MERSの特効薬がない理由『MERS回復後の独男性死亡』リスクは誰が?

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拡大するMERS感染。今のところ致死率40%といわれるこの感染症に特効薬はまだない。ドイツではMERSから一旦回復した男性が合併症で死亡したと発表された。なぜ特効薬がないのか?ワクチンはどうなっているのか?今判明していることのまとめ。

独男性、MERS回復後に合併症で死亡

独ニーダーザクセン(Lower Saxony)州の保健当局は16日、ドイツ人男性(65)が中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome、MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)への感染を原因とする合併症で今月6日に死亡したと発表した。

MERSコロナウイルスはラクダを介して感染すると考えられており、男性は2月にアラビア半島に旅行した際に家畜市場を訪れ、MERSコロナウイルスに感染したとみられている。

男性は5月中旬にMERSから回復したと診断され、その後、隔離措置が解かれていた。

当局によれば、男性の感染が確認された段階で、予防措置として200人以上を検査したが、感染者は1人も確認されておらず、「患者との接触によるMERSコロナウイルスへの感染は完全に防げた」という。
独男性、MERS回復後に合併症で死亡 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

「現段階でMERSに特効薬などない」

2015年6月16日、中東呼吸器症候群(MERS)予防に効果があるとして韓国ではキムチ、ショウガ、サツマイモの売れ行きが拡大しているが、中国の専門家はこれらの食品に効果はないと指摘している。
「現段階でMERSに特効薬などない」=キムチ、ショウガなどに効果なし―中国の専門家 – エキサイトニュース

韓国ではMERS感染への不安から「免疫力を高める食品」としてキムチなどの消費量が伸びている。また、消毒液も人気を集めているが、中国の専門家は「現段階ではMERSに特効薬などない」と指摘。消毒液の誤った使い方で逆に健康を損ねる可能性もあると説明し、最も有効的な手段としてこまめな手洗いや部屋の換気、生の食品を食べないなどの注意点を挙げている。

発見からはすでに3年経過しているのになぜ?

MERSを引き起こす新型コロナウイルスの発見からはすでに3年がたっており、専門家の間からは、感染を予防するためのワクチンがいまだないことに不満の声が聞かれる。
アングル:終息遠いMERS、ワクチンはなぜないか(オックスフォード大学ジェンナー研究所) – オモシロ&お役立ち医療・研究情報館

“科学者らはすでに、MERSウイルスが重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスに似ていること、起源は恐らくコウモリであること、感染にはラクダも関係しているらしいこと、ヒトからヒトにも感染することを知っている。また、ウイルスの分子構造も把握している。”

本格的な研究費用を出す国がないのが理由

問題は、そうしたワクチンが大手製薬会社にとって経済的合理性が不透明である一方、本格的な研究に費用を出す国もまだ現れていないことだ。
アングル:終息遠いMERS、ワクチンはなぜないか(オックスフォード大学ジェンナー研究所) – オモシロ&お役立ち医療・研究情報館

英オックスフォード大学ジェンナー研究所のエイドリアン・ヒル教授は「ワクチン製造が本気で取り組まれるようになるまで、こうした流行をどれほど見守らなくてはならないのかが問題だ」と指摘。

英オックスフォード大学(University of Oxford)で17日、西アフリカを中心に猛威を振るっているエボラ出血熱の予防ワクチンの臨床試験が始まり、健康な英国人女性1人に開発中のワクチンが接種された。

今やヒトからヒトへの感染も極めて明確な証拠がある。

世界で最もMERS感染が深刻なのはサウジアラビアで、2012年以降で1000人以上が感染し、450人超が死亡している。

これまでに感染が確認された国は、米国や中国や英国など、少なくとも25カ国。

WHOによれば、過去半年間で感染例報告があった国は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン、ヨルダン及びイランです。また、同期間中、ドイツ及びフィリピンでは、中東訪問歴のある人の発症例(輸入感染症例)が報告されています。
海外安全ホームページ: 広域情報詳細

他の疾患と区別が困難だから

一部の専門家は、高齢者や入院患者を死に至らしめる他の呼吸器疾患とMERSを区別するのは常に可能とは限らないために、ウイルスが国境をまたいで広がった可能性を疑っている。

