Appleも大敗北…特許を食い物にするパテントトロールの実体

霧生幻
アップルがSmartflash(スマートフラッシュ)社との訴訟で敗れ約5億ドルの支払いを命じられました。Appleが敗れた会社は「パテントトロール」と呼ばれる特許を専門に扱う実体のない企業。世界でも問題になっているパテントトロールの実体をまとめました!

Appleが特許訴訟でまさかの大敗北!630億円の支払い命令

アメリカの訴訟は金額もビックです…!

米アップルは米テキサス州連邦地裁から、米特許ライセンス会社のスマートフラッシュに対し5億3290万ドル(約630億円)の支払いを命じる陪審評決を受けた。
アップルに630億円賠償命令 iTunesの技術巡り 米連邦地裁

問題の特許は、携帯端末のデータストレージおよび決済システムに関連するデジタル著作権管理(DRM)技術などの発明に関するもの。Smartflashは、AppleがiTunes StoreおよびApp Storeで、Smartflashが保有する特許技術を故意に利用しているとして訴えていた。
アップルに5億3300万ドルの支払い命じる評決–特許3件の侵害で

アップルは、特許侵害があるとしても損害額は450万ドルを上回らないと主張したが、同地裁の陪審は、アップルの故意侵害を認め、5億3300万ドルの評決を下した。
米地裁陪審、iTunes特許侵害でアップルに630億円支払い命ず 2015/02/26(木) 12:31:14

スマートフラッシュ側は8億5200万ドルの損害賠償を求めていた。

AppleがSmartflashの特許を侵害しているということを認識していながら、何ら対応を取ることなしに放置していたことに対する懲罰的賠償請求が認められたことが、今回の陪審評決での賠償金額が5億ドル超という巨額な金額に膨らむ要因となった。
米裁判所、iTunes storeでの特許侵害でAppleに対して5億3300万ドルの賠償命令

Appleに勝訴したのは「Smartflash」という謎の会社…
どんな会社なのでしょうか?

このSmarflashという企業、特に製品を作っているわけでもなく従業員もいない…という謎の会社なんです。
【豆知識】従業員のいない会社にAppleが敗訴!総額630億円の支払い命令…ってどういうこと? | iPhoneひとすじ! かみあぷ速報

Smartflashの名前を聞いたことがない人は多いと思います。この企業は特許の取得を専門にする会社で、自社製品を生産や販売を行うことはありません。
特許専門屋にまさかのアップル大敗北!630億円の巨額賠償金が確定

Smartflashは自社では製品の製造開発などは行っていないいわゆる「パテントトロール(patent trolls)」と呼ばれている企業
米裁判所、iTunes storeでの特許侵害でAppleに対して5億3300万ドルの賠償命令

「パテントトロール(特許トロール)」とは?

直訳すると「特許の怪物」です。

パテント・トロールとは、他者(他社)から買収するなどした特許を使い、その特許を侵害していると目をつけた相手に対して、巨額の賠償金やライセンス料を得ようとする企業(または組織・個人)のこと。
【豆知識】従業員のいない会社にAppleが敗訴!総額630億円の支払い命令…ってどういうこと? | iPhoneひとすじ! かみあぷ速報

パテントトロールは、権利行使によって利益を得ようとする者であるため、特許侵害訴訟を提起することを目的として他者から特許権を買収するようなことはあるが、逆に、自らが保有する特許権を利用して製品を製造・販売するようなことは少ないと言われている。
パテントトロールとは (patent troll): – IT用語辞典バイナリ

パテントトロールのターゲットとしては、一つの製品に多数の特許が使用していることが多いハイテク関連企業が特に狙われやすいとされる。
パテントトロールとは (patent troll): – IT用語辞典バイナリ

「トロール」(troll)とは、もともと北欧神話で洞穴や地下等に住む奇怪な巨人または小人を意味し、「怪物」というような意味合いで使われている。また、英語の”troll”には「流し釣り」(トローリング)という意味もあり、「パテント・トロール」はこの意味合いも含んでいるともされる
パテント・トロール – Wikipedia

言葉の起源は2001年に半導体メーカーのインテルが訴訟を起こされたとき、法務部長が訴訟を起こした相手を指して、消極的なイメージを込めて使ったのが最初とされています。
パテントトロールとは – 産業・環境キーワード Weblio辞書

日本ではあまり聞かないけど…アメリカでは問題となっている「パテントトロール」

多くのハイテク企業が頭を悩ませています。

ソフトウエアの特許を買い集め、ハイテク企業を相手取って特許侵害訴訟を起こす「パテントトロール」と呼ばれる手口は、過去20年間にわたり米ハイテク企業を脅かしてきた。グーグルのオンライン広告などを狙って手広く訴訟を起こし、高額の賠償金をせしめることもあった。
〔アングル〕米ハイテク企業狙う「パテントトロール」減少、法律改正が奏功 | マネーニュース | 最新経済ニュース | Reuters

Eolas社がマイクロソフトに勝訴して5億2100万ドル(当時のレートで約625億円)もの巨額の賠償金を獲得したことが広く知られています。
「パテント・トロールとは何か?」をわかりやすく解説したムービー

世界4大会計事務所の1つプライスウォーターハウスクーパースの調査によると、製品などの製造を行っていないにも関わらず特許訴訟を起こす企業・組織を指す「NPE(特許不実施主体)」による特許訴訟の割合は、全体の67%もの割合を占めているとのこと。
特許訴訟の67%を暴利をむさぼろうとする「パテントトロール」が占めているという実態が明らかに

5年前はNPEによる特許訴訟の割合は27%だったため、パテント・トロールがいかに暴利をむさぼっているかが指摘されています。

パテントトロールのターゲットにされると、ライセンス料の請求、多額の賠償金、あるいは、訴訟問題を抱えることによる顧客信頼度の不安といった問題を抱えることとなる。このため、大いに問題視されている。
パテントトロールとは (patent troll): – IT用語辞典バイナリ

同業他社同士では特許が問題になることは少ないが…
パテントトロールには通用しません!

