【巨砲の系譜】米国戦艦主砲まとめ②

らいおんず
米国海軍の戦艦が搭載した主砲についてのまとめです。砲弾重量や射程、装甲貫通力、搭載した戦艦を中心に構成しています。①では前弩級戦艦からポストWW 1艦が搭載した主砲までを、②ではダニエルズ・プランの戦艦から無条約時代に建造された新戦艦が搭載した主砲についてまとめています。

ダニエルズ・プランの戦艦に搭載された主砲

ダニエルズ・プラン…当時の海軍長官ジョセファス・ダニエルズが発案した建艦計画で、日本が推進した八八艦隊計画と同時期に計画されました。なお、計画された艦艇の多くはワシントン海軍軍縮条約により建造中止されました。

1913年に設計されました。

(16インチ≒40.6 cm)

写真は戦艦メリーランド(BB-46)です。

砲弾重量:徹甲弾 957.1 kg
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 1

最大射程:31,360 m
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 1

なお、上記は艦載時の最大仰角における数値です。

目標までの到達時間は、910 mで1.2秒、9240 mで13.4秒、15,820 mで25.7秒、20,940 mで37.1秒、25,055 mで47.7秒、28,620 mで58.1秒、31,360 mで67.8秒でした。

装甲貫通力
距離5490 m:舷側装甲 655 mm
距離8230 m:舷側装甲 564 mm
距離10,920 m:舷側装甲 480 mm
距離14,630 m:舷側装甲 376 mm
距離18,290 m:舷側装甲 292 mm
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 1

搭載艦:コロラド級戦艦
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 1

コロラド級戦艦
日本海軍が建造した長門型戦艦に対抗すべく、テネシー級戦艦の船体に16インチ砲を搭載した戦艦です。主砲は連装4基で前後に2つずつ配置しています。本艦も電気推進式のターボ・エレクトロニック機関を採用しています。なお、本級は4隻が建造されていましたが、ワシントン海軍軍縮条約により3番艦ワシントン(BB-47)は廃艦処分となり、3隻が就役しました。なお、本級は後に主砲を改装しています。

※ 上記の改装した主砲については後述する16インチ45口径Mark 5・Mark 8を参照してください。

1916年に設計されました。

砲弾重量:徹甲弾 954.5 kg
USA 16″/50 (40.6cm) Mark 2 and Mark 3

上記は艦載運用で予定された徹甲弾であり、1015 kgの徹甲弾が要塞砲として転用された砲では利用されました。

最大射程:40,691 m(954.5 kgの徹甲弾において)
USA 16″/50 (40.6cm) Mark 2 and Mark 3

1015 kgの徹甲弾では最大射程が41,240 mとなりました。

装甲貫通力
距離16,549 m:舷側装甲 445 mm/甲板装甲 67 mm
距離20,117 m:舷側装甲 381 mm/甲板装甲 71 mm
距離21,940 m:舷側装甲 356 mm/甲板装甲 81 mm
距離23,774 m:舷側装甲 328 mm/甲板装甲 91 mm
距離25,604 m:舷側装甲 307 mm/甲板装甲 102 mm
距離27,432 m:舷側装甲 279 mm/甲板装甲 114 mm
USA 16″/50 (40.6cm) Mark 2 and Mark 3

上記の数値は954.5 kgの徹甲弾における数値です。

搭載艦:サウスダコダ級戦艦(1920)・レキシントン級巡洋戦艦
USA 16″/50 (40.6cm) Mark 2 and Mark 3

ワシントン海軍軍縮条約により、どちらも建造中止(レキシントン級巡洋戦艦は一部が空母に改造)となりました。よって、本砲は艦載されたことがありません。本砲は要塞砲として転用されました。

※ サウスダコダ級戦艦については、後に同名の戦艦が建造されたため、カッコ内に起工年数を記載して区別しています。

サウスダコダ級戦艦(1920)
コロラド級に続く戦艦として計画されていた戦艦です。主砲は3連装砲を前後に2つずつ計4基を搭載しています。本級は6隻の建造を予定していましたが、ワシントン海軍軍縮条約により全艦が建造中止となりました。
レキシントン級巡洋戦艦
アメリカ海軍が計画した唯一の巡洋戦艦です。主砲は連装砲を4基を搭載する計画でした。防御力重視のアメリカ海軍には珍しく軽防御・高速な設計です。本級は6隻計画され、内4隻はワシントン海軍軍縮条約の影響で建造中止になりましたが、2隻が空母として就役しています。

