋の電気をつけて、布団が目に入った瞬間私は叫びました。

恥ずかしいけど敷きっぱにすることが多々あった布団が、真っ黒になっていたんです。
その周りには醤油や料理酒などの、調味料の空容器が転がっていました。
異様なその光景が怖くて怖くて、外に出ようとしたけど腰が抜けてしまい…。

這うように玄関まで辿り着くと、外側から鍵がガチャっと回す音が…。
彼氏だ!と思って一瞬安心したものの、チェーンのまま勢いよく開けては、 ガン!ガン!ガン!ガン!と何度も何度も乱暴にドアを開けようとします。

「え?彼氏…じゃない?」
そう思って震えていたら、ドアの隙間から人が顔を出しました。
遠くへ引っ越したと聞かされていた、あのクビになった上司でした。

私はたぶん叫んだと思います。
全身が氷水に浸かったみたいに一瞬で冷えました。

私がパニクってると、元上司が真顔で「なんで」と言ってきました。
「なんでこういうことするの。なんで入れないの」
「早く入れて。ちゃんと今でも好きだから」
「愛しているから。だからだよ。ただ会いたかっただけだから」
「許してあげるつもりで来たんだから。許してあげるのに…」
「また僕を怒らせてお仕置きされたいの?」

じーっと見られながら真顔で淡々と話してきた元上司…。
私は頭が全然回らず「待って、待って」とただ繰り返しました。
すると、それが良かったのか元上司は「待ってあげる」と言ってドアを閉じました。

上司の顔が見えなくなって、ようやくちょっと落ち着いた私は彼に電話。
警察は頭に浮かばなくて、そろそろ来るであろう彼に教えなきゃ!と必死でした。
彼はすぐに電話に出てくれました。

早く伝えることができて安心する反面、彼が即座に電話をとれる状況に私は愕然してしまいます。
私のアパートには駐車場がなく、彼は近くの別の駐車場に停めてから歩いてきます。
だから、彼がすぐに電話に出れると言うことは、歩いていると言うこと…。

私は、どうしようと焦りながら、ガクガクとした声で状況を彼に伝えました。
「今あの上司が来てる、危ない様子だから来ちゃだめ、お願い来ないで」
しかし危機感のまるでない彼は「今更オッサンが何の用だよ~」と取り合ってくれません。

こっちは泣きながら、来たら危ないと伝えてるのに…。
彼は「駐車場でた~」と。
あと3分ほどで来てしまう…。どうしよう、どうしよう!と思っていたら、ピンポーンとチャイムが鳴りました。

すっごくびっくりしたけどバカな私は、「もう上司はいなくて、彼が着いたのかも!」と変に期待してしまいました。
しかし、除き穴から見えたのは変わらず真顔で立ちすくむ元上司の姿。

彼に「怖い!助けて!」とさっきまでと反対のことを思わず叫ぶと、「大丈夫、大丈夫。すぐ行くから~」と言うと、電話が切られてしまいました。

そしてまた、今度は連打でピンポンピンポンピンポンとチャイムが鳴ります。
彼が刺されたりしたらどうしよう!
しかし、私はピンポンの音にすくみあがってしまい、もう訳が分からない状態のまま「あー!」と叫んでしまいました。

すると、チャイムが止み、それと同時に笑い声と唸るような声が一緒に聞こえてきたんです。
その笑い声は彼の声だでした。

「おーい、大丈夫だぞ」
「安心しろ~」と彼。
彼の身が心配だったけど、その彼のいつもの優しい声にようやく安心できました。

「もう本当に大丈夫だからな~」
「オッサン捕まえたからな~、泣いてるか~?」
「大丈夫だぞ、安心して泣いとけ~」
そう彼がドア越しに話しかけ続けること15分後。
警察が来て上司を連れていきました。

「大丈夫ですか?もう安全ですよ。あなたの無事を確認させてください」
そう警察官に言われ泣きながら震える手でチェーンを外します。

すると、外にはキリッとした表情の警察官と、相変わらず笑ってる彼がいました。

その後の上司は精神病院に入院したらしいです。危害は加えられてないから、逮捕はできなかったのかもしれない… 詳しいことは聞きたくなくて聞いていません。

彼や警察官の方々が、もうこれからは大丈夫と言ってくれたのでそれを信じています。
安直かもしれないけど、彼や警察官に言われればそれだけである程度安心できますし。

どうやら上司はクビになる前に書類から私の住所を把握したようです。
合鍵をどうやって作ったのかは謎でしたが、部屋に入って布団で寝て、興奮が収まらずに布団を汚した後、一旦逃げたけど、また戻って来たところだったらしいです。

あと少し私が遅かったら…チェーンしてなかったら…と思い出すと、今でも怖いですが。

あの時の彼は、電話口での支離滅裂な私の言葉の節々から状況を察知し、電話を切った後すぐに警察に通報し、制止も聞かず走って来たらしいです。

笑い声をあげたのは単純に上司がおかしかったのと(何故か半ケツ状態)、私をちょっとでも安心させるためだったと。

彼は、いざというときにはちゃんと私や将来の子供を守れるようにと、鍛えたり護身術(?)を内緒で習っていたようで、絶対に守りきる!と思ってたし、そのつもりだったから、オッサンを相手に捕まえ押さえるのに全く怖くなかったと言っていました。

