村上春樹が挙げる最も影響を受けた3冊の本とは??

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今や作家として世界的な人気を誇る村上春樹。その創作の原点とも言える自身が最も影響を受けた3冊の本についてまとめてみました。村上春樹の小説と3冊の本との関連性はどのようなものなのでしょうか?影響を受けたという3冊の本から村上春樹の作品に迫りました。

村上春樹が挙げる最も影響を受けた3冊の本

もし「これまでの人生で巡り会ったもっとも重要な本を三冊あげろ」と言われたら、考えるまでなく答えは決まっている。この『グレート・ギャツビー』と、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』と、レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』である。
村上春樹「翻訳者として、小説家として—訳者あとがき」、スコット・フィッツジェラルド、村上春樹訳『グレート・ギャツビー』、2006、中央公論新書

村上春樹自身が翻訳を行った「グレート・ギャツビー」のあとがきからの引用です。
どの本もおしなべて名作とされる小説です。

上記の3冊の本は、どれも村上春樹が「読書家としての人生、作家としての人生には不可欠な小説」と呼ぶほどに深く影響を受けたようです。

グレート・ギャツビー

スコット・フィッツジェラルドによる1922年のニューヨーク郊外の高級住宅地を舞台にした小説。
フィッツジェラルドの代表作にして、英米文学の名作としても名高い。

村上春樹が最も影響を受けた作品に挙げ、自身でも翻訳を行っている。

あらすじ

絢爛豪華な邸宅に贅沢な車を持ち、夜ごと盛大なパーティを開く男、ギャッツビーがここまで富を築き上げてきたのは、すべて、かつての恋人を取り戻すためだった。だが、異常なまでのその一途な愛は、やがて悲劇を招く。
『グレート・ギャッツビー』(フィッツジェラルド/小川高義 訳) – 光文社古典新訳文庫

主人公ニックの視点から、謎の人物ギャツビーがかつての恋人を取り戻そうと奮闘し、後に破滅して行く様子が描かれています。

村上春樹作品との関連性

『ノルウェイの森』の作中にも『グレート・ギャツビー』は登場します。

『ノルウェイの森』はアメリカ社会の物語ではない。にもかかわらず、創作の基調、作風、そして創作の手法においては、アメリカ文学とりわけフイツツジェラルドの 『グレート・ギャツビー』に深く影響される痕跡が確認される。
徐谷克(2012)「村上春樹『ノルウェイの森』における 『グレート・ギャツビー』の受容 一直子とギャツビーとの比較を通して-」

(1 )志においては高貴であり、 (2)行動スタイルにおいては喜劇的であり、 (3)結末は悲劇的であるという点に共通性があるようです。

今までとくに自覚はしなかったけれど、あらためて考えてみたら、『ギャツビー抜き』のニックが(とくに望みもしないまま)自前の冒険に乗り出すというのが、僕のある時期の小説の構図みたいになっていたのかもしれませんね
asahi.com: 村上春樹さん『グレート・ギャツビー』を新訳 – ひと・流行・話題 – BOOK

新訳を手がけた際の村上春樹のコメント。

「とくに望みもしないまま自前の冒険に乗り出す」のは、初期の代表作「羊をめぐる冒険」や「ねじまき鳥クロニクル」にも共通しています。

映画化には村上春樹の影響が!?

2013年には「華麗なるギャツビー」のタイトルで映画公開され、その豪華絢爛な衣装は話題になりました。

「当初、スタジオは『原作がアメリカ以外で知られていない』と企画に消極的だった。そこで私は『日本では村上春樹さんが翻訳をしている』と説得したんだ」
バズ・ラーマン監督「華麗なるギャツビー」は村上春樹なしにはありえない? : 映画ニュース – 映画.com

上記のコメントはメガホンをとったバズ・ラーマン監督のもの。
スタジオの説得にも名前が挙がる村上春樹!!すごい!!!

