概説
ヒトは22対の常染色体と2本の性を決定する染色体、合計46本の染色体をもっています。21番染色体が3本あるために起こる生まれつきの病気をダウン症候群と呼んでいます。この病気は1866年にイギリスの眼科医Downが報告したことにはじまりますが、それ以前からこの病気が存在していたことがわかっています。染色体の異常が原因だとわかったのは1959年になってからです。病気の発生率は出生1,000人に対し1人の割合です。精子や卵子がつくられるときに染色体が分離しますが、分離がうまくいかないことが染色体異常を引き起こす大事な原因の1つです。母親の年齢が高くなるにつれて染色体がうまく分離しない割合が高くなることが知られており、ダウン症候群も母親の年齢が高いほど発生率が高くなります。たとえば母親の年齢が40歳になると、ダウン症候群の発生率は出生100人に対し1人まで上昇します。
ダウン症児の出生頻度
ダウン症は、出生児のなかではもっとも多い染色体異常です。
一般にダウン症の出生頻度は、民族間や社会、経済クラス間には差がなく、最近のわが国の統計では、一般出生頻度は約1000の1です。
ダウン症の発生頻度は母親の加令とともに増加することは、よく知られています。これは、母親の加令によって卵子形成過程に起こる染色体不分離の増加の結果と考えられています。しかしながら、約80%のダウン症児は35歳以下の母親から出生しています。すなわち、これはもともと35歳以下の妊娠が多いということによっています。
また、過剰な染色体は父親由来のこともあり、母親由来と父親由来の比は4:1といわれています。
症状
身体的な特徴の1つとして変わった顔貌(がんぼう)があげられます。顔の起伏が少なく、鼻とくに両目の間の部分が低く、切れ上がった目をしています。また、頭が小さくとくに前後の長さが短い、小指が短い、手のひらのしわが猿線といわれるように1本になっているなどの特徴があります。
身長、体重は正常児に比べると小さく、ダウン症児の標準成長曲線がつくられていますので、この成長曲線に合わせて成長を考えることが必要です。筋緊張が弱く、乳児期は体がとても柔らかいのが特徴です。運動の発達も遅れ、歩行開始の平均年齢も2歳くらいになります。知能指数は30~59に80%が含まれ、社会生活能力指数は60~70が多いとされています(正常児の平均は100です)。
多くの合併症が知られていて、これらの合併症の程度が生命的な予後に大きく関係しています。先天性心臓疾患は約40%の患者に発生し、心室中隔欠損(しんしつちゅうかくけっそん)がもっとも多くみられます。また、一般的にはまれな奇形である心内膜症欠損が心合併症の約20%に起こり、これがダウン症候群の大きな特徴とされています。肺血管が硬くなる肺高血圧症に一般の子どもより早くなりやすいため、早い時期の手術が必要となることが少なくありません。
十二指腸閉鎖や鎖肛(さこう)といった消化管の奇形が3~8%に、頸椎の異常である環軸椎不安定症が10~30%にみられます。また難聴が60%程度にみられ、ダウン症候群の患者でよくいわれる「頑固さ」が実は難聴に起因していることが多いことが指摘されています。近視、遠視、乱視、斜視といった眼科的な異常もかなり高率にみられます。白血病の合併が多いことが有名ですが、発生頻度は1.6%程度です。
診断
血液で染色体を検査することによって確定診断をします。90~95%は21番染色体が3本あることで診断されますが、他の染色体の一部が21番染色体に結合すること(「転座」といいます)によって発病することがあります。転座が原因の場合には、約50%の確率で両親のどちらかが転座染色体の保因者であることもわかっています。
21番染色体が3本のタイプの標準的なダウン症候群は突然変異で起こるので両親に原因はありませんが、経験的には次にダウン症の子どもが産まれる確率は通常の約5倍の確率であることがわかっています。羊水(ようすい)検査で生まれる前に診断をすることも可能ですが、様々な問題が起こることもあり、専門施設で遺伝カウンセリングを受けることが勧められています。
