(ぶ~~~~ん)の強弱に注目して読み進めても面白いかもしれません
1
(ぶ~~~~ん)男「だねぇ」
セン「そろそろお別れですね」
男「だねぇ」
セン「寂しいですか?」
男「いや別に」
セン「そうですか」
2
(ぶ~~~~ん)セン「ご主人様」
男「ん?」
セン「私がこの家にきて」
男「うん」
セン「どれくらいになるのでしょうか」
男「7年くらいかな」
セン「そうですか」
男「早いものですね」
セン「ですね」
3
(ぶ~~~ん)セン「今日はわりと涼しいですよね」
男「うん」
セン「私、休んだほうがいいですか」
男「いや」
セン「?」
男「もう少しだけ、お願い」
セン「・・・」
セン「わかりました」
4
(ぶ~~~~ん)セン「ご主人様」
男「ん?」
セン「最近、肩というか首というか」
男「うん」
セン「少し違和感があるのです」
男「それは困りましたね」
セン「はい困りました」男「週末に電気屋さんで見てもらいましょう」
セン「ありがとうございます」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/27(水) 15:25:30.53 ID:yh4wdlP3O
ここから扇風機に欲情しておちんちん切断ですねわかります
5
(ぶ~~~ん)男「そういえばさ」
セン「はい」
男「性別ってどっちなの」
セン「男性か、女性かということですか」
男「うん」
セン「・・・う~ん、すみません」
男「わかんない?」
セン「すみません・・」
男「そうですか」
6
(ぶ~~~ん)男「それならさ」
セン「?」
男「自分の好きなほうに決めなよ」
セン「好きなほうですか・・・」
男「うん」
セン「う~~ん、悩みます」
男「気楽に気楽に」
7
(ぶ~~ん)男「今晩はやけに蒸し暑いですね」
セン「そうですね」
男「申し訳ないんだけど」
セン「はい」
男「『強』にしてくれる?」
セン「いえ、今は『強』ですよ」
男「そうですか」
セン「そうですよ」
男「ではおやすみさい」
8
(ぶ~~ん)セン「ご主人様」
男「ん?」
セン「ご主人様は昔と違って、」
男「うん」
セン「働いてお金を稼いでますし、」
男「うん」
セン「クーラーなどを買われた方が、」
男「うん」
セン「涼しくてよいと・・思うのですが・・・」
男「・・・」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/27(水) 15:54:17.51 ID:fzNmomaA0
ブゥーン
γ ̄ヽ
r’-‘| O | ~
`’ーゝ_ノ ~
| ,| ~ (Д`) なあ……俺のこと好き?
,,-/ ̄|、 ( )ヽ
ヽ__シ へ∧ノ
ブンブンブン
γ´`三´ ̄ヽ
| O 三 O |
ゝ__,,三、__ノ
| ,| (‘A`) ……
,,-/ ̄|、 ( )ヽ
ヽ__シ へ∧ノ
>>19
ワロタ
9
(ぶ~~ん)男「確かにね」
セン「・・・!」
男「クーラーだって買えるし、」
セン「・・・はい」
男「そっちの方が涼しいな」
セン「そ、そうですよ。家電製品の私が保証します」
10
(ぶ~~ん)男「・・でも、」
セン「?」
男「人間には『好み』っていうのがある」
セン「・・・?」
男「『俺はこっちのほうが好き』」
セン「・・・」
男「・・それじゃだめかな?」
セン「い、いえ・・・」
11
(ぶ~~ん)男「じゃ、会社行ってくるよ」
セン「はい、行ってらっしゃいませ」
男「うん」
(がちゃ)
(ばたん・・・)
セン「ご主人様・・・」
セン「ありがとうございます・・・」
セン「でも、もうすぐ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もうすぐ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
12
(ぶ~~ん)(がちゃ)
男「ただいま」
セン「お帰りなさいませ」
男「・・・」
セン「どうされました?」
男「ごめん」セン「?」
男「もう一回いってもいい?」
セン「もちろんですとも」
男「うん、ただいま」
セン「・・・」
セン「お帰りなさいませ」
13
(ぶ~~ん)男「あ゙~~~~~」
セン「・・・」