電話での軽口も、危機感がない訳ではなく安心させたかったかららしいです。
「無謀ですよ!」と警察官の方にに多少叱られていました。

今回の事件のおかげで「この人と添い遂げたい」と本当に思いました。

◯突然の旅行先で私が出会った男

浮気されて彼氏と別れた後に体験した出来事を報告。

彼と別れて半年程。友人を介した飲み会で男性Kと知り合いました。
それ以来、何故かKとバッタリ会う事が多くなり、自然と仲も良くなりました。
仕事柄ネット利用が日常茶飯事な私は、KとSNSでも友達登録しました。

その年の10月、久しぶりにSNSに日記を書きました。
理由は衝動的に逃避したくなったため。
「4日間旅に出ます!」の一文だけ残し、後はSNSもネットもメールも見ないで、文字通り現実から逃避しようと思ったんですね。

翌日には新幹線で2時間、電車で1時間かかる場所に着き、1人でひたすら温泉でまったりしました。

そんな1人旅3日目、旅館へ帰る途中に地元のカフェへ立ち寄ったんです。

路面に面した、壁がガラス張りの1人掛席(スタ○みたいな)に座り、雑誌を熟読。
歩き疲れもあり、喉が乾いていたのでもう一杯飲もう…そう思って立ち上がり顔を上げた瞬間…。

真正面に、Kの顔がありました。
無表情に私を凝視しています。正直、私は恐怖で声が出なかったんですが、すぐにKは笑い、手を振りました。

「逃げよう」と思ったんですが、Kは店内に入り私の隣に陣取りました。

「すごい偶然だね!」と言っていましたが、ピンポイントでこんな場所で会うなんて絶対有り得ない!

その後、彼は旅館までついてきて、その日の夜、外で飲む約束をしました。
もちろん、私は約束をすっぽかして最終新幹線で家に帰りました。

その日以来、彼とは会っていません。

◯自慢の私の長髪をばっさり切った元彼の凶行

まだ付き合っていた半年くらいから、彼氏の奇行が目立ち始めました。
付き合った当初から、独占欲が強い人だなぁ…と思っていたのですが…。

ほとんどDV同然の行動に出るようになりました。

血が出るまで噛む
引っ掻く
街中で突如私の首を絞める
線路に突き落としてくる
反抗したら無理矢理ヤられたり
殴られたり

もう我慢の限界だと思い、別れ話を切り出すべく「話しがある」とメール。
時間日時だけ教えて、当日までメールをシャットアウトしました。

当日、彼氏は友人カップルのA男、B子をまで連れて来ていました。
「無関係だから帰って」と友人カップルに言っても帰らないので、そのまま別れ話を始めます。

私「もう無理、別れる」
彼「俺は別れない」
私「いや、あなたの意見は聞いてないから」
彼「だってお前には俺が必要だろ?お前の全部を理解できるのは俺だけなんだよ」
A男「そうだよ!彼の言う通りだよ」
私「外野は黙ってください!嫌なら帰って結構です」
B子「酷いよ!!A男はあなたのためを思って!」
私「いい加減にしてください!あなた達、関係ないし!」
B子「私達はあなたのためを思って…」
私「わかったから空気呼んで帰ってください!」

だいたいこんな会話です。

B子が号泣したので、怒ったA男と彼はブチ切れて私を殴るし、埒が明かないと判断して勝手に帰宅しました。

次の日も呼び出されましたが、何故か彼氏はすんなり別れ話を受け入れてくれました。
しかし、帰ろうと彼に背を向けたのが間違いでした。

髪を掴まれてハサミで髪を切られ、挙げ句の果てに彼は逃亡。私唖然、通行人呆然。
背中まであった長髪ですが、横顔以外はベリーショート並の短さに大変身。

怒り心頭でしたが、何とか帰宅して自分で散髪。

もちろんこれで済む筈もなく…。

切り取った髪に精液をぶちまけた物が届けられたり、別れてから一週間の間、友達カップルから「よりを戻せ」と追い詰められ、毎日彼から100何件って電話、メールの嵐です。
機種変をしてから電話は無くなったものの、どこからかメアドが漏れメールは相変わらず。

いい加減めんどくさくなってきたので、家電から彼に録音しながら電話しました。

彼「はい、○○です」
私「私ですがー、嫌がらせやめていただけないでしょーか」
彼「お前!!俺、ずっとお前から連絡が来るのを待ってたんだぜ」
私「やめていただけないでしょーか」
彼「俺…やっぱりお前がいないと生きて行けない!俺とやり直そう」
私「人の話し聞こえてますか?」
彼「A男とB子からもより戻した方がいいって言われただろ?」
私「あんたのどうでもいいに話に付き合ってる暇ないんですよ!次に何らかの形で接触してきたら、警察呼びますから!証拠たくさんありますし!」
「証拠」と聞いてビビりまくる様子の彼を無視して電話を切りました。