標準治療
染色体異常そのものに対する治療はありません。早期療育によって知能や社会性を伸ばすこと、合併症の予防や治療を継続的に行うことが治療の中心となります。合併症の治療についてはそれぞれの項目を参照して下さい。
予後
合併症に対する治療が進んだこと、社会的な支援の制度が整備されてきたこともあり、平均寿命は伸びて50歳を超えるようになっています。亡くなる原因として多いのは心臓の合併症と呼吸器の感染症です。
生活上の注意
乳児期に必要なことは身体的精神的な発達についての定期的なチェックです。1~2カ月に一度は健診を受け、問題がないかを判断します。身体計測、一般的な診察はもちろん必要ですが、心雑音がなくても一度は心超音波検査を行います。聴力や中耳炎の有無を調べたりする耳鼻科的な診察、斜視や屈折異常をみつけるための眼科的な診察も必要です。てんかんを合併することも多いので脳波検査も一度は受けたほうがよいでしょう。また、甲状腺機能の異常も少なくないので、白血病などのスクリーニングも含めて血液検査も行います。家庭では良好な母子関係をつくることがとても大切で、このことが将来の発達に大きな影響を与えます。
1歳を過ぎると早期療育が必要と考えられていますが、地域によっては十分な施設が整っていないところもあります。定期的な診察では乳児期と同じような検査を行います。頸椎上部の異常である環軸椎異常では脱臼や亜脱臼が多く、運動によって脊髄損傷を起こすことがあります。そのため3歳になる頃には整形外科で異常の有無をチェックしておくことが必要です。異常がある場合には運動での前転や水泳での飛び込みを制限しておかなくてはなりません。集団生活に入ることになるので予防接種も積極的に受けることが大切です。
小学校に入ると肥満に対する注意が必要で、糖尿病を合併することもあります。年に一度は定期的な検査や診察が必要です。とくに近視などの屈折異常や白内障などの眼科的な合併症は、ほとんどのダウン症の子どもにみられるといっても過言ではありません。特殊学級に在籍することが多いですが、低学年では普通級で勉強している子どももいます。
思春期に入ったときの二次性徴は正常な子どもと変わりありません。思春期に入ると生活のコントロールが難しくなることが多く、肥満はより大きな問題となることが多くなります。青年期に入ると動作が遅くなったり会話が減る、対人関係がうまくいかない、無気力でこだわりが強くなる、睡眠障害や不定愁訴が多くなるなど、いろいろな能力の低下が問題となることがあります。痴呆が進んだと判断されることもありますが、多くの場合人間関係や生活環境の変化などによるストレスが原因で起こる心因性の変化であると考えられています。社会的な支援を求めて生活することが大切です。
成人してからも継続的な健康管理を行います。退行現象や抑うつ状態が問題となることが少なくありませんが、甲状腺機能低下症、うつ病、アルツハイマー病などが原因となっている可能性もありますので、病気を見逃さないことが大切です。
ダウン症の原因
ダウン症のこどもが産まれやすい原因はあるの?
ほとんどのダウン症 原因は、
卵子か精子のいずれかができる時の染色体の分裂がうまく行かずに
起こることが多いようです。
ダウン症 原因は、受精卵の発育初期の分裂異常も原因となります。
しかし、これらの異常な分裂がなぜ起こるのかは
現在でもわかっていません。
妊娠中の感染、薬品、放射線などはダウン症 原因としては
余り重視されなくなっています。
では、親の年齢が高いほどダウン症 原因になるのでしょうか?
一般にヒトの細胞分裂の異常は年齢とともに起こりやすくなり、
卵子や精子についても同じことが言え、
統計的にも母親の年齢が高いとダウン症 原因の発生率も高くなると
言われています。
なお、若い母親から生まれるこどもの数が圧倒的に多いことから、
実数としては若い母親から生まれるダウン症 原因の赤ちゃんが
圧倒的に多いようです。
次にダウン症 原因は遺伝性に関係あるのでしょうか?
