▼ TPPの交渉に参加するためには何が必要?
https://matome.naver.jp/odai/2135493572524398101/2135505751737493403
TPP交渉は、日本が参加したいと表明しても簡単に参加できるわけではない。
一部では「とにかく交渉には参加すべき」という意見があるが、そのためには様々な条件をクリアしなければならない。
このまとめでは、その交渉参加に必要となるであろう条件を振り返る。
まずは・・・
TPPの交渉参加を果すためには、全交渉参加国との個別協議を経て、全交渉参加国から交渉参加への承認を得る必要あり。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp01_13.pdf
米国・オーストラリア・ニュージーランドが日本の交渉参加に対してまだ支持を表明していない。
【TPP質疑】玄葉光一郎(外務相)&笠井亮 衆議院外務委員会(平成24年8月1日)の抜粋
チリ・ペルー・シンガポール・ブルネイ・マレーシア・ベトナムの6ヶ国は日本の交渉参加を支持。
新たに交渉に参加したカナダ・メキシコとは、日本はまだ未協議。
事前に除外を求めることなく,全てを交渉のテーブルにのせ,包括的自由化にコミットすることが(交渉)参加の条件
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp01_13.pdf
オーストラリア・ニュージーランドは、日本の交渉参加を歓迎しつつも、日本の高いレベルでの関税完全撤廃への姿勢(コミットメント)を交渉参加への事実上の条件として指摘。
実際の交渉後に例外項目を得られる可能性を完全に否定するものではないものの、原則としては長くとも10年以内に全物品の関税撤廃を目指す必要あり。
▼ 米国からは政府だけでなく議会からの承認も必要!
他の交渉参加国からは政府・内閣の承認を得るだけでよい一方、米国からは政府に加えて連邦議会からの承認も必要となる。
これがどういう違いを生むかというと・・・
米国議会はバックに圧力(業界)団体を山ほど抱えていて、各団体がみんな、そのアメリカの議会にせっつく、ロビー活動をする
【TPP質疑】郡司彰(農水相)&伊東良孝 衆議院農林水産委員会(平成24年6月14日)の抜粋
つまり、日本のTPP交渉参加を快く思わない団体や、日本がTPP交渉に参加したいという思惑に乗じた団体が、ここぞとばかりに要求を日本政府に突きつけてくることに。
米国議会は2年毎に必ず選挙が行われるため、大統領選が終わったばかりの今でも、議会は圧力団体の声に影響を受けざるを得ない。
▼ 既に自動車・保険・牛肉に関する譲歩を迫られている
米国の圧力団体からの具体的な要求として、既に自動車・保険・牛肉に関する項目についての譲歩を迫られて、保険と牛肉に関しては米国側の意向に沿う方向に日本政府が動いている。
https://matome.naver.jp/odai/2135493572524398101/2135505751737493503
▼ 自動車に関する要求の具体例
全米自動車政策評議会(AAPC)の要望
1) 技術基準及び認証手続を国際標準と完全に調和すべき。
(=日本の高い基準に満たない米国車にも販売許可を与えるべき。)
2) 規制及びその策定過程の透明性及び提案容認性を向上すべき。
3) 軽自動車規格に対する特別な待遇は廃止すべき。
4) 交渉参加の前に、自動車市場を輸入車に開放する複数年に亘る約束を示すべき。
5) 為替操作の取り扱いに関する基準を設けるべき。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/us_iken_1201_2.pdf
4点目は、既に自由化されている日本の自動車市場に対しての要望のため、『米車の「輸入枠」を設けるべき』という要求であるという解釈もされている。
玄葉外相
先般、自動車についての米側関心事項というのが示されている。透明性、流通、技術基準、認証手続、グリーンテクノロジー、税ということで関心表明があるのは事実。米国政府としては、仮に日本のTPP交渉参加について議会通報を行うこととなる場合、自動車について幾つかの項目で前進を得ることが可能であることを議会に報告できることを希望しているというふうに私は理解をしている。