ダニエルズ・プラン後継艦に搭載が検討された主砲

1920年に設計されました。

(18インチ≒45.7 cm)

※ 本砲は試作段階で開発が終了したため記載が少なく、射程等の記録を発見できませんでした。

搭載艦:なし(試作のみ)
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A

サウスダコダ級戦艦をベースとする本砲を搭載する戦艦が構想されましたが、具体的な建艦計画はありませんでした。

ワシントン海軍軍縮条約による備砲の制限:16インチ以下
ワシントン海軍軍縮条約 – Wikipedia

ワシントン海軍軍縮条約により、戦艦の備砲は16インチ(40.6 cm)以下と定められたため、本砲を搭載する戦艦は条約違反となりました。よって、本砲の開発を継続する理由が消滅してしまいました。しかし、本砲の存在は後に研究される18インチ47口径Mark Aの開発に繋がります。(後述する18インチ47口径Mark Aを参照してください)

海軍休日期における試作砲

16インチ56口径 Mark4
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A

1927年に設計されました。

(16インチ≒40.6 cm)

装甲貫通力
距離26,335 m:舷側装甲 330 mm/甲板装甲 90 mm
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A

ワシントン海軍軍縮条約における備砲の制限:16インチ以下
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A

ワシントン海軍軍縮条約において備砲の制限は16インチ以下とされましたが、口径の制限は課されなかったため、長砲身化による性能向上を目的に本砲は製造されました。

条約型戦艦の構想と既存砲の改良

※ 35.6 cm砲の改良については米国戦艦主砲まとめ①にて解説しています。→(https://matome.eternalcollegest.com/post-2142646782246168801

前述した16インチ45口径Mark 1の改良した砲で、1935年頃に設計されました。

(16インチ≒40.6 cm)

写真は戦艦コロラド(BB-45)です。

砲弾重量:徹甲弾 1016 kg
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 5 and Mark 8

装甲貫通力
距離0 m:舷側装甲 754 mm
距離4572 m:舷側装甲 661 mm/甲板装甲 19 mm
距離9144 m:舷側装甲 572 mm/甲板装甲 39 mm
距離13,716 m:舷側装甲 488 mm/甲板装甲 64 mm
距離18,288 m:舷側装甲 412 mm/甲板装甲 90 mm
距離22,860 m:舷側装甲 349 mm/甲板装甲 121 mm
距離27,432 m:舷側装甲 297 mm/甲板装甲 158 mm
距離32,004 m:舷側装甲 254 mm/甲板装甲 207 mm
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 5 and Mark 8

搭載艦:コロラド級戦艦
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 5 and Mark 8

いずれの戦艦も既存砲からの改装でした。

コロラド級戦艦(近代化改装)
近代化改装を受けたコロラド級戦艦です。写真の戦艦ウエストバージニア(BB-48)は姉妹艦の中で最も艦容が変化した艦で、艦上構造物を一新しています。本級の内2隻は日本海軍による真珠湾攻撃で損傷しましたが、修復の後に姉妹そろって太平洋戦域にて活動しました。

なお計画段階では、コロラド級の主砲は後述するSHSを運用できるように改装するつもりでしたが、予算不足のため断念したそうです。

1941年以降、コロラド級戦艦の内2隻は砲弾の中に染料を追加しました。戦艦コロラド(BB-45)はオレンジ色、戦艦メリーランド(BB-46)は青色でした。なお、戦艦ウエストバージニア(BB-48)は染料を追加しませんでした。

(14インチ≒35.6 cm)

ノースカロライナ級戦艦設計案
ノーカカロライナ級戦艦に搭載が検討された砲です。第2次ロンドン海軍軍縮条約の制限が緩和されたため、本砲が採用されることはありませんでした。詳細は米国戦艦主砲まとめ①を参照してください。→(https://matome.eternalcollegest.com/post-2142646782246168801

新世代の戦艦に搭載された主砲

米海軍が建造した新戦艦を語る上でキーワードとなるのが「SHS」の存在です。

SHS=スーパーヘビーシェル
簡単に言うと従来弾より重たい砲弾
B2001799.html

さらに強力な砲戦能力を目指して米海軍が選択した決定こそSHSでした。

重たく遅い砲弾の方が、遠くでも威力が残るという事になります
B2001799.html

、同じ砲口威力で遅くて重たい砲弾は射程距離でマイナスの要素があります
B2001799.html

砲弾は砲口径に縛られますから、重たいという事は長いということで、これは弾道安定性にマイナスになる
B2001799.html

重たい砲弾は揚弾装置への負担が増し、射撃速度にもマイナスの懸念がある
B2001799.html

つまり、SHSの特徴は…
■メリット
・近距離以遠において同口径の従来砲弾より高威力
■デメリット
・同口径の従来砲弾より射程が短い
・弾道安定性が悪い
・射撃速度が低下する
…となります。

