消えた漫画家・あすなひろしの叙情的で繊細なギャグマンガの世界!

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映画的な独特の「間」と、個性的で朴訥とした登場人物、唐突にシリアスになったり、そして洗練されたギャグやストーリー、詩情に溢れた青い表現力で、一部の熱狂的な支持を受けたマンガ「青い空を、白い雲がかけてった」の作者、残念ながら既に故人となっている漫画家あすなひろし氏について...。

▼あすなひろし氏を憶えていますか...。

「あすな ひろし」は、日本の男性漫画家。1941年1月20日東京都台東区池之端生まれ、宮崎県西臼杵郡出身。2001年死去。享年60。
あすなひろし – Wikipedia

東宝映画宣伝部、商業デザイン会社勤務を経て、1959年、「まぼろしの騎士」(少女クラブ冬の号)でデビュー。
あすなひろし – Wikipedia

▼代表作は『青い空を、白い雲がかけてった』

青い空を、白い雲がかけてった

『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)と『月刊少年チャンピオン』で1976年から1981年まで不定期連載された。

中学校三年生の主人公・ツトムの日常を、叙情的にコメディタッチに描いた秀作。ギャグかと思えば突然シリアスになり、画調も変化するのが特徴であり魅力。ツトム、ヨシエ(ヨシベエ)、番長、ノリの良いツトムの両親、抜き打ちテスト大好きの夏子先生、飼い猫のタマが主な登場人物。

連載中に編集部の要望で「風と海とサブ」の連載が始まったため、本シリーズは結局完結していない。(先生は「最後まで描きたかったな、卒業まで」とおっしゃられていました)
青い空を、白い雲がかけてった

「不思議なオレンジ色の光」のエピソード。

当時の少年チャンピオンはまさに黄金期で、ブラックジャックとドカベンとふたりと五人と750ライダーとマカロニほうれん荘が毎週同時に読めたという恐ろしい時期にあった。
青い空を、白い雲がかけてった

扉画やクライマックスだけでなく、何ということもないコマで映画的かつ空気感を湛えた画、構図で描かれている(あすな節!)
青い空を、白い雲がかけてった

最初の頃はシリアスな雰囲気が前面に出ていたが、次第にツトムたちを伸び伸びと行動させる描写になっていったと思う。
青い空を白い雲がかけてった(あすなひろし)

洗練された特徴のある画風。その絵の緻密さは、彼が漫画家となった当時の印刷技術では再現ができなかった程だったという。
2010年07月 : 塵の日(ごみのひ)

▼しかし、順風万帆とはいかなかった漫画家人生...。

私的なトラブルに伴い東京を離れ、実家のある東広島市に帰る。漫画よりも肉体労働に重点を置くようになり、晩年は非常に寡作になる。
あすなひろし – Wikipedia

素晴らしい才能を持ちながら、不遇なまま人生を終えてしまった人なんだなぁと、しみじみ思った。
漫画 : 塵の日(ごみのひ)

▼根強いファンは多い(恐らく40代の男性が中心?)

少女マンガ出身、その後劇画に少年誌と帯域を変えながらも、後年になるほど鋭くとがっていく、その緻密、静かな描写。
岩井の本棚 | コラム | まんだらけ

どこか哀しみを感じさせながらも、人間をポジティブに信じるピュアな精神。そのスピリッツは多くのマンガ家に影響を与えてきました。
岩井の本棚 | コラム | まんだらけ

コピーライターの糸井重里は彼の作風を「真っ昼間の悲しさ」と評した。
あすなひろし – Wikipedia

忘れられないセリフ、場面が出てくる。思えばこの人生の局面を凝縮したような場面が、忘れえぬ作品にしているのかもしれない。
青い空を白い雲がかけてった(あすなひろし)

読んでから数十年を経て、初めて素晴らしさが実感できるマンガだ。たぶん当時リアルタイムで読んだ人間にしか評価されないんじゃなかろうか。
「青い空を、白い雲がかけてった」(あすなひろし) : メカAG

登場人物たちが空を見上げたときの瞳は、他の漫画では感じたことがない力を持っている。目の輝きが少しずつ消えていく日々の生活の中で、 心の支えになってくれる作品
漫画文庫「青い空を、白い雲がかけてった」 あすな ひろし著|旅日記「僕の空」世界一周編

▼現在でも根強いファンが数多くいる!