1ヶ月後には私に新しい彼氏もでき、4ヶ月程は何事もなく過ごせたのですが、今月の頭くらいに元カレに夜道で襲われました。

後ろから抱きしめられ、耳元で「お前と彼氏の関係をぶっ壊してやる。また髪切ってやるよ」
こんなことをしでかす輩は一人しかいません。右手を捻り上げるように取ると、お辞儀する感じで背負い投げをお見舞いしました。

そして腕を後ろで掴んだまま、警察に突き出しました。

◯バイト先で体験した信じられない物語

私が大学に入ってしばらくした頃…これまでバイトをやったことがなかった私は、人生経験のためにバイトを始めました。

私:都内大学生(18)
山田菜美:都内大学生(18)
吉村和夫:フリーター(27)

そのバイト先の先輩に吉村という男がいました。小太りで、服や髪は秋葉系の人。無口で冗談などはほとんど言わず、自分の興味のあることだけを延々と話すような人でかなりとっつきにくい人でした。

私とシフトが重なったとき、吉村はよく彼女の話をしていました。

「もうすぐ私、結婚するんだよ。彼女、ストレートの黒髪で、すごくかわいい子なんだ」

吉村はそんな話を延々と続けます。

一応バイトの先輩だし、他にこの人と盛り上がれそうな話題もなかったので私はいつも聞き役に徹し、適当に相槌打ったりして時間が過ぎるのを待つ毎日。

ある日、バイト先近くのファミレスで友達と待ち合わせをした時です。
ファミレスに入って店内を見渡してみたけど、まだ友達は来ていませんでした。

しかし、ファミレスの一番奥の席には吉村がいました。
こちらからでは後姿しか見えませんが、吉村の前には女性が座っており、二人で話し込んでいるようです。

正直、彼のプライベートに踏み込む気は全くなかったんですが、ガラ空きの店内でバイト先の先輩がいるのに挨拶しないのも不自然だと思って、声を掛けました。

私「こんにちは。吉村さん。今日はデートですか?」
吉村「ああ。今ちょっと彼女と難しい話してるんだよ」

吉村は素っ気無くぶっきらぼうに答えます。 しかし、私の声に反応して振り返った女性は、涙を流しながら首を振りました。

「違うんです。付き合ってないんです」

私「え?…」

私がしばらく固まってたら「お願いです。助けて下さい」と女性から泣きながらお願いされました。
それが菜美との初めての出会いでした。

「おい、あんちゃん。おまえこいつの友達か?」

呆然としてる私に、吉村たちの隣に座ってた男が話掛けて来ます。
隣に座ってたのは、二人とも30代半ばぐらいの男性。
ガラの悪いシャツにパンチパーマ、オールバックといったファッションで どう見ても健全な商売の人間には見えません。

つまり、吉村は彼女と二人だけではなく、その横のテーブルに座る柄の悪い二人組とも一緒だったんですね。

手前側に座ってた男は立ち上がると

「あんちゃん、悪いことは言わねえよ。そんなに仲良くないなら、こいつらとは関わらない方がいいよ」

そう言って、私の肩をポンと叩きました。

肝心の吉村は無言。でも菜美の方は、涙をポロポロ流しながら「目から助けて光線」を私に発しています。

私「あの、とりあえずトイレ行って来ますね」

そう言って、私はトイレに向いました。

トイレで状況を整理して考えてみました。
どう考えても、菜美が泣いているところからすると、何らかの理由で彼らは2人組に脅されているのは明白な気がします。

私はトイレの大きい方に入って、小声で警察に電話。
友達が脅されてるから来て欲しいと伝えました。
電話を掛け終えた後、数分トイレで待機してから吉村たちの方へ向かいました。
もちろん時間稼ぎのためです。

ぶっちゃけ、絡まれてるのを見捨ててバイト先での人間関係を悪くしたくないという打算もありましたが…もうすぐ警察も来るし「しばらく我慢すればいいだけだ」と自分に言い聞かせました。

なんとか勇気を奮い起こし座席に戻ります。

私「あの、私も話聞きます」
二人組「いや、こっちはそれでもいいけどさ。あんた、ホントにいいの?こいつらの借金の話してるんだよ?」
私「え?借金?この二人のですか?」
菜美「違うんです。お願いです。助けてください」

菜美は涙で化粧は落ちてまくりで、脂汗タラタラで顔は真っ青。
二人組は借金だと言い、菜美は違うと言っています。

とりあえず私は菜美の言葉を信じて、吉村側の席に座りました。
座ってから、私は一言もしゃべらず吉村と菜美の話を聞いてるだけでした。
話を聞く限りでは、どうも吉村は、菜美に風俗で働くようお願いしてるようです。

もちろん菜美は「無理です」とか「お願いです。もう帰してください」とか、涙を流しながら平身低頭な懇願を繰り返します。

私が席についてから5分もしないうちに警官が無事到着。
私たちは全員警察署に連れて行かれました。

二人組は「私たち何もしてねえよ?何でだよ?」と抵抗しましたが、警察は問答無用。
警察署で事情聴取を受けて取り調べ用の部屋を出ると別の部屋から菜美が出てきて、私に話しかけてきました。