米海軍も砲撃能力の向上を目指すならば、砲弾重量の増加や長砲身化ではなく、大口径化を選ぶべきだと理解していました。この大口径化を突き詰めた例が日本海軍が建造した大和型戦艦です。しかしながら米海軍は大口径化を地理的要因、そして第二次ロンドン海軍軍縮条約のために断念しました。

パナマ運河
写真はパナマ運河、ミラ・フローレス閘門を通過する戦艦ミズーリ(BB-63)です。船体が運河の幅ギリギリに設計されているとわかります。大口径砲搭載には十分な幅を持つ船体が必要不可欠でした。

第二次ロンドン海軍軍縮条約における備砲の制限:16インチ以下
第二次ロンドン海軍軍縮会議 – Wikipedia

当初は14インチ(35.6 cm)でしたが、エスカレータ条項の発動により16インチ(40.6 cm)に緩和されています。

以上のような理由で大口径化を望めない米海軍はSHSを採用するに至ったのです。

1936年に設計されました。

(16インチ≒40.6 cm)

砲弾重量:SHS 1225 kg
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 6

最大射程:33,741 m
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 6

16インチ砲Mark5の徹甲弾と比べて重い砲弾を運用する16インチMark 6が射程の面で優っている理由は、Mark5に比べて最大仰角が15°程上回っている(Mark 5:30°/Mark6:45°)からと推測されます。

目標までの到達時間は、9140 mで14.5秒、18,290 mで32.6秒、27,430 mで56.6秒、32,920 mで79.8秒でした。

装甲貫通力
距離0 m:舷側装甲 755 mm
距離4572 m:舷側装甲 676 mm/甲板装甲 19 mm
距離9144 m:舷側装甲 597 mm/甲板装甲 28 mm
距離13,716 m:舷側装甲 520 mm/甲板装甲 77 mm
距離18,288 m:舷側装甲 448 mm/甲板装甲 109 mm
距離22,860 m:舷側装甲 382 mm/甲板装甲 146 mm
距離27,432 m:舷側装甲 324 mm/甲板装甲 194 mm
距離32,004 m:舷側装甲 266 mm/甲板装甲 268 mm
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 6

搭載艦:ノースカロライナ級戦艦・サウスダコダ級戦艦
USA 16″/45 (40.6 cm) Mark 6

ノースカロライナ級戦艦
米海軍が海軍休日明けに始めて手にした戦艦です。機関には蒸気タービンを採用し、またコロラド級戦艦と比べ機関出力を4倍に増強したため、28ノットの速力を手に入れています。しかし、元々14インチ砲(35.6 cm)を搭載する予定だったため、装甲は14インチ砲防御となっています。主砲は3連装砲が3基で、前部に2つ、後部に1つとなっています。なお、二番艦ワシントン(BB-56)は日本海軍の戦艦霧島と交戦しています。
サウスダコダ級戦艦(1939)
ノースカロライナ級戦艦をベースとして16インチ砲(40.6 cm)に見合う防御力の取得と全長の短縮を行った戦艦です。主砲はノースカロライナ級と同じ配置となっています。一番艦サウスダコタ(BB-57)は日本海軍の戦艦霧島と交戦しています。また、本級は釜石を始めとする日本本土への艦砲射撃を行っています。

なお、ノースカロライナ級戦艦とサウスダコダ級戦艦の各艦は砲弾の中に染料を追加していました。戦艦ノースカロライナ(BB-55)は緑色、戦艦ワシントン(BB-56)はオレンジ色、戦艦サウスダコダ(BB-57)は青色、戦艦インディアナ(BB-58)は赤色、戦艦マサチューセッツ(BB-59)は緑色でした。なお、戦艦アラバマ(BB-60)は染料を追加していませんでした。

1939年に設計されました。

(16インチ≒40.6 cm)

