ヒトラーの思い描いた「巨大兵器」
1941年、第二次世界大戦において、ドイツとソビエト連邦が戦争状態に突入した。
ソ連軍の仕様していたT-34中戦車、KV-1、KV-2重戦車はドイツにとって脅威となっていた。
ヒトラーは、「今後、これらの戦車の性能を凌ぐソ連製新型戦車が現れるに違いない」と推測し、ドイツ側も砲、装甲共に最高水準の戦車を作ることを提案する。

https://matome.naver.jp/odai/2143183003111947201/2143183620816132303
ドイツの重工業会社に開発の依頼が送られ…
クルップ社、ポルシェ社に100t級戦車の開発依頼が送られた。
この二社は第二次世界大戦のドイツ兵器開発においてのライバルで、ヒトラーは両者に同じ開発の依頼を送ることで開発競争を煽っていた。
制式採用された“マウス”設計案には「VIII号戦車 (Panzerkampfwagen VIII)」の制式名称及び「Sd.Kfz 205」の制式番号が与えられ、設計はポルシェ社、部品の生産と組み立てはクルップ社、砲を含む最終組み立てはアルケット社により行われることが決定した。
マウス (戦車) – Wikipedia
しかし、技術的に無理な設計や、急場しのぎの整備、物資不足などが原因となり、完成した車輌はお粗末な出来だった。
生産が開始されるも、ソ連軍のドイツ本土入りが決定的となり…
最終的に生産されたのは試作機の二両のみであった。
マウスの恐るべき性能
マウスは実際に完成した戦車としては世界最大規模のものである。その自重188tは2015年現在でも世界最大のもので、砲塔部のみでも55 tの重量があった。寸度は全長10.085m、全幅3.67m、全高3.63mである。
マウス (戦車) – Wikipedia
これが本当に実践に投入されていたら、歴史は変わっていたかもしれない。
当時最強とされていた ”ティーガー戦車” との比較

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車体長:9.034m
重量:187.998t
主砲:55口径 12.8cm KwK44戦車砲
前面装甲:220-240m
そのとてつもない重量が仇となり、「橋が渡れない」という問題が発覚した。
そのため、マウスには水密設計が施されており、川を渡る際は沈んで対岸へ渡るのだとか。
しかし、マウスの駆動系は「ガス・エレクトリック方式」と呼ばれる、発電機を動かし、モーターを駆動させて進む仕組みだったため、水中では発電することができなかった。
そのため、川を沈んで渡る際にはもう一台のマウスと電線で接続し、片方で発電した電力を供給し続けなければならなかった。

https://matome.naver.jp/odai/2143183003111947201/2143183620816133503
車体長:6.316m
重量:57t
主砲:56口径8.8 cm KwK 36 L/56
前面装甲:100 mm
”マウス” の今
生産された二両のマウスのうち、一両は鹵獲を免れるために爆破処分され、もう一両はモスクワ近郊にあるクビンカ戦車博物館に今でも展示されている。
傾斜装甲による高い防御性と、恐るべき機動能力で独ソ戦初期の崩壊寸前のソビエト戦線を維持した。