ツイッター小説「小さなおっさん」③

5A

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おっさん! わたしはおっさんを手のひらの上で介抱する。広いおでこに水滴を落とすと、やっとおっさんは気がついた。どうしたのよ、貧血? わからん。上体を起こしたおっさんの顔は血の気を失っている。なんや知らんけど頭がかゆい。禿げ散らかした後頭部がぷっくりと腫れてきた。 ♭twnovel

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小さなおっさんの貧血は蚊に刺されただけだった。ほら、もう掻かないの。わたしはおっさんの禿げ散らかした後頭部にかゆみ止めを塗ってあげる。すべすべしていて気持ちがいい。ほんま蚊はかなんなぁ。そうね。蚊帳でもあればいいんだけど。その時、食卓の上のメッシュが目に入った。 ♭twnovel

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今日は遅番のシフトだった。午前中カットに行き、その後出勤しても、誰にも髪を切ったと気づかれなかった。自分の存在感の薄さに少しだけ悲しくなった。ただいま。同居人が玄関で迎えてくれる。お、髪切ったんか? 私は小さなおっさんをぎゅっと抱きしめる。いつもの加齢臭がした。 #twnovel

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シーツでも洗おうかしら。やめといたほうがええで、と声がする。いいお天気なのに? 雨降るで。小さなおっさんは新聞から顔も上げずに言う。見る見る間に日は翳り、ぽつぽつと雨が降りはじめた。すごい。おっさんは禿げ散らかした頭を撫でる。雨の日は髪が決まらんから分かるんや。 #twnovel

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初めて小さなおっさんと喧嘩した。つい、出ていってよ、なんて言ってしまった。もちろん本心ではなかった。すぐに謝ろうと思った。ひどいことを言ってごめんね、と。どこを探してもおっさんはいなかった。鼻の奥がつんとなった。枕に顔を押しつけて泣いた。加齢臭だけが残っていた。 #twnovel

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ノックの音がした。お荷物ですー。もう朝だった。泣きはらした目を前髪で隠しながらドアを開けた。郵便屋さんの掌に小さなおっさんが載っていた。誰がお荷物や! おっさんは私に背を向けて郵便屋さんにツッコんでいる。おかえり、おっさん。うん。またこの兄ちゃんに拾われたんや。 #twnovel

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小さなおっさんがじっと天井を見ている。おっさんの天敵の虫でもいるのかしら。そう思って目を凝らしてみてもなにも見当たらない。なに見てるの? なんかおるんや。ちょっとやめてよ。なんや。意外とこわがりやな。おっさんはふり向いてウインクする。まつ毛が長くてうざかわいい。 #twnovel

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で、一晩中どこでなにしてたのよ。小さなおっさんを問いつめる。近所のスナックや。お酒はやめたんじゃなかったの。せやから烏龍茶しか飲んでへん。朝までずっと? 店閉まってからは公園のベンチの下で寝てた。いやらしい。なにがや。頭にキスマークついてる。蚊に刺されたあとや! #twnovel

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小さなおっさんは夏風邪で寝込んでいる。朝帰りなんかするからだ。とは言ってもうんうん唸っているところを見ると放っておけない。湿らせたコットンを額にのせて、粉薬をほんの数粒だけ飲ませる。「何か食べたい?」「りんごのすり下ろしたん」困った。弱ってるおっさんがかわいい。 #twnovel
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2012年08月23日