ダニエルズ・プランの戦艦に搭載された主砲
ダニエルズ・プラン…当時の海軍長官ジョセファス・ダニエルズが発案した建艦計画で、日本が推進した八八艦隊計画と同時期に計画されました。なお、計画された艦艇の多くはワシントン海軍軍縮条約により建造中止されました。
1913年に設計されました。
(16インチ≒40.6 cm)
砲弾重量:徹甲弾 957.1 kg
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 1
最大射程:31,360 m
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 1
なお、上記は艦載時の最大仰角における数値です。
目標までの到達時間は、910 mで1.2秒、9240 mで13.4秒、15,820 mで25.7秒、20,940 mで37.1秒、25,055 mで47.7秒、28,620 mで58.1秒、31,360 mで67.8秒でした。
装甲貫通力
距離5490 m:舷側装甲 655 mm
距離8230 m:舷側装甲 564 mm
距離10,920 m:舷側装甲 480 mm
距離14,630 m:舷側装甲 376 mm
距離18,290 m:舷側装甲 292 mm
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 1
搭載艦:コロラド級戦艦
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 1
※ 上記の改装した主砲については後述する16インチ45口径Mark 5・Mark 8を参照してください。
1916年に設計されました。
砲弾重量:徹甲弾 954.5 kg
USA 16″/50 (40.6cm) Mark 2 and Mark 3
上記は艦載運用で予定された徹甲弾であり、1015 kgの徹甲弾が要塞砲として転用された砲では利用されました。
最大射程:40,691 m(954.5 kgの徹甲弾において)
USA 16″/50 (40.6cm) Mark 2 and Mark 3
1015 kgの徹甲弾では最大射程が41,240 mとなりました。
装甲貫通力
距離16,549 m:舷側装甲 445 mm/甲板装甲 67 mm
距離20,117 m:舷側装甲 381 mm/甲板装甲 71 mm
距離21,940 m:舷側装甲 356 mm/甲板装甲 81 mm
距離23,774 m:舷側装甲 328 mm/甲板装甲 91 mm
距離25,604 m:舷側装甲 307 mm/甲板装甲 102 mm
距離27,432 m:舷側装甲 279 mm/甲板装甲 114 mm
USA 16″/50 (40.6cm) Mark 2 and Mark 3
上記の数値は954.5 kgの徹甲弾における数値です。
搭載艦:サウスダコダ級戦艦(1920)・レキシントン級巡洋戦艦
USA 16″/50 (40.6cm) Mark 2 and Mark 3
ワシントン海軍軍縮条約により、どちらも建造中止(レキシントン級巡洋戦艦は一部が空母に改造)となりました。よって、本砲は艦載されたことがありません。本砲は要塞砲として転用されました。
※ サウスダコダ級戦艦については、後に同名の戦艦が建造されたため、カッコ内に起工年数を記載して区別しています。
ダニエルズ・プラン後継艦に搭載が検討された主砲
1920年に設計されました。
(18インチ≒45.7 cm)
※ 本砲は試作段階で開発が終了したため記載が少なく、射程等の記録を発見できませんでした。
搭載艦:なし(試作のみ)
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A
サウスダコダ級戦艦をベースとする本砲を搭載する戦艦が構想されましたが、具体的な建艦計画はありませんでした。
ワシントン海軍軍縮条約による備砲の制限:16インチ以下
ワシントン海軍軍縮条約 – Wikipedia
ワシントン海軍軍縮条約により、戦艦の備砲は16インチ(40.6 cm)以下と定められたため、本砲を搭載する戦艦は条約違反となりました。よって、本砲の開発を継続する理由が消滅してしまいました。しかし、本砲の存在は後に研究される18インチ47口径Mark Aの開発に繋がります。(後述する18インチ47口径Mark Aを参照してください)
海軍休日期における試作砲
16インチ56口径 Mark4
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A
1927年に設計されました。
(16インチ≒40.6 cm)
装甲貫通力
距離26,335 m:舷側装甲 330 mm/甲板装甲 90 mm
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A
ワシントン海軍軍縮条約における備砲の制限:16インチ以下
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A