ダウン症 原因のほとんどは
染色体の分離異常が原因であるため,
親からの遺伝と は関係ないようです。
しかし,ごく一部(数%)のダウン症 原因は
親からの遺伝で起こるので,兄弟姉妹に多発するものがあるようです( 転座型)。
ダウン症 原因は
遺伝子の染色体を調べることでわかるということです。
ダウン症の検査
妊娠段階において
妊娠15~16週ごろに行う羊水染色体検査で診断することが可能です
産婦人科病院で行われる)
なおダウン症 検査の結果が出るまでに2~3週間を要するようです。
ダウン症 検査は流産の危険性が1/200程度あるといわれています。
一方、最新の統計調査によると羊水検査と流産危険率上昇との間には
相関関係がないという結果も出てきているようです。
一般に学会の倫理規定などでは、
ダウン症 検査は正式には
「医療側はこういった出生前検査は妊婦に対し積極的に進言してはいけない」
とされているようです。
(厚生科学審議会先端医療技術評価部会・出生前診断に関する専門委員会)。
そのため「妊婦検診等でこういった検査を勧められなかった」
としても医療側の落ち度は無いとされる判決も出ています。
(裁判事例:京都地裁平成9年1月24日判決)。
そのため妊婦は自ら医療側に進言
(結婚している妊婦の場合夫婦の同意に基づく)しないと
正式にはダウン症 検査行ってもらえないようです。
またダウン症 検査の結果も、
正式には「妊婦側が聞くことを希望して初めて通知出来る」とされています。
一方、英国では出生前ダウン症 検査の診断が
国の政策のもと行われ広く普及しているようです。
ダウン症の症状
ダウン症の症状には
次の様な身体的特徴が見られます。
ダウン症の症状は新生児に必ず現れる訳ではありません。
個人差が強く、目立たない人や現れない人もいるようです。
・筋肉の緊張力が低い
・小指の関節が1つ足りない
・まぶたが深い二重
・目と目の間隔が狭く、切れ上がっている目をしている
・皮膚に斑状の模様
・発音が苦手
・知的発達の遅れ
・感染抵抗力が低い
ダウン症 原因のダウン症の症状
としての合併症が必ずしも現れる訳ではありませんが、
ダウン症 原因のダウン症の症状
としての合併症を伴う人も少なくないようです。
ダウン症 原因のダウン症の症状
としての合併症が現れる可能性のある症状として心臓病、
白血病、てんかん、消化器官の奇形、視力の屈折異常、
聴覚障害などが挙げらてれます。
ダウン症 原因のダウン症は
感染症への抵抗力が弱い事から風邪や気管支炎、
中耳炎などに発症しやすい傾向が見られます。
ダウン症児を持つもの会が各地にあり活発な活動を行っています。大きな団体として以下の2つがあります。
・日本ダウン症協会(JDS) http://www16.ocn.ne.jp/~jds2004/
・日本ダウン症ネットワーク(JDSN) http://www.jdsn.gr.jp/
「ダウン症」の紹介をする上で、染色体が大事なポイントになります。「ダウン症」という症状があらわれるのは、染色体が深くかかわっているからです。そこで、まずは染色体について説明していくことにしましょう。
染色体とは、簡単に言うと両親から受け継いだ遺伝情報が詰まっているものです。私たち人間の身体の“設計図”とも言うべき遺伝子がたくさん詰まった染色体は、とても重要なものになります。染色体は全部で46本あって、22対の常染色体と1対の性染色体があります。後者の染色体で、男性か女性かの性別が決まります。
それぞれ対になっている染色体ですが、「ダウン症」の場合は21番目が3本になっています。1本多いため、合計で47本の染色体を持っていることになります。これが染色体異常で、色々な症状が見られます。そのほか、18番目が多い18トリソミー、性染色体が1本のターナー症候群など、様々な染色体異常があります。この染色体異常は根本的なもので、それ自体を治療することはできないので、主に対症療法を行います。
関連する病気
低身長(小児)
概説
低身長は文字どおり身長の低い状態を指しますが、医学的に「低身長」として扱われるのは身長の標準偏差がマイナス2SD以下の場合です。子どもは日々成長しているので、現在の年齢(何歳何カ月まで)に応じた標準値(図:標準曲線)と比較して身長の評価を行う必要があります。
低身長の原因には様々なものがあります。ホルモン分泌の異常で起こるものは成長ホルモン分泌不全性低身長(成長ホルモンの不足)、甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの不足)が代表的ですが、その他のホルモンの異常(副腎皮質ホルモンの過剰など)でも身長の伸びに変化がくることが多いので注意が必要です。このようなホルモンの異常による低身長は治療が可能ですが、低身長全体の10%前後であるにすぎません。その他の原因としては染色体異常によるもの(ターナー症候群やダウン症候群)、遺伝子の異常によるもの(プラダーウィリー症候群など)、骨系統疾患によるもの(軟骨異栄養症など)、他の慢性疾患によるもの(心臓病や腎不全など)、社会的原因によるもの(栄養失調や愛情遮断性症候群など)があります。これらの一部には近年成長ホルモンによる治療が行われるようになりました。
