薬の分類はややこしい
健康志向の高まりから、近年は薬のような効果を持った製品や健康食品などが増え、従来からある、いわゆる「薬」との区分が必要になってきました。
また、ドラッグストア・ネット販売などの普及に伴い、薬の中でもリスクが高いものや低いものを分ける必要性が出てきました。
そんなわけで、現在は薬事法によって、下の図のように細かく分類されていて、結構分かりにくくなっています。
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・医薬品
│
├ 医療用医薬品
│ │
│ ├ 新薬(先発医薬品)
│ └ ジェネリック医薬品(後発医薬品)
│
└ 一般用医薬品(OTC医薬品)
│
├ 第1類医薬品
├ 第2類医薬品
└ 第3類医薬品
・医薬部外品(=薬用)
・化粧品
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このまとめでは、これらが一つ一つ、どういったものなのか消費者目線でまとめてみました。
医薬品
医薬品とは、従来からあるいわゆる「薬」のことです。
一応定義は以下のようになっていますが・・・
1. 日本薬局方に収められている物
2.人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品(以下「機械器具等」という。)でないもの(医薬部外品を除く。)
3.人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)(薬事法第2条第1項)
横浜市衛生研究所:医薬品、食品、健康食品等の定義
なんかややこしくて分かりにくいですね。
でも簡単に言えば何の事はない、一般人からしたら「普通の薬」っていうだけの認識で問題無いです。
そして、「医薬品」の中にも分類があります。
大きく分けると「医師が処方するもの」と「お店で買うもの」の2つになります
医薬品 – 医療用医薬品
医療用医薬品は、「医薬品」の中でも「医師が処方するもの」を指します。
「病院で処方せんを貰って出してもらえる薬」ですね。
医療用医薬品はさらに、「新薬(先発医薬品)」と「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」に分かれます。
医薬品 – 医療用医薬品 – 新薬(先発医薬品)
先発医薬品には、長年の商品開発の対価として、20~25年の特許期間が設けられており、類似品が作られないよう法律で保護されている。研究開発にかかるコストは薬の価格に反映されている。
ジェネリック医薬品は普通の薬と何が違うのか 糖尿病の後発医薬品 | 資料室 | 糖尿病ネットワーク -生活エンジョイ物語
新薬の開発には多額のコストと研究期間がかかるので、その分特許の保護が大きいのです。特許で守られているということはその分薬の値段が高くなっているということです。
医薬品 – 医療用医薬品 – ジェネリック医薬品(後発医薬品)
ジェネリック医薬品の場合、すでに先発医薬品で有効性や安全性が臨床試験などで確かめられているため、開発期間や経費を大幅に抑えることができる。さらに、薬としての承認の手続きも先発医薬品に比べて簡素化されており、その分、薬の価格も安く設定することができる。
ジェネリック医薬品は普通の薬と何が違うのか 糖尿病の後発医薬品 | 資料室 | 糖尿病ネットワーク -生活エンジョイ物語
先発医薬品と同じ成分を含むのがジェネリック医薬品です。
その正体は結局のところ「特許料が上乗せされていない普通の薬」です。
成分や用法・用量・効果などはもちろんのこと、量も変えてはいけない。
変えていいのは形状や色などだけです。
新薬を勧めてジェネリックを貶める意見などをたまに目にすることがありますが、その意見はほとんどの場合「薬を売って利益を得る」立場の人から発せられていることに注意してみてください。
「新薬が売れないと開発費が減って新しい薬が作れなくなる」といったようなことは、果たして末端の消費者が考えなければならないことなのでしょうか?
医薬品 – 一般用医薬品(OTC医薬品)
一般用医薬品は、「医薬品」の中でも「お店で買うもの」を指します。
医師が処方する「医療用医薬品」との区別を明確にするために「OTC医薬品」という呼び名が使われることもあります。
Over The Counterの略で、カウンターで販売する薬という意味です。
また、ドラッグストア等で薬の箱を手にとって説明を読んでみると、そこに「第2類医薬品」とか「第3類医薬品」と言った分類が書いてあるのを見たことがある人も多いのではないでしょうか?
