Music of the Spheres (宇宙の音楽?) 考察

sugimucor
現役プロ・ユーフォニアム奏者/ラノベ作家の遊歩新夢さんによる、Music of the Spheres の考察です。
『考察 Music of Spheres (Philip Sparke)』
開演 21時45分
入場料 きんいろカルテット! 買ってねw
準備ちう。。。
【ご注意】
この考察はあくまでも一個人の意見であり、異論もあるかと思います。
Philip Sparke 氏の公式見解ではないということをご了解ください。
なお、私はアマチュア天文家でもありますので、その辺も加味して考察しております。
さて、スパークの名曲 Music of Spheresは、原曲はブラスバンドのためのオリジナル曲で、2004年のヨーロッパ選手権で初演されました。
当時名門だった、ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンドのために委嘱された作品ですね。

英国式ブラスバンド(英: British-style brass band)とは、サクソルン属の金管楽器と直管楽器のトロンボーン、打楽器で構成される金管バンドである。
英国式ブラスバンド – Wikipedia


https://matome.naver.jp/odai/2138648624041560201/2138648850242956503
手元にある原曲版スコアをもとにお話をすすめます。
まず冒頭部の T=0
これは一体何を意味するのか。
演奏した方は、もちろん調べましたよね?
これは時間の流れがありませんよ。
Time = 0 を示します。
ビッグバン以前は何もありません、という意味ですね。
虚無を表す12小節。
テナーホーンの朗々としたソロが印象的なところ。
ビッグバンの前になにがあったかは、今も謎ですが、このテナーのソロは、宇宙開闢を告げる歌として、テーマを奏でます。
そして、ビッグバン、レターネーム「13」から、宇宙が始まります。

注;レターネーム=練習番号のこと。

爆発によって放たれた様々なエネルギーが乱舞する様を音楽で表しています。
金管バンドの譜面は、それはもう恐ろしい物にw
ここから「170」まで、粒子が虚空を飛び交うかのごとく、五線譜上を音符が飛び回ります。
ちなみにユーフォは、High Db に始まり、High Dbに終わると言ってもいいくらい過酷な曲です。
「170」まで奔放に飛び回った音楽は、ここから冷却期に入ります。
視点は、ビッグバン初期からの大きな宇宙視点から、少しコンパクトな、太陽系視点になります。
「170」の副題は、The Lonley Planet
さて、これはどういう意味か解りますか?
中沢君がいないかw
この孤独な惑星、は、地球の事ですね。
いろんな組成が冷えてきて、惑星を形成しはじめるシーンがここです。
冒頭のテナーホーンのソロを、今度はバリトンが奏でます。
そして、そこにひっそり付き添い、ユーフォが同じフレーズを追いかけます。
このバリトンが地球で、ユーフォは誰でしょうねー。
徐々に冷え、地球は己を嘆きはじめます。
「187」からコルネットがソロでそれを表現します。いいメロディなんですこれが。
ソラシ♭ラドー ソラシ♭ラドーシ♭ラソラミミド#ド#レラー ってやつですね。

