【第五章】BUMP OF CHICKEN / HISTORY BOOK文字起こし

musicshow
シングルカットされた「アルエ」の応募ハガキにて、抽選で3000名にプレゼントされた、BUMP OF CHICKENヒストリーブックの文字起こしです。デビュー前の情報満載!必見です!

4人の出会い~幼稚園~小学校時代

文化祭~中学時代~

バンド結成~高校時代~

バンド休止~東京組と受験組~

・第五章 「FLAME VEIN」

藤原「『FLAME VEIN』の前に500枚限定のCD作ったりしたんだよね。『アルエ』と『ナイフ』と『リトルブレイバー』の3曲が入ってるやつ」
升「CDってものになったのはそれがそれが初めてだったから、すごい嬉しかった」
藤原「うん。で、『FLAME VEIN』か・・ええと・・あ、冬だった。バズーカスタジオ。中野じゃなかったっけ?」
直井「ああ思い出した。俺ら藤原がヴォーカル録ってる時ケツ出したりしてた(笑)」

藤原「レコーディング自体2日間だったよね。3日目でTDだもん。曲は当時あったもので、一番新しかった曲が『ノーヒット・ノーラン』」
直井「たしかそれはほとんど練習はしてない。・・今考えるとすげーなー」
藤原「プラスチックのケースに入った、出来上がったものを見た時は、ちょっと『おお~』と思った。『FLAME VEIN』ってタイトルはすげーいいよね。演奏中にそれぞれ血管が出てたの。手とか首とか。 必死だったのかもしんないね。なんかマグマみたいなもんが流れてるって、そういう実感があって。それで『FLAME VEIN』になったんだよ。エモーショナルだったね。・・この頃、自分らの音楽活動への希望って、もう全然あったよね。自信だけはずっとあったしね、最初から(笑)」
直井「世界一だって思ってた」

藤原「いろんなバンドと対バンとかしてたけど、同じ畑に誰もいねえと思ってたし」
直井「みんな上手いんだけど、鳥肌が立たない」
藤原「“歌”をやってんのは俺らだけだったの。俺ら以上に“音楽”っていう気持ちでやってる奴らはいないだろうって。大体が『ロック』だとか『パンク』だとか、先人が作った文化とかを上手に表現してるだけじゃんみたいな。でも俺ら下手だなっていうのはあったけど(笑)そのジレンマっつーのはあったけど」

直井「なんかお客さんの反応も別格なの。俺らがステージに立つと、俺らを知らないお客さんでも総立ちに出来た。目が違うっていうのがわかった。明らかにわかった」
藤原「でも観察してる感じのひともいて、それに対して説教したりとか(笑)ヤだなって思うんなら出てけばいいし、出ていかねえってことはいいと思って観察し続けてるんだろ。じゃあギブ・アンド・テイクじゃねえか! 返してこいよエモーションをよお!みたいな」
直井「藤原、ギター・ソロん時に、弾かねえでモニターに足引っ掛けて拳上げてたもん(笑)」

藤原「やっぱさ、ステージで初めて自分と向き合うんだろうな、きっと。ステージ以外の部分でも紛うことなき“俺”で生活しているわけだけれども、やっぱステージは、否が応にも『自分に向ける視線』が高まるわけで。・・やっぱそこで値段をつけられる、審査が行われる・・生きていていいのかどうかのさ。そこでいい子ちゃんぶってもしょうがない。豹変するわけじゃなくて、ストリップ・ショウだよね。服なんか着てても意味がない。ハートの問題」

直井「なんで自信があったのかっていうと、何よりも自分達のバンドを好きだった。あのね、俺その頃、自分たちの音楽を一番聴いてたかもしんない。あの3曲入りのCDを聴いてた。だって何よりもいいんだもん。一番他のバンドと違うなっていうのは、4人が『BUMP OF CHICKEN』っていう音楽に対して、自身とか責任とかってものを、本能的に持ててたとこだと思う。だから感情しかないし。技術とかまったくなかったから。ほんと弾けないのよ、ベースなんて。弾いてるけど(笑)弾いてないし、今考えれば。ただ弦を殴ってるだけ」