菜美「ありがとうございました。助かりました。ぜひお礼をさせてください。連絡先教えてもらえませんか」

私から携帯の番号を聞くと、菜美はまた部屋へと戻って行きました。
別にお礼なんかいらなかったけど、それぞれ話が食い違ってた理由と「付き合ってない」と言った意味が知りたくて番号を教えました。

その日の夜、菜美から電話が。
お礼の品物を渡したいので自宅を教えてほしいと言われました。
私は、お礼はいらないと言い、代わりに少し話がしたいから喫茶店で会わないかと提案。

菜美は承諾してくれ、私の最寄り駅近くの喫茶店まで出てくるとのこと。
でも、待ち合わせ時間が夜になるし、今日のこともあるので、菜美の自宅から遠いところでは危ないと思い、菜美の最寄り駅の一つ隣の駅の近くの喫茶店で会うことになりました。

喫茶店で見た菜美は前日の泣き崩れた彼女とは別人のようで、吉村がよく話してるように、きれいな黒髪のストレートがよく似合う、清楚な雰囲気の美人でした。

喫茶店で落ち合って、自己紹介を一通り終えその後、お礼と謙遜を言い合ったりとか菓子折りを渡そうとするので「結構です」と押し返したり…そんなお決まりの社交辞令の後、菜美から昨日の顛末を聞きました。

驚いたことに、菜美は吉村は本当に知り合いでも何でもないと言います。
菜美が言うには、事件のあった日、路上で吉村に唐突に「借金のことで話がある」と話しかけられたらしいです。

実は菜美の家は母子家庭で、あまり裕福ではないそうで、自分の大学進学のために母が作った借金の話なのかと思って、吉村の誘いに乗ってファミレスについていったとのこと。そこで吉村を含めた三人に囲まれてしまったらしいです。

二人組は「ここで待ってるからよ。二人で話をつけろや」と言い、菜美たちの横のテーブルに陣取ったようです。

そこで初めて「吉村が抱えている借金」の話が出てきたんだそうです。
実は、吉村は街金から借金しており返済資金に困っているので返済に力を貸して欲しいと、泣きながらお願いされたとのことでした。

力を貸すってのは、つまり風俗で働くことを指します。
理不尽な話なので最初は「何で私が…」とか「関係ありませんから」などと反論して席を立って帰ろうとしたようです。

しかし二人組から「話のケリもつけずに帰ろうってのか?なめてんのか?てめえは?」と凄まれたりしたので、怖くて帰ることが出来なくなってしまったらしいです。

あまりに意外なストーリーを私は呆然と聞いていました。
その時点では突拍子過ぎて、私は菜美の話をあまり信じていませんでした。

見ず知らずの女に「自分の借金返済のために風俗で働いてくれ」と頼むやつなんて、現実にいるわけないだろ、と思ったのです。

私「山田さん、もしかして○○駅近くの○○と××駅近くの△△でバイトしてるんじゃないの?」
菜美「え?……何でご存知なんですか?」
私「吉村さんから聞いてるからだけど。山田さんは見ず知らずだって言ってるけど、どうして吉村さんは、そのこと知ってるのかな?それから、もしかして自宅近くにファミマあるんじゃない?吉村さん、よくそこで山田さんが何買ったとか話してたよ。本当に、見ず知らずの人なの?吉村さん、山田さんとの結婚考えてるって言ってたよ。トラブルに巻き込まれたくない気持ちはよく分かるけど、でも、見ず知らずの他人なんて言い方したら、吉村さん可哀想だよ」

菜美はきっと、トラブルから逃げたくて、吉村と赤の他人のふりしてるんだろうな…そう考えた私は、菜美の態度に若干の不快感を感じて、つい意地悪なことを言ってしまいました。

しかし菜美は、この話を聞いてガタガタ震え出し、泣き出してしまいました。

涙も拭きもせずに、うつむいたまま脂汗流しており、顔は真っ青。
とても演技とは思えません。

私「まさか…本当に見ず知らずの他人なの?」

菜美は声も出さず、真っ青な顔をして何度も頷くだけ。
その顔は、いつの間にか初めて会ったときのようなグシャグシャの泣き顔でした。

あまりにも取り乱したので、この話は中止して、私は菜美を励まして少し落ち着かせようとしました。
菜美はまだ東京に来たばかりで、頼れる友達もいないのにこんな事件に巻き込まれ、どうしたらいいか分からないと泣くばかりでした。

「私でよければ、出来ることならするよ」
「力になるから」
「大丈夫。少しは頼りにしてよ」

私はそう言いながら菜美を励ましました。

そんなわけで、私は成り行き上、菜美とよく連絡をとるようになりました。
内心では「街金かぁ…困ったなぁ」と思っていましたが、初対面の私に頼らざるを得ないぐらい、菜美はほとほと困っていたようです。

その後すぐ分かったことですが、街金の二人組も吉村も「借金の返済方法について相談しただけ」ということで、すぐに釈放。
数日後、バイトで吉村と一緒になり、早速、吉村に菜美との関係を問いただしました。