通常、同業の製造業・サービス業の企業同士(例えば自動車メーカー同士や電機メーカー同士)では、同業他社が自社の特許権を侵害している疑いがある場合でも、損害賠償や製造差止などを要求することは少ない。
パテント・トロール – Wikipedia

これは、同業者間ではお互いに同じような技術を使っている可能性が高く、相手側の特許侵害について追求した場合、今度は相手から訴えられてしまう…というリスクがあったりするためなんだそう。
【豆知識】従業員のいない会社にAppleが敗訴!総額630億円の支払い命令…ってどういうこと? | iPhoneひとすじ! かみあぷ速報

そのため特許侵害の訴訟が起きたとしても、ライセンス料の交渉をしたりクロスライセンス契約を結んだりと、お互い円満な解決を図ろうとします(Appleとサムスンは泥沼化している面もありますが…)。
【豆知識】従業員のいない会社にAppleが敗訴!総額630億円の支払い命令…ってどういうこと? | iPhoneひとすじ! かみあぷ速報

クロスライセンス契約とは、特許権の権利者同士が互いに相手の特許権を利用することができるように締結するライセンス契約のこと。通常の場合には、特許として認可された発明を使用する際には使用料が発生するが、クロスライセンス契約を結んだ場合には、特許使用料を支払わずに相手の特許発明を利用することができる。

しかし、パテント・トロールは自らは製品の製造やサービスの提供を行っておらず、他社の特許を侵害するリスクがないので、強気に権利行使することができる。訴えられる企業の側としては、特許侵害で反撃することはできず、クロスライセンス契約による解決を図ることもできない。
パテント・トロール – Wikipedia

この現状に世界では「パテントトロール」対策が進められている!

パテントトロール排除の動きが加速しています。

米Google、キヤノン、米Dropbox、ドイツSAP、米Asana、米Neweggは現地時間2014年7月9日、特許使用料や損害賠償を目的とした不当な訴訟を阻止するための企業連合「License on Transfer(LOT)Network」の設立を発表
Googleやキヤノンら、特許トロール対策の企業連合を結成

LOTネットワークは、会員間の特許ライセンス契約を通して、このパテントトロール訴訟を削減し、パテントプライバティアリングを抑制することを目指す組織だ。
キヤノン、グーグル、SAPらが、特許紛争抑制組織を設立——パテントトロールに対抗

日本の企業も特許訴訟を提起されるケースが増えてきており、訴訟リスクを軽減する仕組みの構築が求められていた。キャノンの発表によると今後も参加企業を増やし、特許防衛のネットワークを広げていく予定であるという。
法務ニュース | 企業法務ナビ

これらの問題はアメリカの政府立法機関でも深刻に捉えられており、新たに2014年7月10日(現地時間)に、下院委員会で悪質な特許訴訟を抑制する通称「TROL法」法案が可決されており、上院でも導入が検討されています。
特許訴訟の67%を暴利をむさぼろうとする「パテントトロール」が占めているという実態が明らかに

TROL法は悪意のある特許使用料を要求する企業を米連邦取引委員会(FTC)が追求することができるものですが、「悪意の証明」の基準が難しいことから論争が起こっている

アップルとスマートフラッシュの訴訟問題、今後はどうなる?

両社、徹底抗戦の構えです!

「Smartflashは製品も作っていないし、雇用者もいない。仕事も創り出していない。アメリカに実態もない。そして、アップルが発明した技術から生まれるロイヤリティを得るため、我々の特許システムを食い物にしている」とアップルのスポークスマンであるKristin Huguet氏は語りました。
特許専門屋にまさかのアップル大敗北!630億円の巨額賠償金が確定

さらに「自社の従業員が長年かけて考案したアイディアに賠償金を支払うつもりはない」として控訴審で争う構えを見せているという。
アップルに5億3290万ドルの賠償金支払い命令 – バテントトロールが勝訴 – WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)

一方で、Smartflashの代表弁護士は、判決に満足しているとした上で、「今回の判決はとても喜ばしいもので、アップルがiTunes StoreやApp StoreのデザインでSmartflashの特許を侵害していたことが確認できた」とし、「最終的には、アップル側の議論も聞いた上で、正しい結果に辿り着いたということだ」と述べました。
特許専門屋にまさかのアップル大敗北!630億円の巨額賠償金が確定

Smartflashは韓国Samsung Electronics、米Google、米Amazon.comに対しても同様の特許訴訟を起こしているという。
Appleに特許侵害の評決、5億3290万ドルの支払命令

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https://matome.naver.jp/odai/2142531712419120701
2015年03月31日