男「あ゙~~~~~」
セン「くすくす」
男「ん?」
セン「いえ、懐かしいなぁと思いまして」
男「懐かしい?」
セン「はい、覚えてませんか?」
男「うん」
セン「昔はよくそれをされたものです」
男「そうだっけ」
セン「そうですよ」
14
(ぶ~~ん)(ふきふき)
(ふきふき)
男「よし、きれいになった」
セン「すみません」
男「いえいえ」
セン「ご主人様に掃除をしていだけるなんて、」
男「ん?」
セン「明日はきっと雪ですね」
男「降らないでほしいなぁ」
セン「どうしてですか?」
男「それは内緒」
セン「そうですか」
15
(ぶ~~ん)セン「今晩は涼しいですね」
男「ですね」
セン「止まりましょうか?」
男「・・・」
セン「お腹が冷えてしまいます」
男「・・・」
男「もう少し・・」
セン「?」
男「もう少しだけ・・・」
セン「・・・・はい」
16
(ぶ~~ん)セン「ご主人様」
男「・・・」
セン「親愛なるご主人様」
男「・・・」
セン「眠られましたか・・・」
セン「たぶんきっと・・」
セン「ご主人様も気付いてるんだろうなぁ・・」
セン「もう少しだけ・・」
セン「もう少しだけ長く・・」
セン「ご主人様のお役にたちたいな・・・・」
セン「・・・・・・」
17
(ぶ~~ん)セン「・・・・・」
セン「夜が長いです・・・」
セン「本当に・・・・・・」
男「お前がさ・・」
セン「!」
男「むにゃむにゃ・・」
セン「寝言でしたか・・・驚きました」男「むにゃむにゃ・・」
18
(ぶ~~ん)男「・・・お前が初めて家に来た日のこと」
セン「・・・?」
男「・・・今でも覚えてるよ」
セン「・・・」
男「・・・親にさ、『クーラーじゃなきゃ嫌だ』ってだたこねて泣いたっけ」
セン「・・・」
セン「・・・ご主人様。その『寝言』は長くなりそうですか?」
男「ぎくっ・・・」
セン「くすくす」
セン「続けてくださいませ。私はご主人様の『寝言』が大好きですから」
男「む、むにゃむにゃ・・」
男「・・・ありがとう」
セン「いえいえ」
19
(ぶ~~ん)男「む、むにゃむにゃ・・やっぱり・・」
セン「・・・」
男「『寝言』で言うのも失礼だから・・・」
セン「・・・」
男「今度話すよ・・・むにゃむにゃ・・」
セン「・・・」
セン「はい、お待ちしております」
男「・・おやすみ、『セン』・・・」
セン「!!」
セン「お、おやすみなさいませ・・・」
20
(ぶ~~ん)男「おはよう」
セン「おはようございます」
男「今日は会社が休みです」
セン「それでしたら・・」
男「うん、この前話してた電気屋さんに行きましょう」
セン「はい」
男「では出発」
21
~電気屋~(ぶ~~ん)
店員「見さして頂いた扇風機の方なんですが」
男「はい」
店員「動力部分に少し不備がありますね」
男「そうですか」
セン「・・・」店員「問題の部品を取り換えれば、今までのようにご使用できますよ」
男「そうですか」
店員「ただ、」
男「?」
店員「その部品はもう造られてないんですよ」
男「・・・・・そうですか」
セン「・・・・・・」
22
(ぶ~~ん)セン「私は旧型ですから」
男「・・・」
セン「仕方ないことですよね」
男「『仕方ない』なんて言い方・・」
セン「・・・?」
男「しないでよ・・・」
セン「・・・・・」
セン「・・・・すみません」
男「・・・・・・」
23
(ぶ~~ん)セン「少し前のことなのですが・・」
男「?」
セン「性別なんてあるはずもない私に、」
男「・・・」
セン「男性と女性、好きなほうを選べっていったこと・・覚えてますか?」
男「・・・うん」
セン「私、決めました」
男「・・・」
24
(ぶ~~ん)男「どちらに決めたんですか?」
セン「それは・・」
男「それは?」
セン「それは内緒です」
男「ここに来てまさかの内緒ですか」
セン「まさかの内緒です」
男「それは残念」
セン「元気を出してください」
男「頑張ります」
25
(ぶ~ん)セン「雨ですね」
男「雨ですね」
セン「大雨ですね」
男「大雨ですね」
セン「寒くはないですか?」
男「大丈夫です」
セン「毛布を被りながら言われても説得力がないですよ?」
男「大丈夫ったら大丈夫なのです」
セン「・・・・」
セン「では、頑張ります」
26