私「吉村さん、山田さんとホントに付き合ってるんですか?」
吉村「そうだよ」
私「でも、山田さん、吉村さんと話したこともないって言ってましたよ」
吉村「話さなくても、私たちは心が通じ合ってるんだよ」
私「え…」

私「まだ話したことない人とどうやって仲良くなれるんですかっ」
吉村「それを考えるのは、おまえの仕事だろ」
私「はぁ?」

吉村「おまえ、赤い糸って信じるか?」
私「はあ」
吉村「私と菜美は、一つになるってことが運命で決まってるんだよ」
私「……」

吉村「まだ、おまえには分かんないかもな。お前も運命の人にめぐり合えば、きっと分かるよ。強く引かれ合う力ってのがさ」
私「…………」

私「山田さんとデートって、したことあります?」
吉村「あるよ。いつも帰り道、一緒に歩いてるよ」
私「え?並んで歩いて、手なんか繋いだりするんですか?じゃあ、おしゃべりしなくても十分ラブラブじゃないですか」
吉村「いや、手は繋いでない。まだ少し距離をおいて歩いてるよ。でも、私たちには十分なぐらいの近い距離だよ。その距離なら、私たちは心が深く通じ合うんだよ」
私「……で、どれぐらいの距離で歩いてるんですか?」
吉村「50メートルぐらいまで近づけば通じ合うよ」
私「……………………」

私「そんな大切な人を、どうして風俗に沈めようなんて思うんですか?」
吉村「これは私たちの試練なんだよ。だけど、私たちは二人の力で、必ずこの試練を越えてみせるよ。彼女も辛いだろうけど、私だって辛いんだよ。私たちはこの試練を必ず乗り越える」
私「………………………………」
吉村「私たち二人のことを邪魔するやつらは、必ず私が叩き潰すから。私が、必ず菜美を守るから」

吉村から話を聞くまで半信半疑だったんですが、菜美の言ってることは本当でした。
こんな危険なヤツが実際にいるなんて思ってもみませんでしたから、手が震えるぐらい驚きました。

菜美に守ってやるといってしまった手前、私は有事に備えて飛び出し警棒を購入。
そして、バイト先の店長に事件の顛末を話して、菜美の身の安全のために吉村の両親と話したいから実家の住所を教えて欲しいと頼み込みました。

店長は、吉村のおかしいところに心当たりがあるらしく私の話をすんなり信じてくれて「いやー。予想以上にとんでもねえ男だな」と笑っていました。

しかし、個人情報の提供については、しばらく考えた後、「やはりバイトの個人情報を教えることはできない」と言います。もちろん、私はしつこく食い下りました。

店長「うーん。大変なのは分かるけど、やっぱり個人情報を教えることはできないよ」
私「そこを何とかお願いします。今はそんなことを言ってる場合じゃないんです。全く無関係の罪もない女の子が、犯罪に巻き込まれるかもしれないんですよ」

などと延々と力説。
すると…。

店長「話は変わるけどさ、この事務所の書類整理の仕事を頼むよ。その棚にある履歴書なんかを、整理してファイリングしておいてくれないかな。私はこれから1時間ぐらい出かけるけど、その間にお願いね」

そう言ってくれました。

店長に深くお礼を言って、私は仕事に取り掛かります。
吉村はバイト仲間内でも屈指の働かない男でしたので、ほとんどバイト収入などない筈です。
しかし、書かれている住所は都心の一等地でしかも一人暮らし。

自宅と実家がすぐ近くであるので、菜美のように地理的理由で一人暮らしをしているのではなく、つまり意外にも、吉村は「いいご身分」だったんです。

たぶん、私が店長に話したからだと思いますが、話した後すぐ、吉村はバイトをクビになりました。
実際、ほとんど仕事はしないし、よく休むし、バイト仲間からも嫌われてる男でしたから、クビにする理由はいくらでもあったと思います。

私は、菜美にさっそく入手した吉村の個人情報を伝え、彼の親御さんに話して、もう彼女に近づかないよう警告してもらうことを提案しました。

しかし、菜美は複雑な顔をします。
話が大事になれば、菜美を大学に通わせるために無理をして働いている彼女のお母さんに余分な心配掛けたくないそうです。

菜美は母子家庭育ちであまり裕福ではなく、仕送りが少ないために、生活費は自分のバイトで捻出していました。

また卒業のためには奨学金獲得が必須であるため、大学の勉強で手を抜くわけにもいかず家に帰ってからも勉強をせざるを得ず このため、普通の大学生のように楽しく遊ぶ時間なんてほとんどない生活を送ってきたようです。

ですから、不必要に母親に迷惑をかけたくないという彼女の心情は、痛い程分かります。

そして、色々と話すようになり、菜美はすごくいい子で、とても同じ年とは思えないほど大人で、しっかり芯を持った女性という事がわかりました。私は、そんな彼女に急速に惹かれていきました。

