アップルの“成長神話”は崩壊したのか

sinsenngumi
東洋経済オンライン 1月24日(木)19時10分配信 写真を拡大アップルの“成長神話”は崩壊したのか 米アップルが米国時間の1月23日夕方に発表した2013年度第1四半期決算(2012年10~12月)は、売り上げ、純利益とも「過去最高」だった

13年1~3月期は10年ぶりの減益へ

問題は翌期だ。第2四半期(2013年1~3月)について、会社側は売上高を410億~430億ドル、粗利益率を37.5~38.51%になりそうだと説明している。売り上げの伸び率(4.6~9.7%増)が1ケタ成長へと落ち込むことに加え、粗利益率も前年同期(2012年1~3月)の47.4%と比べるとかなり低い。2003年以降、10年も続いた2ケタ成長ペースが終焉を迎え、減益になってしまう。このことも、株価下落に拍車を掛けた。

ただアップルを擁護すると、粗利益率を四半期ごとにみていけば(右下グラフ参照)、2010年1~3月の41.7%から30%台後半であったことも多く、1年前の44.7%や47.4%という粗利益率がイレギュラーな異常値だと考えられる

むしろ、この時期に、ここまで粗利益率が向上したことで市場の期待値が上がり、逆に今、苦しんでいるといえる。振り返れば、この時期に低価格化を進めてシェア確保を優先したほうがよかったのかもしれない。一方、海を越えたここ日本では、「アップルの成長が鈍化した」という印象を受ける人は少ないのではないだろうか。なにしろ、ソフトバンク、KDDIが販売するスマートフォンのうち人気機種は「アイフォーン5」や「アイフォーン4S」に集中。2社の契約者純増をけん引している。その印象は間違っていない。日本の好調ぶりは今回の決算でもはっきりと読み取れるのだ。

アップルが生殺与奪の権握る 緊迫!シャープ

前野 裕香 :東洋経済 記者電機各社への鋭い指摘で知られるトップアナリスト・片山氏にシャープの現状と今後を聞く。ちょうど1年半前、シャープはアップルから二つの大きなビジネスを取れる見通しが立った。一つは9月に発売になったアイフォーン5向けの液晶。もう一つが今年3月から販売されている現行版アイパッド向けの液晶だ。当初は、両方ともシャープが納入シェア5割を占めると想定されていた。

アイフォーン5の世界販売台数は2億台といわれており、その半分で1億台、液晶メーカーに入る手取りが1台3000円として3000億円のビジネスになる。一方、現行アイパッドは1億台の半分で5000万台、手取り7000円で3500億円。シャープは計6500億円の売り上げを手にする前提で、亀山第1・第2工場の供給能力を作った。

ところが現実は、アイフォーン5で10%程度、アイパッドで15%程度しかシェアを取れていない。もくろみと6000億円もの差がある。限界利益では2000億円以上のギャップに相当する。

アイフォーン5に関してはあまり心配していない。問題はアイパッドです。液晶供給メーカーはシャープ、サムスン、LGの3社。このうち、シャープだけがIGZO(酸化物半導体)、ほか2社はアモルファス(非晶質)を使っている。消費電力でも解像度でもIGZOのほうが優れているが、シャープは先行2社に合わせる形でIGZOをデスペック(スペックを落とす)している。消費電力を増やすための対応をわざわざ施している。そんなことをやっているから、歩留まりもなかなか上がらなかった。

アップルは、来夏にはまた新しいアイパッド(いわゆるアイパッド4)を発売する。現行版は、サムスン「ギャラクシーTab(7・7インチ)」に比べて、ディスプレー部分だけで2倍近い厚みがある。もっと薄く軽くするために、アップルはIGZOを採用したいはず。キーデバイスになると判断した場合は、シャープ独占供給もありえる。ただ、現行アイパッドでの供給出遅れを見て、アップルが不安を感じていてもおかしくない。

IGZOの品質見せつけよ

シャープが今すぐするべきは、IGZOが100%のパフォーマンスを出す最終製品を発売すること。他社製品への搭載でも構わない。とにかくまとまった数のIGZO製品を売り、市場に問う。市場の評価は、アップルの背中を押すはずだ。そのためにも、まずは現行アイパッドでのシェアを回復する。シャープは一気に浮上できます。その実績がアイパッド4の受注獲得につながる

