後期ロマン派、世紀末、モダニズム、新古典主義や新ロマン主義、ミニマルミュージックまで。新たな作曲技法の誕生、メディアの発達、様々な学問の研究が進み、クラシック音楽がより複雑に深化していった19世紀末以降に書かれたあまり知られていないマニアックでかつ美しいバイオリン協奏曲をまとめました。
なぜ≪19世紀末以降≫の≪バイオリン協奏曲≫なのか?
19世紀末以降から第二次世界大戦に至るまで、西洋音楽史上でも特に多種多様な作曲技法や学問・学派などが短期間に同時に存在し、互いに影響を受け合いながら、クラシック音楽はより複雑になっていきました。この時代に世に出た数多の音楽の中には、あまり脚光を浴びず演奏される機会が少ないものの、心を動かすような素晴らしい曲が多く眠っているはずです。
バイオリン協奏曲というジャンルをピックアップしたのは、(自分の専攻楽器だからということも理由の一つではありますが…)多くの作曲家が一度は書く長大な楽曲であり、各作曲家の技法や哲学・主義が顕著にあらわれるからです。
このまとめではそういったあまり知られていないバイオリン協奏曲を随時追加し、布教していこうと思います。
聴いてほしい!おすすめのバイオリン協奏曲
Samuel Coleridge-Taylor:サミュエル・コールリッジ=テイラー
黒人の血を引き≪黒いマーラー≫と呼ばれたイギリスの指揮者・作曲家Samuel Coleridge-Taylor(1875-1912)の典型的な3楽章構成のバイオリン協奏曲。ソナタ形式で書かれた1楽章のロマン主義的な荘厳かつ抒情的な旋律と三連符を織り込んだリズムの主題が特徴的で、後の楽章でも再現される。アメリカで初演する予定が、パート譜がタイタニック号で運ばれたため紛失し書き直されたという逸話があるが、発送元の町とタイタニック号が出港したサウサンプトンの距離が離れていることから否定する説もある。
William Alwyn:ウィリアム・オルウィン
イギリスの指揮者・フルート奏者・作曲家のWilliam Alwyn(1905–1985)が1939年に完成させたバイオリン協奏曲。70以上の映画音楽を手掛け、この協奏曲でも映画音楽的な音の層の重ね方や効果的に盛り込まれる不協和音が特徴。
Max Bruch:マックス・ブルッフ
ドイツの作曲家Max Bruch(1838-1920)のバイオリン協奏曲第3番(1891)。バイオリニストの必須レパートリーとして挙げられるような同作曲家の非常に有名なバイオリン協奏曲第1番やスコットランド幻想曲の人気の陰に隠れるように、あまり演奏機会に恵まれず録音も数少ないバイオリン協奏曲第3番。典型的なロマン主義の3楽章編成で、ブルッフの一番の特徴ともいえる親しみやすくエモーショナルな旋律が盛り込まれている。
Mario Castelnuovo-Tedesco:マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ
ユダヤ系イタリア人作曲家Mario Castelnuovo-Tedesco(1895-1968)のバイオリン協奏曲第2番≪I Profeti(予言者たち)≫。1931年、当時のヨーロッパの反ユダヤの風潮の中同じくユダヤ系のバイオリニスト,Jascha Heifetzのために作曲。後にアメリカに亡命し200以上の映画音楽を手掛ける。
Mieczysław Wajnberg:ミェチスワフ・ヴァインベルク
ポーランド出身、ロシアで活躍したユダヤ系作曲家Mieczysław Wajnberg(Moisey Samuilovich Vainberg, もしくはWeinberg)(1919-1996)のバイオリン協奏曲第2番(1959)。新古典主義的かつ戦争などを題材にした標題音楽を得意とする作曲家で、この曲においてもその重厚さと明晰なテクスチュア、そして民族音楽的要素があらわれている。
Grażyna Bacewicz:グラジナ・バツェヴィチ
7曲のバイオリン協奏曲を書いたポーランドの女性作曲家Grażyna Bacewicz(1909-1969)のバイオリン協奏曲第1番。二人の兄もともに作曲家。協奏曲第1番は演奏時間が12,3分と非常に短いが、ポーランドや父の祖国リトアニアの民族音楽の影響が強く出た旋律が魅力的。
Hakon Børresen:ハーコン・ボアセン
デンマークの作曲家Hakon Børresen(1876-1954)のバイオリン協奏曲。ロマン主義音楽が時代遅れとされ始めるこの時代にロマン主義を通すだけあって、心に訴えかけるような抒情的でゆったり流れる旋律が特徴的。
Johan Svendsen:ヨハン・スヴェンセン
ノルウェー出身、デンマークで活躍した大編成のオーケストラ楽曲を得意とする作曲家Johan Svendsen(1840-1911)のコンチェルト(1870年完成,初演は1872年)。
Josef Bohuslav Foerster:ヨゼフ・ボフスラフ・フェルステル
チェコ出身の作曲家Josef Bohuslav Foerster(1859-1951)のバイオリン協奏曲第1番(1911)。ゆったりとした後期ロマン派音楽。
同じくフェルステルの重厚で成熟したバイオリン協奏曲第2番。第3楽章の軽やかで繊細な民族舞踊風の旋律とリズムが心を抉るようなカタルシスをもたらす。
Robert McBride:ロバート・マクブライト
アメリカ合衆国の作曲家Robert McBride(1911-2007)のバイオリン協奏曲(1953年作)。ジャズの要素が濃い。
随時追加していきます
https://matome.naver.jp/odai/2148021632493357401
2016年12月03日