感染のスピードが遅いから

世界保健機関(WHO)によると、MERSは致死率が38%と、SARSの10%に比べると格段に高い。ただ、ヒトからヒトへの感染のスピードがSARSよりは遅いため、今のところ全体的な脅威は相対的に低くなっている。

誰かがMERSワクチンをすぐにでも開発すべきだ」と訴えた。

“ヒル教授は「恐らく韓国は(感染を)抑えられるだろう」としたうえで、「しかし、そこまでのリスクをわれわれは取るべきだろうか。答えはノーだ」と強調。

さらに「MERSワクチンを開発する余裕があったとすれば、それはサウジ政府だった。

少なくとも1992年には、サウジアラビアのラクダがMERSに感染していたというデータがある。つまり、MERSは、ヒトに感染する前に数十年間、ラクダ間でウイルスのやりとりがされていた。
MERS感染:ワクチンや治療薬の開発に向けて

W・イアン・リプキン(W. Ian Lipkin)氏は、サウジアラビアのラクダを調査し、74%のラクダがどこかの段階でウイルスに感染したことをつきとめた。若いうちに感染した可能性が高い。
MERS感染:ワクチンや治療薬の開発に向けて

2012年以降、世界のMERS感染の85%はサウジアラビアで起こり、MERS感染者の40%が死亡した。しかし、ラクダ自身は、鼻水に苦しむだけで1週間以内に回復する。

「感染ルートについては多くの証拠がある」と述べる。しかし、2014年に同氏が初めて研究結果を公表したとき、ラクダにキスしている写真をツイッターに投稿して抗議するサウジアラビア農民もいた。

科学者たちは、MERS拡大を防ぐ方法を模索している。ボーウェン氏によると、一度感染したラクダは治療することが難しい。

ラクダの兆候は比較的穏やかなので、所有者は診断がしづらい。さらには抗ウイルス薬はほとんど存在しない。あるにしても、そのような薬は広く使うには高価すぎる。
MERS感染:ワクチンや治療薬の開発に向けて

“米国立予防衛生研究所と共同で、ラクダをMERSから予防するワクチンを研究している。ワクチンは、抗ウイルス薬よりずっと安価になりそうである。”
それでも、サウジアラビアの8,000頭のラクダに、鼻水の原因となるウイルスに対抗するための免疫ワクチンを投与するのは出費である。

動物のワクチンには出資したがらない。

ボーウェン氏は、「動物にとってたいした害になっていないので、人々はワクチンに出費したがらない。
MERS感染:ワクチンや治療薬の開発に向けて

同氏は、長期的視点で見れば、何百万頭のラクダにワクチンを投与するより、ウイルスに感染した一握りの患者のための薬を開発するほうが理に適っていると考えている。
MERS感染:ワクチンや治療薬の開発に向けて

欧州疾病予防管理センター(ECDC)の統計によると、韓国のMERS感染者数はこれで、サウジアラビアに次いで国別で2位となった。
韓国MERS感染者87人に、サウジに次ぎ国別2位| ワールド| Reuters

まだ前臨床試験段階にすぎない。

これまでにMERSワクチンの開発を手掛けているのは、グレフェックスやイノビオ<INO.O>、ノババックス<NVAX.O>など、ほんの一握りの小さなバイオテクノロジー企業に限られている。

ただ、英グラクソ・スミスクライン(GSK)<GSK.L>など製薬大手も、状況は注視している。

ワクチンの開発のリスクを誰が取るのか?

“利益を求められる製薬会社にとって壁となっているのは、開発したワクチンを誰が使うのか、その費用は誰が払うのか、商業市場なのかどうかを計算しなくてはならないことだ。”

富豪の慈善活動家ビル・ゲイツ氏を含む専門家の多くは、ワクチン開発の初期段階を支えるためには、官民共同の取り組みがもっと整備されるべきだと口をそろえる。

(Kate Kelland記者、Ben Hirschler記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)(ロイター 2015年6月16日(火))

https://matome.naver.jp/odai/2143448863537297501
2018年09月08日