宮崎監督の探求心により生まれた!『崖の上のポニョ』の誕生秘話
■引退宣言していたのに?!
「崖の上のポニョ」の公開が発表された時、多くの方は「え?宮崎監督、引退したんじゃないの?」と疑問に思われたのではないでしょうか。
実は「ハウルの動く城」を公開後、宮崎監督は引退を真剣に考えていました。ところが「ハウルの動く城」で、炎を描く機会を監督は得ました。
ご存知の通り、ハウルと悪魔の契約をしたカルシュファーの炎です。
鮮やかに光り、生きているように炎が、「ハウルの動く城」をより魅力的な作品にしたということは、皆様の記憶にも新しいはずです。
普通ならば、見事な炎の描写ができれば、多くの人が「満足した・・・」と引退しそうなものですが、宮崎監督は「次は水が描きたい」と思い、「崖の上のポニョ」という作品を制作することが決まったようです。
名作「崖の上のポニョ」は、そんな巨匠の飽くなき探求心が生んだ名作なのです。
■動きすぎなキャラクター?
「崖の上のポニョ」を見た時、最初に驚いたのがポニョの激しい動きではないでしょうか。
波の上を駆け回ったり、部屋の中を所せましと駆け回るポニョが描かれています。
そんなポニョの動きに最初はスタジオジブリでも「ちょっと動きすぎなのでは?」という懸念があったようです。
ところが宮崎監督は「海外のアニメでは動き回るキャラクターが描かれている」と、あえて日本のアニメ業界では少ない、チョロチョロと動き回るポニョが誕生したのです。
死後の世界を描いた!?
■久石氏が死後の世界について言及
スタジオジブリの魅力として、世界観のある音楽も挙げられます。そんな音楽の作曲を担当されているのが久石譲氏です。
「崖の上のポニョ」も久石譲氏が作曲を担当しています。
そんな久石氏が「崖の上のポニョ」の楽曲について
「死後の世界や輪廻、魂の不滅など哲学的なものを取り入れながら、そして子供にも理解してもらえる音楽を作るのにはどうしたら良いか。ここに一番悩みました」
と語っています。
あんなにファンジーな話なのにも関わらず、「魂」「輪廻」という言葉が出てくるのは、作品が死後の世界を意識しているからかもしれません。
■放置された車
作中にも、死後の世界を彷彿させるシーンは多々登場します。顕著な例が、宗助の母親であるリサの車が放置されているシーンです。
ホームの人々を助けるために幼い子供を自宅に残してホームへ向かったリサが、車を乗り捨ててどこかへ行く・・・というのはあまり考えられません。
ホームに行く途中に亡くなってしまい、車だけが残されていると考える方が自然でしょう。
■走り回る老人ホームの人々
老人ホームで生活する人々の多くは車いすで生活しています。ところが、宗助とポニョと再会する頃には車いすから降りて走り回っていました。
仏教の考えでは、死後の世界では様々な問題が解決すると考えられています。例えば足が悪かった人は、歩けるようになるのだとか。
死後の世界だからこそ、老人ホームの人々は歩けるようになっていたのではないでしょうか。
■リサのセリフ
再会した宗助に母親であるリサは「今は不思議なことがいっぱい起こってるけど、きっとあとでわかるから」と話します。
「死」について理解できない5歳の息子に対して投げかけた言葉、と考えればあまり不自然な台詞ではありません。