ギリシャが債務不履行に至るまでの経緯
2001年 ユーロ導入決定
2002年 ユーロ紙幣・通貨流通開始
2009年 ギリシャ財政赤字の粉飾が発覚
2010年 ギリシャ債務危機発生。IMF等からギリシャに貸し付けが行われる
2015年 6月3日 IMFへの17億ドルの返済期限
2015年 7月1日 ギリシャから返済無し。IMFは返済期限延長を検討。国民投票を7月5日に実施
結局6月30日の返済期限にギリシャは返済出来ませんでした。
IMFがどうするかというのとはまた別に7月5日に国民投票でトロイカの出してきた財政緊縮案を受け入れるかどうかの国民投票があります。
ただし、IMFの手続きでは債務国に貸付したお金が返ってこない場合、デフォルトを宣言するのではなく滞納国に分類する事になっている。とブルームバーグ通信は報じています。
※トロイカ=EU(欧州連合)ECB(欧州中央銀行)IMF(国際通貨基金)の3つの金融機関の事。ギリシャに貸し付けを行っている
何故ギリシャがここまで財政赤字になったのか
そもそも何故国民投票が必要になったのか?についてみて行く前に何故ギリシャがここまで財政赤字になったのかを見てみましょう。
①ユーロを導入する事により国外からのギリシャへの投資が簡単になった
※ユーロ導入以前は為替変動リスクや資本規制により国外からのギリシャへの投資は抑制されていた
②国外投資家の参入によりギリシャにて不動産バブルの発生
※1993年から2006年にかけてギリシャの住宅価格指数は3倍以上に値上がりしました
③2010年に政権交代すると財政赤字の粉飾が発覚
2009年の財政赤字3.7%と発表されていたが何度も上方修正が行われ最終的には15.6%となりました
④投資家達がギリシャ国債を手放す
国債が手放されると国債利回りが上昇していくために、以後発行する国債利回りを更に挙げなくてはならなくなり返済が更に苦しくなる…という悪循環を生んでしまう
実際ギリシャの国債利回りは5%から38%まで上昇しました
⑤不動産バブルの崩壊、企業活動の停滞、失業率の増加、が発生
⑥トロイカからの資金援助と財政緊縮
資金援助の流れ
2010年5月第一次支援:1100億ユーロ
2011年7月:1300億ユーロ
2011年10月:1070億ユーロ
財政緊縮案
増税
年金支給額の削減
年金支給開始年齢の引き上げ
公務員の削減
⑦借金返済期限が来ても払えない
となっています。
ギリシャ危機はそう簡単には終わらない。何しろ、ギリシャは公的債務だけで3171億ユーロ(対GDP比177%、約43兆円)も抱えているのだから。
瀬戸際戦術続けるギリシャ 想定外のユーロ離脱はあるか
そして現在の借金がこうなっています。
何故財政赤字がこうも酷くなったのか?
なぜ経済規模からすれば小国のギリシャが、身の丈を超えた借金を抱えることになったのか。
同国は、就労者の7割が公務員、年金や失業給付などの社会保障が手厚く財政負担が重かった。02年のユーロ加盟がギリシャの放漫財政を加速させる。ドラクマという弱い通貨しかなかったギリシャが、ユーロという強い通貨を手にしたことで、信用力を背景に低金利で資金を調達できるようになり、赤字国債の発行が可能になった。
08年、リーマンショックがギリシャと南欧諸国に飛び火する。巨額の財政赤字が露見したギリシャだけでなく、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインなど財政赤字の大きい国の国債が暴落した。これら国債を保有しているドイツやフランスなどの金融機関にも当然、危機は波及した。これが欧州債務危機へと発展した。
瀬戸際戦術続けるギリシャ 想定外のユーロ離脱はあるか
この状況にプラスして財政赤字のごまかしがばれる事で債券価格の下落に歯止めがかからず止めがさされてしまったようです。
2015年に入ってからのギリシャの動き
何故国民投票が必要になったのか?についてですが2015年に入ってからのギリシャの動きを見て行きましょう。
1月 トロイカの緊縮財政を否定する事を公約に掲げた政党シリザのツィプラスが政権を取り首相となる
ツィプラス首相の公約は消費税増額や年金削減をしないといったものでした。
実際には年金支給年齢の引き上げ等を行った為議会の猛反発を受けました。
※確かに公約とは微妙に違うのですが…
6月26日 議会からの圧力によりツィプラス首相はトロイカの求める緊縮案に賛成かどうかをギリシャ国民に問う国民投票を7月5日に行うと発表しました。
可決→消費税増額や年金支給年齢が引きあげられ、トロイカがギリシャに追加融資
否決→ギリシャとトロイカの対立は継続
7月6日 国民投票の結果、緊縮案を受け入れないとなる。
果たして今後どうなっていくのか?