藤原「クオリティとしては、それはそれは酷いもんだったと思うよ。だけどお客さんは絶えず来てくれた。で、俺らもそれに甘えないで常に・・だから喧嘩売ってるって言っても過言じゃないくらいのライヴだった」

直井「よく『くだらない唄』で、お客さんがタンポポ出したら・・」
藤原「なんかタンポポ出す奴がいたんだよね」
直井「曲止めて『てめえそんなことしてんじゃねえ!』って。キャーっていう声とか、あと写真を撮る奴とかもいたんだけど、ふざけんなって言って。あと手拍子が始まったら止めた」
藤原「『学芸会じゃねえんだよ!』つって」

直井「いちいちブチ切れてた。でなんか『チャマ頑張れ』って言われて、『お前なんだよ』『音楽頑張れってなんだよ!』って」
藤原「すっげー言ってたね(笑)あと『お前カッコいいとか結婚してとか言ってっけど、どうせ俺ら禿げたら終わりだべ!』とか(笑)」

升「ほんとに静かになっちゃってね(笑)」
藤原「ほんとに『禿げたら終わりだな』って思うんだろうな、お客さんも(笑)」
直井「でもさ、ステージ降りると俺、そんなことなんも言えないよ?怖い人いたら目を合わせず1本路地に入るみたいな(笑)そういう感じの子よ? でもステージに立つと違う。漠然となんだけど、ライヴでしか“本当”でいられる場所はないって思ってた。コンビニでバイトしてる時はサービスする顔。友達と遊んでても、その友達と一緒にいる顔。今は全然考え方違うんだけど、当時はそういうふうに、いくつも自分がいて。で、本当の自分っていうのはステージに立ってる自分だけだって感じだったな。だから何でも言えた。だって最強なんだもん」

藤原「客席から『ちょっと酷くない?』って言われたこともあるよな」
直井「『酷いよ藤くん』って言われてたよね(笑)『ああっ!?』つって、『じゃあこの曲やるよ!』って曲やったりしてた(笑)」
藤原「もう曲で伝えるしかねえって(笑)で、そいつを指差して『わかったか!?』っつったら『まあまあわかった』とか言われて(笑)んで帰ってえらいヘコんだりしてた(笑)」

直井「なんか勘違いかもしれないけど『下北沢』にちゃんと“歌”を確立したのは俺らだべって(笑)俺はそう思ってんだよね。本当の“歌”を伝えたのは俺らだべって、なんかそういう意識はあった。『ロック』をやっている人は腐るほどいたし、下北は昔から音楽の街だと思うんだけど “歌”の街ではなかったと思う。ロック・カルチャーの街。カルチャーがダメとかそういう話じゃなくて、そっちはそっちでめちゃくちゃ素晴らしいと思うんだけど、でも俺らが“歌”の街にした。『FLAME VEIN』を出して。だから下北沢を歩く時だけはすっげー腕を大振りだった。俺の街だと思ってた」

藤原「でも俺は、ちょっと怒りがあった。たいてい『ギターロックバンドの雄』って書かれたじゃん。 それに怒りを覚えた。『なんだよギターロックって』って。たまたま和音を表現したのがギターだっただけで、それがギターじゃなかったとしてもこの曲は同じだけの輝きを持ってはずだって思ったし。俺はギターロックていう言葉がすごい嫌いだった」

直井「俺ら4人で音楽をやって、“歌”をちゃんと伝えてメッセージがちゃんと自分達の中にあって――ってもの以外あんま興味なかった。めちゃくちゃシューゲイザー好きだし、その時はテクノとかバリバリ聴いてたんだけど、俺たちがやる音楽に対してはそれ以外何の興味もなかった。で、藤原、すごい怒ってたよね」
藤原「歌詞カード可愛いですねみたいのに対しても、すごい怒ってた。歌詞カード気が狂うほど絵を書いたじゃん。落書きみたいのが好きだったってのと、ああいうアートワークが流行ってたから、これやっとかなきゃ評価もらえないべみたいな(笑)だから描いたんだけど。だから自業自得もあったんだけど、その通りになってしまったのが。で、次回作はその反動で全部ワープロ打ちの文字にしたわけだけど。・・自分に対する怒りもあったわけ。卑怯な伝え方だなこれって」

