猪瀬都知事、「日本標準時を2時間早く」を政策会議にて提言

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猪瀬直樹東京都知事が、2013年5月22日に行われる政府の「産業競争力会議」で、日本標準時を2時間早めることを提案するという。

日本標準時を2時間早くするという猪瀬都知事の提案。

主に金融市場でのアドバンテージを目的としている模様。

「産業競争力会議」に提出された資料。

第9回産業競争力会議・配布資料より。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/kaisai.html

「導入プラン」で掲げられている3つの理由。

■「災後社会」の処方箋
日照時間を有効活用することで消費電力を抑制。東日本大震災で福島からの電力900万kwが失われた「災後社会」において、究極の自然エネルギーである太陽の光を最大限に活用し、消費電力を抑制する。
[PDF] 「東京標準時間」導入プラン

■「心のデフレ」を取り除く
明るい時間に仕事を終えて、スポーツや映画鑑賞をしたり買い物や食事に出かける時間ができ、アフターファイブ需要が生じる。また夕食を共にするなど家族団らんの時間も生まれる。子供は父親と過ごす時間をもつことで日本社会が高度成長期に失った家庭における父性の復権も見込める。余暇の充実する新たなライフスタイルでは縮こまった「心のデフレ」も取り除かれる。
[PDF] 「東京標準時間」導入プラン

■世界の富を呼び込み復興を後押し
日本市場がアジアの中核となることで、金融を始めとするグローバル企業のアジア拠点が集まり世界から資金流入が起こる。東京に世界の富が呼び込まれることで、官民双方から復興支援に充てられる資金の規模も増える。
[PDF] 「東京標準時間」導入プラン

猪瀬都知事から提出された配布資料”「東京標準時間」導入プラン”では、主に「東京への機能回帰」を目標として掲げており、ニュース記事での金融市場のアドバンテージのみならず、他の”東京市場”(これが何を示すかの具体的記載はなかった)を海外(周辺諸国?)がカバーすることを困難とさせたり、本来東京が有していた優位性の海外流出を再び取り戻すという東京回帰を蜂起させるというもののようだ。

2時間ずらす具体的な方法論については言及されていなかったが、子午線を東に30度移動させて2時間繰り上げるのは難しいと思うので、単純に協定標準時(UTC)から2時間繰り上げてUTC+11で設定するしか方法はないのだろう。

なお、資料ではデメリットについては一切触れられていない。

反対意見なども散見される。

標準時の子午線が通り「時のまち」を掲げる兵庫県明石市の泉房穂市長が22日、「国民生活に与える影響が大きく、サマータイム導入時のような十分な議論が必要だ」などと批判するコメントを出した。
朝日新聞デジタル:猪瀬知事の標準時変更案、「子午線の街」明石市長が批判 – 社会

[参考] 産業競争力会議

産業競争力会議(さんぎょうきょうそうりょくかいぎ)は、日本経済再生本部の下に開かれる会議体。2013年1月23日に第一回目が開催された。
産業競争力会議 – Wikipedia

[参考] 「日本標準時」は日本の標準時刻。

自分のコンピュータの時刻と日本標準時とのズレがわかる。

日本標準時(にほんひょうじゅんじ、英語: Japan Standard Time、JST)は、独立行政法人情報通信研究機構の原子時計で生成・供給される協定世界時 (UTC)(機構が決定するものであるため、厳密には「UTC(NICT)」と呼ばれ、国際度量衡局の決定するUTCとは若干のずれ(±10ナノ秒未満)が存在する。)を9時間進めたUTC+9をもって日本における標準時としたものである。

”時刻”は世界協定のもと厳密に管理されている。

実は過去にも日本標準時を早めようとする提言があった。

日本列島のほぼ中央を走る東経135度の標準時子午線を、最東端の東京都南鳥島付近を通る東経150度にずらす。設定変更時点が午前8時なら9時に時計の針を動かす。
京都新聞に「早起きニッポン研究会」の記事 | 時有人社

日の出時刻が後ろ倒しになるため、夏季の朝は涼しい時間帯に出勤、登校できる。
京都新聞に「早起きニッポン研究会」の記事 | 時有人社

冬季は午後5時ごろの日没時刻が1時間遅れるため、明るいうちの終業も可能で、消費電力を削減、余暇活動の拡大効果も見込む。
京都新聞に「早起きニッポン研究会」の記事 | 時有人社

いわゆる「サマータイム」とは違うもの?

