本場黄八丈とは!?
八丈島に伝わる草木染めの絹織物。 島に自生する植物の煮汁で黄色、鳶色、黒に染められた糸を平織りまたは綾織りに織り、縞模様や格子模様を作ったもの。
草木染めの原点と言われる。
【特徴1】 黄八丈の色
黄八丈は三色しか使わない。
「黄」「樺」「黒」の三色がそれで、染め織りの産地として藍染めが無く、また、赤の染料もないのである。かすりの技術もないので、他の織物とは違う美しさである。
【特徴2】 草木染め
本場黄八丈の三色はそれぞれ
黄はカリヤス
樺はマダミ
黒はスダジイ
を用いて染織を行う。どれも八丈島内で独自に栽培または自生している植物である。
【特徴3−1】 染めの行程 カリヤス 黄色
「黄」「樺」「黒」のそれぞれの色を出すためにはそれぞれ違った行程で染料を抽出する。
秋口に穂の出かかった頃刈って干しあげ、大釜で2~3時間煎じます。
この煎汁を島では「フシ」と呼びます。そして 「フシヅケ」といって一握りくらいに捩った糸を桶の中に一列に並べ、上から熱い「フシ」をかけて染み渡らせ、更にその上に一列互い違いに糸を並べて「フシ」をかけることを繰り返します。
「フシヅケ」した糸はそのまま一晩寝かして翌朝よく絞り、竿がけして幾度もはたきながら島の強い陽ざしに当てて、夕方まで良く干します。
干しあげた糸を前日 と同様に「フシヅケ」をしますが、こうして17~20回あまり「フシヅケ」をするうちに、糸は日増しに濃い枯れ草色に染まります。
黄色の媒染に使う灰汁を作るために、椿と榊の葉を焼きます。夏の穏やかな日をねらって2日がかりで葉を集め、真っ白になるまで燃やします。全て燃えてしまうのに2日くらいかかりますので、灰の上に小屋がけして何度も灰を運びます。
媒染とは、、
染色の過程において、染料を繊維に定着させる工程のこと。染料に漬ける前に繊維を処理する先媒染と、染料に漬けてから処理する後媒染、染色と同時に媒染処理する同時媒染の方法がある。
媒染に関して詳しいことが書いてあります。
瓶に半分ほど入れた灰に7分目くらい水を張って 放置します。
5、6日経って灰が底に固まった頃、その上澄みをすくい取って糸をもみ付けますと媒染の作用によって目も覚めるような山吹色に変わります。
椿と榊の葉には金属のアルミニウムが含まれています。これを焼きますので酸化アルミニウム(アルミナ)ができます。この方法をアルミナ媒染といいます。
【特徴3−2】 染めの行程 マダミ 樺色
樺は晴天40日と昔から云われるほど手数がかかり、その上失敗率が多くて厄介なものです。
「マダミ」は、八丈富士側に多い木です。
俗にシラタ、クロタといって木の善し悪しがあり、クロタを探して切り出します。あまり古木になりますと皮がフカフカになって良くないので、樹齢20年から50年位の木(胸高直径30cm位まで)を選びます。後は、速やかに樹皮を剥ぎ、毎日続けて染めます。生皮でなければ色が出ません。
「フシ」というのは黄染と同様ですが、最初の「フシヅケ」は桶に寝かせずに少しずつ桶の中で二本の染め棒 を繰りながら振り染めにし、緩く絞って竿の上に並べて一晩寝かし翌朝絞って干しあげます。これを「フシアキ」といって、樺染唯一の工程です。
真っ白な糸が綺麗なピンク色に染まります。空気に触れた部分はすぐ濃い色に変わりますので、まんべんなく空気に触れさせます。むらにしないため特に注意が必要です。
フシアキが終わって乾かした糸を桶の中へ漬け込みます。染色中に酸化によるムラが発生する恐れがありますので、布で覆い上から重しをして、一晩漬けます。
色が思わしくない時は「フシ」につけたり、灰汁を加減して色が整うまで染め抜いて、丁度山桃の熟した 色を理想とします。
灰を用いているため、よく叩いてから天日干しをします。
媒染には木灰の灰汁を使用します。
手順は、黄染と同じですが、非常に比重が重く、強アルカリ性です。
そのため、糸のセリシンを落としやすく黄染以上に神経を使います。素手で2日続けて媒染をすると 爪の間から血が出るほどです。
また、タンニンの沈着が大きく最も染太りするのが特徴です。
【特徴3−3】 染めの行程 スダジイ 黒色
三原山(東山)側に多い木です。
かなり樹高があり、古くは島の建材にも使われた木です。硬い樹なので切るのがとても大変です。
伐倒後はすぐに樹皮を剥いで乾燥させます。その後、2〜3年乾燥させて枯らします。
2〜3年枯らした物を藁で束ねて煎じます。湿ったものや生皮を使うと鳩色になって黒く染まりません。
フシツケの作業は他の2色と同じように桶で一晩寝かします。このフシは極めてタンニンを多く含みますので、汲み上げに使う柄杓はすぐ穴が開いてしまいます。