バイト先での調査で吉村が「危なすぎる」ことが分かりましたから、私は可能な限り菜美の送り迎えをするようになりました。

そんなある日、菜美を自宅まで送った後で、一人で夜道を歩いていると目の前に吉村が現れました。

吉村「おまえ、どういうつもりだよ?俺の女に手出すんじゃねえよ?」

考えてなかった訳ではないですが、いきなりの彼の登場に、私は超ビビリました。

そんな彼に、「菜美がお前をを怖がってる」とか「お前が危害を加えられないために送り迎えしている」ことなどを説明。しかし、全く無駄でした。

「私と菜美は心でつながってる」
「菜美はおまえを迷惑がってる」
そう吉村は根拠のない反論し繰り返します。
もう「菜美と私は相思相愛」という妄想を固く信じており、聞く耳を持ってくれません。

話してるうちに「殺すぞこの野郎!」と吉村は私に殴りかかってきました。
しかし、残念ながら私と吉村では体格も全然違うし、吉村はかなり鈍い方でしたから難なく撃退。
私からのみぞおちへの一発で、吉村はうずくまって動かなくなりました。

うずくまる吉村に私が、もう一度、「菜美は吉村を怖がってて、出来れば会いたくないと思ってる」と話しました。

すると「お前がああ、彼女に嘘を吹き込んでるんだろうう!!」と怒鳴りました。
しかし、みぞおちの一撃がかなり効いているらしく
「ウウウウウウウウウウウ」
うずくまってうなり声を上げるだけ。まるで獣みたいに…。

彼の様子に、背筋に冷たいものを感じて、思わず走って逃げてしまいました。
もちろん、菜美にすぐ電話しました。

吉村に会って喧嘩になったことと、何やら物凄い執念だったから、戸締りはしっかりして今日はもう家から出ないようにということ、何かあったら、何時でも構わないからすぐに電話するように…などなど。

菜美からの連絡は、その日の夜に電話ではなくメールでした。
メールには「玄関前で音がしたので、菜美がドアの覗き穴から外を覗いたら、吉村がその穴から部屋の中の様子をうかがってる最中でうっかり目が合ってしまった」とのことでした。

すぐ近くにいると思うと怖くて声が出せないから、電話ではなくメールで連絡したようです。
私は、すぐに警察に連絡するように返信したら、警察に電話なんかしたら、通報する声が吉村に聞かれてしまってそれで逆上されて、とんでもないことになるかもしれないって返信が返ってきました。

私は、警察への通報は私がするということ、すぐ行くから部屋から出るなということをメールで伝えました。

私は、中学生の時に野球で愛用していた金属バットをバットケースに入れ、そのまま菜美の家に向かいました。

その日、私は菜美の部屋に初めて入れてもらいました。
彼女の話では、警察は私が着くより前に見回りに来てくれたらしく、しかし周囲をざっと見回った後は、菜美の部屋のベルを鳴らして彼女の無事を確認したらすぐ帰ってしまったようです。

翌日、菜美は朝早くに出発する予定だったので私が寝ないで見張ってるから、とりあえず菜美は寝るように言いました。

もちろん、その時点では彼女に対して並々ならぬ好意を抱えている私ですから、すやすやと寝る彼女を見てさすがにムラムラしましたが、最後の一歩を踏み出すことはしませんでした。

3日後ぐらいから、街金まで来るようになり、怖がる彼女を支える形で私と菜美は半同棲のような状態になりました。

吉村の一件以降、菜美は知らない男に対して強い警戒感を示すようになってもいたので、二人きりの時には驚異的な自制心を働かせる必要がありました。
た。

私が菜美の家に通い始めてから1週間ぐらいした頃。
ふと菜美が小さな声で囁きました。

菜美「ごめんね。私が変なトラブルに巻き込まれるような女じゃなかったら…あなたも、もう少し楽しかったんだろうね」

空元気に笑って見せる菜美が無性に可愛く見えました。
私が彼女を思う以上に、菜美は私を思ってくれていたようです。
彼女の小さい手が私の腕を、ぎゅっと抱きしめてきました。

本当はこの件が全部片付いた後、私から菜美に告るつもりでした。
しかし私は、その計画を繰り上げて、その日に菜美に告って、その日に菜美を抱きました。

私としては、菜美を傷つけないために我慢してたつもりでしたが、私が菜美に迫らないことが逆に菜美を傷つけいたようです。
女性って、難しいですね。

行為が終わって、私がすぐに服を着ようとしたら菜美に止められました。

菜美「もう少し、このままこうしてよう?」

何も着ていない菜美は、何も着ていない私に抱きついてきました。

私「ちょっとだけだぞ。襲撃に備えて服は着ておかなきゃだから」
菜美「もういいよ今日は。今日だったら、このまま死んじゃってもいいや」
私「何でだよ?今日が私たちのスタートの日なんだぞ。スタート直後にゲームオーバーって、ださくない?」
菜美「ああ、そっか。今日が始まりの日なんだ。」
私「そう。今日がミッション・コンプリートじゃない。今日が始まりだ」
菜美「うん。そだね。これからよろしくね」

そう言いながら菜美は私にキスをしてきて、二回戦が始まりました。

もちろん、幸せな時間は長くは続きません。
朝早く、街金が押し掛けてきました。
警察にも相談はしましたが、民事不介入とのことで取り合ってくれません。
ですから、街金とのやり取りは私が対応します。

