【衝撃作】ろう学校における性的虐待―韓国映画『トガニ 幼き瞳の告発』

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ろう学校の少女や少年に対する校長や教員による性的虐待と、学校関係者、街全体による隠ぺいを描いたファン・ドンヒョク監督 コン・ユ主演作『トガニ 幼き瞳の告発』。実話を基にした、韓国における性的虐待の厳罰化を促した意欲作にして、一本の映画としても完成度の高い作品です。

公式サイト

2012年8月に日本公開された作品です。

ストーリー


https://matome.naver.jp/odai/2136781772172788001/2136782361774376903
美術教師のカン・イノ(コン・ユ)は、地方のろう学校に赴任します。
赴任早々校長室に呼ばれた彼は、学校の『発展基金』と称して5000万ウォンを収めることを校長と瓜二つの顔をした行政室長に要求され、彼は不正な金を仕方なく支払います。

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授業をするうちに顔に傷を作り、怯えた様子の子供たちの姿を目の当たりにし、彼は学校に対する強い違和感を抱きます。

ある夜遅く学校から帰宅しようとしたイノは、学内のトイレと思しき場所から子供の苦しげな悲鳴を聞く。慌てて様子を見に行くイノを、なぜか学園専属の警備員が押しとどめる。「ここの子は、退屈すると声をあげて騒ぐんです」
映画『トガニ 幼き瞳の告発』公式サイト│8月4日(土)よりシネマライズ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

その後、女寮長のユン・ジャエによる、生徒のヨンドゥに対する虐待を目の当たりにしたイノはすぐさまヨンドゥを入院させます。
イノは知り合いの女性で、街の人権センターの幹事のユジンに連絡を取ります。そうして、ユジンがヨンドゥから筆談で聞き出したのは、学校のおぞましい内情でした。


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ヨンドゥによると自分を含めた複数の生徒が、校長をはじめとする数人の教師たちから日常的に性的虐待を受けているという。しかも地元の名士である校長は、警察さえも買収済み。警察はこの事実を知りながら、見過ごしているのだった。
映画『トガニ 幼き瞳の告発』公式サイト│8月4日(土)よりシネマライズ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

イノとユジンは学校を告発することに決めます。子供たちの告白がソウルのTV局を通じて、放映されると警察はようやく重い腰を上げます。
そうして、法廷での戦いが始まります。

韓国国内における反響

──この映画に出演した感想は?
コン・ユ:小説を読んで、忙しさを言い訳に、(こういった事実から)耳を塞ぎ目を閉じて暮らしてきたと感じました。(みなさんにとっても)一度、周囲を見回して、この世の中にどれだけ切ない出来事が起きているのかを振り返るきっかけになればと思います。こんなに胸が痛む事件があったことを観客のみなさんが知り、何か感じてくれればと想いながら撮影していました。
『トガニ 幼き瞳の告発』コン・ユ インタビュー | 映画/DVD/海外ドラマ | MOVIE Collection [ムビコレ]

観客動員数は460万人を突破。エンタテイメントとしては題材が重く、決して気軽に見れる作品では無いことを考えると異例の大ヒットと言えるでしょう。
(個人的な感想ですが)主人公が学校の真実を知るホラー、サスペンスタッチの前半部と法廷バトルの後半部のメリハリが効果的で、演出と撮影の素晴らしさも相まって『見やすい』作品になっていると思いました。
役者陣も素晴らしくバイオレンスシーンや強姦シーンに登場する子役を見ていると、本気で心配になるほどでした……。

実際に本作のモデルとなった光州インファ学校で2005年、女子学生の手足を縛って性暴行した容疑(強姦致傷など)で起訴されていた前・行政室長に対し、今月5日、裁判所は懲役 12年を宣告。又、10年間の身元公開と電子足輪装着10年を命令した。今回の判決は検察が求刑した懲役 7年よりも5年重い刑となった。
映画『トガニ』実際の事件の学校関係者に懲役12年の実刑判決下る!

裁判所は”事件が多くの人に知られるようになり、障害者への性暴行事件に対し厳罰を求める社会の声が大きくなった。そして国会ではトガニ法と呼ばれる法の改正もあった”と、『トガニ 幼き瞳の告発』の影響が大きくあったことを明らかにした。

韓国では、昨年本作の公開後、13歳未満の児童への性暴力犯罪の処罰に関する改正案を”トガニ法”と名付け、2011年10月28日に国会を通過、法律改正に至った。これにより、控訴時効が排除になったために、再び審議された結果が今回の判決に繋がっている。
映画『トガニ』実際の事件の学校関係者に懲役12年の実刑判決下る!

『トガニ』という作品の特徴は『ただ事実を伝える』ために作られた作品では決して無く、『商業的成功を収めることで社会を動かす』という明確な意図を持った、言わば『世論の起爆装置』であるという点だと思います。
そうした点を踏まえて鑑賞すると、作品に登場する校長や行政室長などの『悪役』の描き方や、ある登場人物が辿る悲劇的な運命がより一層興味深く感じられるのではないでしょうか。

日本における同様の事件

『トガニ』で描かれるような事件は、日本国内でも発生しています。特に有名なものは『恩寵園事件』でしょう。

『トガニ』で描かれる異常な状況が、当然のように日本でも存在し得るということを考えると、この作品を見ることの意義は大きいのではないでしょうか。

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2013年05月06日