経済規模に比べて大きすぎると指摘されることが多いギリシャの年金システム。しかし、実際には、高齢の年金受給者の多くは苦しい生活を送っている。
年金生活者に見るギリシャの「矛盾」| Reuters
何故こうもギリシャが頑ななのか、何故シリザが選挙で勝ったのか?
それは実際のギリシャの人達の生活実態と外から見たイメージの乖離が大きいからなのかもしれません。
国民投票の結果によってまたどうなるのか?
但しツィプラス首相は借金は返せなくてもユーロからは離脱しないと言っています。
ユーロから離脱するとエネルギー資源も食料も輸入できなくなりますしリーマンショック後のハンガリー等を見ている人であればユーロ離脱が危険なものであるというのは解るからでしょう。
ただし逆にロシアからのエネルギーや食糧援助があるとユーロ離脱も可能になるのでは?
ギリシャがロシアへ取り込まれないよう牽制の意味あいもかねて欧州はギリシャに強く出来れていない(ユーロ脱退させるなどの処置)という見方もあるようです。
日本とギリシャはどう違うの?
日本のGDPに対する債務残高の比率は財務省のHPから確認できます。
確認された方は解るでしょうが既に日本は100%をぶっちぎっています。
100%超えてもいないギリシャが何故大騒ぎされて日本はされてないのか?(いや、騒がれていますが)
様々な要因があると思いますが個人的には下記の2点の差が大きいのかなと考えています。
ギリシャと日本の違い
その①日本は実体経済が強い
ギリシャは公務員も多く実体経済が余り強く無い国ですが日本は輸出大国でもあり日本経済はギリシャと比較すると強いと言う事。
なのでギリシャに比べて圧倒的な債務残高比率でも国際格付けは低下を続けているもののまだある程度のランクに位置しています。
その②債券保有者の国内投資家の割合が9割
ギリシャは外国から借金をしていましたが日本は国民から借金していると言われるゆえんです。
外国から借金を返せとギリシャはあれこれ言われていますが日本はその点国民に貸している為、立場が国対国ではなく国対自国民なので立場が強いのです。
逆の見方をすればギリシャは外国からの借金を踏み倒せば国民に負担はかかりませんが日本が破綻すると言う事は国民が借金を踏み倒されるという見方も出来るかもしれません。
厳密にはハイパーインフレ(超円安)による借金返済となるでしょうから国債購入費等は戻って来るでしょうが、もしそうなると円の価値は大幅に下落しているので踏み倒されたような形になってしまう、という見方もあります。
ギリシャがどうなるかは解りませんが日本も対岸の火事と思っていないで選挙の公約等をこれまで以上にちゃんと見ていく必要があるのかもしれません。
サムライ債の償還期限も!