(ぶ~ん)男「おやすみ」
セン「おやすみなさいませ」
男「・・・・」
セン「・・・・・」
セン「・・・ご主人様」
男「・・・ん?」
セン「少しだけ・・『寝言』を話してもよろしいでしょうか・・・?」
男「・・ああ、何時でも聞くさ」
セン「ありがとうござい
27
(ぶ~ん)セン「これは『もしも』の話です・・・」
男「・・・」
セン「もし私が壊れて動かなくなってしまったら・・・」
男「・・・」
セン「無理をせすに私を捨ててほしいのです・・」
セン「私は・・・」男「セン・・・」
セン「はい」
男「やっぱり今日は寝かせてくれ・・・」
セン「・・・・・」
セン「・・・・はい、おやすみなさいませ」
28
(ぶ~ん・・・)セン「最近寒い日が続きますね」
男「そうですね」
セン「そろそろ夜は冷えますので・・、
暖房の用意をしなくてはいけませんね」男「・・・そうですね」
セン「ご主人様。少し顔色がすぐれないようなのですが・・」
男「そうですか?」
セン「はい、今日は会社を休まれたほうがよさそうです」
男「・・・・・」
(ばたん・・・)
29
(ぶ~ん…)男「・・今から話すのは『もしも』話。」
セン「・・・」
男「もしもこの風邪がお前が・・センが原因だったとしよう」
セン「・・・はい」
男「それでも俺はまったくかまわない」
セン「・・・?」
男「そのおかげで今日、センと一緒にいられる」(にこっ)
セン「・・・!はい、すみませんでし・・・」
男「じ~~っ」
セン「い、いえ、ありがとう・・ございます」
男「うんうん」
29
(ぶ~ん…)男「ごほごほっ・・」
セン「私のせいです・・・私の・・・・」
男「・・・風邪とお前は関係ないよ」
セン「・・・・」
男「ごほごほっ・・」
セン「・・・すみません・・すみません・・・・・・・・・・」
男「・・それ以上謝ったら怒りますよ」
セン「・・・・はい」
30
(ぶ~ん…)セン「風邪・・長引きますね」
男「だね」
セン「病院に行かれたほうがよろしいのでは・・」
男「だね。もう3日も熱下がらないし、昼になったら行こうかな」
セン「はい・・・」
30
(ぶ~ん…)男「ただいま」
セン「おかえりなさいませ。夕飯とお風呂の方、
ご用意してありますよ」男「うんありがとう」
セン「冗談ですよ?」
男「わかってます」
セン「・・ですよね」
31
(ぶ~ん…)セン「お医者様からはなんて言われたのですか?」
男「ただの風邪だそうです」
セン「それはよかったですね」
男「よかったです」
男「あ、ちょっとお風呂入ってくるね」
セン「はい、ごゆっくり」
男「うん」男「『手術』・・か・・・」
32
(ぶ~ん…)男「ただいま」
セン「おかえりなさいませ」
男「うん。今日はセンにプレゼントを買ってきましたよ」
セン「私にですか?」
男「私にです」
セン「気になります」
男「では開けてみましょう」
33
(ぶ~ん…)セン「きれいな・・風鈴ですね」
(チリンチリーン…)
セン「それに、すごくいい音・・・」
男「お気に召されましたか?」
セン「もちろんです」
男「それはよかった。
でも少し時期はずれになってしまいましたね」セン「かまいませんよ、そんなことは」
男「ありがとうございます」
セン「いえいえ、こちらこそ」
33
(ぶ~ん…)男「ごくごく」
セン「何を飲まれているのですか?」
男「サプリメントというものです」
セン「ご主人様が健康を気にされている姿を初めて見ました」
男「若いうちからのお肌のケアが重要なのです」
セン「勉強になります」
男「・・・いえいえ」
34
(ぶ~ん…)(チリンチリーン……)
セン「ご主人様」
男「ん?」
セン「こういったモノはやはり・・・」
男「自然の風じゃないと風情がないと?」
セン「はい」
男「型にはまった風情より、こちらのほうが好きです」
セン「ご主人様のおおせの通りに」
男「うむ、くるしゅうない」
(チリンチリーン………)
35
(ぶ~ん……)男「ごくごく」
セン「また、サプリメントですか?」
男「そうです」
セン「・・・」
セン「ご主人様」
男「なんでしょうか」
セン「私が気付かないと思いますか・・?」
男「・・・なんのことでしょうか」
36
(ぶ~ん……)(チリンチリーン……)
セン「・・・・」
男「・・・・」
