がん検診 きちんと受けていますか?
日本のがん検診受診率はOECD(経済協力開発機構)加盟国30カ国の中で最低レベルです。欧米の検診受診率は軒並み70%以上であるのに対し、日本は3割程度ととても受診率が低いのが現状です。
きちんとがん検診を受ければ、死亡率が下がる?
がん検診は部位ごとに検査が違うことに注意
勘違いされやすいですが、がん検診は部位ごとに異なる検査をします。ですので、血液検査だけで全てのがんが分かることはありえません。普段かかりつけの医師がいても、がん検診のための検査をしていなければ、全然検査できていない状態です。
また、胃カメラだけやっていても、大腸がんを防ぐことは出来ません。必ず部位ごとに検診を受けて下さい。
意味のあるがん検診とは?
がん検診の中には、その検診の効果があるのか不明であるものもあります。その場合、過剰な検査や治療につながってしまい、かえって健康を損ねることがあります。
そこで、部位別に意味がある検診をご紹介します。
①大腸がん
部位別の順位を2014年のがん統計予測(胃、肺、大腸、女性乳房、前立腺の順)と比較すると、大腸が胃と肺を抜いて第1位に、前立腺が女性乳房を抜いて第4位になった。
2015年のがん統計予測:[がん情報サービス]
2015年の大腸がん罹患数は、男性で77,900人(4位)、女性で57,900人(2位)で、合計すると135,800人(1位)です。
大腸がんで最も効果が高い検査は便潜血検査
便をとって検査するだけですので、体への影響は全くありません。
対象年齢は?
一般的には50歳から75歳までとされています。難しい表現ですが、「50歳以上で余命が10年以上あることを期待される人」はやった方がいいとされます。
毎年1回の便潜血検査によって大腸がんによる死亡率は32%低下し、1年おきだと22%低下した。
出典: The New England Journal of Medicine
50歳から80歳までの46,551人を対象として30年間追跡した研究結果です。
大腸内視鏡検査は?
便潜血で異常が出てしまった場合は大腸内視鏡をすることになるので、最初からやらなければいけない検査ではありません。
予防は困難
大腸がんは、食事と関連すると言われており、脂っこいものがダメだ、食物繊維がいい、などと色々言われています。ですが、根本的には予防法はありません。きっちりと検診をして、早めに見つけることが重要です。
②肺がん
肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順にがん死亡数が多い。
2015年のがん統計予測:[がん情報サービス]
2015年の予測肺がん罹患数は、男性で90,700人(3位)、女性で42,800人(3位)、合計で133,500人(2位)です。死亡数は最多です。
肺がんの検診方法は確立していない
結論から言うと、肺がんの検診方法はまだ確立していません。
しかし、レントゲンを撮ることで、肺がんの死亡率が下がるというきちんとした研究結果はありません。
じゃあどうすればいいの?
喫煙者に対して毎年、低線量CTで肺を検査すると、死亡率を下げるかもしれない。
Lung ca screening guidelines
アメリカの各学会によると、55歳から74歳までの喫煙者に対して、1年に1回の低線量CTを撮影することが推奨されています。
低線量CTを設置している病院はまだ少ないので、問い合わせてみましょう。
検診は難しくても、予防法はある
また、日本では、たばこを吸わない女性に多いタイプの「肺腺がん」が多いですが、これは禁煙では防げません。
ですが、最も多いタイプの肺がんを防ぐことはできます。
③胃がん
がんで亡くなった人数を部位別に多い順に並べると、最新の統計データでは男女とも胃がんが第2位となっています。
胃がん 基礎知識:[がん情報サービス]
2015年の胃がん罹患数は、男性で90,800人(2位)、女性で42,200人(4位)、全体で133,000人(3位)です。
胃がんは日本に多い
胃がんは日本などアジアに多い疾患で、西洋にはあまりいません。そのため、はっきりした研究結果は少ないのが現状です。
一応、バリウムが王道
胃がん検診について | 日本対がん協会
40歳以上の成人に対して、年に1回バリウム検査を推奨しているのが現状です。きちんとした研究結果はありませんが、効果がないわけではありません。
ですが、これもしっかりした研究結果に基づくものではありません。「多分効果がある」レベルです。
予防法はピロリ菌の除去
日本では、ピロリ菌の検査前に胃カメラをしないといけないので、気になる方はまず胃カメラをしなければいけません。「ピロリ菌を撲滅すれば、胃がんで亡くなる人はいなくなる!」とまでおっしゃる方もいます。
まとめ: 50歳を超えたら便潜血とバリウム検査
以上、日本のがん罹患数の上位1~3位の大腸がん、肺がん、胃がんについてご紹介しました。
50歳を超えている方は毎年、大腸がんについて便潜血検査、胃がんについてバリウム検査(または胃カメラ)の両方を受けましょう。
後半はこちらからどうぞ。