街金「山田さん、あなた吉村君の金使っていい思いしたんでしょ?いい思いしたんだったら、その分のお金は払わないと。それが世の中ってもんだよ。世の中なめてると、怪我じゃすまねえよ(ここだけドスの効いた怒鳴り声)」
私「山田が吉村と付き合った事実はありません」
街金「でも、債務整理の相談したとき乗ってきたんでしょ?まるで無関係の女が、どうしてそんな相談の場に来るの?そんなやついねえだろ?」
私「あれは、大学進学の借金と勘違いしたからです」
街金「吉村君も、山田さんが払うべきだって言ってるよ。一度は、山田さんの涙に騙されて自分が払うって言ったんだけどね。やっぱり、山田さん。相当、吉村君のこと泣かせたんだろうね。最近になって、やっぱり山田さんと二人で払うって言い出したよ。まあ、自業自得だと思って、まずはこのドア開けてくれないかなあ」
私「そもそも二人は付き合ってませんし、ドアは開けることはできません。お帰りください」
街金「てめえに言ってんじゃねえんだよ(いきなり怒鳴り声)。私は山田さんに言ってんだよ。オイコラ。山田さん出せや」
私「山田の代わりに僕が伺います」
街金「てめえは日本語わかんねえのか?コラ(怒鳴り声)早く出せや。いい加減にせんかいコラ」

たぶん、玄関のドア蹴っ飛ばした大きい音が響きます。
街金が来ると、こういう冷や汗ものの会話が最低20分ぐらい。
長いときは2時間以上も続きます。
街金の追い込みはさすがにきつく、嵐が過ぎるのをただ耐えるだけなんて不可能でした。

何とか打開策を見つけなくてはなりませんでした。
もちろん、本来の借金の主である肝心の吉村は、まるで話になりません。
それどころか、会えば命の危険さえありえます。

とりあえず当初の計画通り、私は吉村の実家に行って親と交渉することにしました。
ゲットした吉村の実家の住所に着くと、ちょうど両親ともにいました。

しかし、その家に入って驚きました。

廊下の壁のあちこちが穴だらけ。壁をパンチをしたような跡がたくさんありました。

リビングに通されると、リビングの電気の傘も割れたままで交換されていません。
壁ももちろん穴だらけ。

そんな荒んだ環境の中で、吉村の両親に話を聞いてもらうことに。

私の要求は

・無関係の菜美に借金を払わせないでほしい。
・菜美が怖がっているので、もう吉村を近づけないようにしてほしい。
・吉村を一日も早く精神科に通わせてほしい。

というものでした。

借金について「吉村はもう成人しているので、親の関知するところではない」
菜美に近づかないようにという依頼に対しては「一応言ってみるが、最終的には本人が決めること。保証はできない」と、実の息子相手に素っ気ない態度。
しかし、一番最後の「精神科に通わせてほしい」というお願いが禁句だったようです。

母親が突然キレました。

「ふざけんじゃねえよ。うちの子は精神病か?はあ?てめえが精神病だろうが?」

まるで急にスイッチが入ったかのように下品な口調で怒鳴り散らし始めました。

母親は叫ぶだけでは飽き足らず、リビングの壁などを蹴りまくり、私の顔に湯のみを投げつけてきました。

「君、もう今日は帰りなさい」
呆然とする私に、父親は静かな声で助け舟を出してくれました。
簡単に一礼して玄関に向かうと、母親は私に塩を投げつけ、そのままブツブツ独り言を言いながら部屋の奥に消えていきました。

父親は玄関の外まで私を見送ってくれ「すまなかった」と最後に一言、深く頭を下げて謝ってくれました。

帰る道すがら、私は絶望で心が真っ暗になりました。
唯一の希望だった吉村両親もおかしな人で、まるで話になりません。

「もう交渉相手がいないじゃないか」

この頃になると、私も菜美もさすがに精神的に限界に近かったです。

特に菜美は酷く、街金が来たとき家にいたりすると過呼吸になったことも…。
私も菜美も、夜中に悲鳴を上げて飛び起きることが増えました。

そんな感じの状態が続き、仕方なく私は、父に全てを話して助力を要請しました。

父「なんだ。最近、家にいないと思ったら、そんなことしてたのか?まあ、いい勉強だ」

切迫してる私とは対照的に、話を聞いた父親の態度はのん気なものでした。
父は、のん気な口調とは裏腹にしっかりした対処をしてくれました。
父の経営する会社の顧問弁護士を私に紹介してくれたのです。弁護士に相談してからは、話が早かった。

街金の取り立ては、相談してから3日後にはピタリと止まりました。
弁護士は、菜美の債務不存在確認と債務を片代わりする気がない旨、これ以上取り立てるなら恐喝で告訴する用意がある旨など、書き記した手紙を弁護士名義の内容証明郵便で送付。
たったこれだけで、あれほどしつこかった街金は全く現れなくなりました。

あまりに簡単に片付きすぎたので、私は父が私に隠れて、裏で人に言えないようなことをしたんじゃないか と疑ったぐらいです。
その話をすると、やはりのん気そうに笑いながら「会社経営っていうのは色々あるんだよ」と話すだけでした。

