バングラデシュで横行している偽薬・粗悪薬ビジネス

satomono
バングラデシュは実は薬が誰でも手軽に入手できる医薬国です。これは今後のバングラデシュを支える基盤にもなるものです。しかし、光もあれば闇もあり、この国には偽薬が出回る問題が後を絶ちません・・・。

実は医薬品市場が強いバングラデシュ

バングラデシュは医薬品製造業が結構盛んで、縫製業に次ぐくらい伸び盛りの産業
バングラデシュの医薬品製造業|宏子のバングラデシュ生活のブログ

衣料品の輸出が有名なのは既知だと思いますが、次点に医薬品、そしてIT産業などが目立ちはじめています。

「バングラにはろくな病院がない。」と思われている方もいるかもしれませんが、実はかなりレベルの高い病院がいくつかある
お世話になっている病院とお薬 :: バングラデシュ観光案内所/Bangladesh Tourist Information|yaplog!(ヤプログ!)byGMO

でもレベルの高い病院は少ないのが現状です。また、医薬品が盛んなため、医療器具は充実していないが薬はあるよという病院がわんさか・・・。

バングラデシュの医薬品市場は、国内市場シェアの9割を地元企業が占め、ほぼ自給を達成している
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Report/2012/pdf/B112_ch4.pdf

医薬品規制の緩い国内市場、国際的な知的財産権保護協定からの免除等の条件のもとで達成されてきた
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Report/2012/pdf/B112_ch4.pdf

2016年まで低所得国の国は医薬の特許料を免除して薬を開発できるという国際ルールに則り、政府主導で医療市場拡大を行ってきました。低価格高品質の医薬品は目を見張るものがあります。

バングラデシュでは殆どどんな場所でも薬が手に入る。しかもその多くは低所得層にも手が届く価格
何故、バングラデシュで強い製薬産業が育ったのだろうか?(その1) バングラデシュ物語

各種のビタミン剤、痛み止め、抗生物質までが薬局で処方箋なしで手に入ります。また低価格のため、貧民層も手軽に利用できます。これはバングラデシュの良い点です。

しかし、粗悪な薬品も出回っている

地方の名の知れない製薬会社が地方で粗悪品を製造・販売している
201212 バングラデシュ物語

偽造医薬品を販売している非認可の薬局が10万以上あると推定されている
Rules drafted to check sale of fake drugs :: Financial Express :: Financial Newspaper of Bangladesh

インド、パキスタン、中国、タイの国境沿いにある数多くの医薬品工場で生産されている
SecuringIndustry.com – Bangladesh carrying heavy counterfeit medicine burden

2009年7月、偽のパラセタモール錠剤の摂取量は28の子供の死をもたらした
Trade in fake medicines

解熱剤です。

2013年9月28日、28店103人が偽薬製造、販売容疑で拘束された
Expired, fake medicines flood Ctg markets

2013年11月現在、改善はなく状況はより悪化しており、違法な医薬品の製造、販売は今後も継続するだろう
IRIN Asia | Bangladesh’s battle with fake and low-standard medicine | Health & Nutrition

調査結果

5,000サンプルで試験を行った結果300サンプル(全体の6%)が偽造、叉は低品質な薬だった
SecuringIndustry.com – Bangladesh carrying heavy counterfeit medicine burden

2010年の政府調査

2500サンプルで試験を行った結果300サンプル(全体の12%)の薬が偽造、叉は低品質な薬だった。 よく使用される抗生物質や救命薬も含まれていた
Rules drafted to check sale of fake drugs :: Financial Express :: Financial Newspaper of Bangladesh

2012年の非政府組織、公衆衛生医薬品検査研究所(PHDTL)が調査。調査方法の違いもありますが、2年間で2倍に急増している事がわかります。

偽薬を飲むと身体に有害な物質が少しずつ蓄積し内臓にダメージを与える
IRIN Asia | Bangladesh’s battle with fake and low-standard medicine | Health & Nutrition

水で作っただけのような無害なものもありますが、期限切れ、粗悪物質などもあります。

どうして偽薬が出回るのか

警察や政府関係者が無関心、または監視不足のためにこれらの薬は大手を振って販売されている
Trade in fake medicines

政府の薬物検査機関が2つあるが全く足りていない。需要に追いつくためには少なくとも10以上の試験所が必要
Trade in fake medicines

低所得者は国立病院に通えないため、外部から薬を買うしかない
Trade in fake medicines

医師免許のない販売員の言われるままに薬を買うわけです。

真面目な企業ほど馬鹿を見る

販売者は低コストで製造し偽商品を販売することで大きな利益を上げることが可能
IRIN Asia | Bangladesh’s battle with fake and low-standard medicine | Health & Nutrition

