ペップ率いるバイエルンがCL敗退。ポゼッションフットボールの時代は終わるのか?

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ジョゼップ・グアルディオラ。愛称ペップ。彼がバルセロナで築き上げ一世を風靡した「ポゼッションフットボール」(チーム全体でパスを回してボールをキープすることで試合の主導権を握る戦術)は、現在のバルセロナの停滞と、バイエルンのチャンピオンズリーグ準決勝敗退によって「限界が見えた」とも囁かれ初めている。

▼バイエルン・ミュンヘン、レアル・マドリーに大敗

UEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL)の準決勝第2戦が29日に行われた。
[CL]大敗敗退のバイエルン…ペップ「失望」「悲しい」 | ゲキサカ[講談社]

連覇を目指したバイエルン(ドイツ)はホームでレアル・マドリー(スペイン)に0-4で大敗。2戦合計0-5で敗退が決まり、3シーズン連続となる決勝進出も逃した。
[CL]大敗敗退のバイエルン…ペップ「失望」「悲しい」 | ゲキサカ[講談社]

チャンピオンズリーグ2連覇の夢はホームで完敗という結果により、ついえた。

▼ミュンヘンでボールを保持していたのはバイエルン

レアル・ホームのファーストレグでも、バイエルン・ホームのセカンドレグでも、ボール・ポゼッションではバイエルンが64%という数字を残した。
レアルに叩きのめされたバイエルン 「ドイツ的なるもの」をいかに取り戻すのか? : コラム | J SPORTS

ボールを持っていたのは、間違いなくバイエルン。だが、それがいっこうにゴールに結びつかず、180分をノーゴールで終えてしまう。
レアルに叩きのめされたバイエルン 「ドイツ的なるもの」をいかに取り戻すのか? : コラム | J SPORTS

▼それに対しレアル・マドリーはカウンターからチャンスを作り出す

「第1戦よりも効率的だった」とアンチェロッティは振り返る。

「ボールを大きく蹴り出すのではなく、グラウンダーで繋ぎ、FW陣のスピードを活かすことができた」
“悪い時のバルサ”だったバイエルン。レアルに大敗、ポゼッションの限界か?(2/3) – Number Web : ナンバー

▼レアル・マドリーがセットプレーで先制し、前半で試合を決めてしまったのは「作戦どおり」

この試合でカギを握ったセットプレイに関して、アンチェロッティは「バイエルンはファーポストに問題がある」と語っている。
レアルCL決勝進出。バイエルンを分析し尽くしていたアンチェロッティ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|World Football

そこを突くために、セットプレイについて入念な準備をしたという。試合はその言葉通り、2度のセットプレイで決まった。
レアルCL決勝進出。バイエルンを分析し尽くしていたアンチェロッティ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|World Football

セルヒオ・ラモスの先制ゴールからわずか4分後、フリーキックに再びセルヒオ・ラモスが合わせると、事実上バイエルンの決勝進出はなくなっていた。
レアルCL決勝進出。バイエルンを分析し尽くしていたアンチェロッティ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|World Football

▼そして今度は高速カウンターが炸裂

自陣からベンゼマ、ベイル、ロナウドと渡って決まった3点目は、まさにカウンターのお手本だ。
“悪い時のバルサ”だったバイエルン。レアルに大敗、ポゼッションの限界か?(2/3) – Number Web : ナンバー

攻撃は自陣深いところでベイルがモドリッチにボールを預けたところから始まった。
レアルに叩きのめされたバイエルン 「ドイツ的なるもの」をいかに取り戻すのか? : コラム | J SPORTS

モドリッチからベンゼマを経由したボールが足を止めずに走っていたベイルに戻り、ドリブルでペナルティーエリアまで持ち込んだベイルからのボールを、まったくフリーで走り込んだロナウドが決めたもの。
レアルに叩きのめされたバイエルン 「ドイツ的なるもの」をいかに取り戻すのか? : コラム | J SPORTS

パスやボールコントロールの正確性。そして、スピード、ダイナミズム。完璧なゴールだった。

▼バイエルンは「悪いときのバルサ」だった?

この2試合のバイエルンは、悪い時のバルセロナを見ているようだった。
“悪い時のバルサ”だったバイエルン。レアルに大敗、ポゼッションの限界か?(3/3) – Number Web : ナンバー

バルサは崩しの最終段階をイニエスタのひらめきやメッシのドリブルでの切れ込みに頼っている。バイエルンの場合はロッベンとリベリーだろう。しかし鍵を握るそのふたりはマドリー守備陣に完璧に抑えられ、バイエルンは攻め手を失った。
“悪い時のバルサ”だったバイエルン。レアルに大敗、ポゼッションの限界か?(3/3) – Number Web : ナンバー

パスは回れど、それが決定機に繋がることはない。ボールはピッチを左右に移動するだけで、崩しきれずにサイドから苦し紛れに上げたクロスはCBに跳ね返される――。
“悪い時のバルサ”だったバイエルン。レアルに大敗、ポゼッションの限界か?(3/3) – Number Web : ナンバー

▼敗戦の将となったグアルディオラ監督のコメントは次のとおり

「ボールは保持できたが、Rマドリードは特別だった。彼らを走らせてはいけなかった」
ペップ完敗「Rマドリードは特別だった」 – 欧州CLニュース : nikkansports.com

「失望したし、負けたのは悲しい。でも明らかな敗戦でもある。アーセナルやマンチェスター・ユナイテッドで通用したことが今日は機能しなかった。今日は数えるほどしかチャンスが作れなかった。ボールをキープして戦うチームが、ボールを持てなければ勝てない」
[CL]大敗敗退のバイエルン…ペップ「失望」「悲しい」 | ゲキサカ[講談社]

▼ボールを保持していたのに、「ボールを持てなかった」とはどういうことか?