ワシントン海軍軍縮条約において備砲の制限は16インチ以下とされましたが、口径の制限は課されなかったため、長砲身化による性能向上を目的に本砲は製造されました。
条約型戦艦の構想と既存砲の改良
※ 35.6 cm砲の改良については米国戦艦主砲まとめ①にて解説しています。→(https://matome.eternalcollegest.com/post-2142646782246168801)
前述した16インチ45口径Mark 1の改良した砲で、1935年頃に設計されました。
(16インチ≒40.6 cm)
砲弾重量:徹甲弾 1016 kg
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 5 and Mark 8
最大射程:32,000 m
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 5 and Mark 8
装甲貫通力
距離0 m:舷側装甲 754 mm
距離4572 m:舷側装甲 661 mm/甲板装甲 19 mm
距離9144 m:舷側装甲 572 mm/甲板装甲 39 mm
距離13,716 m:舷側装甲 488 mm/甲板装甲 64 mm
距離18,288 m:舷側装甲 412 mm/甲板装甲 90 mm
距離22,860 m:舷側装甲 349 mm/甲板装甲 121 mm
距離27,432 m:舷側装甲 297 mm/甲板装甲 158 mm
距離32,004 m:舷側装甲 254 mm/甲板装甲 207 mm
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 5 and Mark 8
搭載艦:コロラド級戦艦
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 5 and Mark 8
いずれの戦艦も既存砲からの改装でした。
なお計画段階では、コロラド級の主砲は後述するSHSを運用できるように改装するつもりでしたが、予算不足のため断念したそうです。
1941年以降、コロラド級戦艦の内2隻は砲弾の中に染料を追加しました。戦艦コロラド(BB-45)はオレンジ色、戦艦メリーランド(BB-46)は青色でした。なお、戦艦ウエストバージニア(BB-48)は染料を追加しませんでした。
(14インチ≒35.6 cm)
新世代の戦艦に搭載された主砲
米海軍が建造した新戦艦を語る上でキーワードとなるのが「SHS」の存在です。
SHS=スーパーヘビーシェル
簡単に言うと従来弾より重たい砲弾
B2001799.html
さらに強力な砲戦能力を目指して米海軍が選択した決定こそSHSでした。
重たく遅い砲弾の方が、遠くでも威力が残るという事になります
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、同じ砲口威力で遅くて重たい砲弾は射程距離でマイナスの要素があります
B2001799.html
砲弾は砲口径に縛られますから、重たいという事は長いということで、これは弾道安定性にマイナスになる
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重たい砲弾は揚弾装置への負担が増し、射撃速度にもマイナスの懸念がある
B2001799.html
つまり、SHSの特徴は…
■メリット
・近距離以遠において同口径の従来砲弾より高威力
■デメリット
・同口径の従来砲弾より射程が短い
・弾道安定性が悪い
・射撃速度が低下する
…となります。
米海軍も砲撃能力の向上を目指すならば、砲弾重量の増加や長砲身化ではなく、大口径化を選ぶべきだと理解していました。この大口径化を突き詰めた例が日本海軍が建造した大和型戦艦です。しかしながら米海軍は大口径化を地理的要因、そして第二次ロンドン海軍軍縮条約のために断念しました。
第二次ロンドン海軍軍縮条約における備砲の制限:16インチ以下
第二次ロンドン海軍軍縮会議 – Wikipedia
当初は14インチ(35.6 cm)でしたが、エスカレータ条項の発動により16インチ(40.6 cm)に緩和されています。
以上のような理由で大口径化を望めない米海軍はSHSを採用するに至ったのです。
1936年に設計されました。
(16インチ≒40.6 cm)
砲弾重量:SHS 1225 kg
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 6
最大射程:33,741 m
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 6
16インチ砲Mark5の徹甲弾と比べて重い砲弾を運用する16インチMark 6が射程の面で優っている理由は、Mark5に比べて最大仰角が15°程上回っている(Mark 5:30°/Mark6:45°)からと推測されます。
目標までの到達時間は、9140 mで14.5秒、18,290 mで32.6秒、27,430 mで56.6秒、32,920 mで79.8秒でした。
