残業代未払い求めるドライバー「人間不信に陥る」
それまで何も言わなかったドライバーが有休を取りたいと申し出てきた。代わりのドライバーを用意するだけの余裕はない同社にとって、有休とはいえ休みを取られるのは痛手だ。社長は状況を説明した上で、苦肉の策として、有休を買い取ることで了承を得ようと試みた。
残業代未払い求めるドライバー「人間不信に陥る」|物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙
一時はそれでしのげたが、そのドライバーの態度は徐々に悪化。何かといえば不平不満を口にする。見かねた同社長が注意しても、態度は変わらない。
対応に苦慮していた時、新たな問題が起きる。残業代の未払いを要求してきたのだ。払えないと諭すと、今度は弁護士を伴って荷主へ駆け込んだ。
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同業大手の仕事をしていた同社は、荷主からその事実を聞かされ慌てた。後でわかったことだが、ドライバーは入社してから、すべての日報をコピーして保管していたのだという。確信犯だった。残業代の請求は500万円に上ったが、労働調停で妥協案を示し、半分の250万円で解決を図ったという。
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「平気で会社を裏切るドライバーや、臭いものにフタをする荷主の姿勢に、人間不信に陥った」
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未払い残業代巡りトラブル 就業規則、雇用契約、給与明細整備を
各地で、トラック事業者の「未払い残業代」を巡るトラブルが発生している。運輸行政の罰則基準には敏感でも、労基法には疎い経営者のスキをついて、数千万円から数億円という巨額の請求をしてくる悪質なケースが増えている。
未払い残業代巡りトラブル|物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙
埼玉県の物流会社。従業員は100人ほどで、トラックは30台保有。26人のドライバーのうち14人が突然、労働組合を結成。「過去2年間に遡って(残業代の請求債権は2年間)未払い残業代を支払え」と数千万円を要求してきた。
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単独で、従業員が弁護士も付けずに請求してくるケースも増えている。神奈川県の某社に入社して半年経ったドライバーが退職直後、「未払い分200万円」を内容証明郵便で請求。ドライバーは特殊車両運転の資格を持ち、給料は良かった。入社から「計ったように」ちょうど半年経って請求してきたそのドライバーは、インターネットで「未払い分」を計算できるソフトを利用。証拠書類を完備していたため、対応せざるを得なかった。
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今、こうしたインターネットを利用したケースが急増。ミクシィなどSNSでドライバー同士が「請求の仕方」「あそこなら(未払い残業代が)取れる」など情報交換。計画的に労務管理体制の弱い会社に潜り込むケースが急増している。
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保険サービスシステムでコンサルを担当する馬場栄氏(特定社会保険労務士)は「ドライバーの気質がサラリーマン化したことも大きい。車に乗ることが好きで男気があり、血気盛んという古いタイプはもういない。リーマン・ショック後、サラリーマンだった人がドライバー職に流れ込んだケースも多く『残業代』は当たり前の認識」と話す。
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未払い残業代250万円で和解 素行不良のドライバーに憤り
神奈川県の運送事業者と元ドライバーとの間で争われていた裁判が、未払い残業代として過去2年分250万円を会社側が支払うことで和解した。結果的に賃金を支払うことでしか解決しなかったことに、この事業者は憤りを感じつつも「250万円で済んでよかったと思うべきかもしれない」と長い裁判を振り返った。
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同事業者が元ドライバーから裁判を起こされたのは数年前。長時間労働と残業代未払いを訴えてきた。最初は意に介さなかったが、元ドライバーは社外の労働組合に入って本格的に会社を訴え始めたのだ。裁判になってみると、タコチャート紙には出庫から帰庫までの時間が記録されているため、事業者側の責任を問われることになった。
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裁判中には元ドライバー側から、一般紙に掲載された運送業界の長時間労働による重大事故多発の記事なども提出されていた。そして会社側が違法な長時間労働をさせているとして社会問題化させようとした。
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事業者は「運賃や労働時間の問題は業界の課題でもあり、過酷な条件で働いている多くのドライバーの状況は改善されるべきだが、今回のケースは違う」と話す。元ドライバーはタコチャート紙に記録されたすべての時間を労働時間として、未払い残業代を請求してきたが、実際には途中でトラックを置いて遊んでいた事実もある。
未払い残業代250万円で和解 素行不良のドライバーに憤り|物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙
和解という結果に、それ以上の問題にはならなかった。元ドライバーは他に2人のドライバーを誘って社外の労組に加入するようにしていたという。「お金がとれる」と聞いて興味半分で2人もついていったが、会社を訴えるということに違和感を抱き、2人は加入をやめて帰ってきたという。
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未払い請求で1000万円 事業者側は徹底抗戦へ
埼玉県の事業者は残業代の未払いがあるとして、辞めたドライバーから労働審判の申し立てを起こされた。同社への請求は約1000万円。しかし、同社長は納得せず、3回にわたる調停で徹底抗戦した。
未払い請求で1000万円 事業者側は徹底抗戦へ|物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙
同社社長は、「確かにこの業界は、労働時間など法定内での業務が難しく、拘束時間も長くなるが、だからといって、すべて残業代として支払う必要はない」と話している。
未払い請求で1000万円 事業者側は徹底抗戦へ|物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙
突然、弁護士から未払い賃金の支払いを求める文書が届いた。そこには、同社を辞めたドライバーの名前が記されていた。同社長は、しばらくそのままにしていたが、その後、裁判所から労働審判の申し立てがあったことを伝える通知が届いた。
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社長は、徹底的に争う構えを見せた。「働かないものになぜ、給料を払わなければならないのか」という疑問からだ。
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確かに拘束時間は長く、法定内に収まる時間ではなかった。同社はその弱みを突っ込まれたのだ。
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「拘束時間をそのまま未払いとして計上されればバカ高い金額となる。そんな請求にこたえていたら会社はもたない」と話す社長は、デジタコのデータをもとに労働時間と休憩時間、そして休息時間の詳細を綿密にまとめた。そのうえで、労働審判の調停に臨んだ。
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同社長は、「労働時間を守れないという業界特有の弱みに付け込んで、弁護士を通じて未払い賃金を請求してくるケースが増えているというが、時間管理をしっかりとしていれば、決して怖くはない」と話している。
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待機時間は労働時間か ドライバーが運送会社訴える
「今の運送会社だったら裁判を起こせば金を取れる」──。そうした怪しげな言葉でドライバーに裁判を起こさせる輩がいる。
待機時間は労働時間か ドライバーが運送会社訴える|物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙
W社は、ドライバーが訴えた裁判に「物流の実情で、コンプライアンスは無理という現実を感じる」と話す。
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争点となっているのは、コンテナターミナルでの待機時間が労働時間に含まれるかという問題だった。この待機時間は事業者の責任だけでは対応できないものだが、今のところ裁判所からは待機時間は労働時間との見解が示されているという。
待機時間は労働時間か ドライバーが運送会社訴える|物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙
同事業者は「労働組合に入る権利もあるし、訴訟するのも自由だが、待ち時間については労働時間の管理が難しい。待ちたくて待っているわけではない。法は守りたいが守ることができない実情を知ってもらいたい。裁判官や弁護士でも、実際に運送に携わった人でないと理解出来ない部分があると思う」と話す。
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辞めてもなおトラブル 解雇するにも細心の注意を
「自業自得で納得したはずなのに、後から災いをもたらしてくる」。会社を去ってもなお、厄介である元ドライバーの存在。解雇された腹いせに悪質ないたずらをするケースや、労基署や運輸支局に駆け込むケースなど、現場では、さまざまなトラブルが発生している。
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ミスが多いドライバーがおり、荷主から交代を求められた。社長はドライバーに状況を説明し、退社を促した。
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ドライバーが辞めてしばらくすると弁護士名で書類が届いた。残業代未払い分を請求する内容だった。
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「仕事ができなくなったのは自業自得のはず。残業代の未払いを請求するのは勝手だが、荷主の信頼を失った損害はどうしてくれるのか。結局、行政は労働者の味方をするからどうしようもない」とこぼす。
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「仕事のできない人間ほど後でトラブルを起こす。ドライバーが会社を辞める時、また、解雇する場合は細心の注意を払い、慎重な対応が欠かせない」と口をそろえている。
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世知辛さ募る運送現場 誓約書や念書が飛び交う
厳しさを増す行政処分に善後策を講じようと、トラック事業者がドライバーと誓約書や念書を取り交わすケースが急増している。
世知辛さ募る運送現場 誓約書や念書が飛び交う |物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙
「過労防止の義務」をドライバーにも書面で求め、「休むべきときに休むのも仕事。プライベートの過ごし方は自由だが、それを業務による過労とされてはたまらない」と話す。
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「過労死したドライバーの遺族が『年2回の健康診断を受けさせていない』として裁判を起こした話を聞き、書面に残すようにした。口酸っぱく指導しても健診に足を運ばないドライバーがいるのは、どの運送会社でも共通の悩み」と話す。
世知辛さ募る運送現場 誓約書や念書が飛び交う |物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙
長時間労働の食品輸送 「個人事業主」の検討も
大阪府泉佐野市の運送会社社長は「年末は最大で1日16時間もの拘束時間となり、万一、ドライバーが労基署などに駆け込み、残業費などの支払いを求めるようなことがあれば、何の反論もできない」と不安を漏らす。
長時間労働の食品輸送 「個人事業主」の検討も|物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙
食品輸送業者の間では残業代の未払いが問題となり、支払いを求めドライバーが労基署や法律事務所などに駆け込むケースも多い。
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経営コンサルタントに、時間外などでトラブルが発生しても仕方ない現状にあると相談したところ、ドライバーを個人事業主として独立させ、下請けとして利用する内容を紹介された。
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ドライバーらを企業組合の組合員として独立させて、自社の仕事を行ってもらう。正社員であれば法的労働時間は1週間で40時間だが、個人事業主などには労働時間の法的な規制がないことから、拘束時間を気にせずに輸送業務を行ってもらえるといった内容だった
長時間労働の食品輸送 「個人事業主」の検討も|物流ウィークリー・物流と運送、ロジスティクスの総合専門紙