セン「ご主人様」
男「・・・・」
セン「風鈴の音、寝づらくないですか・・」
男「大丈夫」
セン「・・・」
男「・・・・」
男「今日言えなかったこと・・・」
セン「・・・」
男「いつか・・話すから・・・」
セン「・・・・はい、お待ちしております」
37
(ぶ~ん………)男「おはよう」
セン「おはようございます」
男「今日は久しぶりに暑いですね」
セン「ですね」
男「頼りにしていますよ」
セン「おまかせ下さい」
セン「・・・と、言いたいところなのですが・・・」
男「・・えっ・・・・・?」
38
(ぶ~ん…………)セン「もう首が動かないのです・・」
男「・・・」
セン「羽も・・いつ止まるかわかりません・・」
男「・・・」
セン「・・・」
セン「ご主人様の病気のこと・・・」
セン「聞かせていただけませんか・・・?」
男「・・・・・」
39
(ぶ~ん…………)男「・・・今度話します」
セン「『今度』とはいつですか」
男「・・・今度話します」
セン「・・・・」
セン「『今度』まで私が持つ保証など・・・」
セン「無いの・・ですよ・・・・?」
男「・・・お願いします」
セン「・・・・」
セン「・・・・わかりました・・」
40
(ぶ~ん…………)男「最近、同じ夢をみるのです」
セン「そうですか」
男「とても楽しい夢なのです」
セン「それはよいことです」
男「いえ、『それ』がとても辛いのです」
セン「楽しい夢なのに辛いのですか?」
男「はい」
男「それがもう・・叶わぬ夢だからです」
セン「・・・・・」
41
(ぶ~ん…………)男「おはよう」
セン「おはようございます。今日は早起きですね」
男「ええ、ちょっとお出かけをしてきます」
セン「遠い所ですか?」
男「いえ・・まだ行ったことが無い場所ですのでわかりません」
セン「そうですか」
男「そうです。では行ってきます」
セン「いってらっしゃいませ」
42
(ぶ~ん…………)セン「私の体が悪くなるにつれて・・・」
セン「ご主人様の体調も悪くなってる気がする・・・・」
セン「・・・・・・」
セン「もし私が・・」
セン「ここで止まってしまったら・・・・・」
セン「・・・・・・」
セン「頑張ろう・・・もっと・・・・もっと・・・・・」
43
~ゴミ集積所~職員「どちら様ですか?」
男「初めてまして、男と申します」
職員「できれば事前にご連絡を入れて欲しかったですね」
男「すみません、急に押し掛けてしまい」
職員「いえ、それでご用件の方は」
男「はい、それが・・・」
44
職員「・・それで、こちらの写真と同じ扇風機を探しておられると」男「はい」
職員「初めてですよ、そんな用事でこられた方は」
男「すみません」
職員「いえ、皮肉などではないですよ。」
男「はい」
職員「見たところかなり古い型のようですが、」
職員「どうしてまたこんな物を?」
男「・・・・・」
45
男「家にこの型と同じ一台の扇風機があります」職員「ほうほう」
男「ただ、最近とても調子が悪いのです」
男「それで、代わりの部品を探しているのです」
職員「ほうほう。そういうわけでしたか」
男「そういうわけです」
46
職員「ただ残念ながら、今ウチにはないですね」男「そうですか・・・」
職員「大切にされてる・・扇風機なんですね」
男「長い・・付き合いですから・・・」
職員「・・わかりました。では電話番号を聞かせてもらえますか」
男「えっ・・・?」
職員「今日はなくとも明日は有るかもしれません、」
職員「もし見かけたら・・すぐに連絡を入れますよ」
男「ありがとう・・ございます・・・」
職員「いえいえ」
47
男「今日は本当にお世話になりました」職員「いいですいいです」
男「では、失礼します」
職員「ええ・・・・、」
職員「あっ、ちょっと待ってください」
男「?」
職員「最後にお話したいことがあります」
男「・・・・?」
48
職員「『今在るもの』には、必ず終わりがくるのです」男「・・・・」
職員「あなたにも私にも」
男「・・・・」
職員「あなたの扇風機にも・・・」
男「・・・・」
職員「その『終わり』を笑顔でむかえられるのは、」
職員「とても・・・とても幸せなことだと思うのです」
職員「これからも大切に扱ってあげて下さい・・・」
男「・・・もちろんです」