【TPP質疑】玄葉光一郎(外務相)&笠井亮 衆議院外務委員会(平成24年8月1日)の抜粋
米国自動車業界からの要求は、日本政府も全てをそのまま受け入れられるものではないという認識を示しつつも、TPP交渉参加が至上命題となっている限りは、なんらかの譲歩を示せなければ交渉が進展しない状況に。
▼ 保険に関する要求と対応の内容
ルース駐日米大使は日本郵政の新規業務に「強い懸念」を表明。
TPPの交渉でも大きな議題となると指摘。
「いま新規事業を始めるのはおかしい」と反発。
学資保険を含む新規事業自体を問題視。下地郵政担当相は、米国が強く反発するがん保険や医療保険への参入は当面検討しないと説明。また郵便局で販売する米系保険会社のがん保険を増やすため、協議会を設置することを提案。
:日本経済新聞
下地郵政担当相
ルース大使の話は、今(国が)100%株を持っている段階で郵政が新規事業をやることは私ども(米国政府)は認められないというようなことを申しておりまして、がん保険もだめだ、その他のものについてもやるべきではない、そういう話がありました。これは事実であります。
【TPP質疑】下地幹郎&斎藤恭紀 衆議院総務委員会(平成24年11月8日)の抜粋
アフラックの売り上げの7割以上が日本によるもので、しかも、日本の税引き後利益の約70%、多い年は100%を米国本社に送金している。そのカネで米国本社は自社株買いを行い、高額な配当を支払うことで、高い株価を維持するビジネスモデル。
アフラックの“欺瞞”にメス 金融庁が前代未聞の長期検査
競合他社にとっては郵政グループの新規参入は大きな脅威になるが、その参入によって日本の消費者により魅力的な商品が提供される可能性がある。
それを米国の干渉により阻止させられているということは、日本国民はTPP交渉参加への代償を既に支払わされていることになっている?
▼ 牛肉に関する要求と対応の内容
米国食肉協会
日本が食品安全に関して科学的根拠に基づく国際的基準を遵守することが不可欠。全米肉用牛生産者・牛肉協会
日本が TPP に参加するためには、まず、牛肉輸入に関する月齢制限を緩和することにより、より高い水準を遵守するとの意欲を示すべき。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/us_iken_1201_2.pdf
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会が11月6日、BSE対策として実施してきた米国産牛肉の輸入規制を緩和する方針を了承。
「月齢20カ月以下」としてきた規制を
「30カ月以下」に大幅緩和。
政府は来年4月から実施する構え。
米国出荷の牛肉の9割は月齢30カ月以下
(20カ月以下は全体の約1割)
国民が知らぬ間に… 急転決着! アメリカ産牛肉ついに輸入規制緩和 TPP“フライング発車”の怪(1) – リアルライブ
日本で定められている月齢制限は、日本で見つかった最も若いBSE陽性牛が21ヶ月だったため、現状の規制で20ヶ月が採用。
米国のBSE対策および現在の取り組み | アメリカン・ビーフに関する安全性 | 安全性について | 米国食肉輸出連合会
京野委員
2010年の9月、当時の前原外務大臣がクリントン国務長官との会談時に、輸入規制の緩和について見直しをしたい旨の発言。
一年後に玄葉外務大臣がハワイ(APEC首脳会議)で11月10日、月齢制限の緩和と発言。
翌々日、オバマ大統領との日米首脳会談において、野田総理が、米国産牛肉の輸入制限の緩和について、検討の準備を開始したと発言。
そして、この諮問が発令されたのはその年の12月19日で、非常に時間的な近接感があり過ぎる。
【TPP質疑】衆議院農林水産委員会(平成24年8月2日)の重要部分の抜粋
米国輸入牛肉の規制緩和がTPP交渉参加に向けての行動の一環であることを示唆。
石田委員
本当に30ヶ月なのかというのは誰が担保できるのか?