「フシツケ」は15回あまり行ったあと「ヌマツケ」といって鉄分を多く含む泥土を漉した物へ糸をつける。
黒の媒染は大変珍しい泥媒染(鉄媒染)です。
八丈の土は元々鉄分が多いのですが、特に鉄分の多い田んぼで行います。
この田んぼの泥に下染めした糸を付けます。シイのタンニンと土中の鉄が結合してタンニン鉄に変化し、泥を洗い流すと一気に 酸化して黒髪のような艶やかな黒が染まります。
2回目の「フシツケ」は5〜6回で、また「ヌマツケ」します。発色具合によってはさらに1〜2回「フシツケ」した後、さらりと「ヌマツケ」して仕上げます。
しばらく寝かせたのち清流が流れる小川でよくすすぎ、かたく絞って干します。
全ての色がそうですが、染色が終わると水で洗って仕上げます。八丈島は大変水が豊富で、大きな流れはありませんが、このような小さな流れは至るところに有ります。
【特徴4】 織の行程
経糸(たていと)を整えて機織りの準備をする作業です。経糸の配色、長さを決める作業で熟練した者が作業にあたります。
黄八丈には絣はありませんのでこの整経と緯糸で縞模様や格子柄を織り出します。
織りは手投げ杼で若者に織らせる。機織りは年老いた熟練者が良いと思いがちだが、黄八丈においては若い人にかぎる。 江戸時代、年貢だった黄八丈の織女の年齢は、20才から40才迄と制限があった。 この頃は電気も眼鏡も無い時代であり、視力のこともあるが、やはり若い力による打ち込みにある。
結城や大島は絣であるから、タテ、ヨコの柄が十文字で合わさらないと困るわけで、あまり強い打ち込みは不要である。
黄八丈は絣が無く、強い打ち込みによって柄が狂う事は無く、布地がシャキッとしっかりして実用性が高い。
湯通しとは、お湯に30分漬け、更に流れる水でたわしを使ってタテの糸の糊を落とします。織り上がった反物は、全てこの湯通しをしてから出荷します。
湯通しの終わった反物を、素早く伸子で張り、天日で乾かします。この作業は素早く行わないとなりませんので、織子総出で行います。
織の種類
【特徴5】 小石丸
小石丸(こいしまる)は、蚕の品種のひとつ。
宮中の御養蚕所における皇后御親蚕に用いられる品種で、非常に細く上質の糸を産する。昭和期の一時、飼育の中止が検討されたが、当時皇太子妃であった美智子皇后が残すことを主張して飼育は継続された。
農林水産省にて原種保存のために飼育されていた。 その後、法改正があり日本全国で飼育されるに至ってるが、秋山は法改正がなされる以前から、最高の布を作りたいただそれだけの思いで、数々の試練を乗り越え、小石丸の商業化に成功していた。 昭和63年から、宮崎県総合農業試験場の協力の下、小石丸蚕の飼育試験を開始し、平成2年にようやく最初の作品を完成させた。当時は養蚕・製糸ともに国の厳しい法律に縛られており、小石丸のような特種な品種を手に入れることは、大変困難なことであった。
東京都八丈島
○八丈富士山頂
登山口(鉢巻き道路内)へは空港から車で15分程度。そこから1280段の階段を登れば、八丈富士の火口丘(通称:お鉢)にたどり着く。火口丘を1周するのが「お鉢めぐり」。晴れていれば八丈小島や遠く御蔵島まで見えることも。火口内の池やヤマグルマの林を見下ろす眺めも楽しめる。足元に注意が必要な箇所あり。火口内は国立公園特別保護区域として管理されている。お鉢めぐりの火口内に10分ほど降りたところに浅間(せんげん)神社がある。
ギャラリー
黄八丈の伝統は染めにある
黄染、樺染、黒染用の大釜を配し染色作業を行います。特に黄染用の大釜は直径が200センチと大きく、材質も銅でできており、江戸時代葉幕府が御下賜したもので、黄染には最適のものである。
黄八丈は三色しか使わない。
それは、染料が島内にそれだけしか無く、島の自然が与えてくれた物である。
「黄」「樺」「黒」の三色がそれで、染め織りの産地として藍染めが無く、また、赤の染料もないのである。かすりの技術もないので、他の織物とは違う美しさである。
「足るを知る」という言葉があるが、染料は多ければ良いというものではなく、デザインの世界ではシンプルさが求められる。 江戸時代の年貢の見本帳を見ると二色使いがほとんどで、更に柄は縞、格子だけなので失敗作が無い。
染料の植物は日本中に普通に見られるものであり、八丈島以外では使うことのない、顧みられない植物である。染色方法についても二番煎じ、三番煎じをせず、沢山の染料を使ってひたすら染め重ね、媒染によって発色させる。
草木染めの原点と言われる所以である。
八丈島へのアクセス
飛行機
東京羽田空港〜八丈空港(50分)
毎日3往復
片道約12,000円
船
東京竹芝桟橋〜八丈港
毎日1往復
片道2等〜特等 7,820円〜21,900円
八丈島ではカリヤスと呼ばれる。