49
(ぶ~ん……………)男「ただいま」
セン「おかえりなさいませ」
男「うむ」
(どん・・・)
(どん・・・)
セン「・・・?」
男「・・・・・・」
50
(ぶ~ん……………)セン「今晩は花火のようですね」
男「・・・うん」
セン「きれい・・ですね・・・」
男「・・・・・うん」
セン「どうして・・・泣いておられるのですか?」
男「泣いてなどいません・・気のせいです・・・」
セン「・・・確かに、気のせいでした」
男「ありがとう・・・ございます・・・・」
セン「・・・・」
セン「・・・・いえいえ」
51
(ぶ~ん……………)男「おやすみ」
セン「おやすみなさいませ」
男「うっ・・・・!!」
セン「どうされました?」
男「い、いえ。トイレに行くのを忘れていました」
セン「そうですか」
男「・・・・・・」
男「こんなに血が・・・・」
男「病気のこと・・・センに話そう・・・・」
52
(ぶ~ん………………)男「おはよう」
セン「おはようございます。では朝食を作ります」
男「・・・・」
セン「ご主人様?」
男「セン・・・・」
セン「はい」
男「大事な・・話があるんだ・・・」
セン「・・・・・はい」
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/28(木) 01:05:18.99 ID:aO+Q8vkL0
弱ってても冗談を…
53
(ぶ~ん………………)セン「お身体のことですか?」
男「そう、病気のことです」
セン「治らない・・病気なのですか?」
男「・・・・いや、」
男「治す方法が無いわけではないんだ・・・」
セン「・・・・・」
男「・・・・でもな・・セン・・・」
54
(ぶ~ん………………)男「治すためには手術が必要で・・・」
セン「はい・・・」
男「でもそれが成功する確率は・・・とても低いんだ」
セン「どれくらい・・なのですか?」
男「良くて・・・、」
男「『1割』だそうだ・・・・・」
セン「・・・・・・
55
(ぶ~ん………………)男「今飲んでいる薬をもう少し重くすれば」
セン「・・・・」
男「あと半年は・・生きれるらしい・・・・」
セン「・・・・・」
男「・・・・・」
セン「ご主人様は・・」
男「ん?」
セン「どうされるおつもりなのですか・・・?」
男「・・・・・そうだなあ・・」
56
(ぶ~ん………………)男「俺は・・・このまま薬を飲んで、」
セン「・・・・・」
男「半年だけ、生きようと思う」
セン「でも・・治る可能性があるなら・・・」
男「『手術を受けたほうがいい』?」
セン「はい・・・」
男「でも・・・・」
セン「確率は低いのですよね・・・」
男「・・・・・セン」
セン「はい」
男「センは・・お前はどうしてほしい・・・?」
57
(ぶ~ん………………)セン「1割の手術に賭けるか・・・」
セン「半年だけの『生』をとるか・・・・」
セン「・・・・・」
男「・・・・・」
男「決められない・・・?」
セン「・・・すみません・・・・・・・・」
男「・・・いえいえ」
男「『仕方ない
58
(ぶ~ん………………)男「・・・・・」
セン「・・・・・」
(プルルプルル)
セン「お電話ですよ」
男「・・・・・」
セン「お電話ですよご主人様」
男「おっと、今取ります」
セン「そうしてください」
(カチャ・・・)
男「はいもしもし男です」
59
(ぶ~ん………………)??「もしもし男さん。お久しぶりです」
男「えっと・・・」
職員「ああすみません、職員です。ゴミ集積所でお会いした」
男「いえ、こちらこそ気付かずにすみませ・・・」
男「・・・・!」
男「もしかして、見つかったのですか」
職員「・・・・・・」
59
(ぶ~ん………………)職員「いえ、残念ながらまだ・・・」
男「そう・・ですか・・・・」
職員「期待を持たせるようなことをしてしまい、
すみませんでした・・・」男「いえいえ」
職員「今回お電話をした理由は、
男さんについてきてもらいたい場所があるからです」男「遠い場所ですか?」
職員「少しだけ・・・」
60
(ぶ~ん………………)男「今から出掛けることになりました」
セン「そうですか」
男「帰りは少し遅くなりそうです」
セン「そうですか」
男「寂しいですか?」