直井「俺はその頃、藤原が何を言ってるのかさっぱり分からんかった。昔からDMを手作りでするくらいだから、ちゃんと4人の血が通ってるもの以外何の興味もなかったの。だから藤原が『俺が手で書きたい』って言った時は大賛成だったし。描く作業もすごかったし。 字をちっちゃく書いてて、読めねーよあれ!と思って(笑)いちいち挿絵も描いて。 修正液を持ってなかったから、失敗したらそこ切り抜いてそこ紙を貼って新たな絵を描いて(笑)」

藤原「はははは!アナログだなあ」
直井「そういうもの含め音楽だと思ってたから、ほんとステキって思ってたの。でもそれからちょっとして藤原がどんどん怒ってくの」

藤原「ていうか自分で招いた事なんだよね。それがすごい悔しかった。『ガラスのブルース』の歌詞が本当に響いてるのかな、この猫の外観だけで理解されてるんじゃないかって。――あの猫はね、ネタばらしすると俺、幼稚園や小学校の頃に公文やってたんだけど、それでいい点数取ると 俺のお母さんが赤ペンで『良くできました』ってあの猫の顔を描いてくれたの。その猫なの、モチーフは。だから俺、あれ出したのは意味があったの。自分が認められた瞬間に書いてもらったものだから。 俺はその猫に唄ってほしかったの。だからすごく自分の中で物語があることだったんだけど、それが曲の首を絞めたんじゃねえかって不安があって。だから自分に対する怒りもあったし。」

藤原「・・下北の町を歩いてて声かけてくれるわけじゃん。数あるCDの中から俺らのインディーズCDを選んでくれた奴がさ、顔の露出もまだままならねえ時によくぞ俺を見つけてくれたよって嬉しいんだよ。でもそうなった時に『あの手書きの歌詞カードよかったです』って言われて、すごくムッとしちゃうんだよね(笑)あれはどうしようもない現象だった。ああいうアートワークは二度とやりたくねえなあと、あの当時は思ってた。今はもっと落ち着いて見られるんだけど、あの時はそうでしかなかったし」

升「『FLAME VEIN』が出た時ね、俺、すっごい売れると思ってたの。オリコンとか入っちゃうんじゃねーかって思ってたの、本気でだよ(笑) いいもの作ったって言う自信と、これが売れなくて何が売れるって気持ち。だから『なんで売れなねーのかな?』って思った(笑) 街歩けばみんなワーってなるんじゃないかって思ってたよ。すごい恥ずかしい話だけど(笑)」

増川「俺もそういうふうに思ってた。でも形になったのは嬉しかったな。お店に見に行って、見つけたら絶対目立つとこに置いてた(笑)」
藤原「それはやった、俺も」
直井「俺もやった!」

藤原「でも、あの頃、ちょっと天狗だったと思うよ、正直な話。CD1枚出した程度でね。チケット買うのに行列が出来てたり、テープやCD買うのに行列が出来てたりすると、ちょっとした余裕も生まれちゃったりして。でもすぐに『これは危険だ』って思った。音楽やる以外のところで何を救われた気になってんだ俺は、みたいな。たぶん全員そうだよね。で、やっぱフンドシ締め直さなきゃいけなかった。だから浮ついた気分にクソ食らえって思ったし。そのアートワークのことからも、やっぱ自分の音楽を大事にしたいってのがBUMP OF CHICKENの意思なんだし、そうあるべきだって思ったし」

直井「俺、初めは結構、ベース持ってステージに立って客に俺ってものを知らしめる――BUMPOF CHICKENっていうものを叩きつけるっていう、そこだけだったの。でもやってく中で、俺が考えてなくて藤原がちゃんと細かく考えてることが、伝わってくるの。歌詞カードのことだったりファンに対する姿勢だったりさ。言わなくても伝わってくんの。なんか・・面白いなあと思う。だから俺は3人から刺激を受けて生きてた。そう思うことの連続だった。で、それは今も同じなんだよね(笑)」

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2014年09月06日