つげ義春の旅行エッセイ『貧困旅行記』に登場する鄙びた温泉

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カルトな人気のある漫画家つげ義春の旅行エッセイ『貧困旅行記』に登場する鄙びた温泉をご紹介します。

…そういう貧しげな宿屋を見ると私はむやみに泊まりたくなる。そして侘しい部屋でセンベイ蒲団に細々とくるまっていると、自分がいかにも零落して、世の中から見捨てられたような心持ちになり、なんともいえぬ安らぎを覚える。
つげ義春『貧困旅行記』

湯平温泉(ゆのひらおんせん)

湯平温泉(大分県由布市湯布院町)

“湯平は年寄りの浴客の目立つ山間の湯治場だった。石畳の細い路地と石段が入り組み、細い谷を挟んで宿屋は多いがヒマそうでひっそりしていた。”

つげ義春『貧困旅行記』蒸発旅日記より

大分県由布院
日本, 大分県由布市湯布院町湯平263

湯平温泉(ゆのひらおんせん)は、大分県由布市湯布院町湯平(旧国豊後国速見郡)にある温泉。
その歴史は、隣接する由布院温泉よりも古く、伝承では鎌倉時代に始まるとされ、史料でも室町時代には存在していたことが確認されている。 昭和の町村大合併で旧由布院町と合併して旧湯布院町となる以前は、療養型温泉として著名で、戦前は別府温泉に次ぐ、九州で第2位の入湯客を誇る温泉地として知られていた。
湯平温泉 – Wikipedia

網代温泉(あじろおんせん)

網代温泉(あきる野市網代)

“網代鉱泉は杉檜の密生する暗い森の中にぽつんと一軒あった。こんな近場でカヤ葺きの宿は珍しく、昔ながらの田舎宿の佇まいを見て私は胸が高まった。”

つげ義春『貧困旅行記』奥多摩貧困行より

あきる野市網代75
日本, 東京都あきる野市網代75

網代から「上川病院」に抜ける道の途中、「東京五日市CC」手前にある温泉。宿泊施設であるものの、食事を伴う場合にのみ入浴することができる。浴室は建物の入口を入って右側にあり、内湯のみの檜風呂に自然ゆう出する硫化水素臭を伴う無色透明の温泉を加熱利用している(現在休業中、将来営業を再開する見込みは薄い)。
網代温泉(あきる野市網代)

下部温泉(しもべおんせん)

下部温泉(山梨県南巨摩郡身延町)

“町並はホテルなどもあって鄙びてはいないが、思っていたより規模は小さく、浴客は老人ばかりで、山あいの静かな保養地として、私はわりに好きになった。”

つげ義春『貧困旅行記』下部・湯河原・箱根より

山梨県南巨摩郡身延町下部
日本, 〒409-2942 山梨県南巨摩郡身延町下部 県道415号線

旧下部町南西部に位置。南東の毛無山西麓で、富士川の支流で毛無山から発する下部川(湯川)に沿って静かな温泉宿が並んでいる。源泉館の足下湧出泉が有名。
下部温泉 – Wikipedia

湯宿温泉(ゆじゅくおんせん)

湯宿温泉(群馬県利根郡みなかみ町)の石畳路地

“古びて傾きかかったような家も多く、全体に貧しいなァといった感じだ。人の姿もなく路地は陽も射さず暗くひっそりとしている。すべてが沈滞しているといった雰囲気だ。本当になにもない。これがどうしてぼく向きなのだ。”

つげ義春『貧困旅行記』上州湯宿温泉の旅より

群馬県利根郡みなかみ町湯宿温泉甲
日本, 群馬県利根郡みなかみ町湯宿温泉甲2647

新潟との県境の三国峠の手前、国道17号沿いに温泉街が広がる。
歓楽的な要素は少ない、鄙びた温泉街である。湯治部を有する旅館も現存する。
共同浴場は4軒存在するが、うち一軒は地元住民の専用である。観光客へ開放しているのは「窪湯」、「竹の湯」、「小滝の湯」である。窪湯以外は地元住民専用の日を設定している。
湯宿温泉 – Wikipedia

養老渓谷温泉(ようろうけいこくおんせん)

養老渓谷温泉(千葉県市原市)「川の家」

“私はトンネルを抜けて風景画の裏側に回ってしまったような変な錯覚を起こしそうになった。表から見えぬ裏側は、狭い谷間で、トンネルの出口に橋があり、そのたもとの崖の棚に小さな宿屋が一軒きり、他に人家はなくひっそりあった。私は橋の上に佇んで、静かな谷間を眺めて、ここは思いがけぬ別天地に映った。古ぼけた宿屋も私好みで景色にしっくり溶けこんでいる。“

つげ義春『貧困旅行記』養老(年金)鉱泉より

市原市と夷隅郡大多喜町の境付近の養老川沿いに位置し、十数軒の温泉旅館がある。一軒だけ狭いトンネルを通らなければ行けない「川の家」という川べりの宿があり、漫画家のつげ義春が宿泊したことで知られる。このときの様子は随筆貧困旅行記(1991年9月 晶文社)に詳しく書かれている。
養老渓谷温泉 – Wikipedia

塩川鉱泉(しおかわこうせん)

写真は塩川神社(神奈川県愛甲郡愛川町)

”沢は二軒目の宿屋から先は、山の割れ目のように急に狭い谷間になり、さらに百メートルほど奥へ行くと、崖の棚に目的の滝の家があった。みすぼらしい宿で、暗い谷間に挟まれているせいか、別所の渓間屋よりももっと寂れた感じで、私は感激でドキドキした。”

つげ義春『貧困旅行記』丹沢の鉱泉より

神奈川県愛甲郡愛川町半原
日本, 神奈川県愛甲郡愛川町半原

塩川鉱泉 観泉荘こまやは国道412号半原バイパス沿いの中津川畔にある鉱泉。旅館であるものの、日帰り入浴も受けている。ただし、宿泊客が優先であるため、その状況により日帰り入浴が15時までになる場合もある。(中略)浴室は建物の奥にあり、岩を配した内湯と露天岩風呂及び外に設けられた足湯からなる。ともに無色透明の鉱泉を加熱利用している。なお、ここより塩川上流にあった「滝の家」と「優喜山荘」が廃業したため、この地区における鉱泉の利用施設はここだけとなってしまった。
観泉荘こまや(愛川町半原)

https://matome.naver.jp/odai/2135516405449179501
2012年12月12日