装甲貫通力
距離0 m:舷側装甲 755 mm
距離4572 m:舷側装甲 676 mm/甲板装甲 19 mm
距離9144 m:舷側装甲 597 mm/甲板装甲 28 mm
距離13,716 m:舷側装甲 520 mm/甲板装甲 77 mm
距離18,288 m:舷側装甲 448 mm/甲板装甲 109 mm
距離22,860 m:舷側装甲 382 mm/甲板装甲 146 mm
距離27,432 m:舷側装甲 324 mm/甲板装甲 194 mm
距離32,004 m:舷側装甲 266 mm/甲板装甲 268 mm
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 6
搭載艦:ノースカロライナ級戦艦・サウスダコダ級戦艦
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 6
なお、ノースカロライナ級戦艦とサウスダコダ級戦艦の各艦は砲弾の中に染料を追加していました。戦艦ノースカロライナ(BB-55)は緑色、戦艦ワシントン(BB-56)はオレンジ色、戦艦サウスダコダ(BB-57)は青色、戦艦インディアナ(BB-58)は赤色、戦艦マサチューセッツ(BB-59)は緑色でした。なお、戦艦アラバマ(BB-60)は染料を追加していませんでした。
1939年に設計されました。
(16インチ≒40.6 cm)
砲弾重量:SHS 1225 kg
USA 16″/50 (40.6 cm) Mark 7
SHSや通常の榴弾の他にも、核砲弾を運用することが可能でした。
最大射程:38,720 m
USA 16″/50 (40.6 cm) Mark 7
砲身が長いため16インチMark 6より長射程となっています。
装甲貫通力
距離0 m:舷側装甲 829 mm
距離4572 m:舷側装甲 747 mm/甲板装甲 17 mm
距離9144 m:舷側装甲 664 mm/甲板装甲 43 mm
距離13,716 m:舷側装甲 585 mm/甲板装甲 71 mm
距離18,288 m:舷側装甲 509 mm/甲板装甲 99 mm
距離22,860 m:舷側装甲 441 mm/甲板装甲 131 mm
距離27,432 m:舷側装甲 380 mm/甲板装甲 169 mm
距離32,004 m:舷側装甲 329 mm/甲板装甲 215 mm
距離36,576 m:舷側装甲 280 mm/甲板装甲 286 mm
距離38,720 m:舷側装甲 241 mm/甲板装甲 357 mm
USA 16″/50 (40.6 cm) Mark 7
搭載艦:アイオワ級戦艦・モンタナ級戦艦(建造中止)
USA 16″/50 (40.6 cm) Mark 7
アイオワ級戦艦は砲弾の中に染料を追加していました。戦艦アイオワ(BB-61)はオレンジ色、戦艦ニュージャージー(BB-62)は青色、戦艦ミズーリ(BB-63)は赤色、戦艦ウィスコンシン(BB-64)は緑色でした。
さらなる力を求めて:大戦中の試作砲
18インチ47口径 Mark A
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A
前述した18インチ48口径Mark 1を母体として、1941年に改造されました。
(18インチ≒45.7 cm)
装甲貫通力
距離22,900 m:甲板装甲 159 mm
距離27,900 m:舷側装甲 406 mm
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A
試験途中において、米海軍の関心が戦艦から空母航空兵力に移ったので本砲の研究は中断されました。
【番外編】大型巡洋艦に搭載された主砲
1939年に設計されました。
(12インチ≒30.5 cm)
砲弾重量:SHS 517 kg
USA 12″/50 (30.5cm) Mark 8
最大射程:35,271 m
USA 12″/50 (30.5cm) Mark 8
目標までの到達時間は、9140 mで13.6秒、18,290 mで31.5秒、27,430 mで55.5秒、32,920 mで75.6秒でした。
装甲貫通力
距離0 m:舷側装甲 622 mm
距離4572 m:舷側装甲 542 mm/甲板装甲 13 mm
距離9144 m:舷側装甲 463 mm/甲板装甲 32 mm
距離13,716 m:舷側装甲 395 mm/甲板装甲 54 mm
距離18,288 m:舷側装甲 323 mm/甲板装甲 77 mm
距離22,860 m:舷側装甲 267 mm/甲板装甲 102 mm
距離27,432 m:舷側装甲 231 mm/甲板装甲 130 mm
距離32,004 m:舷側装甲 187 mm/甲板装甲 182 mm
USA 12″/50 (30.5cm) Mark 8
搭載艦:アラスカ級大型巡洋艦
USA 12″/50 (30.5cm) Mark 8
関連項目
前弩級戦艦からポストWW 1艦が搭載した主砲をまとめました。