米アップルが医療技術幹部を引き抜き、iWatchへの布石か
米アップルはこのところ、バイオテクノロジー業界の幹部を相次いで引き抜いている。
ビジネス向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のリンクトインのプロフィルを見ると、アップルは過去1年で、医用生体工学の分野で名の知られた専門家を少なくとも6人採用。
匿名の2人の情報筋によると、ある著名な研究者が2週間前にアップルに移籍した。人数は明らかではないものの、同社は医療やハードウエアの専門家も複数採用しているという。
彼らの多くはセンサー技術分野を専門としている。これは、ティム・クック最高経営責任者(CEO)が「爆発」しそうだと昨年指摘していた分野だ。
アップルは、クックCEOの公約通り新製品を今年発売するよう迫られている。2010年にタブレット端末「iPad(アイパッド)」を発売して以降、同社は新型の製品を世に送り出していない。
同社が一連の自社株買いや配当金支払いを発表しているにもかかわらず、株価が過去最高値を依然大幅に下回った水準であるのも、新製品が出ないことへの投資家の不満の表れとみられる。
アップルは、日本では「iWatch」の商標を登録している。これは、同社が持つ複数の特許はスマートウオッチ(腕時計型端末)の可能性を示しており、今年2月には歩数を測定したりできるイヤホンの特許を申請した。
デジタル医療機器分野への投資にも力を入れるクレアモント・クリーク・ベンチャーズのパートナー、テッド・ドリスコル氏は「アップルがこの分野で動きまわっているのは間違いない」と指摘。
実際にアップルは、バイタル・コネクト、マシモ、サノ・インテリジェンスといった企業から医用生体工学者を引き抜いている。マシモは指先などにセンサーを装着して動脈血の酸素飽和度を測定する医療機器パルスオキシメーターで有名である。バイタル・コネクトは心拍や体温といった生体データを管理する機器メーカーだ。
アップルはまた、ウエアラブル端末のセンサーを開発するサノ・インテリジェンスのナンシー・ドーティー氏らハードウエアの専門家も引き入れている。スタンフォード大学の起業支援プログラムの医療版スタートXメッドの開発者であるディビヤ・ナグ氏が、ヘルスケア製品開発のため、アップルの研究開発チームに2週間前に加わった。ナグ氏はコメントを求めるロイターの取材に応じなかった。
アップルの作戦、人材を「買収」
医用生体工学の技術開発を目指す「フューチャーメッド・プログラム」の責任者であるシンギュラリティ大学のダニエル・クラフト氏は、iWatchの最初のバージョンでは、血圧や心拍数などを測定できる機能が搭載される可能性があると指摘。
マシモのジョー・キアニCEOは、アップルが引き抜いたなかには、企業の機密情報を入手できた人材もいると指摘。
規制の壁を超えてさらなる進化を
アップルがフィットネス以上の機能を持つ端末を目指すつもりなら、規制の壁にぶち当たる可能性がある。
米食品医薬品局(FDA)は昨秋、スマートフォンが医療機器となるような、もしくは規制される医療機器の付属品としての使用が意図されたようなアプリを主な規制対象とするとした。
肺機能を測定したり、尿を検査したりできるアプリは規制の対象となり得るが、ナイキのフューエルバンドのような活動量などを測定しても医療的なアドバイスはしないものは該当しない可能性がある。
コンサルティング会社エンデバー・パートナーズのリポートによれば、ウエアラブル端末を購入した米消費者の3分の1が、半年以内に端末を使用しなくなり処分している。
一方、米グーグルは異なるアプローチを取っている。同社は3月、ウエアラブル端末向けの基本ソフト(OS)「アンドロイド・ウエア」を発表し、アップルに対して先手を打った。
アップル同様、グーグルも医療技術分野に関心を示しており、涙から血糖値の測定が可能なコンタクトレンズの開発を進めている。
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