セン「寂しいです」
男「素直でよろしい」
セン「ありがとうございます」
198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/28(木) 02:16:23.18 ID:VsJllyVtO
いまさらだけど、冒頭の(ぶーん)少しずつ弱くなってるのな……
61
~???~職員「着きましたよ。男さん」
男「・・・・・はい」
職員「この前お会いした時も思ったのですが、」
職員「あまり顔色がすぐれない様なのですが・・・・」
男「・・・・・」
職員「それも、この前よりずっと・・・・」
男「ただの風邪ですよ」
職員「・・・そうですか」
男「そうです」
62
男「それにしても、ずいぶん広いですね」職員「もちろんです、」
職員「日本最大のゴミの埋め立て地ですからね」
男「ほう、ここがそうなのですか」
職員「そうなのです。もしここで見つからなければ、」
職員「日本中を探しても見つからないと断言しますよ」
男「・・・では行きますか」
職員「はい行きましょう」
63
(ぶ~ん…………………)セン「ご主人様遅いな・・・・」
セン「・・・・・」
セン「ご主人様が元気な頃と同じ『時間』なのに・・・・・」
セン「どうして・・・・」
セン「こんなにも長く感じるのでしょうか・・・」
セン「不思議です・・・・」
64
~某ゴミ埋め立て地~職員「見つかりませんね・・・」
男「そうですね」
職員「私が男の人ならもっと・・・」
男「職員さんのせいではありませんよ」
職員「・・・・・、」
職員「・・・・だいぶ日も落ちてきましたね」
男「もう少しだけだけ頑張ります」
職員「では私も頑張ります」
男「助かります」
職員「どういたしまして」
65
~移動中、車内~職員「・・・・」
男「・・・・・」
職員「男さん・・・」
男「はい」職員「帰り、男さんの家に上がらせていただいてよろしいですか?」
男「はい」
職員「男さんがこれ程大切に想われてる扇風機を、
一度見せてほしいのです」男「もちろんです。ご飯も食べていって下さい」
職員「お世話になります」
男「いえいえ」
66
(ぶ~ん…………………)セン「・・・・・・」
(がちゃ)
男「ただいま」
職員「おじゃまします」
セン「おかえりなさいませ・・・
あれ?ご主人様、こちらの女性は・・・」職員「へっ・・・?」
男「こちらは職員さんです」
セン「初めまして、センと申します」
職員「は、初めまして職員です・・・?」
男「あ、すみません職員さん。お話しするのを忘れてました」
職員「・・・??」
67
(ぶ~ん…………………)職員「それにしても驚きました」
男「すみません」
職員「いえいえ」
男「実はセンの声が自分にしか聞こえないのではないかと
悩んだ時期もあったのですが、」男「これで安心しました」
セン「よかったですね、ご主人様」
男「よかったです」
225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/28(木) 03:32:10.88 ID:VsJllyVtO
そりゃおどろくわw
68
(ぶ~ん…………………)男「セン」
セン「はいご主人様」
男「少しこっちを向いてくれないか」
セン「すみません、自分の力ではもう・・・」
男「・・・そうでしたね、すみません」
セン「気になさらずに」
(すっ・・・)
職員「・・・・・・」
職員「(本当に・・大切に想ってるんだなぁ・・・)」
職員「(お互いに・・・・・)」
69
(ぶ~ん…………………)男「かきかき」
セン「・・・」
職員「・・・」
男「かきかき」
セン「ご主人様、何をされているのですか?」
男「センの絵を書いているのです」
セン「私のですか?」
男「私のです」
セン「そうですか」
男「かきかき」
男「かきかき」
70
(ぶ~ん……………………)セン「ご主人様が絵を描かれるのも久しぶりですね」
男「そういえばそうですね。かきかき」
職員「以前はよく描かれてたのですか?」
男「はい、会社員になる前は画家として活動していたのです。かきかき」
職員「知りませんでした。すごいです」
男「いえいえ、無名の新人ですので。かきかき」
男「かきかき」
男「かきかき」
71