一般用医薬品はその薬の効果によって、第1類・第2類・第3類医薬品に分かれています。
医薬品 – 一般用医薬品 – 第1類医薬品
第一類医薬品は、使用上の安全性について薬剤師からの情報提供が義務づけられています。
要指導・第一類医薬品のごあんない|クスリのアオキ
「一般用医薬品」の中でも、特に副作用や他の薬との飲み合わせについて注意が必要なのが「第1類医薬品」です。
要するに「強い薬」です。
ドラッグストア等の店舗では、消費者が簡単に手に取れない場所に陳列されていることが多いです。
販売して良いのは薬剤師だけで、その際は消費者への詳細な説明が義務付けられています。
また、第1類医薬品・第2類医薬品はネットでの販売が禁止されていたのですが、
2014年の薬事法改正によってほとんどの薬がネット販売解禁になりました。
(一部の要指導医薬品を除く)
第1類医薬品をネットで買う際は薬剤師とのネット上でのやりとりが義務付けられています。
最高裁でこういう判決が出た影響です。
2009年に薬事法が改正されて第1・2類医薬品のネット販売が禁止されたのですが、その時は国への批判の声ががかなり大きかったと記憶しています。
消費者の利便性を考えたら、ネットで薬が購入できる今の状態が正常だと言えるでしょう。
第1類医薬品の例
こういった発毛剤が第1類医薬品に含まれるのは少し意外な感じがしますね。
医薬品 – 一般用医薬品 – 第2類医薬品
日常生活に支障が出るほどの副作用の恐れがある医薬品。ただし、第1類医薬品に分類されている製品は除く。現在市販されている一般用医薬品のうち、大半が第2類医薬品である。
第2類医薬品とは | 製薬転職サイト Answers
「一般用医薬品」の中でも、薬剤師による説明は必要ないものの、副作用などのリスクがそれなりにあるものが第2類医薬品です。
「日常生活に支障が出るほどの副作用の恐れ」なんていうと大げさですが、
要するに「ドラッグストアでよく売ってる薬」です。
第2類医薬品の販売条件は、第1類医薬品よりも厳しくなく、薬剤師もしくは登録販売者が常駐している店舗であれば販売可能である。消費者が薬を購入する際も服薬指導の義務などはなく、「購入者から情報提供を拒否された場合を除き、極力薬品の情報を伝えなければいけない」という努力義務の制限にとどまっている。
第2類医薬品とは | 製薬転職サイト Answers
第1類医薬品と違い、販売時の説明が義務付けされていません。
レジに持って行って普通に買える薬ということです。
かぜ薬のように、日常で使用頻度が高く、ある程度消費者も使い方を理解しているような薬が多いです。
第2類医薬品の例
どれも、お馴染みの薬と言った感じですね。
医薬品 – 一般用医薬品 – 第3類医薬品
一般の人が医師の処方せんがなくても購入できる一般用医薬品(OTC薬)は、薬事法により安全性の面から3つにランク付けされている。その中で、もっとも安全性が高いもの。薬剤師または薬の販売を許された登録販売者が販売できる。
第三類医薬品 -健康用語辞典|病院・薬・サプリメントの情報満載! healthクリック
「一般用医薬品」の中でも、副作用などのリスクが低いものが第3類医薬品です。
2009年~2014年の間に、薬のネット販売が禁止された時期でも、唯一、第3類医薬品はネット・コンビニなどでの販売が許可されていました。
比較的副作用が少なく安全なため、店頭での説明について規定がありません(第一類は必須、第二類は努力義務)
ビタミン剤や整腸薬など、日常生活へのリスクが高くないものが含まれています。
第三類医薬品の例
よく一般家庭に置いてある薬といった感じですね。
ちなみに、第3類医薬品の豆知識
ちなみに、目薬の選び方の豆知識なのですが、
「第3類医薬品を買うのが良い」
というものがあります。
「第3類医薬品 第2類医薬品 目薬」なんかのワードで検索すれば、
すぐに行き当たる情報なのですが、意外と知られていないかもしれません。
これらのリンクの主張は、全て同じかつシンプルです。
第2類医薬品に含まれる、「血管収縮剤」は一時的に充血を取り除いてくれるものの、
