ジカウイルス感染症とは
ヤブカ(Aedes)属の蚊によって媒介されるジカウイルスによる感染症である。
ジカウイルス感染症とは
国立感染症研究所
潜伏期間は3~12日である。不顕性感染率は約80%とされている。過去の流行では詳細な症状の解析が少ない。2007年のミクロネシア連邦(ヤップ島)の流行では、発熱(38.5℃を超える高熱は比較的稀)、斑状丘疹性発疹、関節痛・関節炎、結膜充血が半数以上の症例に認められ、筋肉痛・頭痛(45%)、後眼窩痛(39%)というものであった。その他にめまい、下痢、腹痛、嘔吐、便秘、食欲不振などをきたす場合もある。しかし、ポリネシア連邦やブラジルの流行では、ギラン・バレー症候群や神経症状を認める症例が報告され、ブラジルでは妊婦がジカウイルスに感染することで胎児が感染し、小頭症児が多発している。胎児が小頭症と確認された妊婦の羊水からジカウイルスRNAが検出され、小頭症で死亡した新生児の脳の病理組織からもウイルスが検出されている。ジカ熱そのもので健康な成人が死に至ることは稀であるが、基礎疾患があり免疫力が低下している場合は死に至ることもある。
ジカウイルス感染症とは
臨床症状・徴候
ジカウイルス感染症は、ジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症をいいます。
ジカウイルス病は、後天的に、ジカウイルスが感染することにより起こる感染症で、軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛などが主な症状です。
ジカウイルスは母体から胎児への垂直感染を起こすことがあり(先天性ジカウイルス感染症)、小頭症などの先天性障害を起こす可能性があるとされています。
ジカウイルス感染症に関するQ&Aについて |厚生労働省
ジカウイルス感染症とは、どのような病気ですか?
何が問題なのか?
ジカウイルス病(後天性)の症状は比較的軽度です
しかし、妊婦に感染すると胎児に感染して重篤な先天性障害を引き起こすことが問題とされています。
ブラジル保健省は、妊娠中のジカウイルス感染と胎児の小頭症に関連がみられるとの発表をしており、 2016 年1月 15 日には、米国 CDC が、妊娠中のジカウイルス感染と小頭症との関連についてより詳細な調査結果が得られるまでは、流行国地域(問 3 参照)への妊婦の方の渡航を控えるよう警告し、 妊娠予定の女性に対しても主治医と相談の上で、厳密な防蚊対策を推奨しました。1 月21日には、 ECDC (欧州疾病対策センター)は、流行地域への妊婦及び妊娠予定の方の渡航を控えることを推奨しました。また、 2 月 1 日に、 WHO は、緊急委員会を開催し、小頭症及びその他の神経障害の集団発生に関する「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態( PHEIC )」を宣言しました。現在、小頭症や神経障害とジカウイルスとの関連についての調査が行われています。
ジカウイルス感染症に関するQ&Aについて |厚生労働省
小頭症とは
小頭症にかかると、胎児の時または出産時の脳と頭蓋骨が月齢に比べて異常に小さく、結果として脳にさまざまな程度の損傷が生じる。可能性のある原因は、感染症、ウイルス、有害物質、未知の遺伝要因など。
(フランス国立保健医学研究所(INSERM)、ジャンフランソワ・デルフレシ(Jean-Francois Delfraissy)氏 )
小頭症とは?ジカ熱との関連は?専門家にインタビュー 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
小頭症になるとどうなるのか?
深刻な場合は、早期に死亡する。脳が未発達だと、体が適切に機能できない。(発症地域の一つの)仏領ポリネシア(French Polynesia)では、ほとんどのケースが死産となっている。胎児が生存できないのだ。
(マルティニク大学病院(University Hospital of Martinique)感染症科部長アンドレ・キャビ(Andre Cabie)氏)
小頭症とは?ジカ熱との関連は?専門家にインタビュー 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
病原診断
デング熱と比べて軽症である。通常は4~7日間症状が持続する。実験室診断はPCRによるジカウイルス遺伝子(RNA)検出、IgM抗体検査やペア血清による中和抗体検査など、血清学的診断を行う。臨床的にはデング熱、チクングニア熱と症状が類似しているため実験室診断が必須であるが、デングウイルスとは近縁であり血清学的には交差反応が認められる。黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、マレーバレー脳炎ウイルスなどのその他のフラビウイルスとの交差反応もあるので診断には抗体価の比較が必要である。
ジカウイルス感染症とは
治療・予防
痛みや発熱に対して解熱鎮痛剤を投与する程度にとどまることがほとんどである。脱水症状が強い場合は輸液も実施する。予防に関しては、日中に蚊(ヤブカ)に刺されない工夫が重要である。具体的には、長袖服・長ズボンの着用、昆虫忌避剤(DEETを含むものが効果が高い)の使用などである。また、妊婦あるいは妊娠の可能性のある女性はジカ熱流行地への渡航を避けることが望ましい。
ジカウイルス感染症とは
まとめ
健常成人が感染しても、わずかな症状のみであるため、感染予防に対する関心も低い。
しかし、妊婦が感染することで、胎児に重篤な障害を生じうる。
感染経路が、蚊を介した予防しにくい形態であることから、妊婦だけではなく、社会全体で予防に努める姿勢が大切です。