カラマーゾフの兄弟

19世紀のロシア文学を代表する小説家、フョードル・ドストエフキーによる長編小説。
文豪ドフトエフスキーの遺作にして、「罪と罰」、「白痴」、「悪霊」、「未成年」と合わせて、後期五大作品の1つと呼ばれる。

とりわけ文芸理論や小説理論の領域では、ドストエフスキー抜きに物事を考えることはできない。彼の小説はいまなお小説のというジャンルの先端に位置しているといっていいだろう。
柄谷行人・浅田彰・岡崎乾二郎・奥泉光・島田雅彦・絓秀実・渡部直己、「必読書150」、2002、太田出版

あらすじ

父親フョードル・カラマーゾフは、圧倒的に粗野で精力的、好色きわまりない男だ。ミーチャ、イワン、アリョーシャの3人兄弟が家に戻り、その父親とともに妖艶な美人をめぐって繰り広げる葛藤。アリョーシャは、慈愛あふれるゾシマ長老に救いを求めるが……。
『カラマーゾフの兄弟1』(ドストエフスキー/亀山郁夫 訳) – 光文社古典新訳文庫

「思想小説」「宗教小説」「推理小説」「裁判小説」「家庭小説」「恋愛小説」としても読むことができる、様々なテーマを持っている要約の難しい物語です。

村上春樹との関連性

『カラマーゾフの兄弟』は、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『ねじまき鳥クロニクル』にも登場します。

僕もこれまで実にいろんな本を読んできたけれど、いちばんすごい本というと、この『カラマーゾフの兄弟』をあげないわけには行かないと思います。
カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)

偉大な作家ですね。ドストエフスキーを前にすると、自分が作家であることがむなしくなってきます。
カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)

『スメルジャコフ対織田信長家臣団』での、読者とのメールでのやり取りからの抜粋です。
『カラマーゾフの兄弟』をはじめ、ドフトエフスキーにいかに影響を受けたかを物語るエピソードです。

ちなみにスメルジャコフは『カラマーゾフの兄弟』の登場人物の1人です。

多声性(ポリフォニー)とは、それぞれの登場人物が作者の代弁をするのではなく、それぞれの人格を持っているかのように語ることです。

「1Q84」は全部3人称で書いたが、長編の3人称はすごく難しい半面、たくさんのことを書ける。どこにでも行けるし、誰にでもなれる。幾つものミクロコスモスが反応し、総合小説という僕のやりたかったことのフォーマットができました。
i時事ドットコム:村上春樹氏 公開インタビュー 「1Q84」は総合小説

近年、村上春樹が口にする「総合小説」は、様々な人物が出てきて、それぞれの物語を持ち寄り、それが複合的に絡み合って発熱し、新しい価値が生まれる小説です。
村上春樹は、そういったドストエフスキーの多声性(ポリフォニー)を持つ小説を目標としているようです。

ロング・グッドバイ

レイモンド・チャンドラーによるハードボイルド小説。
私立探偵フィリップ・マーロウを主人公にした6作目の作品。
チャンドラーの最高傑作と称されることが多い。

「グレート・ギャツビー」同様に、村上春樹自身でも翻訳を行った作品。

あらすじ

私立探偵のフィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には悲しくも奥深い真相が隠されていた……
ロング・グッドバイ:ハヤカワ・オンライン

村上春樹との関連性

チャンドラーは僕にとって最初から大事な意味を持つ作家であったし、その重みは今でも変わらない。小説というものを書き始めるにあたって、僕はチャンドラーの作品から多くのものごとを学んだ。
村上春樹「訳者あとがき 準古典小説としての『ロング・グッドバイ』」、レイモンド・チャンドラー、村上春樹訳『ロング・グッドバイ』、2009、早川書房

特に「世界の実相にまっすぐに切り込んでいくというそのストイックな前衛性」を学んだようです。

村上春樹の小説で魅力的なのは、独自の視点で世界を見る主人公のキャラクターではないでしょうか?

フィリップ・マーロウという存在は、生身の人間というよりはむしろ純粋仮説として、あるいは純粋仮説の受け皿として、設定されているのではあるまいか
村上春樹「訳者あとがき 準古典小説としての『ロング・グッドバイ』」、レイモンド・チャンドラー、村上春樹訳『ロング・グッドバイ』、2009、早川書房

あえて生身の人間であるかのように自我を描かずに、「視点」によって世界を切り取る仮説の存在として主人公マーロウが描かれていることを村上春樹は指摘します。
これは村上春樹作品に登場する主人公とも共通する点です。

https://matome.naver.jp/odai/2138270852264823301
2013年12月16日