潰れるどころか、あっという間に普通の企業に戻る。ちょうど1年前の2011年7~9月決算では営業利益率4%を出していた。これはソニーやパナソニックをはるかにしのぐ水準だった。

シャープは今回初めて人員削減に手をつけたが、パナソニックなどと違い、もともと人が多いわけではない。人員削減だけで黒字にするのはほぼ不可能であり、亀山の稼働率向上のほうがよほど重要だ。

逆に、現行アイパッドの注文がこのまま正常化しなければ、銀行が事業売却を考え始めるかもしれない。

来年9月の転換社債(CB)償還を意識した銀行の貸し付けが執行されるかどうかは、新年度が始まる4月に決まる。それまでの1~3月で、シャープはアイパッドの注文を取り戻し、亀山の稼働率改善という結果を残さないといけない。白モノ家電、プリンタ……負債を減らすために、儲かっている事業をどんどん売却していくようなやり方では、シャープには何も残らない。

アイパッドの注文を戻す条件は二つある。一つは価格。足元では、LGが納入価格で攻勢をかけており、サムスンを凌駕している。シャープがこれに対抗してシェアを上げるには、当初想定したより値引きが必要だ。二つ目の条件は、現行のアイパッドがそこそこ売れ続けることだろう。先週発表されたアイパッド・ミニが大ヒットし、アイパッドが売れなくなるような事態が起きると、困ったことになる。

一にも二にも、アップル

すべてのキャスティングボートはアップルが握っている。それなのに、シャープの経営陣がアップル向けのすべての選択肢を出し尽くしたとは思えない。先日報道されたヒューレット・パッカードやデルの注文という話が出始めているのは事実だろう。しかし、そうした企業からの注文ではアップルの代わりにはならない

私なら、アップルの注文が取れるまで、全精力を費やしてオペレーションの態勢を修正し続ける。今こそ、地道な対応で信頼を取り戻すことが重要。ヒット商品ですべての矛盾を解決してきたシャープのスタイルはホームラン狙いの経営です。しかし、ホームランを狙うための条件を整えること以外に今できることはない。

唯一、ウルトラCがあるとすれば、サムスンです。サムスンとの距離を縮める。本来、堺工場(現・堺ディスプレイプロダクト)が組むべきは、堺製の液晶を搭載した大型テレビを高価格で売るテレビメーカーであり、それは世界にサムスンとソニーしかない。だからシャープはソニーと合弁会社を作ったが、うまくいかなった(注:09年設立、12年解消)。今回、OEMメーカーである鴻海(ホンハイ)精密工業と組んだのは、鴻海を介してソニーから大型テレビの注文が入ると踏んだからだと思われる。

ただ、ふたを開けてみると、この年末商戦の注文はほとんど米ビジオ社向け。シャープの「間接的にソニーとの関係を詰める」という当ては外れた。

鴻海がソニーのテレビ事業を買収すれば話は違ったが、鴻海自身にはそんなビジョンはなかった。本当の狙いは中小型液晶であって、堺には漠然と出資したようにも見える。

シャープと鴻海との交渉はまとまらないと思う。決裂した場合、鴻海は堺を売却することになるが、実際に堺を買うような会社はシャープ以外にない。シャープは1円ででも10円ででも買い戻せばいいだけのこと。ここは強い態度で交渉に当たるべきだ。

そうして一度すべて白紙に戻して、サムスンと何ができるかを可能なかぎり探っていくべきだろう。サムスンはシャープの中小型液晶には興味はない一方で、大型テレビ事業に依然意欲的で、かつ、堺の造る大型液晶の魅力をよく理解している。

事あるごとに事業のばら売りや法的整理が取りざたされるが、これらは再建策ではなく、“どう潰すか”の話にすぎない。シャープの株主なり株主価値なりを残すためにどうしたらいいかという基本に立ち返ったとき、堺工場を所有してメリットがある会社と組むことで、局面を打開していけるはずです。

(週刊東洋経済2012年11月10日号)

https://matome.naver.jp/odai/2135995650625106001
2013年02月04日