薬の効果が切れると、まるでダイエットのリバウンド現象のようにかえって充血が酷くなってしまうのです。
なぜ、そのような成分の含まれた製品をわざわざ売るのかというと、
消費者に「目薬が効いている」感じを強く印象づけるためです。
つまり、「第2類医薬品」で血管収縮剤が含まれている目薬は不必要に効果を高めているわけです。
この「血管収縮剤」は第3類医薬品には含まれていません。
その分、効きは緩やかになりますが、目への負担が少なくて済むのです。
なのでとりあえず目薬が欲しいという時は第3類医薬品を選んでおけばリスクが少なくて済むのです。
眼科医ですら第2類医薬品は避けるという話もあります。
第2類医薬品と第3類医薬品だとどうしても前者の方が「良い薬」だと思ってしまいがちですが、
目薬に関しては注意が必要です。
医薬部外品とは
医薬部外品とは、医薬品に準じるもので、効果・効能が認められた成分は配合されているが、予防に重点を置かれたものが対象です。
薬用歯磨き剤、制汗スプレー、薬用クリーム、ベビーパウダー、育毛剤、染毛剤、入浴剤、薬用化粧品、薬用石けん等が含まれます。
よく見かける「医薬品・医薬品第1類・医薬部外品」の違いは何? | シェアしたくなる法律相談所
医薬部外品は、「薬」である医薬品とは違って、「薬っぽい効果のある日用品」です。
何かを「治す」のではなく、予防などの何かしら体に良さそうな効果があるものを指します。
薬ではないので効果は非常に緩やかなものが多いです。
人体に直接使用する物以外でも、例えばホウ酸団子やスプレー殺虫剤なども医薬部外品に含まれています。
また、よく見かける表現の「薬用」についてですが、↓
「薬用」とは「医薬部外品」で認められている表示ですので「薬用=医薬部外品」となります。
花王株式会社 乾燥性敏感肌ナビ 商品の成分表示の基礎知識 「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」にはどんな違いがあるの?
これらは同じものを指しています。
「薬用=医薬部外品」と覚えていれば医薬部外品がどんなものかイメージするのが容易になりますね。
医薬部外品の例
他にも数えきれないくらい色々なジャンルの様々な商品があります。
化粧品とは
人の身体を清潔にし、美化し魅力を増し、容貌を変え、皮膚、毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法により使用されることが目的とされている物
医薬部外品とは? – 石鹸百科
一般的な化粧品・基礎化粧品以外にも、シャンプー・歯磨き粉・石鹸などが含まれる場合があります。
化粧品は、医薬部外品に認められている「肌荒れ」「にきびを防ぐ」「皮膚の殺菌」などの効能・効果を表記することはできません。
医薬部外品と化粧品。どちらを選ぶ?[美ログ] | スキンケア大学
つまり化粧品は「薬用」的な効果を宣伝してはいけないということです。
薬の効果が高い方から、
医薬品>医薬部外品>化粧品
となります。
化粧品の例
普通の化粧品以外にも、薬用でないシャンプー、日焼け止めなどが含まれます。
まとめ
【医薬品】
・普通の薬
【医療用医薬品】
・「医薬品」の中でも医師に処方してもらう薬
【新薬(先発医薬品)】
・「医療用医薬品」の中でも特許料が上乗せされた薬
【ジェネリック医薬品(後発医薬品)】
・「医療用医薬品」の中でも特許料が上乗せされていない薬
【一般用医薬品(OTC医薬品)】
・「医薬品」の中でも、ドラッグストア等で処方箋なしで購入できる薬
【第1類医薬品】
・「一般用医薬品」の中でも購入の際に薬剤師による説明が義務付けられている薬
【第2類医薬品】
・「一般用医薬品」の中でも副作用のリスクなどの可能性がある薬
【第3類医薬品】
・「一般用医薬品」の中でも副作用のリスクなどの可能性が少ない薬
【医薬部外品(=薬用)】
・薬用成分は含まれるが薬ではなく、治療より予防に重点が置かれたもの
【化粧品】
・皮膚や体に用いるが、薬用効果のないもの