街金の取り立てがピタリと止んだことを電話で弁護士に伝え、お礼を言いました。
その電話口で
「吉村和夫のストーカーの件は、来週ぐらいから着手します」言ってくれました。

しかし、弁護士の方の手続開始を待たずして事件が起こります。

その日の夕方、私と菜美が菜美の家の近くのスーパーで買い物をして帰る途中 突然、目の前に吉村が現れました。

突然、私たちの前に立ちふさがった吉村は、私を無言のまま睨み続けたかと思うと、今度は大声で叫び始めました。

吉村「お前が菜美を騙したんだ!」

吉村はバックから包丁を取り出します。その目は完全に尋常ではありませんでした。
情けない話ですが、私はビビッて声も出ません。

「ちょっと落ち着いて。話をしよう?ね?」

吉村に話しかけたのは、意外にも私にしがみ付いて震えてる菜美でした。

吉村「菜美。私のこと覚えてるか?私だよ、私」
菜美「あ、うん。吉村君だよね。憶えてるよ」
吉村「ありがとう。うれしいよ。やっぱりお前は、俺を見捨てられないんだな」
菜美「見捨てるとか、見捨てないとか、そんな話した憶えないよ」

吉村はそれを聞くとしばらく号泣しました。

吉村「菜美。お前はその男に騙されてるんだよ。今、助けてやるからな」
菜美「ちょっと待ってね。二人で話そうか」

そう言うと菜美は私の耳元に口を近づけて小声で「逃げて。お願い。私なら大丈夫だから」と言います。

私「出来るわけないだろ」
菜美「お願い。二人無事にすむのはこれしかないの。私は大丈夫。今度は、私があなたを守るから。」
私「……じゃあ私は、2mほど後ろに下がる。いいか。吉村との、この距離を保て。この距離なら、万が一にも対処できる。」
菜美「分かった」

私は少し後ろに下がりました。驚くほど冷静な菜美の言葉を聞いて、体の震えが止まります。
今、自分が何をしなければならないかが、はっきり分かりました。

「私があなたを守るから」

彼女のその言葉を聞いて刃物の前に飛び出す決心が固まりました。
菜美と吉村が話している最中、騒ぎを見に来た40代ぐらいの男性と目が合いました。

私は声を出さずに「けいさつ」と口だけを動かしました。
見物人のその中年男性は、分かってくれたようで、うなずいて渦中の場所から小走りに離れて行き電話をかけてくれたようです。

その間も吉村は妄想を話し続けます。

「私たちは結ばれるんだよ」
「お前は私を酷い男だと思ってると思うけど、それは違う。 おまえはこの男に騙されてるんだよ」
「こいつが、あることないこと吹き込んでるだけだから」
「結婚しよう。将来は生活保護もらって、お前を幸せにするよ」

まるで聞くに耐えない話を延々と続けました。

菜美は適当に話を合わせて、吉村の会話に付き合います。

しばらくして、8人ぐらいの警官が到着。
パトカーから降りると、警官たちは手際よく吉村を包囲しました。

「刃物を捨てなさい」

警官の一人が穏やかで、しかし厳しい声で告げます。

吉村は、オロオロと周りを見回しながら、近づこうとする警官に順に刃物を向けます。

菜美「吉村君、まずは包丁地面に置こうか。吉村君、何か悪いことした?もし、しちゃってたらもうダメだけど、してないなら捕まらないよ」

菜美は元気よく明るい声で語り続けます。

菜美「吉村君、死にたくないでしょ。早く置かないと、鉄砲で撃たれちゃうよ」

吉村は促されるまま、笑顔で包丁を捨てたました。
不気味な、人間とは思えない笑顔で…。

吉村が包丁を捨てると、警官が襲い掛かって吉村は地面に組み伏されました。
ようやく危機を脱した私と菜美は、泣きながら抱き合って喜びました。

その後、吉村の父親が謝罪に来ました。
私の両親は、二度と私や私の家に彼を近づかせないようにと、それだけを固く約束させた。
母親は、一度も謝罪には来ていません。
また、吉村本人は予想通り、精神鑑定の結果、無罪になりました。

私たちができることは損害賠償が請求できるだけ…。
ただ、その民事の席で吉村の父親と会ったときに吉村の入院先と主治医を聞きました。

私は予約を取って、その主治医に面会してきました。
理由は、吉村もなりたくてああなったんじゃないと思ったからです。
吉村の治療の助けになればと思ったから。

主治医は一通り私の話を聞いてくれ「貴重な情報ありがとうございます。治療の参考になります」と言いました。

吉村の病名については教えてくれませんでしたが、原因の一つに吉村の母親のあの時の態度をすぐに思い出しました。
結局、吉村も被害者の一人なのかもしれません。

事件解決後、菜美との同棲は終了しました。もちろん交際は継続中ですが、結婚前の男女が一緒に住むことに対して、うちの母親が難色を示したからです。

「お母さんは古いタイプだからな」

父親はやはりのん気に笑うだけでした。

しかし、母の態度以前に、みんなに祝福されるような付き合いをして、みんなに祝福される結婚をしようというのが、私と菜美の出した結論でした。

https://matome.naver.jp/odai/2148742506574088301
2017年02月19日