バングラデシュの医薬品評価は、周辺国と比べて低い水準にある
Bangladesh Pharmaceuticals and Healthcare Report Q4 2010

期限切れの薬に新しい有効期限が書かれたラベルを貼り付けて販売する。その結果、認可されている多くの製薬会社は評判の低下とビジネ損失を受けた
Expired, fake medicines flood Ctg markets

ちゃんとした製薬企業が不利益を被るという問題のある産業構造と化しています。(と言ってもちゃんとした企業の方が当然多いですよ。)

そんなバングラデシュ、医薬品輸出産業も盛ん

輸出額は右肩上がりで、2012年度には5,000万ドル近くの外貨を稼いでいる
何故、バングラデシュで強い製薬産業が育ったのだろうか?(その1) バングラデシュ物語

医薬品輸出は生産全体の5%程なので、市場としては小さいですが、今後も増加していくだろうと言われています。

バングラデシュの製薬会社が安価な医薬品をフィリピンに提供することで、現在販売されている医薬品の価格が35%-40%引き下げになる
バングラデシュ、安い医薬品をフィリピンへ提供 – フィリピンニュース, 現地生活 最新情報発信

このように、バングラデシュは価格を武器に輸出を行っています。

バングラデシュ医薬品の輸出先は、殆どが医薬品に関する規制の弱い、あるいは規制のない国々である。
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Report/2012/pdf/B112_ch4.pdf

バングラデシュは72カ国に85項目の医薬品を輸出。 50〜60%の製薬会社は標準の医薬品を輸出しているが、低品質の医薬品をそのまま輸出している製薬会社もある
Trade in fake medicines

世界展開を向けた医薬産業を目指すために

粗悪品問題があるものの、ちゃんとした企業の作る薬は高品質、安価であり今後の国内販売、海外輸出も大きな可能性を秘めています。

バングラデシュの処方薬約及び店頭販売薬の売上高は上がっており、今後も成長が見込まれる
Bangladesh Pharmaceuticals and Healthcare Report Q4 2010

偽造薬や期限切れの薬を販売している業者の摘発を定期的に行う
Medicine traders’ shutdown today :: Financial Express :: Financial Newspaper of Bangladesh

政府は偽薬を防ぐため「2013年薬物ルール」を起草している(まだ国会には提出されていません。)
IRIN Asia | Bangladesh’s battle with fake and low-standard medicine | Health & Nutrition

安全な医薬品へのアクセスを今後さらに高めていくためには、政府の関連規制の改革や執行力強化も喫緊の課題
201212 バングラデシュ物語

製薬業の研究開発拠点を集積するための特別工業地区を建設しており、今年中に完成する予定
何故、バングラデシュで強い製薬業が育ったのだろうか?(その2) バングラデシュ物語

世界基準の臨床研究組織や、ジェネリック医薬品製造に必要な生物学的同等性実験の施設を作る事も過大として上がっています。

偽薬問題はバングラデシュだけではない

バングラデシュは医薬産業が盛んなため、偽薬問題も大きく見えるのですが偽薬品は多くの発展途上国で常に問題となっています。

東南アジア7カ国、南アフリカ21カ国のマラリア薬を調査したところ、3分の1は低品質か偽の薬剤のため治療に失敗する
BBC News – Third of malaria drugs ‘are fake’

薬でほぼ確実に治る病気ですが、2012年には655,000人が死亡しています。ほとんどの原因は貧困で薬が買えないためですが、この偽薬のせいで亡くなった方も多数いるようです。

ナイジェリアで歯が生える薬を使用して80人以上の乳幼児が死亡した
SecuringIndustry.com – Nigerian court arraigns men in tainted teething syrup case

医薬品の品質のない大規模研究は、中国やインドで行われていない
BBC News – Call for global crackdown on fake medicines

2008年から2010年にかけて、中国から各国に輸出された医療品の60%は規格外として押収された
Medicines fake, illnesses real

2012年に中国政府も本気をみせ大規模な摘発を行ったため、現在は減っています。

スイスのチューリッヒ空港で、中国大手製薬会社ファイザーの精神安定剤ソラナックス(Xanax)の偽薬計100万錠が摘発
中国の偽薬100万錠、スイスで押収 「まったく有効成分がない」 – (大紀元)

減ってると言っても、無くなってはいません。10月19日のニュースです。

関連リンク

バングラデシュの製薬産業について背景や展望が書かれています。偽薬については一切触れていませんが、偽薬が出回りそうな背景はこちらを読む事で見えてくるものがあります。

https://matome.naver.jp/odai/2138368757510004701
2013年11月11日