PDFファイルなので注意。

サマータイムと日本標準時の繰り上げの意味は異なるが、予想・期待される効果は近いものがあるだろう。そこで、サマータイムの効果を簡単にまとめてみたい。

サマータイムの場合には夏の時期だけに期待される節電効果や時間の有効活用などがあるが、余剰時間がサービス残業に繋がるのではないか、生活リズムが乱れるのではないか、時刻同期が不可欠な機器の対応はどうなるのかなどの問題もある。

日本標準時の繰り上げは時期をとわず(その後くつがえす法案や類似法案が可決しない限りに)恒久的な設定となるため、一度実施してしまえば初期に噴出する問題は時間が解決することになると予想される。

[余談] サマータイムとは。

サマータイムについて解説されている。

サマータイムとは、日が長い夏の間に、時計を1時間進めて、昼の時間を長くして、時間を有効利用しようというものです。
サマータイムの概略|サマータイム導入直前? 失敗しないためのパーフェクトナビ

1時間全ての時間が早まることで、帰宅時間が早まり、余暇を楽しんだり、オフィスの光熱費の節約にも一役買うと期待されています。
サマータイムの概略|サマータイム導入直前? 失敗しないためのパーフェクトナビ

「シンガポールで1982年に実施した例がある」というのは、どういう事例なのか?

日本語のWikipediaでは「シンガポール標準時」の記載はなく、マレーシア標準時に類似の記載があるようだ。英語版Wikipediaでもサブタイトル「Malaysian Standardisation」にさきほどの記事が書かれている。

In 1981, Malaysia decided to standardize the time across its territories to a uniform UTC+08:00. Singapore decided to follow suit, citing business and travel schedules. The change took effect on 1 January 1982, when Singapore moved half an hour forward, creating “Singapore Standard Time” (SST). SST is eight hours ahead of GMT and is synchronized with Hong Kong, Taiwan and Beijing.
Singapore Standard Time – Wikipedia, the free encyclopedia

[拙訳(誤訳可能性有)] “1981年、マレーシアは領土全体にわたり標準時をUTC+08:00に移行することを決定した。シンガポールはこれに追従することを決定、移行スケジュールを示した。この変更は、シンガポールが30分早く移行しシンガポール標準時(SST)を設定してから、1982年1月1日から有効となった。SSTはGMTより8時間早く、香港、台湾、北京と同期される。”

(個人的見解)
マレーシア・シンガポールの時刻統一の件について理由などが記載された文面は見つからなかったのだが、隣接国との国交で時刻がそれぞれ不統一であることのデメリットが大きいからだったのではないだろうか。

(個人的見解)
日本の場合、隣国である韓国の標準時は日本と同じで時差がない。日本が2時間繰り上げた場合、韓国と2時間の時差が生まれることになる。これをどう捉えるかも重要な点ではなかろうか。

猪瀬都知事から提出された配布資料”「東京標準時間」導入プラン”によると、シンガポールの事例以外にウラジオストク、シドニーが記載されていた。ただしシドニーは単なるサマータイムの例なので事例には含まれないのではないだろうか……。

日本標準時をUTC+11にしたら、どうなるのか。

該当地域
オーストラリア
東部夏時間 – AEDT(南半球の夏時間)
ロード・ハウ島(オーストラリア領)夏時間(南半球。冬は+10:30)
ソロモン諸島
ニューカレドニア(フランス領)
バヌアツ
ミクロネシア連邦
コスラエ州
ポンペイ州
ロシア
ウラジオストク時間 – VLAT
UTC+11 – Wikipedia

具体的な研究事例や記事・論文等はみあたらなかったが、高度にITの発達した現在の日本では、機器の時刻同期は正常動作の前提であるといっても過言ではない。そのため、日本標準時の変更はこれらの機器に影響を与える可能性は極めて高いと思われる。

機器によっては日本標準時を「変わらないもの」として作っている可能性もあり、これらは日本標準時が移行した瞬間から機能しなくなる、もしくは誤作動する可能性があるだろう。

インターネット時刻同期(NTP)による時刻同期に対応した機器であっても、ある瞬間から2時間繰り上がった時刻が発信された場合、正常に同期しない可能性も考えられるだろう。

個人的雑感。

あいまいな経済効果とデメリットの記載のない資料からは、日本標準時の繰り上げが国益であるか否かの判断はできないのではないだろうか。

https://matome.naver.jp/odai/2136920522089196001
2013年05月22日