砲弾重量:SHS 1225 kg
USA 16″/50 (40.6 cm) Mark 7

SHSや通常の榴弾の他にも、核砲弾を運用することが可能でした。

最大射程:38,720 m
USA 16″/50 (40.6 cm) Mark 7

砲身が長いため16インチMark 6より長射程となっています。

装甲貫通力
距離0 m:舷側装甲 829 mm
距離4572 m:舷側装甲 747 mm/甲板装甲 17 mm
距離9144 m:舷側装甲 664 mm/甲板装甲 43 mm
距離13,716 m:舷側装甲 585 mm/甲板装甲 71 mm
距離18,288 m:舷側装甲 509 mm/甲板装甲 99 mm
距離22,860 m:舷側装甲 441 mm/甲板装甲 131 mm
距離27,432 m:舷側装甲 380 mm/甲板装甲 169 mm
距離32,004 m:舷側装甲 329 mm/甲板装甲 215 mm
距離36,576 m:舷側装甲 280 mm/甲板装甲 286 mm
距離38,720 m:舷側装甲 241 mm/甲板装甲 357 mm
USA 16″/50 (40.6 cm) Mark 7

搭載艦:アイオワ級戦艦・モンタナ級戦艦(建造中止)
USA 16″/50 (40.6 cm) Mark 7

アイオワ級戦艦
米海軍にとって最後の戦艦になったのがアイオワ級戦艦です。サウスダコダ級戦艦をベースに船体を延長し、高い速力を獲得しましたが、その半面、安定性に不安があります。本級は第2次世界大戦後も退役と再就役を繰り返し、朝鮮戦争・ベトナム戦争、湾岸戦争等で活躍しています。
モンタナ級戦艦
巡洋戦艦的な性格であるアイオワ級戦艦とは異なり艦隊決戦の主力となることを想定した戦艦です。主砲は3連装砲を前後にそれぞれ2基ずつ配置しています。強力な戦艦でしたが、戦術の変異により全艦が建造中止されています。

アイオワ級戦艦は砲弾の中に染料を追加していました。戦艦アイオワ(BB-61)はオレンジ色、戦艦ニュージャージー(BB-62)は青色、戦艦ミズーリ(BB-63)は赤色、戦艦ウィスコンシン(BB-64)は緑色でした。

さらなる力を求めて:大戦中の試作砲

18インチ47口径 Mark A
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A

前述した18インチ48口径Mark 1を母体として、1941年に改造されました。

(18インチ≒45.7 cm)

左側に写っているのが18インチ47口径Mark Aで、その右には16インチ砲50口径Mark 7が置かれています。

装甲貫通力
距離22,900 m:甲板装甲 159 mm
距離27,900 m:舷側装甲 406 mm
USA 18″/48 (45.7 cm) Mark 1, 16″/56 (40.6 cm) Mark 4 and 18″/47 (45.7 cm) Mark A

試験途中において、米海軍の関心が戦艦から空母航空兵力に移ったので本砲の研究は中断されました。

【番外編】大型巡洋艦に搭載された主砲

1939年に設計されました。

(12インチ≒30.5 cm)

写真は大型巡洋艦ハワイ(CB-3)です。なお、当艦は建造中止となりました。

砲弾重量:SHS 517 kg
USA 12″/50 (30.5cm) Mark 8

最大射程:35,271 m
USA 12″/50 (30.5cm) Mark 8

目標までの到達時間は、9140 mで13.6秒、18,290 mで31.5秒、27,430 mで55.5秒、32,920 mで75.6秒でした。

装甲貫通力
距離0 m:舷側装甲 622 mm
距離4572 m:舷側装甲 542 mm/甲板装甲 13 mm
距離9144 m:舷側装甲 463 mm/甲板装甲 32 mm
距離13,716 m:舷側装甲 395 mm/甲板装甲 54 mm
距離18,288 m:舷側装甲 323 mm/甲板装甲 77 mm
距離22,860 m:舷側装甲 267 mm/甲板装甲 102 mm
距離27,432 m:舷側装甲 231 mm/甲板装甲 130 mm
距離32,004 m:舷側装甲 187 mm/甲板装甲 182 mm
USA 12″/50 (30.5cm) Mark 8

搭載艦:アラスカ級大型巡洋艦
USA 12″/50 (30.5cm) Mark 8

アラスカ級大型巡洋艦
条約型巡洋艦よりも強力で、かつ戦艦よりも安価というコンセプトで建造された大型巡洋艦です。主砲は3連装砲を3基、前部に2つ、後部に1つです。細長い船体のため操舵性に問題がありました。当初は6隻の建造が予定されていましたが、竣工したのは2隻だけでした。

関連項目

前弩級戦艦からポストWW 1艦が搭載した主砲をまとめました。

https://matome.naver.jp/odai/2142658343356148801
2015年04月19日