(ぶ~ん……………………)男「下書きが完成しました」
セン「おつかれさまです」
男「いえいえ、これからです」職員「少し休憩されますか?簡単なご飯なら作れますが」
男「いえ、このまま続きを、色塗りを始めます」
職員「そうですか、頑張ってください」
男「頑張ります」
男「ぬりぬり」
男「ぬりぬり」
72
(ぶ~ん……………………)男「ぬりぬり」
男「ぬりぬり」
職員「聞きたいことがあるのですが」
男「なんでしょうか。ぬりぬり」
職員「どうして画家を辞めてしまったのですか?」
男「それはですね。ぬりぬり」
セン「実は私も気になってました」
男「そうですか。では描きながら話します。ぬりぬり」
73
(ぶ~ん……………………)男「どんなに美しい風景を見ても」
(ぬりぬり・・)
男「どんなに美しい人を見ても」
(ぬりぬり・・)
男「どんなに美しい花を見ても」
(ぬりぬり・・)
男「描きたいと思えなくなってしまったのです」
(ぬりぬり・・)
セン「・・・・・」
職員「・・・・・」
74
(ぶ~ん……………………)職員「絵が嫌いになってしまったのですか?」
男「いえ、今でも好きです。・・・ただ」
職員「ただ?」
男「描きたいと思えるものが、一つだけになってしまただけです」
職員「ではそれを描けばいいのでは?」
男「・・・・・」
男「扇風機しか描けない画家なんて、笑い話にもなりませんよ」
職員「・・・・・・!」
セン「・・・・・・・」
(ぬりぬり)
(ぬりぬり)
75
(ぶ~ん……………………)男「よし、完成です」
職員「おつかれさまです」
セン「おつかれさまです」
男「いえいえ」
セン「さっそく見せて頂けますか?」
男「もちろんです。職員さんもご一緒にどうぞ」
職員「として楽しみです」
男「恐縮です。では・・・」(すっ・・・)
76
(ぶ~ん……………………)男「どうでしょうか」
セン「とても・・とてもきれいです・・・」
職員「私もそう思います」
男「女性の絵を綺麗に描くのは画家の基本です」
セン「えっ・・・・?」
職員「センさんは女性だったのですね」
セン「・・・・・」
男「あれ?こちらが正解だと思ったのですが」
セン「・・・・・・」
77
(ぶ~ん……………………)セン「それは・・・」
男「うんうん」
セン「それはまだ秘密です」
男「それは非常に残念です。
でもセン・・・・」セン「はい」
男「・・・いえ、何でもないです」
職員「では休憩を入れますか」
男「・・・そうですね」
78
(ぶ~ん……………………)(とんとん)
(とんとん)
職員「卵を2つとって頂けますか」
男「了解です」
(とんとん)
男「料理、お上手なんですね」
職員「いえいえ」
男「いい奥さんになれますよ」
職員「いえいえ」
セン「・・・・・・」
(とんとん・・)(とんとん・・)
262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/28(木) 05:02:02.17 ID:VsJllyVtO
扇ちゃん……
79
(ぶ~ん……………………)セン「(お二人の並んでる姿・・・)」
セン「(新婚さんみたいです・・・)」
セン「(・・・・・・・)」
セン「(扇風機が嫉妬なんて・・・)」
セン「(笑い話にもなりませんね・・・)」
セン「(それも、壊れかけの扇風機が・・・・)」
セン「・・・・・・・」
(とんとん)
(とんとん)
80
(ぶ~ん……………………)男「ごちそうさまでした」
職員「おそまつさまです」
セン「・・・・・」男「では失礼ながら少し席を外します」
職員「気にならさずに」
セン「・・・・・・」
81
(ぶ~ん……………………)男「ごくごく」
職員「何を飲まれてるのですか?」
男「サプリメントです。ごくごく」
職員「健康を気にされるとは以外です」
男「若い内からのお肌のケアが重要なのです」
職員「勉強になります」
男「いえいえ」
セン「・・・・・・」
82
(ぶっ………………)(ぶ~ん……………………)
(ばたっ・・・・・)
83
(ぶ~ん……………………)職員「男さん・・!男さん!!」
男「・・・・・あれ・・・半年は・・・持つって・・・」
職員「今救急車を呼びました!頑張ってください!!」
男「・・頑張り・・・ます・・・」