ギリシャ政府が国際通貨基金(IMF)の融資の返済を滞らせたことで、日本の投資家向けに発行した円建て国債(サムライ債)が満期後に返済されるか、市場で注目されている。
みずほ証券によると、このサムライ債は1995~96年、900億円分発行された。14日に117億円分が償還期限を迎える。
IMFは6月30日、ギリシャ政府が約2千億円を返せなかったことを債務不履行(デフォルト)でなく、支払いの「延滞」とした。ただ、民間向けも返済できなければ、格付け会社がデフォルトと認定する可能性がある。
ギリシャ日本向け国債どうなる 117億円分迫る期限
対岸の火事と言ってられないですねこれは…ちゃんと返済して欲しいものです。
実は以前にもギリシャで選挙はしようとしていた。
欧州の政治の世界で生き残るためには守らな ければならない鉄則がある。それはドイツのメルケル首相に逆らっては ならないということだ。
欧州随一の経済大国ドイツを率いて既に10年目のメルケル首相を味 方につけることは、債務国にとって必要不可欠なことだ。ところがチプ ラス首相はそのメルケル首相に、ドイツ主導の緊縮策の是非を問う国民 投票を実施すると突然宣言することで真っ向から挑戦してしまった。
メルケル首相は国民投票が終わるまではギリシャと交渉しないと言 明。1日遅くに開いた会合後、ユーロ圏財務相らもこの線に沿って発言 している。
メルケル首相は1日の議会での演説で、ギリシャが何について投票 を実施しようと政府が国民に何を働き掛けようと、それは同国の「正当 な権利」だと言明。ただし、ギリシャの決定に対して「ユーロ圏の他 の18カ国にもそれぞれの立場を取るという同様に民主的な権利がある」 とくぎを刺した。
チプラス首相が知らなかった欧州の掟-「彼女に逆らってはならない」
そういえば2011年にギリシャのパパンドレウ元首相も国民投票するといって辞任するはめになってましたね…
その時のニュースがこちら。
メルケル首相怖い…。
さて果たして選挙はどうなるのでしょう?
総選挙結果
チプラス首相が勝利宣言
ギリシャのチプラス首相は5日のテレビ演説で、国民投票の結果について「欧州との亀裂ではなく、債務交渉を力強く進める力を与えてくれる」と勝利宣言した。
チプラス首相が勝利宣言
ギリシャのチプラス首相は、5日の国民投票で緊縮策受け入れが拒否されたことを歓迎し、休業中の銀行再開に向けて債権団と直ちに交渉を再開する用意があると述べた。
否決されましたね…ギリシャはユーロ圏に残留するのか…どうなるのか?
今後どうなる?今後の展望予測
EU案が受け入れられなければ、ギリシャの民間銀行の資金繰りを支えているギリシャ中央銀行の緊急融資を、承認権限を持つ欧州中央銀行(ECB)が止める可能性がある。
ユーロの供給源が絶たれることで、ギリシャ国内に流通するユーロの紙幣や硬貨はどんどん減る。苦肉の策として、ギリシャ政府は、旧自国通貨の「ドラクマ」の復活や、通貨の代用として「政府借用書」などの発行を余儀なくされる可能性が高い。
ユーロ圏離脱のための規定はないため居座ることも可能だが、ドラクマなどが発行されても受け取ってもらえない可能性も高く、価値は暴落する公算が大きい。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏は「信用力の非常に低い通貨を流通させて公務員の給与や年金を支払っても、国民生活は大幅なインフレで苦しくなる」と話す。
自国通貨急落、大幅インフレも…ユーロ離脱の先
2001年冬に債務不履行(デフォルト)に陥ったアルゼンチンが参考になる。1ドル=1ペソという固定相場制を採用していたが、02年初めに固定相場制の維持をあきらめた。ペソは外国為替市場で急速に売られ、02年6月には1ドル=4ペソ前後まで下落した。通貨価値が半年で4分の1に下がった計算だ。その分、輸入品のペソ建ての価格が上がり、国内物価は01年末から02年末までに約41%上昇した。
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の根本直子氏は「食料の4割を輸入するギリシャでは、社会不安が高まるとともに、外貨を獲得する『頼みの綱』である観光業も低迷する」と指摘する。
自国通貨急落、大幅インフレも…ユーロ離脱の先