最も多いのは体質的なもので、低身長の6~7割を占めており、家族的な低身長や低出生体重児の低身長、思春期の遅れによる一時的な低身長(いわゆる“おくて”)などがこれに含まれます。これは本来の意味では病気とはいえず、現在のところ成長ホルモン治療の対象となっていません。
症状
身長が低いことに加えてその原因疾患により様々な症状が加わってきます。ホルモン分泌の異常やその他の病気によるものは現在の身長が低いだけでなく、1年間の身長の伸び(成長率)も標準より低くなっており、低身長の程度が年々強くなっていくのが普通です。成長ホルモン分泌不全性低身長では成長ホルモンを分泌する脳下垂体やその上の視床下部に異常のあることが多く、下垂体から分泌される他のホルモンの異常を伴っていることもあります。
甲状腺機能低下症のうち先天性のものは、大部分マススクリーニングで新生児期に発見され治療を受けているので、低身長で受診するのは自己免疫性甲状腺炎による後天性のものがほとんどです。ある時期から急に身長の伸びが悪くなり、倦怠感、便秘、寒がりなどの症状がみられます。染色体異常や骨系統疾患では特徴的な顔貌や体型が認められます。体質的な低身長では低身長以外の症状はなく、成長率も正常範囲であることが多いのです。
診断
低身長の程度がひどくならないうちに原因をつきとめて、治療できるものを見落とさないことが大切です。原因疾患が多岐にわたるので、小児内分泌を専門とする医師に相談するほうがよいでしょう。まず、出生体重や出産時の異常の有無、家族の身長などを確認します。全身の診察で顔貌や体型から染色体異常や骨系統疾患の可能性を検討します。
診断の上で基本となるのが成長曲線です。今までの身長・体重を正確に標準曲線の上にプロットして成長曲線を描きます。成長率が低く年々低身長の程度が強くなっている場合や、それまで正常であった成長率がある時点から急に低下している場合はホルモンの異常が疑われ、早期に検査が必要です。
手の骨の写真を撮り、骨の成熟の程度(骨年齢)を評価します。骨年齢が極端に遅れている場合もホルモン異常の可能性が強くなります。
血液検査では、まず甲状腺ホルモンや成長因子(IGF-1)を調べます。成長ホルモンが分泌されていないと成長因子は低くなります。成長ホルモンそのものの分泌状態は1回の採血ではわからず、早朝空腹時に成長ホルモン分泌を刺激する薬剤を使って、成長ホルモン濃度がどこまで上昇するかをみる分泌負荷試験が必要になります。2~3時間かけて5~6回採血するので子どもには負担のかかる検査です。現時点では社会的な制約からマイナス2.5SD以下の低身長であるか、2年以上にわたって成長率が低下していないと成長ホルモンによる治療に公費の補助が受けられません。したがってマイナス2SDをやや下回る程度の低身長児では、成長曲線の経過を観察し、成長率が落ちているかどうかを経時的にみていく必要があります。
標準治療
ここでは成長ホルモンでの治療について述べます。現在成長ホルモン治療の対象となっているのは、成長ホルモン分泌不全性低身長(2種類以上の分泌負荷試験で成長ホルモン分泌が低下しているもの)、ターナー症候群、プラダーウィリー症候群、軟骨異栄養症、腎不全に伴う低身長です。遺伝子組み換えの成長ホルモン製剤を使い、成長ホルモン分泌不全性低身長や腎不全では0.175mg/kg/週、ターナー症候群や軟骨異栄養症では0.35mg/kg/週を週6~7回に分け、寝る前に皮下注射します。注射は家で家族や本人が行うことが認められています。ペン型の注射器が開発され家庭での自己注射が容易に行えるようになりました。治療中は定期的に病院を受診し、身長の伸びは順調か、副作用はでていないか、2次性徴の進行や骨の成熟はどうかをチェックします。男性156.4cm、女性145.4cmに達するとマイナス2.5SDを超えて治療の目的は達したとみなされ、公費の補助は受けられなくなります。
予後
成長ホルモン分泌不全性低身長の場合、成長ホルモン治療を行うことによって成長率は改善します。しかし、過去に成長ホルモン治療を受けた患者さんのうち4割は最終身長がマイナス2SDを下回っていました。これは身長が低いうちに思春期に入って男性ホルモン・女性ホルモンが上昇してくると、急激な身長の伸びがみられた後に骨成熟が進んで大人の骨になり、低身長のままで伸びが止まってしまうためです。これを防ぐためには身長がマイナス3SD、4SDと極端に低くなる前に治療をはじめ、思春期に入るまでに身長をある程度まで伸ばしておく必要があります。
成長ホルモン分泌の正常な、体質的な低身長の人に成長ホルモンの注射を行うと、一時的には身長の伸びはよくなるのですが、思春期の進みが早くなって早期に身長が止まってしまい、最終身長は高くはならないといわれています。成長ホルモンは身長を伸ばす魔法の薬ではなく、きちんと検査を受けた上で専門家の管理の下で使用する必要があるのです。
生活上の注意/予防
栄養、とくにタンパク質が不足すると身長の伸びが悪くなります。乳幼児期の極端な低栄養はその後の発育に影響することがあるので、バランスのとれた食事を心がけます。適度の運動、十分な睡眠も必要です。
低身長のほとんどは体質的なもので、マイナス2SD前後のことが多く治療の対象とならないのですが、劣等感をもつなど精神的な問題の大きいケースでは心理的なサポートが必要となることもあります。身長も含めてその子の個性として認め、長所を伸ばして自分に自信がもてるよう配慮することが大切です。