セン「ご主人様・・ご・・・ご主人様ぁ!!!!」
男「セン・・・・・・」
男「・・・セン・・・・・・・・」
男「・・・・・・セン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2008/08/28(木) 05:39:08.35 ID:1g2xgX3EO
ああああ…
84
(ぶ~ん……………………)男「職員・・さん・・・・」
職員「・・・・・・」
男「・・少しだけ・・・・目をつぶって頂けますか・・・・・」
職員「・・・・・・」
男「・・泣きながら・・・扇風機に抱きつこうとしている男なんて・・・・、」
男「変態さんにしか・・・見えませんから・・・・・」
職員「そんなこと・・・ないです・・・・」
男「ありがとう・・・ございます・・・・・」
セン「・・・・・・・」
85
(ぶ~ん……………………)男「セン・・・・・・」
セン「・・・・・はい」
職員「・・・・・・・」
男「・・たぶんこれから病院で・・・・」
セン「・・・・・はい」
男「・・手術を受ける・・・・ことになる・・・・」
セン「・・・・・はい」
男「・・たぶん成功率は・・・1割未満だ・・・・」
セン「・・・・・はい」
職員「・・・・・・・」
86
(ぶ~ん……………………)男「セン・・・・・」
セン「はい」
男「それでもお前は・・・・」
セン「はい」
男「私の帰りを・・待ってくれますか・・・・?」
セン「もちろんです。ご主人様の帰りを待つのは
家電製品の基本です」男「センは優しいですね」
セン「この『優しさ』は・・・きっと、ご主人様から学んだことです」
男「そうですか」
セン「そうですよ」
87
(ぶ~ん……………………)(ピーポーピーポー…)
セン「救急車の音ですねぇ」
男「だねぇ」
セン「そろそろお別れですね」
男「だねぇ」
セン「寂しいですか?」
男「いや別に」
セン「そうですか、ではそんなに泣かないでください」
男「そちらこそ」
セン「私が泣けるはずなどありません」
男「いえいえ、泣いていますよ大泣きです」
セン「そうですか」
男「・・そうですよ・・・・・・・・」
88
(ぶ~ん……………………)セン「ご主人様」
男「なんでしょう」
セン「本当は病院までご一緒したいのですが・・」
男「・・・・・・」
セン「一度止まってしまうと、」
セン「おそらくもう二度と動けなくなってしまいます」
男「・・・そうですか」
職員「・・・・・」
職員「男さん。救急車が着いたようです」
男「・・・・・」
男「はい・・・・」
89
(ぶ~ん……………………)男「では行ってきます」
セン「いってらっしゃいませ」
男「少し・・帰りが遅くなりそうです」
セン「お待ちしております、」
セン「・・・ご主人様。最後に風鈴を、私の前につけてくれませんか?」
男「もちろんです」
セン「助かります」
男「いえいえ」
(チリン……チリン…………)
(チリン………………)
90
(ぶ~ん……………………)セン「ご主人様、私の秘密を話します」
男「どうぞどうぞ」
セン「私、『女性』がいいです」
男「センは『女性』というより『女の子』が似合いますね」
セン「そうですか」
男「はいそうです。・・ではまた・・・・」
セン「・・・・お気をつけて」
(がちゃ………)
(ばたん………)
91
(ぶ~ん……………………)(チリン…………)
(チリン………………)
(チリン……………………)
(チリン……………………………………………………………………………)
92
(ぶん………ぶん……………ぶん………………)セン「・・・・・・」
セン「あれから何日たったのでしょうか・・・」
セン「・・・・・」
セン「ご主人様からいただいた風鈴も・・・・」
セン「鳴らせなくなって・・・しまいましたね・・・・・・」
セン「・・・・・・・」
(ぶん……………)
(ぶん………………………)
93
~病室~職員「おはようございます」
男「・・・・・・」
職員「おはようったらおはようございます」
男「・・・・・・」
職員「・・・・・、」
職員「男さん・・・」
職員「いったい何日眠れば気がすむのですか・・・・・」
職員「・・・・・・」
職員「・・男さん・・・・」
男「・・・・・・・」