イスラム国殺害脅迫 「日本の事情を知っている人間が協力」手口に変化

SenaKisaragi

後藤健二さんを名乗る男性の音声付き画像が29日朝、インターネット上に公表された。「イスラム国」からとみられるメッセージは、20日に公表された映像と24、27の両日に公表された音声付き画像に続き4回目だが、これまでと大きく異なる点が複数見られる。専門家は背後で情報戦や心理戦が展開されていると指摘している。

29日朝に公表された画像に後藤さんの姿はなく、アラビア語の文章が映し出されるのみだ。

音声では、後藤さんを名乗る人物がサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放を改めて要求し、29日の日没までに応じなければヨルダン人パイロットを殺害するとしている。

「メッセージが事実なら過去にない展開。要求を繰り返すのは人質を躊躇(ちゅうちょ)なく殺害してきたイスラム国として異例の対応だ」と指摘するのは、国際テロリズムに詳しい公共政策調査会の板橋功氏だ。「パイロット救出をめぐり政府への不満がくすぶるヨルダン国内を見据え、パイロットの早期殺害をほのめかす一方、後藤さんと死刑囚の交換のみに言及する難しい条件を矢継ぎ早に出し、さらなる混乱を狙った」とみる。

日本エネルギー経済研究所中東研究センター長の田中浩一郎氏は「過去に自ら設定した殺害期限を変更したことがなかったイスラム国が、今回は変更した」と言及。「どうしても死刑囚を奪回したい一方、パイロット殺害は将来的に協力してくれる可能性があるヨルダンの地元部族を怒らせ、逆に敵に回すことになるため、殺害を避けたい気持ちがあったのかもしれない」と話す。

後藤さんの画像がなかった点については、「あえて後藤さんを出さないことで、関係者を疑心暗鬼にさせようとした」との見方を示している。

後藤さん殺害の期限とされた28日、ヨルダンでは複数メディアから、「死刑囚釈放に合意した」など、交渉進展に関する報道が流れた。田中氏は「いずれも陽動作戦だろう。交渉に応じているふりをし、時間稼ぎを狙ってヨルダン側が流したのかもしれないし、ヨルダン国内の反応を見るためイスラム国側が流したのかもしれない」という。

こうした情報戦は日本にも向けられていると指摘するのは元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏だ。

「29日朝に公表された画像は、朝9時ごろから日本政府が動き出すというタイムスケジュールを意識している。プロデューサーが視聴者の反応を見てドラマを作っているという感じで、日本の事情をよく知っている人間がイスラム国に協力している」と話す。

その上で、「今回の事件を利用し、安倍晋三政権に不満を持つ政治家や知識人が安倍首相批判をすることで、イスラム国を間接的に応援する形になっている。そうした動きにも注意しなければいけない」とも訴える。

板橋氏も「イスラム国は日本を徹底分析し、日本人人質という“カード”を最大限に活用してPRにつなげようと綿密に計算してきた。日没という時間の明示は、過去の動画で『期限』について当惑した日本のメディアを意識したものではないか。冷静な対応が不可欠だ」と強調した。

https://matome.naver.jp/odai/2142259047124614101
2015年01月30日