茂木健一郎さん 連続ツイート第1119回「小津安二郎は、大切な場所にとっておけばいい」

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★ ★ 連続ツイート ★ ★

連続ツイート第1119回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、今朝、ふと思ったこと。

茂木健一郎@kenichiromogi

おた(1)小津安二郎が、12月12日で没後50年、生誕110年ということで、このところいくつか動きがあった。すでに何度も書いているように、私にとって小津安二郎は「神」で、映画の歴史の中でも、もっとも深く、美しい場所に到達した人であるという認識は、今後も変わることがないだろう。

茂木健一郎@kenichiromogi

おた(2)小津安二郎の映画、たとえば『東京物語』、「晩春」、「麦秋」、「秋刀魚の味」あたりは、小学校や中学校の学校カリキュラムの中で、必ず見るべき作品だと思う。日本人として海外に行く時に、小津の映画くらい観ていないと、恥ずかしい。教育は映画を隅に追いやりがちだが、改めなければ。

茂木健一郎@kenichiromogi

おた(3)小説は、国語の時間などにも読まれる機会が多い。しかし、映画や音楽、アート作品などは、網羅的なカリキュラム上の扱いがないのは問題だと以前から思っている。私の早稲田の国際教養学部での授業では、脳の知見の合間にそのようなcanon(変わることのない価値を持つ)作品を紹介する。

茂木健一郎@kenichiromogi

おた(4)この機会に、小津安二郎作品をまだ見たことがない人は、ぜひ見ていただきたいと思う。本当は、小津作品を常に上映している常打ち小屋があってもいいくらいだと思う。小中学校、あるいは高校のカリキュラムで映画鑑賞を広めれば、経営的にも安定するのではないか。

茂木健一郎@kenichiromogi

おた(5)さて、話は変わる。小津安二郎作品は、映画の歴史の神話になっているが、一方で、私は、新作映画を観るのも好きである。劇場でも、飛行機の中でも見る。今という時代の雰囲気がスクリーンの中から立ち上がってくるし、制作者側の意図、思いだとか、そういうものが伝わってきてクラクラする。

茂木健一郎@kenichiromogi

おた(6)新作映画のできは、定義からしてマチマチである。すべての作品が映画史に残る傑作なんてはずがない。どうしょうもない作品もあるし、破綻しているやつ、おしいやつ、かすってもないやつ、凡庸なやつ、それら全ての映画を、私は愛する。だって、作っている人の一生懸命が、一番大切だから。

茂木健一郎@kenichiromogi

おた(7)そもそも、小津安二郎作品だって、作家の保坂和志氏の話によれば、お母さんとかが劇場に行って、「また笠智衆がへんなことをやって」とか笑って話す、大衆的な、娯楽作品だった(今でもそうだけど)。他にもたくさん作品があって、なぜか、その中で、小津作品だけが抜け出した。

茂木健一郎@kenichiromogi

おた(8)ある作品が歴史に残るcanonになるかどうかなんて、ずっと時間が経って、人々の集合脳の中でその作品に関する情報、イメージが整理、深化して初めてわかるのであって、とりあえずは作ってみるしかない。生のありったけを込めてつくる。映画の神さまが微笑むかなんてすぐにはわからない。

茂木健一郎@kenichiromogi

おた(9)評論家タイプの人が陥りやすい罠は、小津安二郎や、モーツァルト、ビートルズといったそのジャンルの神を基準に、新作を斬ることで、はいはい、わかりました。そんなものと比べられても、ということである。空振りでもいい。とにかくバットを振ることだ。そこに生の楽しみがあるんだから。

茂木健一郎@kenichiromogi

以上、連続ツイート第1119回「小津安二郎は、大切な場所にとっておけばいい」でした。

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茂木健一郎@kenichiromogi

これ、なつかしい。@fukuhen さん、ありがとうございます! pic.twitter.com/4gYsOFJi84
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2013年12月15日