▼根強いファンの働きかけで、復刊されている。

青い空を、白い雲がかけてった 完全版 上
ビームコミックス文庫から2004年に復刊された。表紙は有名なUFO(?)のエピソードから。
青い空を、白い雲がかけてった 完全版 下
ビームコミックス文庫から2004年に復刊された。下巻には「チャンピオン」に掲載されなかったエピソードを含む、まさに完全版。

▼現在も故人の親類や有志の方により、自費出版や原画展などの活動、サイト運営などが行われている。

▼原画展も行われた!

←は、1話目、転校生リョウとのエピソードですね。

▼作品リスト

・サマーフィールド(1970年:グランドコミックス)
・からじしぼたん(1973年:別冊COMコミック)
・心中ゲーム(1973年:もう一つの劇画世界・2)
・ぼくのとうちゃん(1976年:ホームコミックス)
・哀しい人々(1977 – 80年:3巻 サンコミックス)
・かわいい女(1977年 週刊プレイボーイ)
・美しき5月の風の中に(1977年:サンコミックス)
・青い空を白い雲がかけてった(1978 – 81年:3巻 少年チャンピオンコミックス)
・行ってしまった日々(1978年:ロマンコミック自選全集)
・風と海とサブ(1980年:2巻 少年チャンピオンコミックス)
・かたばみ抄(1982年:サンコミックス)
・サムの大空(1982年:少年チャンピオンコミックス)
・白い星座(1983年:サンコミックス)
・白い記憶(1983年:サンコミックス)

「サマーフィールド」
第一作品集。主に「小説ジュニア」を中心に発表された作品を収録。少女マンガであることを意識した、美しい短編集。
「からじしぼたん」
小学館漫画賞受賞の「走れ!ボロ」を含む自撰集。
「ぼくのとうちゃん」
少年ジャンプに掲載された短編を集めた作品集。戦争をテーマにした作品で、ラストは衝撃的。
「哀しい人々」
孤独な青年と、言葉を話すスズメとの心の触れ合いを描く作品。「童話ソクラテスの殺人」は出色の作品。
「青い空を、白い雲がかけてった」
少年チャンピオンに不定期連載された、彼の代表作。ストーリーそのものはシンプルになったのに、何故か不思議な抑揚があるのは、人間の心の繊細な部分を描ききっているからかも知れない...。永遠のエバーグリーン・ストーリー。
「行ってしまった日々」
かなり過去の作品を収録した短編集。1960年代の作品「ニーノとフランソワ」を収録している。
「風と海とサブ」
今作が連載開始したため、「青い空を、白い雲がかけてった」が未完で終了したというのは複雑ではありますが...。船乗りになるために故郷を離れた少年の青春を、あすな節で描く秀作。
『かたばみ抄』
今作から「青春」という言葉はあまり感じない。夫婦、復讐、消えないキズ...といった心の痛みを伴ったちょっと悲しい作品集。
「サムの大空」
元々は「小学六年生」に掲載された表題作などを収録した短編集。心臓病を患った小学生と鳩との触れ合いを描く。印象的なラストシーンが切ない。
「白い星座」
「プリンセス」「別冊プリンセス」といった少女誌に掲載された作品集。センチメンタルな悲劇的作品が目立つ。
「白い記憶」
「高2コース」に掲載された表題作をはじめ、これまで単行本化されていなかった作品などを収録したレア・トラック集(?)。心にズシリと来る強いメッセージ性を持った作品が多い。

▼参考リンク

https://matome.naver.jp/odai/2135942254318604801
2013年02月10日