歯を見て、30ヶ月で間違いないということか?糸川大臣政務官
歯列を用いた鑑別方法ということで、
永久歯の第二切歯、
これは3本目の切歯が確認できれば
30ヶ月齢以上ということで判断。江藤委員
歯の並び方によって月齢はわかるのかと。
わかりゃせぬのですよ。
ちょっと畜産を知っている人間なら、すぐわかります。
第181回国会 農林水産委員会 第2号(平成24年11月8日(木曜日))
▼ 自動車・保険・牛肉以外の要求に拡がる可能性も
https://matome.naver.jp/odai/2135493572524398101/2135505751737493603
(笠井委員) 仮に日本側が、三点の懸案事項について取り組む意思があると米側が判断したとすれば、その時点でさらに米側が新しい懸案事項を日本側に提起してくるということは、もうこれ以上ないと断言できますか?
(玄葉外相) 結論から申し上げると、もちろん100%の断言はできません。ただ、私はその三つ以外は承知していない。
【TPP質疑】玄葉光一郎(外務相)&笠井亮 衆議院外務委員会(平成24年8月1日)の抜粋
アメリカ側から、どの部分が条件だ、この部分とこの部分とこの部分をやったらTPPについてはOKしたいということは一切条件として示されていないので、我々は非常にフラストレーションを感じている。
【TPP質疑】山口壯(外務副相)&道休誠一郎 衆議院農林水産委員会(平成24年6月14日)の抜粋
▼ 可能性の具体例
ここに記載されている各業界団体の意見・要望を基に、起こり得る要求の具体例を数点例示。他の要望も詳しく知りたい方はリンク先のPDFを参照されたし。
医療
米国研究製薬工業協会(Pharma)日本がTPP協定の交渉国となる場合には、薬価算定ルールの改革、償還に関する事項、医薬品規制改革や予防的医療やワクチン等、現在日米経済調和対話(EHI)において議論されている課題が引き続き二国間の議論及び協議の対象とされるべきである。
投資
全米商工会議所(U.S. Chamber of Commerce)投資に関し、日本は、TPP 協定において、
透明性及び説明責任に係る原則に完全にコミットすべき。
特に、公正かつ公平なM&A関連ルールを採用すべき。
政府調達(公共事業)
全米サービス産業連盟政府調達に関し,談合等,米国企業の
公共事業参加を制限する慣行に対応すべく
日本は、政府機関による建設サービスの
調達のための共通の基準額の認定、
全ての資格要件の開示を確保するより
効率的な制度の開発、
合弁企業の取扱いに関する問題への取組、
鉄道調達に関する安全注釈の撤廃又は
限定適用を実施すべき。
▼ まとめ
日本がTPP交渉参加に必要な条件
・既存の全交渉参加国政府からの承認
ー全てを交渉のテーブルに載せる
ー包括的自由化にコミットする
・米国からは議会の承認も必要
ー自動車・保険・牛肉等での「改善」
ー医療・投資・政府調達等も可能性?
日本が交渉参加を諦める
という選択肢も持たない限り、
日米事前協議の交渉支配権は
完全に米国の議会・業界団体にある。
TPPの交渉参加ありきでは、
国民としても大きな損害を被りうるため、
TPPそのものの参加の是非だけでなく、
交渉参加の是非についても、
より慎重な判断が求められる。
▼ TPPについてより詳しく知りたい方は・・・
こちらに掲載の情報を参照されたし。賛否両論掲載。
(出典: http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/youseikaikaku/dai7/shiryou2.pdf )これだけ圧倒的にシェアが違うのは、商品の優位性よりもむしろ、1993-94年の「日米保険協議」の交渉で敗北したため、2001年まで日本企業が第三分野保険(がん・医療保険など)の販売を禁止されたことが大きい。