グアルディオラはこの日のバイエルンについて「ボールを持っている時のプレイが良くなかった」と語っている。
レアルCL決勝進出。バイエルンを分析し尽くしていたアンチェロッティ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|World Football

4失点という展開でもなお、64%のボール支配率、82%のパス成功率を誇るバイエルンにとって、ボールを持っている時のプレイは他のチームとは比べ物にならないほど重要な意味を持つ。
レアルCL決勝進出。バイエルンを分析し尽くしていたアンチェロッティ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|World Football

そこがうまくいかなかったのは、戦術的な誤りと言える。「責任は私にある」と、グアルディオラは続けた。
レアルCL決勝進出。バイエルンを分析し尽くしていたアンチェロッティ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|World Football

つまりボールを持っていたのではなく持たされていた、パスを回していても決定機はほとんど作れなかったということだろう。

グアルディオラが去り、全盛期が過ぎ去ったバルサが直面している極度のポゼッション志向のマイナス面が、今、皮肉にもグアルディオラのバイエルンにも訪れようとしている。
“悪い時のバルサ”だったバイエルン。レアルに大敗、ポゼッションの限界か?(3/3) – Number Web : ナンバー

▼逆に、レアル・マドリーは「ペップスタイル」との戦い方をよくわかっていた

マドリーの大半の選手は、グアルディオラが率いた全盛期のバルサを相手に、この種のパス回しで翻弄された苦い経験を抱えている。

グアルディオラのバルサと戦い続けたおかげで、「パス回しによる圧倒」に対して、ある程度の免疫ができていたのは皮肉でもある。
グアルディオラが苛立ちを露にした夜。マドリーにあった“ペップ流”への免疫。(2/3) – Number Web : ナンバー

レアル側から見るとバイエルンの弱点は明らかだった。超高速カウンターを得意とするレアルにとって、バイエルンが全体を押し上げることで生まれるスペースが絶好のチャンスになるということは事前に分かっていた。
レアルCL決勝進出。バイエルンを分析し尽くしていたアンチェロッティ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|World Football

「バイエルンのようなポゼッションベースのチームには、ライン間を抑えることが大事だった。そのためには中盤に4枚置く方が都合がよかった」
“悪い時のバルサ”だったバイエルン。レアルに大敗、ポゼッションの限界か?(2/3) – Number Web : ナンバー

アンチェロッティ監督・談。

▼両クラブの選手のコメントにもそのことがよく表れている

ベンゼマは、「バイエルンは偉大なチーム。個人レベルでは、彼らと僕たちは同等だ」と、バイエルンの印象を述べたうえで、「だから、難しい試合になる。相手が作戦を変えてくるかどうかはわからない。彼らがどのようにプレーするのかはわかっている。ボールポゼッションが好きで、パス主体のプレーをする。僕たちは、注意してプレーすることになる」と、展望を語った。
バイエルンの印象を語るベンゼマ「個人レベルでは僕たちと同等」 – 夕刊アメーバニュース

ラーム主将「20分でセットプレーから2失点してしまった。失望は大きい。非常に厳しいよ。前半は戦術的にあまりうまくいかなかった。スペースが空き過ぎていた。行ったり来たりしていただけ。本来の僕たちのプレースタイルではなく、レアルが好む戦い方だった」
グアルディオラ、「私の責任だ」 : FCバイエルン・ミュンヘン : スポーツ特集 : スポーツ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

ロッベン「非常に大きな失望感だ。世界一のカウンターチームと戦ったことがよく分かった。ホームで0-4は残酷だ。しかし顔を上げ、これからも戦い続けなければならない。僕たちにはまだ、一つ決勝が残っているからね」
グアルディオラ、「私の責任だ」 : FCバイエルン・ミュンヘン : スポーツ特集 : スポーツ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

▼バルセロナで一時代を築き上げ、バイエルンでもポゼッションにこだわるペップ。そのことについて、二人の監督はファーストレグが終わったとき(そしてセカンドレグが始まる前に)こう語っている

(グアルディオラ監督)「ひとつ重要なことがある。ボールというのは、縦に急げば急ぐほど、跳ね返ってくるスピードも速くなるんだ。つまり縦に急ぐ攻撃をすれば、カウンターを受けるリスクも高まってしまう。そんな展開では、マドリーは我々より優れている。彼らの強みはカウンターなんだ。ミュンヘンでもマドリーは自陣に引いて、カウンターを仕掛けてくるだろう。前半マドリーは3本もパスを繋げなかった。ボールを持てなかった。信じないかもしれないが、試合を支配したチームを私は誇りに思っている」
グアルディオラが苛立ちを露にした夜。マドリーにあった“ペップ流”への免疫。(2/3) – Number Web : ナンバー

奥がグアルディオラ監督。43歳だ。手前のアンチェロッティ監督もまだ54歳だが。

(アンチェロッティ監督)「(グアルディオラ監督のスタイルは)非常に気に入っているよ。彼はサッカーに新しいものをもたらし、バルセロナで一つのスタイルを生み出した。それをバイエルンでも適用しようとしている。あそこではもう少し難しいようだがね」

「チームには監督のアイデンティティーが現れるものだ。彼の仕事は非常に素晴らしいものだと思う」
ペップのスタイルを擁護するアンチェロッティ – Goal.com

▼ペップは、もちろんまだ何も諦めていはいないだろう。たとえ自らのポゼッションスタイルに翳りが見えたと言われてもだ

だがグアルディオラは「全体的な分析をするにはまだ早い」とし、まずは残るドイツ杯のタイトルへとチームの仕切り直しを誓った。
レアルCL決勝進出。バイエルンを分析し尽くしていたアンチェロッティ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|World Football

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2014年05月01日