@c_l_o_z

@Sir_Euphonium_Z 吹奏楽版ではソプラノサックスのやつですねー。
俺は何で一人なんだろう。
この虚空に、一人ぼっちなのかよ。
と、コルネットが切なく歌うのですが、実はいるのです。ユーフォがそっと寄り添います。
俺、いるよ、ここにいるよ、って。
おそらくこの曲一番の名シーンがこの辺ですね。
徐々に高まっていく二つのメロディーが、195小節目で合流し、切なくユニゾンを奏でます。
そう、ユーフォは月だったのです。 pic.twitter.com/RmkZy76FkH
盛り上がりを見せ、星間を吹く風の奔流の中、ソプラノコルネットが高らかに歌い上げます。そして、各楽器のソロへとなだれ込むのですが、なんとなく、これは太陽系の惑星たちのざわめきを表現しているのじゃないかな、と思ったり。
ソロが終わると、一転速いテンポになります。「221」からは、Asterods & Shooting Star /小惑星と流れ星、のシーンです。
この小惑星、というのは、火星と木星の間にある小惑星帯を指すと思われます。
小惑星帯には多くの岩石が無秩序に見えて、実はしっかりとした軌道を持って動き回っています。
細かいフレーズは流星を、低音のおおらかなフレーズは小惑星が迫っては去っていく感じを醸し出しているのではないでしょうか。
このあたりから、なんとなくボイジャーに乗っているかのような視点になり、宇宙の海を漂っているようなおおらかなフレーズが現れますが、楽譜をよく見ると、気づきますよね?
二拍子と三拍子が同時に記載されているようなフレーズになってることを。
「300」辺りからこの手法が目立ってきます。
ここからは外宇宙。
中世に、近代天文学の基礎を築いた人々が夢を追った空間です。
そう、この二拍子と三拍子の複合要素こそが、
ケプラーの第三法則
第3法則(調和の法則) 惑星の公転周期の2乗は、軌道の長半径の3乗に比例する。 なのです!
こんなところに物理学の法則を隠しちゃうところが、スパークのすごいところ。
音楽で宇宙の法則を表現しているシーンなのですね。「411」くらいまでこれが続き、この曲最大の難所ともいえます。
「411」の副題はMusic of the Spheres
曲のタイトルと同じですね。ここが、一番スパークがやりたかったシーンでしょう。
これは、ピタゴラスが提唱した「Music of the Spheres」をもとに構成されているシーンです。
詳しくやると私も死んでしまうので、簡単に言いますと、ピタゴラスの提唱は、惑星の距離と音程には一定の法則がある。でも、それはピタゴラスにしか聞こえない、とか言う哲学的見地に基づいて研究された宇宙の構成についてのお話です。
そのピタゴラスの提唱した、倍音や弦の振動する原理などをもとに音を並べたのが、このシーンですね。
確か、じっくり研究していくと、未知との遭遇のUFOとの交信もこの原点が使われてるとか何とか(暇な人は調べてみてください
そして、ベルトーンが終わると、「422」からHARMONIA が始まります。
美しいメロディです。
これぞブラスバンドというシーンです。
このHARMONIAが、実際のところ、この曲が描く宇宙の終わりです。
美しいハーモニーで大団円を迎え、調和の音楽が高らかに奏でられます。
宇宙は全て調和によって成り立っている、ということです。
ところが「457」から、一転激しい音楽で終曲へと向かっていきます。
タイトルは UNKNOWN つまり、未知、です。
中世のピタゴラスの世界では、肉眼で見える土星から向こうは何があるかわかりません。
つまり、地平から見える宇宙は、土星までの空間、と思われていました。
今の天文学ではなく、当時の天文学でいう所の未知。
「俺たちの戦いはまだこれからだ」が、このシーンですね。
冒頭のビッグバンと同じグリッサンドが激しくならされ、ムチとともに、火花を散らすかのごとく激しい終曲へと向かいます。
ここで、この曲の物語は唐突に断ち切られます。
ここから先は、みんなで考えてね、なのでしょうかw
つまり、宇宙の音楽、というほど、宇宙の広いところまでやってないのです。
ついでにSpheres には宇宙という意味はなく、球という意味が強いです。

https://matome.naver.jp/odai/2138648624041560201/2138648897143178003
参考画像:天球
古代の人々が、大地から空の半円を見上げ、その宇宙に想いを馳せた。
だから、この曲は天球の音楽、だと思うのです。
宇宙の音楽、は定着してしまいましたが、私の中では誤訳です。
とまあ、簡単な考察ではありましたが、けっこう物語のある曲なんで、説得力がありますね。
自分のバンドでやるなら、まずは天文台に泊まって座学と観測から始める予定になってますがw
まあ、フィリップ・スパークは天才って事ですw
https://matome.naver.jp/odai/2138648624041560201
2013年12月08日