ギリシャ首相のユーロ圏へのゆざぶり戦術
ユーロ圏へ残りたいギリシャとしてはユーロ圏へ地政学的にゆさぶりをかけているようです。
チプラス首相はロシアのプーチン大統領と笑顔の写真をメディアに撮らせるなどして、地政学でEUに揺さぶりをかけている。ロシア接近を見せることでEUから譲歩を引き出したいようだが、アナリストの間では「ロシアも資源価格下落と景気低迷で、ギリシャを支えることはできない」と冷ややかな見方が多い。
他方、中国は6月にも李克強首相がギリシャを訪問し、ギリシャ国債の購入に前向きな姿勢を見せるなどして、漁夫の利を狙っている。ただ、チプラス政権の強い味方になるとは考えにくく、「中国が投資先として興味を持っているのは、EUの一員としてのギリシャであり、ユーロ離脱後のギリシャにメリットを感じるとは限らない」(アナリスト)。
瀬戸際戦術続けるギリシャ 想定外のユーロ離脱はあるか
EUは当然ロシアが地中海へと進出してくるのを嫌がるでしょう。
しかしギリシャで甘い顔をするとイタリアやスペインなどへの示しが…というところの線引きが難しそうですね。
ユーロ圏のギリシャへの牽制
7日にユーロ圏首脳会談を行うようですがそこでどういう話になるのか…。
ギリシャのユーロ圏離脱が現実味を帯びて来たのか?
援助は厳しいのか?
国際通貨基金(IMF)によると、ラガルド専務理事はギリシャのチプラス首相と国民投票の結果について協議し、そのなかで債務返済の延滞により資金を融通できないと伝えた。
延滞規定により資金供給ができない旨を説明したという。
IMF専務理事、ギリシャ首相に延滞規定で資金供給できないと説明
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのノボトニー・オーストリア中銀総裁は6日、ギリシャへの新たな支援策を交渉している間、つなぎ融資を行うことは検討可能だと述べた。オーストリア国営TVに語った。
総裁は「それが可能かどうか、議論する必要がある」としている。
一方で総裁は、ギリシャがデフォルト(債務不履行)になった場合には、ECBは同国への流動性供給が不可能になるとの見方を示した。ECBは6日、緊急理事会を開き、ギリシャ銀向け緊急流動性支援(ELA)を現行水準に維持。ギリシャが求める上限拡大を拒否した。
ギリシャへのつなぎ融資、検討は可能=オーストリア中銀総裁
投票結果後のEUとギリシャのやり取り…支援はどうなる?
ギリシャ政府は7月9日(日本時間10日)、EUに対して増税と歳出削減を盛り込んだ新しい緊縮策を提案した。
ギリシャの言い分にも耳を傾けてみよう
国民投票で否決されたものと似た内容の改革案を改めて提出したギリシャ政府に対する疑念が広がっている中、イェルン・デイセルブルム(Jeroen Dijsselbloem)議長(オランダ財務相)はギリシャの信頼性について話し合ったが結論は出なかったと述べた。
財務相会合の結論を踏まえて12日夜に開かれる欧州連合(EU)28か国の緊急首脳会議でギリシャ支援策を決め、これがギリシャをユーロ圏に残留させる最後のチャンスになるとみられていたが、マルタのジョゼフ・ムスカット(Joseph Muscat)首相は財務相会合で結論が出なかったため12日は「長い1日になるだろう」と述べた。
ギリシャ支援策、結論出ず12日に再協議 ユーロ圏財務相会合 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
結局ギリシャは何がしたいのか…?
強硬姿勢のドイツは、アレクシス・チプラス(Alexis Tsipras)ギリシャ首相が3年間で860億ユーロ(約11兆7000億円)にも上る救済計画の条件に同意しないならばギリシャのユーロ圏からの「一時離脱」を求めている。フランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領は、フランスはギリシャをユーロ圏に留めるため「あらゆる方策」を尽くすと述べ、「ギリシャの一時的なユーロ離脱」を否定した。
ユーロ圏、ギリシャに厳しい救済条件、独仏の対立あらわに (AFP=時事) – Yahoo!ニュース
支援は降りる事に…しかし
ギリシャはユーロ圏残留となったようですが綱渡りはまだ続きそうです。